2015年10月26日月曜日

BMW M4・GTS 「BMWの闘争心に拍手!」

  アルファロメオが新たなスポーツセダン(GTセダン)として「ジュリア・クワドリフォリオ」というモデルを他のグレードに先駆けて発表し、全世界の主要市場で年内にも販売を開始するようです。噂によると開発は相当に急ピッチで進められたようなので、クルマの完成度は「?」なのかもしれないですが、マセラティ・ギブリのシャシーを流用しているのでそれほどリスクがあるわけでも無さそうです。それにしても見事なデビュー戦略というべきか・・・フィアットグループが擁する究極のエンジン・ファクトリーから供給される510psのユニットが載るというだけで、すでに話題性は十分です。

  レギュレーションによる制約があるとはいえ、あのホンダがまるで子ども扱いされてしまっているF1のワークスエンジン部門において、常に最前線で戦ってきたフェラーリによるチューニングエンジンをDセグセダンにそのまま載せる!というフィアットの大胆な発想には感服しました。F1参戦という立場では「メルセデスAMG」のファクトリーと双璧を成すメーカー系ワークスエンジンの雄ですから、市販車に供給するクオリティのエンジンをベースにしていても、わずか3LのV6で510psという規格外の出力が十分可能なようです。AMGはV8の4L搭載の「C63・S」で510psまで出していますが、そのAMGが新たに6気筒で同車を手掛けると市販車用エンジンでどれくらいの出力が可能なのでしょうか?

  F1に参戦しているワークスエンジンはフェラーリ、メルセデスAMGに加えてルノーとホンダがありますが、現状では2強2弱がはっきりしていて、これではせっかくの新型NSXやシビックtypeRへの注目度も下降してしまうのではと心配です。もちろんF1だけがモータースポーツではなく、市販車をベースとしてCクラスや3シリーズに代表されるDセグのGTセダンをプロモーションするための「DTM(ドイツ)」と「スーパーGT(日本)」も行われています。しかし・・・知名度があんまりなんですよね。

  「このアルファにはフェラーリがチューンしたエンジンが載ってる!」と言うと、なんだかよくわからないけど「おお!すげ〜!」って思ってもらえます。けれでも「このレクサスはスーパーGTのベース車になっているんだ!」と言ったところで、「なにそれ?」って人も結構多いですから・・・。クルマ好きだけに知られているに過ぎないグランプリでは、実際のところ販売に火が付くことはまず無いと思います。とりあえずF1の知名度は絶大で、フェラーリとメルセデスAMGのファクトリーで作られるエンジンこそが至高のGTカー用エンジンであり、1000万円以上出してでも買う価値がある・・・となるわけです。

  もしフォードグループの分解がなければ、今頃はジャガーの新型セダンXEにフォード系のエンジンチューナー「コスワース」の名前が突いたグレードが出されていたかもしれません(コスワースがどれだけ知られているかわかりませんが・・・)。それでもF1で勝負してきた歴代のワークスエンジンやエンジンチューナーの「ネームバリュー」は絶大で、レクサスの高性能モデルに使われるエンジンを手掛けるヤマハなんかもそういう意味ではもっともっとアピールしていいのでは?という気がします。「チューンド・バイ・ヤマハ」なんていうグレード名はどうでしょうか。

  アルファロメオとメルセデスAMGが好き放題やっている中で、やはり黙ってなかったのがBMWですね。もちろんBMもF1のエンジン供給を担っていた一流のエンジン屋です。高性能DセグGTセダンと言えば「M3」!というくらいで、この分野の盟主だったはずなのに、いつの間にか脇役に追いやられてしまった感がありましたが、ライバルが相次いで500psを越えてきたことを受けて、M3のクーペ版であるM4に新たに「GTS」というグレードを設定(700台限定らしい・・・)してきました。従来の431psから一気に大台の500psまで!ということで、ポルシェの20ps上げのGTSとはだいぶ意味合いが違うようです。

  BMWにとって「出力競争」にはあまり付き合いたくない!というのが本音なのでしょう。しかし日産GT-Rが550psを出すようになって世界中の市場をやたらめったらと荒らし始めたあたりから、エンジンパワーとAWD車による0-100km/hタイム競争へとGTカー市場全体が取り込まれていってしまい、BMWの影がしだいに薄くなっていきました。よく日本のカーメディアはGT-RとM3をライバルなどと表現しますが、AWD専用車とRWD専用車で競合するグレードなどないですし、排気量重視の3.8Lツインターボと噴け上がり重視の3L(直6)ツインターボでは、スポーツカーとしての刺激のツボが完全に違います。

  BMWにももちろん問題はあります。官能を重視するなら自然吸気で勝負すべきところに、ツインターボを持ち込んだところですでにコンセプトが「ブレている」と判断されてしまうのが、この価格帯のクルマの厳しいところです。GT-Rや911ターボ、AMG・C63S、ジュリア・クワドリフォリオの路線を目指すならば、0-100km/hのタイムでゴルフRに負けている場合ではないです。またアストンマーティン・ヴァンテージやレクサスRC-Fといった自然吸気で官能を志向する路線を目指すのであれば、先々代の7シリーズで使っていたN62B48のような、軽く踏んだだけで5000~6000rpmまでビュンビュン上がるBMWらしい自然吸気を目指してほしかったです。

  余談ですが、BMWとアルファロメオとホンダの3つのエンジン屋によって自然吸気エンジンのピストンスピードはなんと物理的な限界値付近まで達してしまい、これ以上の発展の余地がなくなった!と沢村慎太朗さんの著作に書いてありました。よってホンダは自然吸気のVテックによるスポーツモデルの展開をやめ、アルファロメオは1.75Lの直4「1750TB」をターボ用として残して閉店休業、BMWも徹底的に自然吸気を放棄しています。アルファの1750TBはショートストロークなので、これの自然吸気がマツダが手掛けるフィアット版ロードスターに載るならぜひ買いたいと思いますが・・・。


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2015年10月8日木曜日

アウディA1 と BMW118i 「直3ターボにMTなら・・・」

  クルマの機能性が日進月歩で進んでいるようで、最新モデルでは100万円台のコンパクトカーでも、自動ブレーキ・シートヒーターが標準装備!なんてのも当たり前になってきました(日産・ノート、スズキ・ソリオなど)。中古車がダブついていて、手頃な価格で買えてしまうので新車の割高感を少しでも緩和するために、「いいな!」と思える装備がコスト的にクリアできればどんどん搭載される流れなんだと思います。それにしても価格表とにらめっこしていると、必要最小限の装備だけを積んだクルマを新車で買うとしたらいくらになるの?なんて思いが沸々と湧いてきます。

  先日テレビ神奈川でやっている「岡崎五郎のクルマで行こう!」を見ていたらアウディA1というモデルが紹介されていて、本体価格で250万円もするのに、オプションでも自動ブレーキが付かないのがちょっと・・・みたいなことを五郎氏に言われてました。プレミアムブランドだからシートヒーターは当たり前!・・・なんてことは決して思ってないですけどね。250万円のバーゲン価格(アウディにとっては)に自動ブレーキは付けられない!?・・・10年くらい前まではドイツ車は安全を妥協しない!という高尚な決まり文句があったようですが。

  それにしても岡崎五郎さんは上手い事言うものだと関心したのが、「このクルマには素うどんの旨さを感じた!」という表現です。うどんも蕎麦もそのものが美味しければ余計なものは要らないでしょ! って多少の薬味くらいは欲しい気もしますが、これはこれでこのアウディA1のベースグレードを的確に表現していると思います。アウディA1のベース車はもちろんVWポロなのですけども、ポロも評判の良いよく出来たコンパクトハッチですし、さらにその各部にポロではコスト面で使えない良質な部品を随所に使っているようで、走りのコンパクトカーとして着実に実力が引き上げられているようです。

  「素の良さ!」なんて「完全に趣味なクルマ」の形容でしかないですけど、日本メーカーの小型車も「趣味のクルマ」がいよいよ大盛況のようで、S660、コペン、アルトターボRS、ロードスター、G'sアクア、マーチ・ニスモ、ノート・ニスモ、CR-Zなどなど・・・そしてデミオに競技用ガソリン1.5Lモデルが加わりました。これだけバラエティに富んでいると、同じクラスの輸入車が少々地味に思えてくるほどです(輸入ブランド泣かせ)。日産系列のニスモなどは律儀にベース車よりも排気量の大きいエンジンに積み替えています。輸入車には日本車の常識を越えたようなアウディS1やミニ・JCWなどやたらと過激なモデルがありますけども・・・どちらも400万円オーバーはちょっと高いかな。

  一つ上のスモールカー・クラス(Cセグ)になると、「86/BRZ」「シビックtypeR」「WRX STI」などなど、このクラスになると輸入車も華やかなもので、「RCZ」「TT」「ゴルフR」「A45AMG」「メーガヌR.S」「M135i」などなど、さらに270psまで出力を上げた「プジョー308GTi」も近々日本に導入されるようです。このクラスは「86/BRZ」を除くと完全に300ps水準のサーキット仕様を前提として開発されているようです。サーキットが趣味な人はいいでしょうけど、休日は観光道路でドライブといったクルマ趣味を謳歌する人には、ここまでのハイパフォーマンスモデルは逆にあまり満足度が高くならないように思います。

  いくら心ゆくまで非日常のドライブを体験していたいからといっても、0-100km/hの加速が5秒の超絶マシンでは、非日常を通り越して絶望的な現実が突き付けられてしまいます。強烈なエンジンパワーで理論的に加速はできるのですが、短いストレートが多い日本の道路では止まれません。日本の道路でアホみたいに飛ばしているクルマは、直線番長を除くとポルシェかランエボが多いです。一方で理論上の加速ではこれらを上回る 360psのA45AMGでは、流れの中で全開加速を披露するにはかなり勇気が要ります。なんといってもブレーキが心もとないですから・・・。結局のところ小型車をある程度の加速で楽しめるだけのブレーキを備えているのは、ポルシェ以外だと三菱、マツダ、ホンダといった限られたメーカーのみです。トヨタのウィッシュよりもホンダのオデッセイやストリームが混雑した道路でグイグイ行けるのはブレーキ性能によるところが大きいわけです。

  冒頭のアウディA1は90psそこそこで車重は1050kgくらいあります。同じくらいの出力で車重1000kgを下回る新型ソリオよりも理論上の加速は下回ります。こんなアウディA1を「素うどんの旨さ」と言った五郎氏の言わんとするところは、過不足ない加速力が備わって、足回りなどの各部が高品位でスムーズに動くクルマこそが、日本の公道で極めて自然に楽しめる!という意味なのだと思います。アウディS1やゴルフRといったモンスター級スペックをMT車で全開加速すると、あまりの加速にシフト操作が追いつかなくなり楽しいどころではありません。なんか日本で売るにはクルマの設計がチグハグじゃないかなと思うのです。

  もし「素うどん」にMT設定があったなら・・・欧州ではこれが当たり前のグレードなんですけども、エンジンパワーを存分に使えて、日本の道路では特に楽しいのではないか!という気がします。残念なことにアウディを含むVWグループの日本の正規ラインナップではGTI以上の高性能車ばかりにMTが設定されています。もっともアウディA1はあくまで女性の買い物用のクルマだ!とブランドが決めつけているならばそれでもいいですけどね・・・。日本車やフランス車を中心にMTの小型車を探しているとアウディA1にMTが付いたならばなかなか魅力的だな(中古で狙う?)と思ってしまいます。

  さてBMW1シリーズも新エンジンになって200万円台のグレードが復活しました!「200万円台・後輪駆動・BMWの駆け抜ける歓び」の3つが揃っているのだからこれで十分だ!という声もあるでしょうけど、ここにもやっぱりMT設定が欲しくないですか? やはりこのクルマもセレブな奥様御用達の買い物カーなんでしょうか・・・。BMW1シリーズは何度乗っても、私のようなオッサンが乗る限りでは使い道が明確に想像できないやや残念なクルマです。オールラインナップで「8速AT」にこだわるならば、もっとリラックスして長距離ドライブを楽しめるクルマであってほしいですけど、コクピットは若干狭く長時間乗っていたくないです。乗り心地に関しても、Mスポでも特に足回りの「固さ」を強く意識するほどのものではなく、フニャフニャと言ってしまうと語弊がありますが、FR特有のグリップ感の希薄さで、ちょっとした弾みに斜め前方へクルマがスライドしていきそうな、なんとも落ち着かない気分での運転を強いられます。

  「駆け抜ける歓び」というフレーズにさらに説得力を持たせる意味でも1シリーズにMT仕様を追加してみてはいかがでしょうか? 価格に関しても再考の余地がありますけどもワンクラス下のアウディA1が250万円ですから、300万円を下回る価格ならば頑張っていると思います。CセグでMT車というとオーリスが1グレードのみで250万円、アクセラは180万円からありますが、118iと同等のスペックの2L自然吸気だと230万円です。もしBMW1シリーズがMTの「素」のモデルで270万円!くらいのスペシャルプライスを断行したならば、もっともっとBMWの良さが伝わると思うのですけど・・・。


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↓今月号もMTの小型車大特集で楽しい!

  

2015年10月1日木曜日

メルセデスC220 「この状況で売れたら本物?」

  「ディーゼルは欧州では貧乏人のクルマだ!」といって辛辣な輸入車批判コメントがやたらと目立つようになった、某ドイツメーカーのディーゼル問題ですが、メルセデス期待のCクラスディーゼルの日本上陸直前にこんなコメントを目撃してしまったら、購入予定者の気分は一気に萎えてしまいそうですね・・・。けど「安心してください!」、欧州で最もリーズナブルで身近な存在なクルマといえばAセグ・Bセグでup!とかポロといった辺りですが、このクラスにはディーゼルという設定がありません! このクラスでもディーゼルエンジンを載せているのは、ちょっと頭がオカシくなってテーマカラーを全部赤にしてしまっている某日本メーカーだけです。ですから「ディーゼル=貧乏人向け」というのは、何かの間違いでおそらく80年代頃の日本車における話が混ざっている気がします・・・。

  ギブリ・ディーゼルやパナメーラ・ディーゼルは決して貧乏人のクルマとは思わないです。フェラーリとかランボルギーニといったドライサンプの低重心で自然吸気8気筒とか10気筒とか積んでいるクルマから見れば、面白くもなんともない高級車なんでしょうけど、合理的に考えれば車体重量が嵩む中・大型のセダンだからこそディーゼルが相応しいと言えます。まだまだ日本を走る輸入車の主流となっているガソリンターボの方がよっぽど貧乏くさいクルマだなと思いますよ!

