かねてから「直4のFRなんてダメだ!」なんて生意気な主張を繰り返していましたが、いろいろ思う所があって新型になって直4モデルの限定車のみで先行販売が始まった「フォード・マスタング」に乗ってきました。最近の輸入車スペシャルティカーは最初に「限定モデル」によって市場の反応を探り、そのうえで日本での正規価格を決めるというやり方が多いです。もし限定車がさっさと売り切れて大人気ならば、正規の日本価格はさらなる利益と納車日数の短縮のためにさらに上昇していくでしょうし、なかなか売れずに残るようならばもしかしたら日本への本格導入は見送られるかもしれません。どっちに転んだとしても、なんだか日本のユーザーにとってはあまり面白くない結末がチラホラします。
さてマツダが20年以上前に設計した2.3LのMZRエンジンに、フォード自慢の「エコブースト」を組み合わせたユニットに私は興味振々だったわけですが、営業マンは少々震え声で「フォードの最新鋭のエンジンです!」と言い切っていました(笑)。それでも乗ってみると現在のマツダの「スカイアクティブエンジン」よりも間違いなく楽しいです。「エコブースト」という商標を使って「ダウンサイジングターボ」の最先端を自負するメーカーらしく、最高出力314ps / 最大トルク44.3kg・mといったスペックは、2.3L直4ターボで4.5L・V8自然吸気に匹敵するというフォードの説明を十分に裏付けています。そして何よりこの新型マスタングの最大の魅力は、欧州車相手でも負けないハイスペックな足回りに強化しつつも、価格設定もほぼ「WRX STI」「ランエボXファイナルエディション」「スカイライン350GT」といった、「馬力単価が安く」良心的価格で知られる日本の高性能車とほぼ同じコストパフォーマンスを実現している点です。
しかもこの3台の日本車よりも格段に目立つスタイリッシュで洗練された印象を放つ新型デザインは素晴らしく、この美点をきっちりと「商品力」に入れこむならば、3台の日本車を軽く超える「超絶・コスパ」のクルマと言っても過言ではないです。単純に街中での注目度は「マスタング>>>>>スカイライン>>WRX=ランエボ」くらいで、そのまま所有欲を満たしてくれる「満足度」と捉えてもいいかもしれません。日本車の常識的サイズによって縛られた3台では、アメリカンサイズに立ち向かうのは到底に無理で、まるで「日本の読モ」と「アメリカのスーパーモデル」くらいにオーラが全然違います。そして見事なのは、これだけド派手なデザイン&サイズなのに、360度見回してみてビックリなほどに細部の造形にまで隙がないです。簡単に言うとどこから見ても「絵」になります。一方でスカイライン・エボ・WRXはどうもあまり好きでない角度がありまして・・・。
あくまで個人的な感想ですが、マツダ・アテンザに新たに2ドア・クーペ版が追加されたなら、この新型マスタングに近いデザインになるような気がします。実際に見ると、マスタングもマツダの前田育男氏がデザインしたのでは?と思ってしまうほどです。今回たまたま試乗車は赤だったので、側面の雰囲気や光沢のあるボディカラーは、現行アテンザの代名詞にもなった「ソウルレッド」を余計に想起させてくれました。1920mmのワイドボディで全高が1380mmに抑えられているので、あとは全高が4400mmだろうが5100mmだろうがバッチリとスタイリングが決まります。日本メーカーがデザインコンセプトで作ってきた「日産エッセンス」「マツダTAKERI」「スバルWRXコンセプト」が車幅1900mmくらいで作ることでスタイリングを際立たせていますが、マスタングは市販車がすでにそのサイズになっています。ハッキリ言ってカッコ良くて当たり前。けれども某・日本の大手メーカーが手掛けたら一体どうなることやら・・・。変なグリルが付いて!?
今回は友人のBMWに乗って出掛けたので、愛車のGHアテンザとのフィーリングの比較にはあまり自信がないのです。外観のイメージに引きずられたかもしれませんが、運転してみるとそこかしこから、予想を超えた「マツダらしさ」を感じることができた気がします。BMWに乗る友人は「直進安定性がない!」としきりに言ってましたが、たしかに大柄なボディに似合わず、"ZOOM-ZOOM"時代のマツダ的なクイックなハンドリングです。私もまったく同様のことを感じていて、その理由として後輪サスが平行感覚に富む「リジッド」から独立担荷式の「マルチリンク」に変わったことで、FR車で直進安定性を出すのが少々難しいのかもしれません。同じ「マルチ」を使うFRであるメルセデスやBMWにはやはり「秘伝の◯◯」があって、安定性に特化したドイツ車的な作りといくらか「差」が出たのかもしれません。またフォードの現在のトップであるマーク=フィールズは、アテンザ開発時のマツダの社長を務めていた人物で、トップになる前は現在のフォードラインナップの製品化の可否を下すエクゼクティブだったこともあって、この乗り味(ハンドリング)こそが、彼が考えるなベストフィールという可能性もあります。
「アメリカ車」というステレオタイプなイメージ(偏見?)をいつまでも持ち続けることは、現状においてクルマを語る上で非常に危険ではあります。しかし今回50周年を迎えた「マスタング」はその中でも徹底したコンサバ系であり、米国・カナダ・日本・豪州の4カ国に広がるファンはいつまでもその「幻影」を追い続けている部分も大きいように思います。グアムやハワイでレンタカーを借りるなら、マスタングのコンバーティブルが定番だったりするくらいで、「V8エンジンを積んで力強く、そしてゆったりと優雅に走る」イメージがまだまだ強いはずです。かなり古いモデルには直4搭載があったようですが、今回の欧州への拡大を意図した直4ターボの再搭載には、それなりの賛否両論があると思います。もちろん日本のフォード・インポーターもどれくらいの反響があるのか戦々恐々の様子です。
このマスタングには「総合評価」なんて観点は意味を成さないかもしれません。率直に評価できる点としては「スタイリング」「価格(コスパ)」「走りが楽しい」の3つです。しかもこの3点がずば抜けて高いスコアを記録しています。もちろん細かいことを言えば、「楽しい」のはサイズからはなかなか想像できない位にダイエットした車重も大きく貢献していますし、中型車用エンジンで世界を制したマツダ・MZRエンジンがその軽快な走りを支えています。他にも先代から大きく進化していると思われるのが、インパネの高級感や、レクサスに付くようなシート・エアコン(冷暖房あります!)がこの先行限定車には標準装備されています。「マスタングにシート・エアコン」なんて完全にイメージを崩壊させる要素だと思うのですが、これが付いていて怒る人はいないでしょう。
逆に悪い点は?というと、「良い点以外の全て」です。やたらとサイズに文句を付ける人が多い日本ユーザーが、一目で諦めてしまう幅広設計がネックになります。コンビニに停車しましたが、2ドアクーペのドアを颯爽と開こうものなら、ドアエッジが豪快に隣りにヒットする姿が想像できますので、恐る恐る開けることを余儀なくされます。ちょっとデリカシーの無い人を助手席に乗せてしまったら、乗り降りの際に神経がピリピリします。そして最近のアメリカ車はというと、ドアモールを挟むほどの余裕もないほど、ドアのチリもよく合っていますし、何よりパネルの継ぎ目がほとんど目立たないデザインです。むしろレクサスRCの方がドアモールがハマってそうなドア回りの緩さを感じてしまうのは私だけでしょうか?
さて先ほど長所で挙げた「走りの楽しさ」は人によっては欠点にもなります。先ほども直進安定性に問題があると書きましたが、正直言って60km/h走行時のNVHが、マツダアテンザの90km/h走行時くらいです。そもそもFFとFRという違いでアテンザの方が優位ではあります。さらにピラーレスのクルマだとこんなものなのかな? エンジンからの振動は全く問題ない水準ですが、19インチに大型キャリパーをぶら下げる足元がどうもざわつきの主原因かと思います。デザイン重視と思われる19インチ採用はどこのメーカーでもそこそこ批判が出る部分ではあるので、このマスタングがどうというわけではありませんが、ちょっと邪推すると、マスタングであるがゆえにマツダのような欧州車的な(BMW・アウディ的な)洗練をあえて避けて、スポーツカーの領域に片足を突っ込んだ状態での市販化になったのかもしれません。ちなみに走行モードは「S」「S♯」のほかに「トラック」というサーキット用のスピンしやすい設定もあります。この「トラック」を盛り込んだゆえのNVH対策の不徹底なのかもしれません。
さらに言わせてもらうと、この新型マスタングもまた日産GT-Rが直面した「サーキット」か「高級GTカー」かという二択を迫られているように思います。日産GT-RとスバルWRXは、極めて日本人的な発想から「サーキット」と「高級GTカー」分けて2種類のクルマを販売する方向に舵をとりましたが、マスタングにも「NISMO / STI」「ピュアエディション / S4」の作り分けが必要だと思われます。もちろんそんなことは名門フォードは百も承知でしょうから、予定されている右ハンドルの発売と同時に、「トラック」モードを外した、ジェントルで洗練された乗り味の「マスタング」と、ハイスペックなユニットと強烈な出力を誇る「シェルビー」にラインナップを分けて展開することも十分に予想されます。フォードの営業マンから電話があったらその辺の要望をフィードバックとして強調しておこうと思います(あまり関係ないのは百も承知ですが・・・)。
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のっちさん、こんばんは!