  フィールもエンジン重量もどちらも素軽くなった直4ディーゼルの利用価値に早い段階で気がつき、これこそがセダン復活の秘密兵器だ!とBMWやマツダといったスポーティな味付けを得意とするメーカーが真っ先に食い付いたことはいい判断だったと思います。マツダはディーゼルの開発に注力してBMWにシンクロ(同調)することで、ジャーナリスト連中から望外の好評価を得ることに成功しました。ちょっと気になるのは、今回の騒動が早くもBMWに飛び火しているようで、マイナーチェンジがあってディーゼルもエンジンの改良が行われた3シリーズで、320dだけ前期のまま据え置きになっているのはちょっと疑問が残ります・・・大丈夫だとは思いますが。

  今回発表された「C220アヴァンギャルド」の本体価格が約560万円という日本での設定を見る限りでは、メルセデス陣営はBMW320dをまだまだ有力なライバルと見ているようで、320dラグジュアリーとC220アヴァンギャルドはほぼ同じに合わせてきました。ガソリンモデルのアヴァンギャルドと比べると80万円ほど高くなるのも3シリーズとほぼ同じです。ちなみにディーゼル化による価格上昇は各メーカーの思惑が働いていて、マツダ・アテンザは50万円高、新たに参入したボルボS60は戦略価格となっていて衝撃の25万円高!!!さらに・・・ジャガーXEはさらなる驚きの20万円高に抑えられています!!! C220アヴァンギャルド&320dラグジュアリーの560万円に対して、ライバル車となるXEディーゼル・プレステージは535万円とかなり挑戦的です。ちなみにS60D4SEが454万円、アテンザXDプロアクティブが334万円です。

  果たしてこの5モデルの中でどれが優位に立つのか?・・・といっても例の問題が日本でも噴出する可能性が否定できませんので、どうなるかは全くわかりません。また年内には新たにプジョー508がディーゼルを日本に導入させると発表しました(価格は未定)。新たに発売されるアルファロメオ・ジュリアも、おそらく同じ設計を使うマセラティ・ギブリ・ディーゼルの日本導入が決まっているそうなので、同じタイミングでディーゼル搭載車もデビューするはずです(出さない理由がない)。・・・といってもこれらのメーカーはVWと同じボッシュ系のディーゼル車なので今後どうなるかわかりません(くどい!)。アウディA4は・・・(笑)。

  CクラスはAMGモデルも含めて急激にラインナップが増えたので、なんでも揃っているような印象を受けますが、大まかに分類すると、「AMGガソリン8気筒」「ガソリンV6AMGチューン」「ガソリン直4」「ディーゼル直4」の4つに分かれます。ガソリン直4に関しては細かくグレード分けするために、1.6Lと2Lをそれぞれ使い分けていますが、この2つの直4ガソリンターボがクルマ好きからは非常に評判が悪いです。実際のところはどうなのか?というと、確かにメルセデスのガソリン4気筒搭載モデルは、女性や高齢者が使いやすいクルマ作りを目指しているようで、ハンドルやペダルがことごとく軽くなっていて、とてもじゃないですが「エンジンとの対話」を楽しむような設定にはなっていないです。しかしエンジンのフィール自体はBMWの直4と大きな差はないように思います(どっちもドライビングを楽しむレベルのものではない・・・)。

  スカイライン200tにもメルセデスの直4が使われていますが、V35、V36と受け継いできたスカイラインらしい重厚感(いいクルマ感)が木っ端みじんに吹っ飛んでしまう、なんとも薄味なドライブフィールになっています。そもそもメルセデスがエンジンを誇るメーカーでは無いので、直4ターボがCクラスに使われている分には特になんとも思わないですけど、「味」でファンを掴んできたスカイラインに搭載されると確かに「オモチャ」感というか、決して高級車では感じたくはない「エンジンの安っぽさ」がハッキリと解ってしまいます。もちろんですが、メルセデスの戦略としてはフィール豊かなCクラスをご希望なら「C450AMG・4MATIC(863万円)」か「AMG・C63(1195万円)」の2つがありますよ!といったもので、メルセデスが誇る本気モデルへとユーザーを挑発して追い込む意図がチラホラと見え隠れします。

  メルセデスのガソリン直4がどうしてもダメという人は、とりあえず1000万円以上するモデルを買え!だったわけです。こうしたプレミアムブランドのクルマ好きからボッたくる作戦?な販売戦略に楽々付いていける財力があるならばアストンマーティンかポルシェでも買う方がいい気がします。そして1000万円をクルマに支出するのが現実的でない!というごくごく常識的な判断が働く人ならば、スカイライン350GTあたりを無難に選びますよね・・・。そんな悩ましいフィーリング重視のDセグセダン待望論を知ってか?セダンボディで再登場したBMW直列6気筒の340iは救世主になれるのか?本体価格800万円からひと声で150万円引き!みたいなプライスダウンがあるなら・・・。

  そもそも現行の3シリーズとは真逆といっていいくらいに、内外装のデザインで勝負してきたCクラスの車体に魅力を感じているならば、今回のC220の導入はなかなか良い選択肢と言えるかもしれません。まだCクラスのディーゼルは試乗していませんが、E220はボルボS60D4より静かでしたし、マツダと比べてもそれほど遜色ない水準です。じゃあAWDも設定されているアテンザにしておけよ!ってなりますが、今さらマツダのディーゼルを買うのもなんか違う気がするんですよね・・・。スポーツカー並みのハンドリングとレスポンス!といったマツダ車の特徴がことごとく消えてしまっている「アテンザXD」を選ぶのは、私はクルマのこと解ってません!と宣言しているような感じがして・・・なんか嫌です。ディーゼルを選ぶならば、自らスポーティであることを否定するくらいのメルセデスの立ち位置がちょうどいい塩梅かもしれないです。


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2015年9月19日土曜日

フォード・フォーカス いよいよ北米フェイスが10月に日本登場か?

  先日、マスタングに乗りにいって以来フォードからしばしばDMがやってくるようになりました。DMの頻度は売り上げの好不調をかなり表しているようで、販売好調が伝えられるマツダやメルセデスなどは新車発表のタイミングくらいしか来ませんが、フォード以外にもBMW、MINIあたりは相当に苦戦しているようで、目立つ位置に「50万円の購入資金プレゼント」(つまり値引き)が書いてあったりします。

  そんなフォードのDMには必ずといっていいほど、ビックリのスペシャル価格で登場するのがCセグ車のフォーカスです。1990年代に欧州で大ブレイクして、ゴルフやシビックを蹴散らした欧州フォードの生んだ屈指の名車ですが、マツダ車(アクセラ)と共通設計ということであまり熱心なプロモーションもなかったため、日本では全く知名度がない?クルマですね・・・なにそのクルマ?が普通のリアクションです。

  ベンツ、BMW、アウディ、VW、ポルシェ・・・ボルボ、ジャガー、ミニ、ランドローバー、プジョー、シトロエン、ジープくらいですかね。一般の人々に説明なくすんなり理解されるブランドは。フォードとかルノーとか堅実なクルマ作りができるメーカーが日本でもグローバル・フルラインナップを揃えてくれれば、日本メーカーももっと努力するようになって、オッサン相手の軽スポーツカーじゃない形で個性的なモデルが期待できそうですが・・・と悲壮感を込めて書きながらも、ルノーとフォードは今後は日本でもジワジワ来るのではないか?という予兆を感じています。

  フォーカスの現行日本モデルは、一応グローバルで現行の3代目の前期に当たります。欧州ではディーゼルがあるので、その気になればマツダやボルボのように日本でも展開できます。2011年発売から2年遅れの2013年に日本に導入されましたが、2L自然吸気エンジンの1グレードのみで、設計自体はボルボV40や先代アクセラと共通のプラットフォームなので、エンジンバリエーション的にもなかなか売りにくい立ち位置ではあります。

  ちょっと余談ですが、旧フォードグループは縄張りをしっかり分けているのか、共通設計かつ共通エンジンの別ブランド車が同一市場に登場しないような工夫が、グループ解体後からなんらかの契約に縛られて有効になっているようです。マツダエンジンを積むフォーカスが日本に投入されたタイミングがちょうど、先代アクセラの2L車がスカイアクティブ化した後のタイミングでした。ほぼ同時期に登場したボルボV40には、これとは全く別の1.6Lエコブースト・エンジンが搭載されるなど、アクセラ・フォーカス・V40が全て異なるエンジンを積んで共存してきました。

  単純にドライビングだけを楽しむならば、「スカイアクティブ」や「エコブースト」といった低速トルクを重視したエンジンは、「回す」という点では限界があるので、フォーカスが使いつづける「自然吸気・ショートストローク」が一番気持ちいいとは思います。しかしフィーリングに関してはスペックに反映されませんし、低速トルクの使い勝手の良さが一般に浸透してきて、NAショートストローク自体がスポーツカーしか使わないあくまで趣味のエンジンと見做されつつあります。

  売る側としてはいまいちセールスポイントが掴みづらい部分もあるかもしれません。私が営業マンなら「低速トルクなんて運転が下手な人向け!本当のドライビングを知りたいなら迷わずNAショートストロークですよ!」くらいのこと言いたいです。運転が大好きなアメリカ人にはこのエンジンがまだまだ人気なようで、2016年モデルとなった本国のフォーカスでも主力エンジンとして使われつづけています。さらにアメリカではフォーカスのスポーツモデルである「ST」が用意され、これが先代からファンを増やしていて、ゴルフGTIやWRX-STIのようにCセグGTカーとして立派に市民権を得ており、2Lターボ(252ps)が使われています。また新たに「RS」というマスタングに使われる2.3Lターボを横置きにした300ps越えのエンジンを装備したグレードも追加されたようです。

  さて2016年モデルのフォーカス(3代目後期)ですが、フォードから絶賛発売中のマスタングに似たフェイスへ大きくチェンジしていて、日本で売られている前期モデルとはまるで別のクルマです。あのマスタング顔をCセグに当てはめると、スバルのインプレッサやレヴォーグに似た印象になります。昨今の日本のCセグ市場はなんといってもデザインありきの「外面主義」ですから、現在の不調なフォーカスの弱点をしっかりとマーケティングした上での大幅デザイン変更が施されていますが、北米でも好調なスバルがベンチマークだったのかもしれません。

  Cセグ=デザインの風潮を築いたのは、マツダアクセラ!・・・ではなくメルセデスAクラスとVWゴルフの競り合いに端を発しています。フォーカスだけでなく、アルファロメオ・ジュリエッタやその輪郭をなぞったトヨタ・オーリスそしてプジョー308やルノーメガーヌ、BMW1シリーズといった錚々たる顔ぶれをまとめてに置いてきぼりにするくらいにAクラスとゴルフは洗練されたデザインでした(スペックはともかく)。置いて行かれたクルマはその後相次いで、フェイスリフトが行われ、308はゴルフをお手本にし、メガーヌは新生ルノーの「ヴァンデンアッカー顔」(マツダのチーフをヘッドハンティングした!)に生まれ変わり、1シリーズも大変身となりました。

  Aクラスとゴルフの洗練度に対抗できたのがアクセラ、インプレッサ、レクサスCT、ボルボV40、DS4、アウディA3といった面々で、これだけ数が揃ってもなおスペックはドングリの背比べですけど、デザインに関してはかなりハイレベルな拮抗といって良さそうです。この中で注目したいのが、日本車よりもお買い得?と思える価格を付けて登場した「ルノー・メガーヌ・ゼン」で、他の各車がプレミアム志向なのに対し、逆張り路線で勝負をかけてきました。マスタング顔のフォーカスには北米と同じくいよいよ戦略価格(250万以下!)の1.0Lエコブーストが投入されるでしょうが、2L自然吸気も残るといいな〜・・・(選ばせろ!)、さらにCT(2Lターボ)やRS(2.3Lターボ)をお手頃価格(CTが350万でRSが400万で!)で出すことで、700万円とかいう価格でぼったくっているA45AMGやシビックtypeRに冷や水を浴びせてほしいですね!

追伸・フォードジャパンからは1.5Lターボ(309万円)がすでにアナウンスされています。

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↓マツダの設計を使っているのに、スバルに憧れているクルマ!?

2015年9月4日金曜日

ボルボV40 が王道スペックでCセグのテッペンを獲るか?

  ディーゼル車の一斉発売がアナウンスされるより前のタイミングから、日本でのボルボの売上は復調の兆しを見せていました。2013年はV40のヒットもあり輸入車ブランド5位のポジション(不動のドイツ4ブランドの次!)をガッチリと維持していました。しかし昨年(2014年)は増税もあってあえなく息切れとなり、あっさりと月間1000台を割り込むと、小型車人気に乗ったミニに5位のポジションを奪われ、逆転が絶望的なほどの差をつけられました。それが今年に入ってから徐々にミニに肉薄し始め、再び月間1000台を上回るまで回復し、いよいよ満を持してのディーゼル投入で、あくまで推測ですがミニを抜き去り4位のアウディ、3位のBMWをも射程に入れるほどの急成長が今後ありそうです。

  ボルボはフォード傘下から離れて現在は中国資本によって運営されています。今や輸入車ブランドは新興国の資本が入ったところが多く、ボルボ以外にもジャガー・ランドローバーやロータス、アストンマーティンなどなど日本でも人気のブランドがこれに該当します。当初は開発力を持たないグループに買収されてしまってはさらなる成長は見込めず、遅かれ早かれトヨタグループやVWグループとの競争に敗れてブランド廃止になるだろうという悲観的な予測がされていました。しかし今ではトヨタやホンダの水準を大きく越える開発力を持つ国際サプライヤー(部品メーカー)が、メーカーを先導して車体設計をしてくれるので、新興国資本のグループでも資金さえ調達できれば十分に競争力のあるクルマが作れるようになりました。

  もちろん複数のブランドで設計を共有できるメリットも無視できないので、トヨタ、VW、フィアットクライスラー、GMといった巨大グループにはそれなりのアドバンテージがあります。しかしメルセデス、BMW、マツダ、スバルといったクオリティカー主体の中堅メーカーは、主要市場でレクサスやアウディを制するなど、「量」のメリットを覆すだけのさまざまなファクターがまだまだ十分に残っているようです。現在健闘中の4ブランドは日本とドイツの拠点で高い開発力を発揮しやすい環境にあることが成長につながっています。一方で同じクオリティーカー主体のジャガー・ランドローバーやボルボに関しては、それぞれイギリスやスウェーデンの産業の中核企業ということで、「国策」の旗印の元に政府支出による補助金が様々な形で付与されています。国内生産を条件にした特別貸し付け金や、政府系ファンドあるいは「自国産業応援」を掲げた投資ファンドからも資金が流入します。

  そして資金さえ用意すれば、ドイツの国策で急成長を遂げた最大手のサプライヤー・ボッシュグループが様々な自動車技術を提供してくれます。最先端の運転支援システムやディーゼルエンジン、そしてハイブリッド・EVや燃料電池車に至るまでボッシュ傘下には様々なサプライヤーが揃っています。それらの多くは経営不振に陥ったGM、フォード、クライスラーや三菱、日産、スズキなどの系列サプライヤーを買収したもので、ボッシュグループの実態は日独米の連合体といえます。ボッシュの成長に危機感を持ったトヨタ系列(デンソー、アイシン、トヨタ紡織など)もグループの垣根を越えて様々なブランドに供給するようになりました。

  新生ボルボが新たに手を組んだのはこのトヨタ系列で、デンソー設計のエンジン(ガソリン・ディーゼル共に)とアイシンAWの8ATのユニットで、ほぼレクサスと同水準のものが搭載されています。このトヨタ系列が関与した新型ユニットは「T3」「T5」「D4」といったグレードとして展開されています。これらが全て用意されたのがボルボの屋台骨となっているベースモデルのV40で、新たに設定された「T3」は1.5L直4ながら150psを発揮するショートストロークエンジン(制振性やレスポンスに優れる)が採用されます。欧州ブランドでのトレンドとなっている直3化に踏み切らなかった理由は、おそらく燃費よりも上質な乗り味を追求するからで、これはトヨタ系列らしい姿勢だと思います。

  「T3」はおそらく同程度の排気量ユニットとしては、圧倒的なパフォーマンスを持っていると思われます。惜しむべきはV40が開発から10年近くが経過している旧フォードのC1プラットフォームを使い続けていることで、これはマツダが開発を担当した先代アクセラで使われていたものと同じです。現行アクセラはCX5やアテンザと共通の新型プラットになりシャシー性能を向上させた・・・というのが一般的な評価なので、V40は現行アクセラと比べてどうなのか?(やや不利か?) そして現行アクセラとCセグ頂上決戦を繰り広げる「ゴルフ/アウディA3」と比較してどれだけ個性が発揮できるのでしょうか? 

  ほぼ同等の出力を誇る「アクセラ20S・Lパケ」(256万円)、「ゴルフハイライン」(322万円)、「V40T3」(324万円)の3台は改めて試してみたいところです。Cセグはひと昔前は完全に小型車枠でしたが、WRCベース車のポジションは下のBセグへと移り、走りとユーティリティを兼ね備えたサイズに拡大され、この3台のように上位グレードはマルチリンクで高いドライバビリティを視野に入れています。しかしまだまだ本格的な「走り」の評価は獲得できていない状況です。全くの余談ですがこのクラスでは「BMW118i」と「メルセデスA180」がともに298万円という戦略価格で、ボルボ・VW・マツダに対して完全に白旗を挙げていて「逆転現象」が起きています。

  ボルボV40のグレード設定は「T3」以外もかなり挑戦的と言えます。個人的に最も興味があるのは新型の「T5」で、果たしてゴルフGTIに対してどれだけ肉薄できているのか?が「クオリティカー・ブランド」としてのボルボの評価が決まる最大のポイントだと思います。ターゲットであるゴルフGTIは、取り回しの良いサイズのボディ&重量に、自然吸気でも十分に動ける余裕の2Lユニットが載り、ターボとの相性も悪くないミッション(6速DCT)のおかげで、エンジンのいろいろな回転域を楽しめます。さらにVWにしてはかなりシャープなハンドリングで、マツダ車のような運転に没頭できる心地よい操作感に感動すら覚えます。果たしてV40T5はこの強敵と比べてどうなのか?まあガッカリしない程度ならばまずは大健闘といえるでしょうけど・・・。

  そして今後のV40の販売の中心になるであろうディーゼル搭載の「D4」は、はやくもその圧倒的な加速・燃費性能がカーメディアでアピールされています。やや大きめのエンジンを積むアクセラXDとの比較では、シャシー設計の差?から静音性でマツダに遅れをとったものの、加速と燃費は多段化されたミッションの効果が大きいようで、アクセラXDを上回っています。アクセラXDはLパケフル装備(ナビ、サンルーフ標準!)で307万円のスペシャルパッケージプライスなので、V40D4(349万円)はやや苦しいですが、ボルボのディーゼルを買うなら、長距離での居住性を考慮して、アクセラとCX5の中間くらいに位置する「V40クロスオーバーD4」(364万円)が使い勝手が良さそうです。

  もはや日本ではS60やV60クラスのクルマがたくさん売れることは考えにくいので、ボルボの命運はV40の各グレードと、ボルボらしいイメージを牽引するV70とXC60/70の展開にかかっていると思います。まだ試乗ができていないですが、予想をはるかに上回る商品力で、とりあえずディーラーに行ってみようかなという気にさせる「捨てグレード無し!」のいいラインナップになっているので、マツダやスバルのように愛されるブランドになれそうな予感です。

 
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2015年8月27日木曜日

BMW3シリーズセダンに「340i」いよいよ直6ターボが復活!

  アクティブハイブリッド3とかいうやたらとヘビーなモーター付きグレード以外に、直6の設定がなかった3シリーズセダンですが、今回のビッグマイナーを機に日本でも「340i」の導入が決まったそうです!ってすでに価格も出てますね・・・。ラグジュアリーもMスポも776万円となかなか強気な価格設定で、4シリーズの直6ターボ「435i」と変わりません!文句のある人は「M135i」(556万円)、「M235i」(613万円)がありますよ!という余裕な感じが伝わってきます。

  これまで散々にF30系を批判してきました。なんといっても直6がハイブリッドのみ!ひたすらに「素」を感じさせる直4ターボの味気なさ(所有意欲ゼロ!)、そして明らかに日本製なら不良品レベルの騒音公害なディーゼル・・・。これを大人しく受け入れているカーメディアやBMWファンはマジでバカなんじゃないの?って試乗の度に思いましたよ!まさか・・・と思いつつ4回も。空ぶかししてもエコターボで雁字搦めのエンジンが「らしさ」を見せることもなく(当たり前だけど)、こんなクルマに500払うってアホ? もちろんお金の価値は人によって違いますけど、恥を忍んででも中古でF01(先代7シリ)買った方が・・・BMのNAがほしかった!って言えば筋も通るし。

  そんなに気に入らないなら無視すればいいじゃんとも思うのですが、「駆け抜けるセダンこそが麗しい!」というBMWの旗の元に、ホンダ(アコード、オデッセイ)、日産(スカイライン)、マツダ(アテンザ)、スバル(レガシィ、WRX S4)、アルファロメオ(156、166)、フォード(フォーカス、マスタング)、アウディ(A4)、ボルボ(S60)が結集して切磋琢磨した結果、日本の多くのクルマ好きがこれらのどれかからクルマを選んでいるのが現状ですし。旗振り役のBMWが低調では、それほど崇高なポリシーなど期待できないその他の「ファミリーカー・メーカー」は一気に霧散してしまうのではと・・・。現実に日本版のアコードではVテックが姿を消しましたし、レガシィもアテンザもだいぶ様子がおかしいわけですが。

  「直4&FRで高級セダンを気取るヤツはアホ!」と少々過激かと思いつつも心を鬼にして「正論」を繰り出してきました。当然のようにやってくるBMWファンからの批判にも真っ正面から対峙し、いろいろご意見を頂戴しつつなんとかブログ運営をしてきました(批判いつでもウェルカムです!)。個人的にはBMWに対する捨て身の忠告のつもりでして、その甲斐があってか、いよいよBMWからの「吉報」が届きました。しかし760万円はちょっと高い・・・クラウンアスリート3.5Gが600万円くらいですから、実勢価格をここら辺で売ってくれるならば喜んで5回目の試乗に行きますよ。余談ですが、南アから運ばれる320iと違って本国から来る340iは運送費用が少々割高なのでしょうか。タイタニックの二の舞になるリスクの北極海か、海賊稼業がいまだに盛んなアデン湾を越えるか・・・。欧州メーカーが中国の現地生産に躍起になるのもわかります。

  M235iは当たり前ですが、エンジンに比して車体が小振りな「サーキット仕様」なので、サーキットに行かない人にとっては明らかにオーバースペックです。実際に公道向けスペックを追求するならば、絶対的に直6をNA化して250psくらいにデチューンしてしまうのがいい気もしますが、ペダル踏む力も無くなった評論家連中から「パンチが無い」と叩かれるでしょう(AWDでも乗ってろ!)。もはやBMWの直6は昔と違ってターボ前提のロングストロークなので、いくらNAでもタコメーターの針が機敏に激しく動くような噴け上がりは期待できないですけど、NA化によって中速域でのコントロール領域の広さを確保できれば、ポルシェみたいな醍醐味のある中型車になると思います。その辺をホンダがどれくらい意識しているかわかりませんがターボ化された新型のシビックtypeRはハッキリ言って期待薄です。

  せっかく日本でも直6ターボのセダンを復活させてくれたBMWですが、さらにぜひにお願いしたいのがMTの設定です。もちろん320iにはすでに設定がありますが、こだわりのユーザーが多いであろう340iでもこれは必須じゃないでしょうか。本国にあるグレードなので特に日本導入にも障害があるとは思えないです。個人的には「レクサスの梯子を外してやれ!」と思っています。レクサスは高級車チャンネルとしての正当性を高めるために、高性能ドイツ車のエッセンスをそのまま設計の核に持ち込むケースが増えています。もちろん世界トップクラスの開発資金を持つトヨタですから、BMWが先行していてもすぐに追いつかれてしまいます。

  BMWも当然にそのターゲットにされているわけですが、レクサスがまず真似しないようなピーキーなハンドリング、ブレーキ、アクセルへと時代を逆流したならば、BMWを指名買いしたくなるキャラがハッキリしてくると思います。マツダなどはその辺の部分でハッキリとトヨタとの差別化を図ることで独自の需要を掘り起こしています。レクサスISは成りもの入りでその高性能さがアピールされましたが、実際に乗ってみると乗り味の随所にトヨタらしさが表出していて、シート剛性は素晴らしいし、ハンドリングもいい!けどブレーキとアクセルが完全にトヨタ・・・で「がっかり」してしまうんです。「350Fスポ」って一体どこ向いたクルマなの? とりあえず若者にウケるクルマを1シリーズや3シリーズでは目指して欲しいです。

  レクサスは現行GS以降に「4WS」(4輪操舵)という技術を復活させていますが、この機構の一番の狙いはBMW車と同等以上の「カニ走り」性能の向上にあるそうです。ほどよい感じで走りやすい混雑度の2車線道路を走っていると、BMW車がレーンチェンジを繰り返しながら気持ち良さそうに走るのを度々見かけますが、あれはドライバーのマナーではなくて、クルマの性能がそういう走りをさせてしまっている側面があります。レーンチェンジは事故やトラブルの元になるので不必要にしたいとは思わないものですが、BMW車や現行のレクサスだとあっという間に完了するので、他車に迷惑をかけずに済むならば・・・とその実行するハードルが下がります。レーンチェンジ開始から完了して安定走行状態になるまでのタイムの体感時間は、特にBMW3シリーズが優れているように感じます。

  カーメディアも私のブログにイチャモン付けてくる方々も、本当にBMWの美点がわかってんのかな?と思うことが多かったりしますが、紛れもなくBMWの味付けで秀逸なのは、このスムーズなレーンチェンジを可能にする「戻り」のハンドリング性能の高さです。この領域に関してはホンダ、マツダ、スバルといったFFベースのクルマではまず対抗できません。前方に右折待機車がいて左のスペースを使ってすり抜けるケースで、進入する交差点の複雑に荒れた路面を考えると、ある程度の「お釣」(戻り時にヨー運動が解消できず変な挙動をすること:タコ踊り)は覚悟するものですが、3シリーズを試した限りでは物理法則をちょっとばかり超越したような「機械制御」がスムーズに入ります。

  BMW(3シリーズ)は90度旋回時に、オーバーステア傾向のドライバーにとっては、機械制御の是正がやや気持ち悪いところがありますが、シケインをクリアするような直進方向への体勢維持に関しては日本車にはまだ見られない水準の身のこなしを持っています。日産(スカイライン)やレクサス(IS)で同様の場合だと、ヘビーな車重にタイヤのグリップが負け気味でちょっとヒヤリとします。マツダ(アテンザ)の場合はハンドルの入力舵角に対して非常にピーキーな反応をするのでやや神経を使います。ホンダ(旧型アコード)の場合はアメリカンなマイルドハンドリングで応答遅れが露見します。スバル(レガシィ)の場合はAWDだから当たり前ですが、応答遅れこそ少ないものの他車と比べて「曲らない」です。

  日本での販売がディーゼル頼みになっているBMWにとって目指すべき着地点は「愛されるファミリーカーブランド」なのかも知れないですが、BMWが迷走すれば後ろに続いてくる日本メーカーも方向感覚を失ってしまうでしょう。3シリーズが40周年をそれなりに歩んできたおかげで、V35スカイライン、アテンザ、レガシィ、アコード、アルテッツァ(レクサスIS)が誕生したのは紛れも無い事実ですから、「340i」の発売によって、再び6気筒へと回帰したミドルセダンが次々に発売され、その圧倒的な上質さで、直4ターボ300psオーバーのクレイジーなコンパクトカー(A45、ゴルフR、シビックR、メガーヌRSなど)を凌駕する時代への足掛かりになってほしいなと思います。(ゴルフGTIじゃ満足できません!)

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2015年8月14日金曜日

PSAグループから新ブランド「DS」が誕生!これはプレミアムファミリーブランド!?

  シトロエンから新しいプレミアムブランドとして独立した「DS」の今後の展開が楽しみです。フランスにもプレミアムブランドの波が・・・と言われたらそれまでなんですけど、単なる「PSA版のアウディ/レクサス」というわけではなさそうです。PSA車をベースにFFのオシャレに仕立てていて、格式張った「高級」を狙わないクルマ作りこそがこのブランドの特徴ですが、今の自動車業界に求められているのがまさにコレでは?という気がします。「高級」よりも「センス」という視点は・・・まるでバブル期にマツダが創設して瞬く間に終わった「ユーノス」みたいです。

  しかしあれから25年経った現在にユーノスブランドみたいな存在があったら面白いんじゃないかと思います。幸いなことに今ではマツダブランド全体がユーノスで目指そうとした形に収束してきているようで、今度は見事に成功?を収めつつあります。1989~1990年頃にマツダが生産する独自モデルを次々に展開した「ユーノス」のデザインは今見てもセンスが薫る出来映えです。フラッグシップに置かれたロータリー搭載のラグジュアリークーペ「コスモ」は、スープラ、三菱GTO、スカイラインGT-R(R32)をも上回っていた豪華版だったようですが(実勢価格は知りません・・・)。

  そもそもユーノスはマツダがまだまだ欧州市場が群雄割拠の時代(1990年頃)に、「デザイン」で覇を唱えるといった、自動車メーカーの経営戦略の枠を超えた「野心」に満ちた企画だったのだと思います。残念ながら冷戦終結後に押し寄せたバブル崩壊の波に飲まれて木っ端みじんになりましたが、RX7FD3Sが「フェラーリよりも美しい」という本物の評価を得ていたマツダゆえに、欧州で躍進して世界的な権威のある自動車メーカーへと登り詰める青写真を持っていたのかもしれません。

  マツダの高いデザイン力をまったく理解してくれない日本市場から抜け出し、その実力がそのまま「競争力」になるうる欧州市場へと軸足を移すのは必然の流れだったようで、同じ境遇の三菱も日本ではパジェロとランエボのイメージが強いですが、ディアマンテやエクリプスなど非常に高いデザイン性を持ったクルマを2000年代まで輸出していました。

  「スープラ」「スカイラインGT-R」「NSX」「GTO」「コスモ」「アルシオーネSVK」とバブルの絶頂に作られた日本のラグジュアリー・スポーツクーペ(いずれも当時はポルシェよりも断然に速い!)を改めて比べると、三菱GTOとユーノスコスモの知名度がやや劣るのかな・・・という気がします。しかしドイツでは、この時代に築き上げたブランドイメージによってマツダや三菱が大手3メーカーを凌ぐ人気を誇っています。

  マツダや三菱の魅力はもちろん世界最高を自認できる高い技術開発力ですから、「コスモ」や「GTO」といったハイテク車でブランドイメージを牽引する戦略は当然であり、それ自体を否定することはできません。しかし「ロードスター/RX7」や「ランエボ」を育て上げたマツダや三菱にはオシャレな小型スペシャリティも手を抜かずに作り込むというDNAが備わっていたようで、その流れがそのまま現在の欧州スペシャリティ市場で芽を開きました。日本でも人気の「ボクスター」「BMW Z4」あるいは「アウディTT」「A45AMG」などは、マツダや三菱が築いたジャンルの上に成り立っているといってもいいでしょう(パクリです)。

  ロードスターやランエボのコンセプトを、ポルシェやメルセデスがコピーすると700万円のクルマに変わる!?ようで、このなんともバカヤローなドイツメーカーの手法が、スペヤルティカーの市場を徹底的につまらないものにしてしまった感はあります。ロードスターがボクスターになったからといって、そのまま華やかな都心の大通りに出て行ける風格があるわけでもないですし、ランエボがA45AMGになったところで使い道が増えるということもありません。オーラも車格もそのままでただただ車両価格が高くなっただけ・・・。

  先駆的で輝く存在のクルマをさらにブラッシュアップして、新たな付加価値を加えることが、プレミアムブランドの本来的な意味ならば、それを実直に行っているのは・・・「レクサスCT」なのではないかという気がします。HV創成期にトヨタは普及のためのダンピングを行ったため、プリウスは基本的な素養においていささか不満が噴出するモデルでしたが、それをしっかりフォローして満足度をしっかり引き上げ、それに応じた車両価格を適正に賦課した「レクサスCT」は世界的にもヒットしました。

  レクサスにおいては異端的な存在とされている「CT」ですが、トヨタブランドの上級モデルをそのままスライドさせた他のモデルに対して、顧客の視点から納得できる「プレミアムカー」ではないかと思います。実際のところレクサスHSとSAIあるいはレクサスNX/RXとハリアーにそれほど決定的な違いはないですが、CTとプリウスの間には看過できない開きがあります。残念ながらレクサスは低価格路線のこれ以上の展開は、トヨタブランドとの兼ね合いを考えても無理そうなので、「ヴィッツ/アクア」のレクサス版が出ると噂されていますが、実現するかどうかは微妙です。

  そんな「レクサス」の隠れた美点に目を付けたかどうかはわかりませんが、「DS」ブランドは現行のラインナップを見る限りは、レクサスCT的な手法のモデルで上から下までの全ラインナップを構成しています。「そんなブランド興味ない!」という人もまだまだ多いでしょうけど、少なくともメルセデスやBMWが裾野を広げるために投入している、廉価ファミリーカー路線のモデルを選ぶくらいなら、もともとFF車で実績のあるPSA車をベースにデザインされた「DS」の各モデルがいいのではないか?という気がします。