返信削除お~、とうとう乗られました?
楽しいですよね~、新型マスタング!
直線番長なんて呼ばれてた時代が遠い過去のようなハンドリングでしたよね。
確かに「よく曲がる!」というよりかは「ん?ちょっと神経質かな」的な
味付けだったのは気になるところです。
BMWの何で行かれたのかによってまた少し比較する部分が変わるでしょうしね。
あれで465万ですから、高いと見るか安いと見るか(笑)
ただ、やっぱり6代目カマロですよ!
もうCTS買ってからすっかりGM党というかアメ車党になってしまいましたが
ゼータからアルファに変わったプラットフォーム(CTS、ATSと共通)、
100kg弱のダイエット、マスタング2.3には若干出力に劣りますが
2.0の直4ターボ(ATSと共通)、逆に2段多い8速トランスミッションと
GM謹製のマグネティックライドコントロール!と新機軸に枚挙暇なし、ってことで。
C7とまでは行かない価格で6.2ℓ V8を用意してくるとおもしろいですが・・・(笑)
2台とも内装も外装もお好みで、っていうクラスでしょうから、
どちらにせよどちらを所有しても毎日に張りが出そうでいいですね。
あとは、フォードもGMもイニシャルコストが抑えられますしね(笑)
かつてのマツダ地獄ならぬアメ車地獄ってとこですかww
yatsumeさんこんにちは
返信削除コメントありがとうございます。
友人は下駄クルマは絶対にMTという変人で、
休日はいつもE46に乗ってやってきます。
180の方が断然に楽しかった!といつも言っております・・・。
マツダvsオペルの欧州向けエンジン対決が、
北米スペシャリティで実現するなんて
どう受け止めてよいものか・・・。
マリブとフュージョンはなんで日本に来ない?
ATSも相当に価格抑えている?ので差別化が難しそうですね。
マスタングは直4でも人気のようで嘘か本当かわかりませんが、
ブラックとガンメタ以外は売り切れと言われました。
デザインが優れていて、日本の風情と親和性が高いみたいで、
年配の夫婦が隣りのテーブルで予約入れてました。
GMとキャデラックはちょっと日本では浮いてしまう気がします。
マツダをパクったC5デザインは好きでしたが、
C7はなんだか無国籍な香りがするデザインが気になったので、
ググったところ新興国のデザイナーを抜擢したらしいですね。
カマロも機会があったら乗りに行きたいと思います。
のっちさん、こんばんは!
返信削除C7のデザイナーですか?
カーク・ベニオンとトムなんとかだったと思いますが?
半島の何某の話であれば、デザインチームには
多様な国籍の方がおられるでしょうから、ことさらにあげつらうのも。
デザイナーなんてブランドブランドで流動的ですし、加えてその時々のPTなんでしょうし。
E60(独)もデザイナーがアルカンジェリ(伊)かバングル(米)かどっちだ?
なんてマニア向けクイズみたいなモンですし。
あれは明らかにバングルデザインですが、アルカンジェリがそれに寄せた?寄せてない?
なんて言ったってそれを突き止めて喜ぶのはカー〇チぐらいなもんでしょ(笑)
C7が無国籍ですか?
あざといくらいに過去のアイコンをふんだんに取り入れつつ、
C7が911あたりと伍していくために機能を優先したマニアックすぎる
デザインは私には物凄い熱量を感じますけどね。
アメリカ車に見えないとしても、どこからどうみてもコルベットにしか見えません。
無国籍という言葉がどこの国のものかわからないという文脈で使われているのであれば
それは我が国の車にこそ相応しいと思います。
無国籍というより無国籍テイスト止まりですが。
一部のモデルは半島産、もっと言えば大陸産より格段に劣ると確信してます(笑)
確かにキャデラックは浮きますね~w
まぁそれが良いと言えばそうなんですけど。
明日たまたまディーラー行くんでC7また乗りたい・・・
完全無欠なんですよ、ホントあれ。五感にガシガシ来ますよ!
一度脳天にトールハンマー、くらってみてください!
180をみてついA180だと思ってしまいました・・・
んなわけねーだろって(笑)
yatsumeさんこんにちは
返信削除すいません、読み返してみてもわかりづらいですよね。
180SXからE46に乗り換えたということです。
別に無国籍だからダメっていうのではなくて、
歴代のコルベットが日本でも受け入れられた要因として、
C5がFD3Sを、C6がNSX後期のデザインをリスペクトした点が、
かなり好意的に評価された結果だと思うんですよね。
今回はR35GT-Rをリスペクトする!なんてことはなく、
独自路線を進んだことがどう評価されるか?が気になります。
C7コルベットは納期がずっと先なのかと思ったら、
登録未使用車が850万円で即納で手に入るみたいですね。
だいたいケイマンSと同じくらいの市場評価です。
スポーツカーとしては別の個性を持つ2台が
ほぼ同じ価格で釣り合っているのはなかなか興味深いです。
この2台もぜひぜひ乗り比べてみたいと思います。
のっちさん、こんばんは!
返信削除そうなんですよ、C7案外と捌けないらしくて(笑)
CTSで御世話になった営業さんで在庫車なら850なんてまだまだ序の口!
土曜は久々に東京で過ごしてまして、
家族は買い物に放ち、1人でディーラー巡りしてました。
目玉はBMW i8でして、Japanの広報車らしいんですが、
ぐるっと乗せてもらうことが出来ました。
試乗車じゃないので御内密、らしいですが。
2000万もする車なので私なんぞが言うことはないんですが、
悪い所だけ挙げるとすると、「サスの突き上げ」と「ロードノイズ」、
「直6を模したと思われる合成音」が全く響かないってトコですかね。
鼻先も軽く、同様にステアリングも軽く、車幅を除けば扱いやすく、
本当に失礼な話でしょうが、ちょっと普通の車でした。
BMWと言われても、もうあれではどこのメーカーが出してたっていい気がしますね。
日曜はS7でした。試乗車はつい先日マイチェンしてしまったので
先代といえば先代になるんですかね。
現行も置いてありましたが、はっきり言って違いがほとんどわかりませんし、
ライト周りにいたっては先代のほうが好みです。
全高はi8の方がかなり低いですが、全幅はほぼ同じ、全長はs7の方が長く、
総じてかなり大きく感じます。
また出足は2トン超えということもありマスの大きさを感じます。
しかしそれも数秒(数瞬?)のことで後はV8が吼えまくります。
といってもエンジン先行ということもなく、クワトロが地面をしっかり噛みますので
フラットでしかも早く、そして静かで快適という次元につれてってくれます。
で価格が在庫車ってことで相当キてました!家内も驚いてましたよ(笑)
オプションがてんこ盛りだったことを考えると、差額でホンダの軽スポ余裕で買えます!
そのあとC7乗って、勢い駆ってフォード行って、現行マスタング乗ろうと思ったら
ストックヤードの先代5.0マスタング薦められて、「やっぱV8いいよね」と相なりました(笑)
黒ストライプ入った真っ赤なコンバチで低年式の先代後期、走行僅少、値引きして込み400万!
乗り味はじっくり吟味すれば粗ばかりですし内装も古き良き(?)アメ車ですが、そんなのは
ホントどうでもよくなるくらい気持ちのいい車ですね。
アイドリングの排気音でもう痺れちゃいますし、税金とか燃費とかどうでもよくなります(笑)
ケイマンとかもいいんですが、やっぱ上がいますしね・・・
ケイマンが好きで乗ってる人もプアマンズポルシェの謗りはどうしても免れないって
言ってましたし・・・(その人は「あえてケイマンなんだ」と言い張るんですけど)
ケイマンGTSくらいなら言い訳(?)も立つんでしょうが・・・
金辰や大黒で連れと走るならやっぱベットのフルカスタムですかね~w
じゃないと暴れ牛と跳ね馬にはオーラで敵わないです・・・
yatsumeさんこんにちは
返信削除コメントありがとうございます。
いや〜豪華なクルマばかりでため息が出ますね!
いくら在庫車だからといってもS7ですから大台を切るなんてこともないですよね。
トヨタの社長が「RC-Fは一般人でも背伸びすれば所有できる!」
みたいなことを言ってましたが、
現実に30歳代半ばではなかなか手が出ないですよ(yatsumeさんはすごい)。
なんてしみったれたこと言っていてもしょうがないので、
自分も近々乗ります!とでも言っておきましょう(いや無理かな)。
ケイマン買って「プアマンズポルシェ」とか言われるのキツいですね。
そもそもはマツダRX7の「FC3S」がそういわれていたと聞いたことがありますが・・・。
なんかポルシェは911の方がヒエラルキーがあるような気がします。
996とかデザイン的にもちょっとアレですし・・・。
911のブランド価値を考えればもっと996も中古車市場で人気でもよさそうですが、
少なからずダサいと感じる向きがあるのではないかと思っています。
空冷ばっかりが異常な価格上昇が続いているそうですね。
確かに湾岸線はコルベットを結構見かけますね。
都心臨海部に高級マンション買っちゃったら
とりあえずコルベットかGT-Rくらいにしておこうってなるんですね、たぶん。