  これまでは「ファミリー」と「プレミアム」はあまり関連するキーワードではなかったのですが、プレミアムブランドにとってはいかに「ファミリー」を攻略すべきか?が今後の戦略では非常に重要となっていて、その一つの解決がSUVのフルラインナップ化だったりするようです。そして「DS」ブランドのもう一つの特徴が「SUVに背を向ける戦略」のようです。プレミアムブランド化を宣言して、SUVをフルラインナップしたところで、ドイツ・日本・韓国のメーカーとの煩雑な販売合戦に巻き込まれるだけ!ということを見越しているのでしょうが、「オレたちはフランスのブランドだ!」という自己主張とも受け取れます。もちろんフランス市場は日産ジューク以来SUVブームが続いていて、ルノーもプジョーも小型SUVで業績を確保しているわけですが、「DS」にはアンチSUVのアイデンティティが備わっているかのようです(発売されちゃうかもしれないですが)。

  「DS」ブランド設置の追い風となるのが、欧州の排ガス規制強化で、BMWやメルセデスなどによるハイパワー化の流れは完全に止まり、ガソリンターボは200ps程度に抑えられ、4気筒が完全に主流なので、PSAのエンジンでも全く引けをとりません。さらに日本でも欧州車はディーゼルへという方向が完全に出来上がってきていて、PSAのクリーンディーゼルがプジョー、シトロエン、DSの3ブランドから発売されるのも時間の問題となっています。どのブランドが最も早く「プレミアム」「ファミリー」「ディーゼル(経済性)」を高いレベルで融合させるのか?・・・DS(5)・BMW(218d)・メルセデス(CLAシューティング)・ホンダ(ジェイド)・マツダ(アテンザワゴン)・スバル(エクシーガ)に対してトヨタがどう出るか?(フィールダーではちょっと・・・)

  とにかくSUVは嫌いです!というファミリーユーザーは少なくないです。理由は・・・お察しください。まあ基本的には好き嫌いの問題ではあるんですけどね。SUVは確かに売れてますが、日本においては一時の勢いは弱まってきています。ライバル車も多いですから見かけ程には儲からないジャンルになってきていると思います。そんな中でも力強く伸びていくためには、SUVやミニバンではない「裏メニュー」的ファミリーカーを試行錯誤して売り抜く(シェアを奪う)ことが大事なのだと思います。ホンダなどの日本メーカーに負けない「低床化」のノウハウなどを持つPSAが、DSブランドを使ってファミリーカーに新しい流れを作り、ドイツブランドも日本ブランドも押し退けることが出来るか?見ものです。

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2015年7月22日水曜日

アウディA1 「1L直3ターボのプレミアムカー・・・時代は完全に変わった」

  VWが最近になって予期せぬ動きに出ています。ゴルフ7がデビューした2013年前後から欧州や北米などの成熟市場で苦戦が続いていることを受けて、従来のダウンサイジング戦略を見直し、「適材適所」のエンジンラインナップを打ち出しつつあります。具体的に言うと、北米ではゴルフ7に変わって以来主力エンジンは1.8Lターボが使われていますが、今年に入って日本市場でもポロGTIを皮切りにこのエンジンが導入され初め、今度はゴルフに新設されるクロスオーバーワゴンにもこのエンジンが使われるようです。

  VWの「日本チャンネル」は従来の1.4L&1.2Lを中心としたアジア版に組み込まれていましたが、北米版での企画車をそのまま日本にも導入してテコ入れを図りつつあるようです。これまではゴルフGTIなどの一部のスペシャルモデル以外は、中国・東南アジア・インド向けと同じエンジンがパサート・ゴルフ・ポロ問わずに使われていましたが、1.8Lターボ車の売上が好調ならば供給元が変わってくる可能性もあるかもしれません。とりあえずベース車において「アジアVW車」(ゴルフR、ゴルフGTI、ビートルターボ以外の従来モデル)と「北米VW車」(ゴルフクロスオーバー)を選べるようになったことは喜ばしいと思います。

  VW1.4Lターボ&スパチャーというエンジンは2008年頃から注目され、日本市場で優勢になりつつあったトヨタやホンダのHVシステムに対抗する「夢のダウンサイジングエンジン」ともて囃されました。例えば両角岳彦著「本音のクルマ論」などを読むとよくわかりますが、当代きっての理論派評論家をかなり前のめりにするほどの高性能エンジンでした。なぜ2種類の過給器を使うのか?なんて素人でもわかることですが、ポンピングロスによるトルクの立ち後れをスーパーチャージャーで補うためです。ならスパチャーだけでいいじゃん!となりますが、そうするとエンジン負荷がかかり過ぎて燃費面でも耐久面でもいささか問題があるようです。だから2つとも付ける!とはなんともドイツ人らしい発想です(偏見?)。

  しかし2008年頃といえば世界的な不況、特に自動車メーカーへの影響は深刻で、フィアット、PSA、ルノー、フォード、トヨタ、マツダ、スバルなど片っ端から赤字に転落する惨憺たる状況でした。欧州・北米で日本車より圧倒的に価格が低いクルマを売るVWでも例外ではなく、大胆なコスト削減策を実行しました。その中の2本の柱がMQBプラットフォームの構築と、やたらとコストがかかる1.4Lターボ&スパチャーエンジンの順次廃止でした。ちなみに日本で販売されているゴルフは先代の途中からこのツインチャージャーエンジンは使われておらず、わずかにポロGTIに細々と採用されていただけです。

  少々、気の毒だったのが、自著でツインチャージャーを絶賛していた両角さんですね。完全にVWに梯子を外されてしまった格好です。この方もアンチHV論者の急先鋒として、自身の恵まれた知見を大きく振りかざしてしまった結果なので、自業自得な面もあるわけですが・・・。一番可哀相だと思ったのは、環境先進国ドイツを代表するVWの技術を心から信頼してか「このツインチャージャーは排気の浄化を含めた素晴らしい技術!」とまで言い切ってしまった点です。言うまでもなく2013年に行われた公的機関の調査でVWの直噴ターボは同クラスのトヨタよりも50倍汚い排気を出すと批判されてしまいました。

  もちろんVWだって営利企業ですから、決められたルール内で販売を行うことになんら問題はないですし、日本の呑気なカーメディアを「ステルス・マーケティング」としてどのように使っても構わないと思います。しかしこの安易なプロモーションが通用したのが、悲しいことに日本だけなんですよね。アメリカでは先ほども申しましたが、1.4Lターボ(スパチャー外した現行エンジン)が全く受け入れられずに、カーメディアから大批判にさらされた結果、あわてて1.8Lターボへ切り替えました。欧州でもカーメディアによって評価されているゴルフはあくまで「TDI」(あと「GTI」と「R」)のみです。そして中国メディアですらVWに叛旗を翻しました!中国市場をナメるな!と・・・。

  残念ながら日本にはこのような老獪なカーメディアなんて期待できません(それだけ平和なんです!)。旧態依然な広告代理店方式のカーメディア雑誌が次々と経営不振で廃刊になっていますが、自ら首を絞めているに過ぎません。どのメディアも特に廉価な欧州ブランド車(特にメキシコ、タイ、南アフリカ車)に関する記事があまりにも酷いケースが目に付きます。「いろいろ気になる点もあるけど、日本車に比べれば断然に楽しい!」とか判を押したようにPSA、ルノー、VW、ミニなどの記事には付けられています。けど実際に日本車と乗り比べてみると全然負けてるんですよ!これが・・・。とりあえずPSA、ルノー、VW、ミニのどっかで試乗したあとに、スズキに行ってスイ=スポ乗れば、笑っちゃうくらいに一気に熱が冷めるはずです。

  さてVWのラインナップに変化が見られる一方で、アウディからは「A1-1.0TFSI」なるモデルが登場しました!・・・まったくVWグループは懲りないな。なんて言うつもりはありません! 先述の両角さんはVWのダウンサイジングに中型車用エンジンの新たなる方向性を見いだしたようですが、VW自体の都合により理想と現実が乖離して、残念ながら商品力が破綻してしまいました。ゴルフと同じ設計のアウディA3では最初から1.8Lターボが標準エンジンとされていて、やや高価ですがグレード設定もされていて日本でも選択可能です。評判が芳しくない1.4Lターボはプレミアムブランドの廉価グレードに有りがちなデチューン仕様122ps(ゴルフの1.4Lは140ps)となっていて、まあいわゆる「客の足元を見たグレード」です。

  アウディは「金持ち相手のブランド」であって、単なるクルマ好きがそのラインナップにあれこれイチャモン付けるのはお門違いですし、とりあえず日本におけるアウディA3とVWゴルフの兄弟車による役割分担は理解できます。簡単にネタばらしすると、北米ではアウディA3はセダンのみしかないので、ゴルフに1.8Lターボを積んでもA3の販売に影響は少ないですが、日本仕様のゴルフに1.8Lターボを積んでしまうと、A3の上級グレードと被ってしまいアウディを展開する上で支障がでてきます。世界のメディアではVWの中型車(ゴルフ・A3)向けエンジンはターボ&スパチャーを廃棄した今となっては1.8Lが絶対的にベターと結論されています。ということで今後のVW日本仕様にもこの北米ラインナップの流入を期待したいところです。

  さて「A1-1.0TFSI」です。アウディがコンパクトカーを手掛けるという前提にややギクシャクしたものがあるかもしれないですが、純粋に1台のクルマとして考えた時に、輸入車キラーとなっていたスイ=スポを追いつめるだけの「何か」が備わった新しい趣向のクルマになった思います。もちろんPSAやルノーからすでに似たようなスペックのクルマは登場しています。しかしフランス車はステアリングやペダル、ブレーキの応答性やフィールなどスペックに表れない点でスイ=スポにはまだまだ歯が立たないと感じます。右ハンドル車の作り方が下手なのか?と思ってましたが、欧州メディアの評価でもことごとくスイ=スポの前に惨敗しています。

  しかしこれがVWとなると話は変わります。欧州の大衆ブランドでは随一のフィールを持っているVWのその上流に位置するアウディですから、そういった欧州コンパクト特有のネガはすでにポロの段階で上手く解消しています。日本のメディアはご丁寧にup!用のエンジンと書いてたりしますが、欧州ではこの95psのエンジンがゴルフにも使われていますし、立派なVWの普及型汎用エンジンをベースにバランスシャフトを組み込むなど3気筒の振動対策などもアウディ向けに追加されています。

  ちょうど3年前になりますが、日産ノートの現行モデルが発表され、同時に開発されるルノー・ルーテシアもFMCを迎えました。その際にルノー日産は欧州と日本とそれぞれの道路事情を鑑みて、搭載する1.2Lエンジンを欧州向けは3気筒ターボに、日本向けには4気筒スーパーチャージャーを設定をしました。これまで大衆車としてしか見做されなかったコンパクトカーに、前者には「ファン・トゥ・ドライブ」を後者には「高級感と静粛性」というニーズを組み込んだ画期的な判断だったように思います。ルノーの「スポーティさ」と日産の「高級感」といったブランド志向性を重要視するクルマ作りなんですけど、日本のカーメディアはこういう基本的なことすら報じる能力が無かったりします。

  カーメディアには徹底的に無視されましたけど、ノートは日本市場では日産の稼ぎ頭として存在感を示しました。異次元の燃費競争を繰り広げるアクアとフィット、欧州で絶賛されるスイフトとデミオと多士済々な国内Bセグの中でもっとも高価な設定だったにもかかわらずよく売れました。安さだけを追求すれば、マーチ、ミラージュなどの海外組み立てのモデルもあるわけですが、現状ではこれらが全く日本で相手にされないです(日本人はいいものが好きなんですね!)。しかもマーチやミラージュよりも高価な軽自動車がバンバン売れています。

  直列3気筒ターボといえば日本では軽自動車のエンジンですが、ダイハツやホンダが発売した軽スポーツをまともに買えば250万円くらいします。アウディA1が250万円!ってそんなに悪くない価格設定じゃないですか?(ポロとほとんど変わらない!) とりあえず内装を比べればさすがアウディ!って感じで、このクラスではまず負けないですし、3気筒化によって1120kgまでダイエットしましたから、パワーウエイトレシオならコペンやS660よりも優れているくらいです。最大トルクだって1.6LのNAを積むスイ=スポとほぼ同じです。

  アウディの販売が壁にぶつかっているゆえのスペシャル価格なんだろうとは思いますが、「ブランド力」「内装」「外装」「質感」「走り」・・・がそれなりにまとまっていて楽しめるクルマになっているんじゃないでしょうか。高速道路使って遠くまで行くには向いてないかもしれないですけど、半径30km程度を乗り回して「ご飯食べに行くクルマ」にはちょうどよさそうですね。駐車場が狭い「家庭料理レストラン」でも余裕で停められますし。食事のあとには気ままにゴーカート気分でドライブできます。200万円台のクルマは背伸びしてない感じで若者が乗るにはとてもさわやかです。ポロだとちょっと華がないし、ゴルフはちょっと落ち着き過ぎ・・・と悩んでいる人にちょうどいいクルマですね。ただし40歳以上のオッサンには絶対に乗ってほしくない!みっともない!(あくまで個人的な見解です)


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2015年7月16日木曜日

メルセデス・納得のインポートブランド首位奪取

  メルセデスが13年ぶりに輸入車ブランドの販売台数ナンバー1に返り咲いたようです。やっぱり日本人は「メルセデス」という語感から醸し出される特別な雰囲気が大好きなんですね・・・といっても13年ぶりとはちょっと長過ぎです。13年前のメルセデスというと、メルセデスの全ラインナップにおいて「低品質化」がしばしば議論の的となっていました。とりわけ1997年に新たに加わったコンパクトカー(Aクラス)とSUV(Mクラス)は酷かったようです。もちろんクルマなんて自分で判断して嫌なら買わなければいい話なので、どんなクルマを投入してもいいはずですが、メルセデスだから「高性能車」であることが義務だと勝手に解釈して、無茶なハンドリングでクルマを虐め抜くテストなどを、カーメディアが独自に実施して、まるで鬼の首を獲ったかのように騒ぐわけです・・・これも名門の宿命ですね。

  さて12年ひと昔とはよく言ったもので、いい感じに「名門」「古典」「格式」といった重苦しい形容が薄らいだことで、メルセデスの受け止められ方もだいぶ変わってきたように思います。他の輸入車ブランドを見ると、アウディやBMWはデザイン面で保守的で、VWやミニ、フィアットは復刻デザインをブランドアイデンティティに掲げている中で、メルセデスは常に新しいプライベートカーのデザインを模索し続けています。伝統を重んじる人々は、バリエーションが一気に増えたFFモデルに眉をひそめているでしょうが、Aクラスをベースに、CLA、GLA、CLAシューティングブレークとここまでラインナップを拡充したならば、もはや「プレミアム・コンパクト」に最も誠実に取り組んだブランドとして賞賛すべきではないか?・・・これまでやや批判的だった私も認識を改めつつあるところです。

  思い起こせば、現行Aクラスが登場した時は、恐らくダメだろうなという予想通りに、やっぱりダメだね・・・と少々ガッカリしました。それでもボディサイズに比してゆとりがあって魅力的なパワーを誇るA250シュボルトに関しては、あれこれと実用的に使える万能なプライベートマシンとして十分な資質も感じましたし、このグレードの試乗車を求めて片道30分の最寄りではないディーラーに初見参しましたが、そんな一見客にも値引きもたっぷりあったので、いざ買うとなればそこそこ満足できたのでは?という印象でした。

  さらにしっかりと値引きを引き出せれば、ゴルフGTIとの価格差がほとんどないくらいになるでしょうし、AWDであることを考えればお買い得とすら言えます。ハンドリングや駆動系のスムーズさはやはりゴルフ7GTIの方が優れていますが、ゴルフがBセグ寄りなのに対しAクラスはどことなく乗り味がDセグっぽい部分もあるので、AWDで安定走行性を求めるならばA250スポルトの良さがGTIを上回ります。さらにブレーキに関してもAクラスの方がゴルフよりも絶対的優れているように思います。そして何より同じCセグ同士とは思えないほどにAクラスの内装はゴルフを相手にしてもハッキリと進歩的です。カラーコーディネートの徹底度はVWとは大きく違い、さらに他の多くのCセグに対してもかなりのアドバンテージがあります。またレクサスCTやアウディA3といったCセグの内装自慢にも十分に対抗できます。

  ちょっとわかりづらいですが、この現行Aクラスによる「Cセグ新展開」にはアウディやレクサスのそれとは一線を画した「思い切りの良さ」があったと思います。つまり廉価モデルを作ることには、必然的に上級モデルの需要を喰ってしまいブランド全体の売上を押し下げるリスクがあるわけで、レクサスは相変わらずCT以外の小型モデルの展開には及び腰です(欧州で新型コンパクトが公開されましたけど)。アウディにしてもA1やA3はあくまでVWの設計を使った入門モデルということを強調したものでしか無いので、エンジン縦置きのアウディが欲しい層は見向きもしないのだとか。それに対してメルセデスはたとえAクラスにも最初から上級モデルと同じエンジンを積んだグレード(A250シュボルト)、さらにAMGモデルまで発売1年目で準備してきました。

  Aクラスとその派生モデルによって大きくシェアを喰われると思われた上級モデルですが、新型Cクラスにエアサス車を導入したり、Eクラスにも6気筒に加えて4気筒のディーゼルを追加するなど、競争力を高める道筋をつけておいてCクラスもEクラスも堅調な売上を誇る戦略は実に巧みです。まるでスバルやマツダがラインナップの上から下まで全方位的に「いいクルマ」を作っているのに似ていますし、メルセデスは300万円台から2000万円台に至るまでのレンジで勝負することが要求されることを考えると驚異的です。

  メルセデスが首位を奪ったことを報じた一般のネットメディアに対して、「最近のメルセデスは安物が多い!」みたいなコメントが多数寄せられていました。もちろんブランドの平均価格が下がっていることは事実なんですが、ただ単に安くクルマを売っているのではなく、十分にユーザーのことを想定したクルマ作りが出来ている「気の利いた戦略」だと言えます。いくら安いとはいっても300万円台ですから、単純に安かろう悪かろうでは日本車の実力が堪能できる300万円台の国産車の前に歯が立ちませんし、これ以上に安くするとVWのup!のように逆に売れなくなります。三菱ミラージュや日産マーチの例をみても100万円台の普通車はいずれも低調で、日本車であっても安過ぎると売れません。やはり日本で成功するためには、ユーザーを虜にするような「志」を注入する必要があります。

  ゴルフの駆動系に負けると様々なカーメディアで叩かれ、沢村慎太朗「午前零時の自動車評論6」や島下泰久「2014年版間違いだらけのクルマ選び」といった著名なシリーズ本でも猛烈に酷評されたAクラスですが、それでもメルセデスの信念はそれらの障害を見事に乗り越え日本のユーザーに届きました。もはや変な皮肉をもって受け止めるのではなく、日本でもポピュラーな「普通車シリーズ」として、日本のユーザーの嗜好を示すモデルへと見事に大成したといっていいと思います。マツダのアクセラシリーズや、スバルのインプレッサシリーズよりも豊富なラインナップを持つ、日本市場最大のCセグ・グループを形成した「Aクラスシリーズ」に対し、どの日本メーカーが対抗できるのでしょうか? いやはやメルセデス恐るべき・・・。

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2015年6月28日日曜日

ゴルフヴァリアントR 「レヴォーグの成功&欧州上陸で急遽?」

  いよいよMQBの本領発揮というところでしょうか?  まるで3Dプリンターのように設計の自由度が高く、いろいろなボディタイプとパワーユニットを組み合わせることができるというのはなかなか便利なようです。といっても従来の工法でもヴァリアント(ワゴン)のボディにゴルフRのユニットを組み込むことはそれほど難しいことではなさそうなので、実際のところはMQB云々ではなくて、「レヴォーグ」や「メガーヌエステートGT220」が高い走行性能に加えて、なかなか個性的なスタイリングを誇るようになり、VWグループの看板モデルである「アウディA4アバント」の市場を土足で荒らすようになった事態への対処がホンネなのかもしれません。

  本体価格でおよそ600万円の「アウディA4クワトロ2.0TFSI」ですが、現状のライバル関係を考えると、ゴルフGTIと同等程度の211psの出力ではプレミアムワゴンとしては少々魅力が不足?ではないかという気がします。アウディの質感の高い内装を考えれば、価格は納得という声もあるでしょうけど、せっかく600万円出してプレミアムワゴンを買うならば他にも目移りしそうなモデルがたくさんあります。例えば「ボルボV60T6」は同じ600万円で安全やパワーユニットの面では非常に魅力的です。横置きながらも直6ターボを使って333psを発揮する上、ワゴンデザインが得意なボルボですから非常に満足度が高いクルマです(残念ながらT6の生産が終了した模様)。さらに「BMW320dツーリング」は売れ線グレードの本体価格が550万円とA4に比べお買い得で、Mスポ仕様でも580万円です。ワゴンという荷室に特徴があるキャラクターだからこそ、トルクが高いディーゼルユニットがいい味を出しています(ワゴンこそディーゼルだ!)。これでAWDモデルがあればいいのですけど・・・。

  ほかにもいろいろと候補はあるでしょうが、要するに「A4アバント」の競争力がここ数年で急速に弱まっていて、実際のところ相当なアウディ好きしか買わないクルマになってしまっています。ブランド全体としてもSUVも小型モデルに目立ったヒット作が無く、中国市場でこそ健闘していますが、日本やアメリカにおいてはVWグループの苦境で、ドイツの3グループでは特にメルセデスの台頭が目立ちます。そこでVWグループが考えたであろうことが、A4アバントよりも安くて、しかも性能面で上回る280ps出せるワゴンを作ってしまおう!ということで、いよいよ「ゴルフヴァリアントR」が登場しました。現行A4アバントのモデル末期にさしかかるまで発売を控えていたのは、A4アバントのシェアを喰わないための経営上の判断だったと思いますが・・・もしかすると次期A4にはアバントが無くなる?あるいは「メルセデスCLAシューティングブレイク」みたいな、色モノワゴンへと変化するかもしれません。

  さてかつての「レガシィSW」「パサートヴァリアント」の頃のような機能性重視で、もっさりしたデザインばかりだったのが嘘のように、最近に登場した「プレミアムワゴン」のデザインは美しいです。いずれも端正な顔つき(フロント)にスタイリッシュなサイドもリアを備えていて、「見た目で欲しくなるデザイン」をかなり意識した作り込みです。一方で大規模なフェイスリフトも無いままに7年が経過しているA4アバントは・・・やはり経年の劣化は隠せません(かつてはオシャレワゴンの最右翼だったのに!)。そしてE91ではちょっとオーラが足りなかったBMW3ツーリングのリアデザインも、F31になってからBMWらしからぬ「ポップ」さが備わり、現状ではA4アバントをややリードしていて、まさかのBMWがアウディにデザインで勝利するという展開になっています(あくまで主観ですが)。

  しかしワゴンを巡るライバル関係は大きく変化していて、プレミアムワゴンの代表モデルだった「A4アバント」と「BMW3ツーリング」の2台の存在が完全に霞んでしまうほど、新たに登場した「レヴォーグ」、「メガーヌエステート」、「ボルボV60」、「ゴルフヴァリアント」、そして「アテンザワゴン」といった新興勢力の5台は「プレミアム」であることを意識していて、シェア獲得に向けて洗練されたクルマ作りにとても力が入っています。何に対してプレミアムなのか?というと、それはパッケージ性を目一杯重視していることがスタイルから分るトヨタの「カローラフィールダー」、「アベンシスワゴン」などのワゴンと比べるとわかりやすいです。まずはフロントマスクやシルエットへの「エクステリアのこだわり」、そしてアウディやBMWに匹敵する「インテリアの良さ」、そしてアウディ、BMWを超えるほどの「走行性能」とまさに三拍子揃った実力車ぞろいです。

  「より良いものを、より安く」というのは、情報化が進む現代社会では大衆の行動原理として避けられないものです。ディーラーに行かなくても自動車専門誌を買わなくても、ネットで必要な情報がいくらでも無料で入ってきます。メーカーが発信する広告なのか?第三者が出している「評価」なのか?といったメディアリテラシーを駆使して判断することさえ出来れば、自宅でパソコンの前に居ながらにある程度までは候補車を搾りこむことができる時代です。そしてそこで行われる「第一次選考」では、「見た目」と「価格やスペック」といった分り易く数値化された情報がどうしても重要になってしまいます。

  先述の通り、本体価格が600万円のアウディA4クワトロ2.0TFSIは、同クラスのモデルよりも高価格で低スペックに映り、やはりアウディに好意的であっても「コスパが悪い」という印象を与えてしまいます(実際は値引きなどあるわけですが)。VWグループとしてはアウディが逃しているであろう「プレミアムワゴン」ユーザーを上手く掬い取るため「ゴルフ・ヴァリアントR」なのだと思います。本体価格が560万円で280psガソリンターボとして登場した「ゴルフヴァリアントR」ですが、確かに300psが出せる「レヴォーグ2.0GT」の最上級グレードが360万円ですから、まだまだ割高感は否めません。それでも輸入車に高いステータスを感じる層(スバルに対して否定的な高級志向な層)を、BMWやボルボから奪還するには十分な商品力とコスパを備えているといえます。

  そしてVWの欧州市場におけるライバルになっている、ルノーのメガーヌエステートのハイスペックモデルである「GT220」(330万円)に対しても出力面でも優位に立っています。しかもGT220はMT仕様しか日本に導入されておらずユーザーが限られる上、FF車であり積載量によってトラクション面での振り幅が大きくなるワゴンにとっては、やはりゴルフヴァリアントRのAWDが有利です。T6以外の「ボルボV60」もFFですし、BMW320dツーリングもFRのみの設定なので、「AWD」でフィルターをかけるならば、ゴルフヴァリアントR(560万円)、レヴォーグ2.0GT(最上級で360万円)、アウディA4クワトロ(600万円)、アテンザワゴンXD(最上級で400万円)の4台が「プレミアム・AWD・ハイスペック」を兼ね備えたモデルになります。

  かつて(2000年頃)はエンジントルクの豊富さとフルタイムAWDの実力の高さから、「鬼トルク」などと形容されて、ユーザーからそのダイナミックさを称賛されてきた「アウディA4クワトロ」ですが、この4台の中で改めて乗り比べてみると、やはりトルク40kg・mを誇る他の3台に比べて貧弱な乗り味に感じてしまいます。やはり15年も経つとクルマの進化の幅は大きく、常にクラスの頂点を守り続けるというのは非常に難しいことであるようです(もちろん「S4アバント」や「RS4アバント」といったスペシャルモデルはありますけど)。

  「レヴォーグ」がヒットし、「アテンザワゴンXD」にAWDが設定され、そして「ゴルフヴァリアントR」が登場するなど、俄にも中型車の新たな魅力を発掘するような「魅力的なジャンル」が突然に盛り上がってきたように思います(レヴォーグの功績?)。ワゴンのデザインも日進月歩に進化しましたし、コンパクトカーとはハッキリと一線を画すくらいに迫力の走行性能を備え、パッケージ面でも車中泊も十分に可能です。高級車が並ぶ六本木ヒルズの地下駐車場から夏のキャンプ、そしてAWDの利点を生かして真冬の豪雪地域まで・・・あらゆるシチュエーションで楽しめるクルマということを考えると、多少は高価でもいいかなという気もします。さらにメルセデスからも「CLA250スポルト4MATIC・シューティングブレイク」が550万円(211ps)が発売され、さらに競争が激化して盛り上がりそうです(アウディA4クワトロはFMCまで苦しい戦いになりそう)。

  この「プレミアムワゴン」市場がさらに盛り上がるためにも、ぜひ日産にもスカイラインベースの「ステージア」の復活を、そして三菱にも一念発起してギャランフォルティス後継として新型ワゴンを作り、ランエボで熟成されたユニットを使った「プレミアム・ハイスペック・ワゴン」なんてどうでしょうか。日本とドイツの技術力を持つメーカーがそれぞれに総力を挙げて、走行性能とデザインを競い、そこにジャガーやアルファロメオが参戦してくる?なんてシーンを期待したいですね。


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↓このクルマがドイツ勢を本気にさせたことは認めます!

  

  

  

  

2015年6月18日木曜日

フィアット500X 「イタリアからの・・・ハスラー?」

  「もしSUVを買うならどれにする?」・・・いや死ぬまで絶対に乗らないからいい!なんてトゲトゲしい本音をぶつけるのは、わざわざクルマの話でコミュニケーションを取ろうとしてくれた知人に対して無礼極まりないですよね。ブログとリアルではクルマに関しての意見が違う!のはちょっとどうかと思いますけど、やはり「クルマに詳しい」というのはあくまで教養であり非常に役立つコミュのツールなので・・・「正しく」使わないといけません。

  とりあえず出来るだけ誠実に、そしてあれこれとイメージを膨らませて、僅かばかりの試乗経験を考慮して話の相づちを打ちます。しかし最近では日本で展開する国内外のブランドから相当な数のSUVが発売されていますから、「CX5が良さそうだね!」なんて安易な意見では、そこらにいるオッサンと同じですから、せっかくのコミュ機会も台無しです。まあ本人が思っているほどに、相手にとってはどうでもいい事だったりするんでしょうけど、なんて言っていいかと悩むことが増えてきました。そしてそろそろ世界的に乱立するSUVを自分の頭の中で「序列・分類」して、ジャンルごとの「基準車」を選定してみよう!なんて「SUVにあまり興味がないクルマ好き」にとっては少々大それた考えが芽生えつつあります。

  しかし、まずはSUVをガンガン使い倒すくらいのオフローダーにならなければダメですね。・・・といっても普通乗用車でも未舗装路に平気で入っていく無鉄砲でデリカシーの無い人間なんで、ある意味ではSUVを理解できているという自負はあります。ややエクストリームなドライブの経験上で「最低地上高」の有り難みは理解していますし、あと10cmいや、あと5cmあれば行けると思いつつも引き返したことは何度もあります。しかしその一方で、ちょっとしたオフロードに「SUV」を持ち出したり、ちょっとしたワインディング路に「専用設計スポーツカー」で出掛けるってのは少々やり過ぎじゃない?なんて冷めた意識もありますけど・・・。

  クルマの「使用範囲」なんて個人個人で大きく違うので、それに合った走行性能のSUVにすればいいんじゃない?っていう意見は、ごもっともなんですけど、突き詰めると・・・病人運ぶなら「救急車」、瓦礫を運ぶなら「ダンプカー」なんだよ!と子ども相手にアドバイスしてるのと大して変わらないような気もします。これまではSUVも救急車やダンプカーと同じような「特殊用途」のクルマでしか無かったのですけど、いつの間にやら「ブランド・アイデンティティ」を発信する立派な存在になったようで、今ではすっかりセダン、クーペ、スポーツカーといった伝統の3BOX車と同じように、クルマ好きが「伝統」やら「思い入れ」をマニアックではなく、ファッションとして語れる時代になったのは否めません。ジャガー、マセラティ、ベントレーがSUVを作る時代ですし。

  ただし裏を返すと、これまではどの自動車メーカーにも平等にチャンスがあったSUV市場に、「伝統」「ブランド」「思い入れ」といった評価基準を強引に持ち込むことで、本来自由であった市場が硬直化して息苦しくなってしまうという弊害も考えられます。3BOX車の市場でハッキリと確立されている「ブランドの序列化」がSUVにも及ぶことで、当然に「人々の欲望」が集積されその結果として、プレミアムな価値を持つSUVが出現してクルマが単なる「道具」から「芸術品」へと昇華していく過程を「自然」とみるか「茶番」と見るかの意見は分かれるかもしれません。ちょっと偉そうなことを言いますが、クルマを作る人・乗る人・評価する人が発信するSUVへ向けての「カー・ガイの集合知」が、どれほど「高尚」なものかでその帰趨は数年の内に決まるはずです(もう決まっているのかもしれませんが)。

  これからもずっと世界中の人々が「クルマを買う」という行為を繰り返すでしょうが、そんなサイクルが続く中で、一般の人々をどれだけ「クルマ文化」に巻き込んでいけるか?は非常に重要な意味があると思います。自動車産業の主体がドイツや日本といったクルマ先進国から、新興地域へとその流出は加速しているようですが、もしクルマがただの「道具」から別のものへと変わるならば、それを防ぐことも可能だと思います。そしてクルマ好きの端くれとして、クルマ文化を守るためにも、これまで愛車は絶対に「3BOX車」と決めてかかっていました。新興国で作られるセダン、クーペ、スポーツカーを買うって想像できますか?(もちろん立派なクルマもありますけど)。 そんな意識が築けるクルマが存続すれば、ドイツ車も日本車も今後長く存在すると思います。そしてもしSUVがセダン、クーペ、スポーツカーに続く「第4の存在」になりうるのであれば、SUVへの態度を改めて歓迎したいと思います。

  現在世界のスーパーカー市場で存在感を増している「マクラーレン」のチーフデザイナーはロバート=メルビルという人で、なんと1978年生まれです。VWのマーク=リヒテ(現在はアウディのデザイン責任者)も36歳でチーフデザイナーに就任しましたが、マクラーレンのようなスーパーカー・ブランドでは異例の若さです。別にデザイナーに年齢なんて関係ないわけですが、さまざまな経歴を持った「スーパー」なデザイナーが数年ごとに一流ブランドを渡り歩くことが多くなっているようで、ジャガーのイアン=カラム(1954年生まれ)といった実績十分なベテランが今も第一線にいることで、なかなか若手デザイナーにとっては風通しが悪い業界なのかな?と思います。カーデザイナーとして一気に有名になった前田育男氏は、前任者がマツダを見捨てて?去ったおかげで、大きなチャンスが巡ってきてとてもよかったと思いますが、すでに50歳でした・・・。

  マクラーレンのロバート=メルビルがなぜチャンスを得たかというと、彼がSUVという「新しいジャンル」で早々に結果を残したからと言われています。30歳そこそこの若者に「花形」であるセダン、クーペ、スポーツカーを手掛けるチャンスなどないわけで、仮に巡ってきたとしても、強力なライバルがたくさんいる「成熟市場」でそんなに簡単に大きな成果を挙げることなんてほぼ不可能です。しかし彼は武骨で実用的なデザインばかりが溢れるひと昔前のSUV市場で、見事なほどに「クールなSUV」のデザインを完成させました。そのクルマはもちろん「レンジローバー・イヴォーグ」です。

  2009年にイギリスで販売が始まったこのクルマをきっかけに、SUVというジャンルは新たなステージへと進んだ!と個人的には記録しておきたいです。そしてさらにロバート=メルビルがSUVで結果を出したブランドが、伝統のSUVブランドである「ランドローバー」だったことも結果オーライでした(ランドローバーだからこそ支持されたかも?)。いまや世界中の若手デザイナーがこぞってSUVデザインに参入して登竜門にしようとしているようで、デザインの進歩が最も早いジャンルといってもいいかもしれません。最近ではランドローバーと並ぶアメリカの老舗ブランド「ジープ」から、とっても個性的なデザインの新型「チェロキー」や、アメリカンから大きく離れてアウディやマツダみたいなモードなテイストを見せる「コンパス」や「レネゲード」などなど、かなり攻めてます!

  さてそんなジープを傘下に収めるフィアットは、レネゲードの設計に、自慢のフィアット500に準じたデザインのボディを載せたSUV「フィアット500X」を年内にも日本に導入すると発表しました。ちなみにレネゲードは、なんとイタリアで製造が行われているようで、れっきとした「イタ車」です。開発はアメリカでジープが主体で行ったようで、コンパクトSUVとはいえ本格的なAWD機構を備えているそうで、この辺に本質を愛するイタリア人の気質が現れているように思います。いちいち例は挙げないですけど、日本のクルマ好きもやはり「本質」が備わったクルマが大好きだと思うんですよ(日本やイタリアに限った話ではないかもしれないですが・・・)。

  中国やヴェトナム、ロシアのメーカーによって組み付けられた現地仕様のSUVにドイツメーカーのエンブレムが付けられて本体価格418万円くらいで売られていて、それを有り難がって買い求める日本のユーザーが溢れていた頃には、SUVなんてくらだね〜って思ってました。しかしレンジローバー・イヴォーグの登場と、ジープの復活によって、SUVに新たな秩序が生まれ、いよいよSUVを「芸術的」クルマとして語る素地が出来上がりつつあるのかな・・・と感じます。ランドローバーをかつて傘下に収めてそのノウハウを受け継いでいるBMWでもいいですし、ドイツの軍用車両を受注してきた実績を持つメルセデスでもいいです。安易な言葉ですが「本質」さえ備わっているならば、もはやSUVを差別する理由もないように思います。

  で?何がハスラーかって? ポップなデザインで商品性を伸ばしつつも、クルマの本質を見失わない開発姿勢でしょうか? なんだか自然とオーバーラップしてきました。そして日本上陸を果たして、価格次第にもよりますけど、300万円以下で買えるようならハスラーみたいな予想外のヒットを遂げて、日本の津々浦々で「車中泊のリゾートカー」として愛される存在になりそうです。

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2015年6月10日水曜日

フィアット・パンダ4×4 「イタリアからのジムニー」

  普段から近隣の都県の道路を使わせてもらっていて、日本の道路行政は非常に素晴らしい!と絶賛したくなる立場は変わらないのですが・・・。東京西部を縦断する圏央道が順調に開通する一方で、八王子〜藤野(神奈川県)を結ぶ「陣馬街道」が未だに落石で不通のままだったり、埼玉県内の飯能市名栗地区から秩父へと抜ける尾根道も不通のままだったりで、カネが取れる道路から作る(直す)みたいな風潮が少々気になります。もちろん陣馬街道は紅葉シーズン向けの観光路線でしかなく、シーズンに合わせて八王子からのルートを部分開通させましたし、埼玉の名栗〜秩父線もまた299号を通って迂回するルートの方が平坦で安全に通行できるので、それほど重要度が低いという判断なのだと思います。

  東京都も埼玉県もクルマを所有しない世帯が多くなっていて、クルマ行政に青天井にお金を使い過ぎることに理解が得られないのは仕方のないことですし、防災などの観点からも必要性がほとんど認められない道路となると、今後は修繕されることなく放置されていく可能性もあります。落石も片付けられることなくそのままになった辺境の道を走っていると、これからは最低地上高がある程度確保されたクルマ(=SUV)が、このような道路の利用者にとっては必須になってくるのかもしれません。ますます高齢化が進み財政は厳しくなり、一日に数台通るだけの道の管理を行政が行うのは、いよいよ地方議会で次々と撥ね付けられる時代になっていくでしょう。

  高齢化が進む社会というのは日本だけの問題ではなく、フィアットの本拠地であるイタリアでも深刻なレベルに達しています。産業の空洞化に直面し、中央も地方も財政が破綻気味というのも日本にそっくりです。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティの国といえば華やかなイメージですが、庶民の足となる一般車はフィアットが圧倒的なシェアを握っていて、その実態は日本における「トヨタ独占」に近い状況です。そして面白いことに、トヨタもフィアットも「独占体制」ながらも、グローバルメーカーとして揃って2000年代の後半に苦しい時期を迎えていて、そこからシンクロするかのように近年はともに目覚ましい「改革」の成果がユーザーレベルでも実感できます。

  自動車業界の「保守本流」といったら語弊があるかもしれないですが、トヨタとフィアットは日本とイタリアを代表する企業として、両国の経済政策の恩恵を受けやすいポジションにあったためか、ホンダのような「挑戦」的な姿勢は薄く、これまでは商品開発力においてしばしば厳しい批判にさらされてきました。しかし一連の「改革」後の両グループのクルマを一つ一つ品定めしてみると、なかなかの輝きを放つものが多いことに気がつきます。例を挙げると、トヨタなら「レクサスGS」「86」「レクサスIS/RC」「アルファード」でしょうか。どれも世界最高水準を視野に入れた「逸品」と言える出来です。伝統モデルの「クラウン」ではやはり大きな変革はできませんでしたが、商用車の「サクシード/プロボックス」などでもやたらと気合いが入った作り込みをしています。

  そしてフィアットグループはというと、傘下のクライスラー系ブランド「ダッジ」のラインナップを北米で増強し、同じく傘下のアルファロメオの「ジュリエッタ」のシャシーを使っていて、性能面で日本車にも対抗できる中型モデルを次々と投下しています(「ダート」など)。さらに北米で目覚ましい伸びを見せているのが「ジープ」ブランドで、日本にも新型の中小型モデルが「無視出来ない価格」で次々と上陸していて、SUV限定ブランドにも関わらず、プジョー、ルノー、シトロエンといったお手軽な輸入車ブランドを販売台数ベースで軽く上回っているのはお見事です。ヴェゼル、ハリアー、CX5などヒット車が連発して「過熱」気味な日本車SUVのイケイケな状況を考えると、このブランドが日本で生き残っているだけでも奇跡的ではありますが、ジープは力強くシェアを伸ばしつつあります。「SUVだから売れて当たり前!」という声もあるかもしれないですが、トヨタRAV4やスズキSX4・Sクロスなどまだまだ陽の目をみないモデルもありますから、日本で売れているSUVにはそれなりの「理由」が必要になっているのは間違いないです。

  さらにフィアットはアルファロメオをテコ入れし、BMW、メルセデス、アウディ、レクサスを仮想ライバルとしたブランドへと再編する方針で、現在「ジャガーXE」が登場して俄に活気づいているDセグに新たに「ジュリア」を投入するようです。もちろん「お遊び」ではなく、3シリーズやA4が持っているシェアを奪うためのグローバル戦略車ですから、XEと同等以上のインパクトを伴ったスーパーDセグセダンが堂々と登場するはずです。またスポーツカー部門でもアルファロメオから「4C」を発売して技術力とアイディアにおける水準の高さを見せつけましたが、さらにこれに加えて欧州でやや手薄とみられる小型オープンスポーツカーとして「マツダ・ロードスター」と共通設計でハイパワーエンジンを搭載した新型モデルがグローバルで登場する予定になっています。

  ブランドが違うのでそれほど気がつかないですが、日本のカーメディアの多くのページをさりげなくフィアットグループが占めています。しかしそんなフィアットのホームページを見てみると、まだまだ興味深いモデルがあります。特に気になったのが「パンダ4×4」というモデルです。日本では正式ラインナップではなく、限定車のみの展開になっているようで、現在のところどちらも本体価格が250万円程度の2種類が表示されています。全長4mに満たないBセグの中でも小型になるSUVは意外とライバルが少なくて、とても新鮮に映ります。日産ジュークがフランスで大ヒットして以来、BセグSUVが各メーカーから発売され増えていますが、その多くはBセグのベース車よりも一回り大きくしていて、3ナンバーサイズの車幅になり、小型車を意識させない上質感を出そうとする戦略が主流です。しかしこの「パンダ4×4」はもともとのパンダのサイズをしっかりと継承していて、目立ってスリムでその出で立ちは、「ジムニーシエラ・ランドベンチャー仕様」のように味のあるデザインでスタイリッシュに仕上がっています(フィアットからは「500X」という車幅があるタイプの小型SUVも間もなく日本に上陸するようです)。

  昨年登場したスズキのジムニーシエラ・ランドベンチャーも、非常に洗練されたエクステリアを持っています。内装もやや付け刃的ではありますが、パっと見ただけではジムニーとは思えないほど上質で、スバルやマツダの内装に近い感覚で、魅力たっぷりの175万円〜となっています。この「パンダ4×4」も同様にやや垢抜けないベース車「パンダ」を、メッキパーツなどで飾るというスズキと同じような戦略で、これによってオフロードモデルの存在感を残しつつ商品力アップにつなげています。確かに小型輸入車のデザインなんて・・・よく見りゃ二束三文!というケースが多いのも事実です。フィアット500シリーズとBMWミニシリーズの双璧を除けば、どれもこれもイマイチで、ここ数年のモデルで今もなお変わらず納得できるデザインのものは、「ルノー・ルーテシア」と「シトロエンDSシリーズ」くらいなものです(Cセグも含めてダメダメじゃないですか?)。

  そんな中でこの「パンダ4×4」には、日本の狭い山道で活躍しそうな「機能美」と、街中に表れてもポップに彩られた充実ライフを演出してくれるだけの「主張」が備わっています。ジムニーは楽しそうだけど、そのために2台にする余裕もないし、普段に使うにはちょっとデザインが個性的過ぎる!と二の足を踏んでいる人々にとって、なかなか良い選択肢になり得るんじゃないでしょうか? 蛇足ですが、マツダのCX3のやや膨らんだキャビンを見て、これはSUVではなくて「ピープルムーバー」だ!と率直に感じました。そしてディーゼル車を相手に価格を比較するのもナンセンスですが、パンダ4×4の方がわずかな差とはいえ総支払額は安くなるようです。CX3、ヴェゼル、ジュークのインテリアがオシャレになったモデルに乗ってみて、少しでも違和感を感じたならばフィアットかスズキに行ってみるといいかもしれません。動画にもパンダ4×4のオフロード走行がたくさん出ているので参考にしてみてください。

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2015年5月29日金曜日

BMW2シリーズ・グランツアラー 登場でこれはマジで売れそう!

  BMWから2シリーズアクティブツアラーのロングホイール版の「グランツアラー」が発売されました。「BMWが3列のミニバンを作った!」と聞いてなんかとってもBMWに親近感が。いよいよBMWも日本(的)メーカーの仲間入りですね。ちょっと突飛ですがこれからはBMWからも4ナンバー商用車が登場してきたりするのでしょうか。今月のニューモデルマガジンXで「ホンダ・グレイスは明らかに社用車を狙っている」なんて書かれてましたが、実際のところ移ろげな個人ユーザーの嗜好なんていちいち相手にせずに、使用目的がハッキリした社用車や商用バンを洗練させるほうがはるかに作る側はやりがいを感じるんじゃないですかね(デザイナー以外は)。いよいよ消耗気味なBMWも「商用車作りたい!」と思ったかどうか知りませんが、きわめて社用車と性格が似ている「3列シートのファミリーカー」を作り始めることに、BMW経営陣はそれなりの勝算を導き出していると思います。

  バブル期以来の筋金入りのBMWファンなどからは、多少は反感を買うかもしれないですが、日産、マツダ、スバル、ホンダと等身大のメーカーだとみれば、スポーツカーとファミリーカーの両方作っていることは何ら不思議ではないですし、たとえBMWであっても特に問題はないと思います。実際のところ世界のいたるところでBMWと競合しているのは、この日系中堅の4メーカーです。日産やホンダにはこれまで幾度となく特に北米市場で痛い目にあわされていますし、今となってはグローバル販売でも簡単にはひっくり返らないほどの大差をつけられています。またマツダとスバルはトヨタグループの尖兵として、なかなか厄介な存在となっていて、今後も至る所でBMWの市場を荒らしまわるでしょう(BMWもトヨタとは友好関係にありますが・・・)。

  もちろんBMWだってやられっぱなしではなく、しっかりと日本メーカーに対して反撃しています。日本市場ではも高級セダンの代名詞といっていいほどに確固たる地位を築いていますし、その影響力は日本の隅々まで広がっています。とりあえず痛快なまでに日産・ホンダ・マツダ・スバルの上級グレード車に大きな壁となって立ちはだかります。それに加えてBMWでは近寄りが難いコンパクトカー市場にも、傘下のMINIを見事に楔として打ち込むことに成功していますし、またBMW/アルピナ/MINIの3ブランドでのディーゼルエンジンの素早い展開はマツダの独走を部分的に牽制しています。そして今回はいよいよ日本メーカーの本丸といえる「ファミリーカー」部門へと進撃することになりました、果たしてどれくらい日本市場をかき回すことができるのでしょうか。

  BMWの持つ「強み」は日本市場における圧倒的な知名度です。「BMW」であるというだけで簡単に注目され(もちろん注目に値するブランドです)、BMWのクルマ作りがそのまま日本市場のトレンドに重要な影響を与えることもしばしばです。BMWがステップATを使えばカーメディアは「正義だ!」と言いますし、BMWが直4や直3のダウンサイジングターボを使えば、それこそが「正義だ!」と絶賛されます。他にも実際にマツダのディーゼルに割とあっさり火がついた要因の1つにBMWの参入と時期が重なったことが大きかったように思います。

  そんなBMWですが、今回の「2シリーズグランツアラー」が狙うのは、同じ3列6人乗りで最近になって新たにターボも追加された「ホンダ・ジェイド」ではありません。クルマの設計上は間違いなくジェイドと同じ分類になるのでしょうが、実際にBMWジャパンが日本での「仮想ライバル」として狙うのは、ジェイドのような新参の小物ではなく、おそらく「キング・オブ・ミニバン」に君臨するアルファードです。クルマの方向性こそ違いますが「目立つファミリーカー」という意味でユーザー層が被るはずです。そもそもユーザーの欲望を肯定するクルマという意味で、アルファードは非常に素晴らしいですが、そういう要素でクルマを売ってきたのが他でもなくBMWです。それにしてもアルファードとは!なかなかデカい獲物を狙ってきたわけですが、BMWの抜群のブランド力に加えて、売れ線のディーゼルを使った「318d」がアルファードよりも安い本体379万円!という強烈な値段設定ですから、エルグランド・オディッセイ・MPV・エクシーガといったいまいちパッとしない日本勢にとってみたら、とんでもない「黒船」じゃないですかね。

  もちろんミニバンブームの中で、子どもを乗降させるにも大変に便利なパワースライドドアを備えるなど、日本での使い勝手を最大限に汲んで総力をあげて開発されてきたわけですから、そんな熾烈な「戦国時代」を戦い抜いてきた日本の高級ミニバンが、初参戦のBMWにあっさりと敗れ去るのは想像できません。しかしあれだけの強さを誇ったプリウスが、弱点を突かれてまんまとVWゴルフの餌食になったことを考えると、この2シリーズグランドツアラーが意外にもかなり早期に予想以上の支持者(ユーザー)を集めるかもしれません。

  いくらBMW製だからといっても、3列シートを備えていて、さらに全高1600mmを超えるFF車ですから、ドライブフィールも日本勢と大きく変わることはないと思います。しかしBMWが使うモジュラー装備がそのまま移行されるわけですから、あのZF製8ATを備えたミニバンが登場するこということです。アルファードの上級グレードは横置きした3.5LのV6エンジンを使っていますが、クラウンやレクサスのようなアイシンAW製8速AT(ZF製よりも一般に性能が上と言われる!)を装備するなんてことはなく、CVTのままなんですよね。あのインパネに内蔵されたシフトが8ATでギコギコとMTモードを使っていたらちょっと笑えますけど・・・。けれどもトヨタが誇る最上級ミニバンなのだから、トヨタの最高級ミッションを使うくらいの演出があっても良さそうです。しかしそんなミッション付けたら、毒々しい評論家から「ミッションの前に走りを改良すべき!」なんて嫌味を言われそうですけど・・・。

  もはや引退間際のマツダMPV以外は、オデッセイもエルグランドもエクシーガもアルファードもついでに、ターボになったジェイドも搭載されているミッションは全てCVTです。もちろん渋滞する都市部を走ることが多いわけですから、商品設計としては何ら間違いではないのですけど、もう少しバリエーションがあっても良いでしょうし、どっかのメーカーがここにあえてATを投入して差別化を図るなんてこともできたと思います。そんな盲点をBMWが見事に突いてきました! しかも前述した通り、ディーゼルエンジンで経済的ですし(これはデリカD5で採用済みですけどBMWなら影響力が違う!)、価格も高級ミニバンを相手にするならば、かなり魅力的な設定になっています。このクルマはそこそこ売れる、いや異例の大ヒットでもするんじゃないですかね!今後の経過が楽しみです。


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2015年5月20日水曜日

フォード・マスタング 「いっそ車名変更もありかも!」

  かねてから「直4のFRなんてダメだ!」なんて生意気な主張を繰り返していましたが、いろいろ思う所があって新型になって直4モデルの限定車のみで先行販売が始まった「フォード・マスタング」に乗ってきました。最近の輸入車スペシャルティカーは最初に「限定モデル」によって市場の反応を探り、そのうえで日本での正規価格を決めるというやり方が多いです。もし限定車がさっさと売り切れて大人気ならば、正規の日本価格はさらなる利益と納車日数の短縮のためにさらに上昇していくでしょうし、なかなか売れずに残るようならばもしかしたら日本への本格導入は見送られるかもしれません。どっちに転んだとしても、なんだか日本のユーザーにとってはあまり面白くない結末がチラホラします。

  さてマツダが20年以上前に設計した2.3LのMZRエンジンに、フォード自慢の「エコブースト」を組み合わせたユニットに私は興味振々だったわけですが、営業マンは少々震え声で「フォードの最新鋭のエンジンです!」と言い切っていました(笑)。それでも乗ってみると現在のマツダの「スカイアクティブエンジン」よりも間違いなく楽しいです。「エコブースト」という商標を使って「ダウンサイジングターボ」の最先端を自負するメーカーらしく、最高出力314ps / 最大トルク44.3kg・mといったスペックは、2.3L直4ターボで4.5L・V8自然吸気に匹敵するというフォードの説明を十分に裏付けています。そして何よりこの新型マスタングの最大の魅力は、欧州車相手でも負けないハイスペックな足回りに強化しつつも、価格設定もほぼ「WRX STI」「ランエボXファイナルエディション」「スカイライン350GT」といった、「馬力単価が安く」良心的価格で知られる日本の高性能車とほぼ同じコストパフォーマンスを実現している点です。

  しかもこの3台の日本車よりも格段に目立つスタイリッシュで洗練された印象を放つ新型デザインは素晴らしく、この美点をきっちりと「商品力」に入れこむならば、3台の日本車を軽く超える「超絶・コスパ」のクルマと言っても過言ではないです。単純に街中での注目度は「マスタング>>>>>スカイライン>>WRX=ランエボ」くらいで、そのまま所有欲を満たしてくれる「満足度」と捉えてもいいかもしれません。日本車の常識的サイズによって縛られた3台では、アメリカンサイズに立ち向かうのは到底に無理で、まるで「日本の読モ」と「アメリカのスーパーモデル」くらいにオーラが全然違います。そして見事なのは、これだけド派手なデザイン&サイズなのに、360度見回してみてビックリなほどに細部の造形にまで隙がないです。簡単に言うとどこから見ても「絵」になります。一方でスカイライン・エボ・WRXはどうもあまり好きでない角度がありまして・・・。

  あくまで個人的な感想ですが、マツダ・アテンザに新たに2ドア・クーペ版が追加されたなら、この新型マスタングに近いデザインになるような気がします。実際に見ると、マスタングもマツダの前田育男氏がデザインしたのでは?と思ってしまうほどです。今回たまたま試乗車は赤だったので、側面の雰囲気や光沢のあるボディカラーは、現行アテンザの代名詞にもなった「ソウルレッド」を余計に想起させてくれました。1920mmのワイドボディで全高が1380mmに抑えられているので、あとは全高が4400mmだろうが5100mmだろうがバッチリとスタイリングが決まります。日本メーカーがデザインコンセプトで作ってきた「日産エッセンス」「マツダTAKERI」「スバルWRXコンセプト」が車幅1900mmくらいで作ることでスタイリングを際立たせていますが、マスタングは市販車がすでにそのサイズになっています。ハッキリ言ってカッコ良くて当たり前。けれども某・日本の大手メーカーが手掛けたら一体どうなることやら・・・。変なグリルが付いて!?

  今回は友人のBMWに乗って出掛けたので、愛車のGHアテンザとのフィーリングの比較にはあまり自信がないのです。外観のイメージに引きずられたかもしれませんが、運転してみるとそこかしこから、予想を超えた「マツダらしさ」を感じることができた気がします。BMWに乗る友人は「直進安定性がない!」としきりに言ってましたが、たしかに大柄なボディに似合わず、"ZOOM-ZOOM"時代のマツダ的なクイックなハンドリングです。私もまったく同様のことを感じていて、その理由として後輪サスが平行感覚に富む「リジッド」から独立担荷式の「マルチリンク」に変わったことで、FR車で直進安定性を出すのが少々難しいのかもしれません。同じ「マルチ」を使うFRであるメルセデスやBMWにはやはり「秘伝の◯◯」があって、安定性に特化したドイツ車的な作りといくらか「差」が出たのかもしれません。またフォードの現在のトップであるマーク=フィールズは、アテンザ開発時のマツダの社長を務めていた人物で、トップになる前は現在のフォードラインナップの製品化の可否を下すエクゼクティブだったこともあって、この乗り味(ハンドリング)こそが、彼が考えるなベストフィールという可能性もあります。

  「アメリカ車」というステレオタイプなイメージ(偏見?)をいつまでも持ち続けることは、現状においてクルマを語る上で非常に危険ではあります。しかし今回50周年を迎えた「マスタング」はその中でも徹底したコンサバ系であり、米国・カナダ・日本・豪州の4カ国に広がるファンはいつまでもその「幻影」を追い続けている部分も大きいように思います。グアムやハワイでレンタカーを借りるなら、マスタングのコンバーティブルが定番だったりするくらいで、「V8エンジンを積んで力強く、そしてゆったりと優雅に走る」イメージがまだまだ強いはずです。かなり古いモデルには直4搭載があったようですが、今回の欧州への拡大を意図した直4ターボの再搭載には、それなりの賛否両論があると思います。もちろん日本のフォード・インポーターもどれくらいの反響があるのか戦々恐々の様子です。

  このマスタングには「総合評価」なんて観点は意味を成さないかもしれません。率直に評価できる点としては「スタイリング」「価格(コスパ)」「走りが楽しい」の3つです。しかもこの3点がずば抜けて高いスコアを記録しています。もちろん細かいことを言えば、「楽しい」のはサイズからはなかなか想像できない位にダイエットした車重も大きく貢献していますし、中型車用エンジンで世界を制したマツダ・MZRエンジンがその軽快な走りを支えています。他にも先代から大きく進化していると思われるのが、インパネの高級感や、レクサスに付くようなシート・エアコン(冷暖房あります!)がこの先行限定車には標準装備されています。「マスタングにシート・エアコン」なんて完全にイメージを崩壊させる要素だと思うのですが、これが付いていて怒る人はいないでしょう。

  逆に悪い点は?というと、「良い点以外の全て」です。やたらとサイズに文句を付ける人が多い日本ユーザーが、一目で諦めてしまう幅広設計がネックになります。コンビニに停車しましたが、2ドアクーペのドアを颯爽と開こうものなら、ドアエッジが豪快に隣りにヒットする姿が想像できますので、恐る恐る開けることを余儀なくされます。ちょっとデリカシーの無い人を助手席に乗せてしまったら、乗り降りの際に神経がピリピリします。そして最近のアメリカ車はというと、ドアモールを挟むほどの余裕もないほど、ドアのチリもよく合っていますし、何よりパネルの継ぎ目がほとんど目立たないデザインです。むしろレクサスRCの方がドアモールがハマってそうなドア回りの緩さを感じてしまうのは私だけでしょうか?

  さて先ほど長所で挙げた「走りの楽しさ」は人によっては欠点にもなります。先ほども直進安定性に問題があると書きましたが、正直言って60km/h走行時のNVHが、マツダアテンザの90km/h走行時くらいです。そもそもFFとFRという違いでアテンザの方が優位ではあります。さらにピラーレスのクルマだとこんなものなのかな? エンジンからの振動は全く問題ない水準ですが、19インチに大型キャリパーをぶら下げる足元がどうもざわつきの主原因かと思います。デザイン重視と思われる19インチ採用はどこのメーカーでもそこそこ批判が出る部分ではあるので、このマスタングがどうというわけではありませんが、ちょっと邪推すると、マスタングであるがゆえにマツダのような欧州車的な(BMW・アウディ的な)洗練をあえて避けて、スポーツカーの領域に片足を突っ込んだ状態での市販化になったのかもしれません。ちなみに走行モードは「S」「S♯」のほかに「トラック」というサーキット用のスピンしやすい設定もあります。この「トラック」を盛り込んだゆえのNVH対策の不徹底なのかもしれません。

  さらに言わせてもらうと、この新型マスタングもまた日産GT-Rが直面した「サーキット」か「高級GTカー」かという二択を迫られているように思います。日産GT-RとスバルWRXは、極めて日本人的な発想から「サーキット」と「高級GTカー」分けて2種類のクルマを販売する方向に舵をとりましたが、マスタングにも「NISMO / STI」「ピュアエディション / S4」の作り分けが必要だと思われます。もちろんそんなことは名門フォードは百も承知でしょうから、予定されている右ハンドルの発売と同時に、「トラック」モードを外した、ジェントルで洗練された乗り味の「マスタング」と、ハイスペックなユニットと強烈な出力を誇る「シェルビー」にラインナップを分けて展開することも十分に予想されます。フォードの営業マンから電話があったらその辺の要望をフィードバックとして強調しておこうと思います(あまり関係ないのは百も承知ですが・・・)。


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2015年4月23日木曜日

ジャガー 神々しいまでの復活劇(はおそらく現実に)

  対向車線の遠くに「アウディA6」が見えると思ったらクラウンアスリートでした・・・。あれ?近くで見るとだいぶ違うので、いよいよ視力?がヤバいのかも。もしある程度は同じに見えるならばクルマなんてどれでも同じってことかも? たしかにデザインというのは不思議なもので、買う前の検討段階ではかなり神経質になったりするんですけど、いったん買ってしまったらもうそれほど気にならなくなります。むしろ買ったあとには走行性能やらフィールやらの方が乗る度にいちいち気になって仕方なかったりします。デザインだけでストレスフルな走りのクルマってはのやっぱり最悪です。

  普段は乗り味も絶好調だとしても、ふとした瞬間に「あれ?」と思う事もあります。例えば雨の日にスーパーマーケットに入ろうとしたら側溝の金属蓋の上でタイヤが滑ったら、「いよいよタイヤの交換時期では?」なんて脅迫観念にとりつかれて少々疲れます。また基本性能に十分満足して買ったクルマでも、世の中には「上には上がいる」わけで、夜中の国道246で左車線からE63AMG-4MATICにズバっと行かれた時には、自分のクルマが止まっているように感じましたよ・・・。相手がスバルWRXくらいまでなら、レスポンスの良さをうまく生かして十分に勝負できる!とは思っていたのですが、自動車専用道路で500psオーバーに遭遇してしまうと、そんな浅はかな自信(愛車自慢)があっさりと崩れさります。全長4900mmもあるラージクラスのセダンに、異次元なほどの中間加速を見せつけられて、置いてきぼりにされる自分のクルマにガッカリして「しょせん日本車だな・・・」ってむなしい気持ちになりましたね。

  昔のマツダだったら「コスモスポーツ」でAMGなんて寄せ付けない速さで返り討ちにできたでしょうが・・・。マツダも自慢のロータリー×3搭載のラグジュアリーセダンにハイブリッドを付けて発売すればいいのに!でもそう簡単にはいかないでしょうね。結局はロータリーの駆動をピュアに感じるものではなく、EVのスポーツカーに近いものができ上がりそうですが・・・。こんなこと言ってもしかたがないですが、やはり「持つもの」と「持たざるもの」との格差はデカいですね。もちろん「技術」ではなく、「富裕層ファンのリスト」です。マツダだって見込み客さえ十分にいれば、E63AMG-4MATICを黙らせる「マツダスピード・コスモスポーツRS-AWD」みたいな仰々しい名前のモデルを、日産がGT-Rを作ったような手際の良さで仕上げるでしょう。

 そんな「持たざる」マツダの無念さを晴らす?あるいは骨を拾ってくれそうなのが「ジャガー」でしょうか。イギリスが誇る超名門の伝統ブランドでスポーツもフォーマルもどちらも実績十分です。フォード傘下時代にアストンマーティンとともに「007」に登場するなど、ド派手にプロモーションされたので、経営母体が変わったいまでもアメリカで根強い人気を誇るそうです。北米へのさらなる進出を目指すマツダとしては、真剣にジャガー=レンジローバーの「買収」を検討しても良さそうです。ちなみにジャガーが使う2Lターボはフォード傘下時代にマツダが設計したショートストロークエンジンで、NCロードスターのものと基本的には同じです。

  マツダが作りたくても作れない、ラグジュアリーなGTスポーツを、決して経営基盤が安定してはいないはずのジャガーがあっさりと作っています。さらにはAMGもびっくりの加速性能を備えたモデルを複数用意して、メルセデスAMGの2枚看板で0-100km/hをポルシェターボに匹敵する3秒台でこなす「GT」と「E63・S・4MATIC」にそれぞれロックオンしているようです。2ドアGTスポーツとして「FタイプR・4WDクーペ」が発売され、本気で「最速セダン」の座を狙うモデルを新型XFに設定するようです(5LのV8スーパーチャージャー&AWDになりそう)。ジャガーが信念を持って開発した「スーパーチャージャー付きユニット」&「アルミボディ」はメルセデスを技術で上回るには持ってこいの素材です。

  これら1000万円を超えてしまうモデルももちろん凄いのですが、ジャガーがさらに日本でも拡販を狙っていると思われるのが、新開発の2L直4ディーゼル(日本未導入)を搭載したXFやXEです。すでに日本で販売されているマツダやBMWのものよりもさらに良いフィールに仕上がっているとイギリスでは絶賛されているらしいです。発売未定にもかかわらず、ジャガーの公式ホームページではすでに盛んにプロモーションが進んでいて、新型XFはスポーツ系が2グレードで、フォーマル系が3グレードの合計5グレードが、スポーツサスのスポーツシートの有無や、ホイール径やレザーシートの素材などで細かく分けられているようです。おそらくガソリンの直4・V6・V8とディーゼル直4の4エンジン×5グレードでまるでBMW並みの細かいグレード分けが実現するようです(BMWの価格表を見ていると目がチカチカしますよね)。

  ほかのブログでもちょこっと書いたのですが、年次改良を経て今月に発売された新しいメルセデスE63AMGの日本正規価格がそれぞれ100万円以上の安くなりました。さすがに1800万円を超える価格では、ジャガーFタイプR-4WDの1400万円台という脅威の価格に対抗するのが苦しいという判断のようです。FタイプR-4WDは550psなので、1800万円を超える911カレラ4-GTSの430psを完全にパフォーマンスで凌いでいて、2000万円を超える911ターボとほぼ同等のスペックです。これまではE63AMGもポルシェを視野に入れた価格設定だったのが、新たな強敵のジャガーを強く意識するようになったようです。ちなみにこの「550ps&AWD」クラスの他のモデルは、アウディRS7が1770万円で、GT-Rが1000万円となっています。やっぱりGTRがお買い得なのは間違いないですけどね・・・。このクラスのクルマをいつかは所有してみたいなぁ〜・・・。

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2015年3月27日金曜日

プジョー308が破滅気味な日独デザインに水平チョップ!

  2014年の欧州カーオブザイヤー獲得をひっさげて日本に上陸を果たした新型プジョー308ですが、そのやや保守的なデザインを見ていろいろな憶測がよぎりました。一体このブランドは何を考えているのか? 真っ当に評価するならば、「我々は安易な流行には乗らね〜ぞ!」というプジョーの熱い意志が叩きつけられているといったところでしょうか。カーメディアをにぎわす独・日の最近の新型モデルを見ていると、まるで担当デザイナーがメーカーから脅迫(何かしらの圧力)を受けているかのような印象を受けることがあります。「一目見て新型車だとわかるようにデザインしろ!」という指令は新車を売らねばならないメーカーとしては当然のことではあるのでしょうが、ユーザーの乗り換えをゆるやかに促す!といった生半可なものではなく、先代モデルを完全否定するかのような大胆なデザイン変更が目立ちます。

  そんな中でこの新型308はというと、プジョーが過激に演出したパリサロンのコンセプトカーが目指す「先端モード」とは、だいぶ逆行した印象を受けます。ユーザーによっては「ちょっと物足りない」あるいは「やや退屈」と感じる人もいるでしょうし、これぐらいが「むしろ乗りやすい」「飽きがこないのではないか?」という意見もあるでしょう。一つ考えられることは、プジョー=シトロエングループ(PSA)では、急速に広がる「プレミアムブランド」市場に対応するために、シトロエンから派生した「DS」という上位ブランド(プレミアムブランド)を展開する予定となっていて、今後はグループ内では基幹ブランドとなるプジョー車のデザインを戦略的に「控えめ」にしているという可能性もあります。

  ちょっと悪のりして、輸入車好きなライターが言い出しそうな「屁理屈」を想像して書いてみたいと思います。
プジョー308のデザインに見られる「質実剛健」な味わいはいい。最初はやや平凡という印象を受けたけど、一般ブランドの量産車とはこのようにあるべきである。同じ一般ブランドでも日本車に施される安っぽいギラつきにはいつも閉口させられる。たとえばこの308とライバル関係になる日本の最大手メーカーのモデルは、何とも品のないデザインだ。あの救いようがないフロントデザインのせいで、このクラスのインプレッサやアクセラがなかなか健闘しているのに対して相当に苦戦している。
といったところでしょうか。

  プジョー308の日本上陸が今後どれほどの影響力を持つかわかりませんが、日本メーカーの支離滅裂気味なデザインのあり方に一石を投じてくれたらいいな・・・なんて密かに応援したい気分ではあります。ト◯タのオー◯スに限らず、アクセラやインプレッサにしても現行モデルは従来(先代)のデザインからは大きく変化していて、メッキパーツを多用した分り易い演出で、よりコンセプトカーに近い洗練された印象を受けます。しかし誰かをもてなすための高級セダンでもなく、スポーツカーのような非日常な趣味のクルマというわけでもなく、ごくごく平凡で実用的なクルマという両者の素性(属性)を考えると、変に盛り込まれたデザインはやや使いにくい部分もあるのかなという気がします。

  この手の「過剰」気味なクルマは日本車に限った話ではありません。まだまだ発売前の新型車ですが、メルセデスCLAシューティングブレークという凝ったデザインのワゴンがあります。クルマの立ち位置としてはプジョー308SWの上級モデル「シエロ」と同じようなクルマ(プレミアムワゴン)になりますが、車格を考えたときにどっちのデザインがよりベターなのか?という選択の幅が、日本のユーザーに与えられているのはうれしいことです。中にはメルセデスとプジョーではぜんぜん意味が違う!という人も多いでしょうけど・・・。この2台に同じくCセグワゴンに属する「ゴルフ・ヴァリアント」「メガーヌ・エステート」「カローラ・フィールダー」「レヴォーグ」の4台を加えて比較すると、改めてプジョー308SWのなかなか味わい深い立ち位置が見えてくる気がします。

  流線型をふんだんに使って「繊細」なボディラインで彩られたメルセデスCLAシューティングブレークと真っ向から違う価値観を見せつけるのが、「骨太」なバンパーラインやサイドビームが特徴的なデザインの308SWです。フランス車かイタリア車を思わせる洒脱さを一生懸命に表現しようとしているドイツブランドのメルセデスと、古き良き時代のドイツ車(メルセデス・BMW・アウディ)のバンパーの肉厚感が目立つデザインに活路を見出したプジョーが、なんとも見事なコントラストを描いているように思えるのです。冒頭にも書きましたが、欧州カーオブザイヤーにこのクルマが選ばれたという事実に、欧州の自動車文化の伝統と誇りを見るような気がします。韓国車や日本車によってデザインの潮流がかき乱され、中国市場を意識すればするほどに、欧州車の流儀を無視するかのような革新的デザインが増えている欧州自動車産業。その行く末を案じる人々が、このクルマを大賞に選ぶことで、全ての欧州メーカーに対して警鐘を鳴らしているとしたら、とてもいい話だなと思います。

  さて日本車やドイツ車にも昔の良さを呼び起こしてくれるモデルが出てくるでしょうか?ランクル70のスマッシュヒットには、ユーザーの趣向を端的に示す要素があったように思います。しかしそんな復刻を仕掛けたメーカーが今度は看板モデルといっていいクラウンに「空色」と「若草色」の限定車を設定するんだとか。なんだかなあ・・・。

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↓かつてのプジョー車もたくさん紹介されていて、このシリーズでは抜群にいい内容です!

2015年2月8日日曜日

BMWが運ぶ「カリフォルニケーション」

  BMWはどこの国のブランド?」なんて質問はクルマ好きにとっては愚問でしかないわけですが、それではこのブランドのクルマのどこら辺がドイツなのか?と訊かれたら・・・。ある人は「機動性」と言い出し、またある人は「直進安定性」とか「ボディ剛性の高さ」を挙げるでしょう。1980年代までは大方のところその解釈が的を得ていたのかもしれませんが、現在となってはBMWが「伝統」と称して固執する「中型ボディにFR」という設計では、従来言われてきたBMWの特色といわれる「機動性」「直進安定性」「ボディ剛性」のどれを標榜するにも不向きといわざるを得ません。

  バブル全盛期からクルマに乗っている人からすれば、「腐ってもBMW(=国産よりはマシ)」という意識は簡単には抜けないでしょう。60~70代の大ベテランの自動車ライターにとってはVWやシトロエンは絶対に逆らえない「聖域」であるように、40~50代の脂の乗り切ったライターにとってはBMWやポルシェが築いた「絶対的価値観」は絶対に消えないトラウマになっているのだと思います。がしかし・・・今月の「ニューモデルマガジンX」の覆面座談会を読んでいたら、40~50代と思われる評論家達が、最新のBMWとポルシェ(とメルセデス)はクソだ!と内心に溜め込んでいたであろう「絶対」への疑問を痛烈にぶちまけていました。

  いままで散々にBMWを引き合いに出して日本車を貶めてる発言を繰り返した方々ですが、そんなことはケロリと忘れているようです。正しいことを伝えるべきだ!という良心の呵責に駆られるのは結構なことですが、ちょっと前に彼らによって散々にディスられたスカイラインやレヴォーグの開発関係者にとりあえず「ごめんなさい!」してほしいものです。そんな改心した彼らが今月号で絶賛しているのがスバル・レガシィです。彼らの訳分からない分析などなくても、今度のレガシィは十分にいいクルマだってみんなわかっていますけどね・・・。

  さて何が言いたいかというと、BMWもポルシェも彼らによって全くもって独善的に解釈されて、救いようが無いほどの毀誉褒貶を浴びせられていますが、この2ブランドの「本質」はそれとは全く違うところにある気がします。今から10年ちょっと前に、デビューしてまもなく日本のクルマ好きから袋叩きにあった「V35スカイライン」というクルマがありました。ざっくり言ってしまうとBMWとポルシェの現在地は限りなくこの日産(インフィニティ)とスカイラインが置かれている立場に近いといえます。BMWもポルシェも欧州全体を覆う「エコ」の機運に真っ向から反するクルマ作りを得意としてきました。「ストレート6」と「フラット6」がこれらのブランドの「象徴」なのですが、それらを許さないのが欧州各国や日本で暗黙の内に官民で合意された「環境意識」のようです。

  そんな息苦しさをモロに感じたであろうBMWやポルシェが、自らの意志で目指した「楽園」が「3.5L以上じゃなければクルマじゃない!」とまで放言するアメリカ市場になるのは必然です。それもドイツ嫌いなユダヤ人(レクサスを好む!)が多い東海岸ではなく、「自由」と「成り上がり」そして人種のるつぼであるカリフォルニアです!・・・と社会学者みたいなことを言ってみました。ガソリン価格の下落はとどまることを知らず、数年後には石油輸出国になると言われるアメリカは、BMWやポルシェにとってはこれまで培ってきた高性能ガソリンエンジンのノウハウを大きく生かせる最後の場所となるようです。もはやBMWもポルシェもそして日産も自らのルーツであるドイツや日本を捨てて、VW(アウディ)PSAといった貧乏くさいクルマを見事なまでに全く受け入れないアメリカへと「国籍変更」が進んでいくようです。

  ドイツ車と日本車の境界をクロスオーバーさせたようなモデルが目立つVWやマツダばかりが、やたらと高い評価を受けるようになったのが昨今のカーメディアの風潮です。そんな「ヴォルフスブルク=広島」ライン(枢軸)が作る計算づくのハイテク車が、「伝統」を重んじるBMWやポルシェを欧州や日本から間接的に駆逐した・・・という構図でいいかと思います。そんな「ピューリタン」(BMWやポルシェ)が流れ着いたのが新大陸(カリフォルニア)です。まあポルシェの親会社はVWなんですけどね。BMWやポルシェだけでなくそれらを追いかけてベントレー、ジャガー、マセラティなどが次々と流れ着いているようです。ランボルギーニやアストンマーティンはどうやら中東に新天地を求めたようですが・・・。

  「ヴォルフスブルク=広島」か?「カルフォルニア」か?

  VWやマツダに同調する姿勢をみせているのが、アウディ・PSA・ボルボ・ルノー・フィアット・オペル・ミニ・スズキといった面々で、BMWFF車や下級プラットフォームを使う(1〜4シリーズ)もどちらかと言えば、「ヴォルフスブルク」派です。こうやって括ってみるとどのブランドのモデルからも日本ユーザー目線で「使い易さ」が滲み出ています。日本でお手頃な小型車を買うならば、まずは評論家ゴリ押しのゴルフとポロを中心に、アクセラ、デミオ、スイフトといった低価格なのに全く性能でひけを取らないお買い得なモデルあり、プレミアム感を強調したアウディA3、A1、ボルボV40などがあり、さらに個性を強調したフィアット500やミニが選べます。

  「ヴォルフスブルク」派の最大の特徴(戦略)は、VW他のメーカーが揃って「クルマは走りだ!」という信念を貫き通すことで、カーメディアの寵愛を受け続けるであろうということです。実際に軽自動車(コペン含む)やミニバン、SUVといった日本で売れ筋のボディタイプと比べて、その操縦性の幅広さは圧倒的と言えます。一見シンプルに見える設計(ボディ形状・エンジンバリエーション)ですが、それによって「走り」という極めて本質的な「付加価値」を保ち続けています。

  一方で日本のユーザーが思わず尻込みしてしまうようなラグジュアリー感とボディサイズを誇るのが「カルフォルニア」派です。「ヴォルフスブルク」派のような貧乏臭い「付加価値」なんかではなく、選ばれた人の為の選ばれたクルマだけが持つ「絶対的価値」が「カリフォルニア」派の最大の特徴と言えます。バブルや高成長時代といった「宴」が完全に終わってしまった欧州や日本を追われた「流れ者」ならぬ「追放車」です・・・。もはやこれらのクルマにとって「ドイツ車」「イタリア車」「イギリス車」「日本車」といった属性は何ら意味を持たないので、いっそのこと仕切りを全て取っ払って「カリフォルニア車」でいいのではないかと思います。別に名称は「カリフォルニア」でなくてもいいですが、「中東」「六本木」「タックスヘイブン」・・・どれもピンときません。「砂埃の中」や「渋滞地獄」や「あやしげな離島」が舞台ではあまりにもかわいそうなだなと・・・。

   さて「カリフォルニア車」の代表的なモデルといえば・・・ポルシェ(パナメーラ/カイエン/991911/マカン)BMW(6シリーズ)、メルセデス(Sクーペ/SL/GT/GLなど)、ジャガー(Fタイプ)、ベントレー(コンチネンタルGTほか)、マセラティ(ギブリ/グランツーリズモ/グランカブリオ)、フェラーリ(カリフォルニアほか全モデル)、シボレー(コルベット)、フォード(マスタング)、日産(GT-R)といったところでしょうか。日本メーカーもさらに続々と参入を決めているようで、アキュラ(NSX)、インフィニティ(Q100)、レクサス(新型SC)などが予定されています。それにしてもいざ日本で乗るとしたら「駐車場」やら「燃費」やら「近所の目」やらで頭を悩ませそうなクルマばかりです。都内の超高級マンションの地下駐車場にしまっておけるくらいの余裕がないととてもじゃないですが無理ですね。


  待ったなしの少子高齢化で、様々な産業が国外脱出を図ってしまうガタガタの日本経済では、「カリフォルニア車」の比率はせいぜい1%が関の山で毎月25万台の新車販売で2000台程度は売れているようです。毎月2000台という数字が多いか少ないかは判断できかねますが、日本にも「赤坂・六本木」といった立派な「成り上がり」のスラムが形成されています。その界隈ではカリフォルニア車のサイズが駐車スペースを決めるようになっていて、超低床&ワイドボディでも難なく出入りできる地下駐車場が豊富にあるので、今後も一定の需要が続くことが予想されます。表参道ヒルズの地下駐車場に「ヴォルフスブルク=広島」車で入ろうものなら、入口の係員に「縦列スペースでもいいですか?」なんて訊かれちゃいます・・・。


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