2014年10月31日金曜日

マセラティ・ギブリ が レクサスLS を超える日

  いくら「世界のトヨタ」といえども、気合が空回りしてしまいライバルに負けることもしばしばあります。最近の顕著な敗北例としては・・・全くやる気が見られなかった2012年FMCのオーリスが挙げられます。このクルマはトヨタが目指してきたCセグHBを日本市場で普及させるプロジェクトの系譜を引き継ぐはずの一台ですが、そんな目標があったなんて今では誰も信じないでしょう。それでも欧州ではゴルフやフォカスを押し退けてそこそこ売れたようですし、BMWのディーゼルを新たに搭載して今後さらなる飛躍を目指しているようです。

  このオーリス以上のトヨタにとっての誤算は、自信作だったはずのレクサスISが現在のところ3シリーズを販売台数で上回れていないことかもしれません。「猫に小判」・・・は言い過ぎかもしれませんが、「3シリーズの松◯宏」と「Cクラスの河◯ま◯ぶ」といえばお分かりのように、ライバル車に乗るような人々の多くは、クルマの良し悪しなんてまるっきり分らない、単なるトヨタ(日本車)嫌いが多かったりします。この両ライターは普段から国産車/輸入車を問わず評価するポイントがどうもブレブレな気がします。それぞれ3シリーズやCクラスに何を感じたのか?も全く不明ですし、レクサスISやスカイラインへの評価はほぼ言いがかりのような愚論ばかりでした。河◯ま◯ぶに至ってはスバルWRX・S4を上質と言い切ってしまうほどの筋金入りのクルマ音痴?です。強烈なのはyoutubeのインプレで、S4に乗って「これはもうSTIは無くてもいいんじゃない?」というかなり重症な"迷言"を残しておられます。

  トヨタが考えたようにドイツ車をしっかり研究し、それを全面的に上回るクルマを適正価格で発売さえすれば、3やCからシェアが奪うことは難しくない!というのはとても自然な気がしますが、やはり日本のユーザーを買い被りすぎだったようです・・・。トヨタらしくないマーケティングの読み違えとも言えますが、やはりこれまでトヨタがやってこなかった、ドイツ車を超えるといった新しいことをすると予期せぬ障害が発生するものなのかもしれません。しかし「レクサスISの掲げる崇高なコンセプトをまともに受け止められない日本のユーザーにがっかりです」・・・なんて開発主査に敗者の弁を吐かれるのは、1人のクルマ好きとして残念極まりないです。そして発売したばかりのRCの開発陣も日本市場には全くといっていいほど期待などしてないことでしょう。そもそも4シリーズが全く売れてないですから。

  さてオリジナル・レクサスとして知られる最上級モデルの「LS」も初代の登場からちょうど四半世紀が経過し、デビュー当時はアメリカ人ジャーナリストが「夢のクルマ」と評して熱狂したコンセプトもだいぶ風化してきました。常にこのジャンルをリードする存在の「メルセデスSクラス」は別格としても、経営危機にさらされながらも北米市場に支えられた「ジャガーXJ」をはじめ、「BMW7シリーズ」「アウディA8」「日産シーマ」といった登場から20年あまり経過したラグジュアリーセダンはいずれも瀕死の状態です。

  新興勢力としてはマセラティから2004年に復活を果たした「クワトロポルテ」、そして勢いを増すVWグループからは2009年に登場した「ポルシェ・パナメーラ」が、ブランド力を生かして北米で短期間の内に市民権を得ました。これらの次世代のコンセプトを標榜した、セクシィかつエレガントな魅力を持つ新型ラグジュアリーサルーンが台頭してもなお、レクサスLSは北米でもSクラスに次ぐ地位をしっかりキープしましたし、日本ではSクラスを追いやって夜の銀座や北新地といった一流の繁華街における代名詞的存在になりました。しかし昨年にマセラティが新たに発表した「ギブリ」が出てから、北米でも日本でもレクサスLSの地位が脅かされるようになりつつあります。ギブリのベースグレードの800万円台という価格設定がウケたようで、ギブリ単独でもアメリカで月販4桁!日本でも3桁!という驚異的な成長を遂げています。

  アメリカでのLSは現在は月販で500~700台程度で推移しているので、完全にギブリに抜かれてしまいました。このままギブリ>LSの関係が続くかどうかは不明ですが、カンパニーカー全盛の時代に設計されたLSと、ニューリッチなマーケットを狙ったギブリでは、やはりクルマのアピールする部分が大きく違いますし、個人ユーザーが所有欲を満たすとするならば・・・ギブリにやや分があるかもしれません。ちなみに北米での価格はLS(V8)が$72,000〜でギブリ(V6)が$67,000〜となっていて、ほぼガチンコといっていい価格帯です。ちなみにアメリカのSクラスは全てV8かV12なので、$94,000~と破格です。やはりイタリア車の魅力には逆らえない・・・といったところでしょうか。

  レクサスは日本で発売を開始したNXを、北米でも発売する予定で、北米レクサスはいよいよ4サイズのSUV展開(NX、RX、GX、LX)で、ドイツ勢(とくにBMW)を出しぬく構えのようです。アメリカ市場のナンバー1プレミアムブランドの座をめぐってメルセデスとBMWの後ろからレクサスが猛追していて、アメリカの現在のトレンドを考えると、SUVの売れ行きがこの勝負を決する最大のファクターであることは間違いないです・・・。たとえメルセデスやBMWをブランド全体での販売台数で上回ったとしても、ブランドの原点である「LS」が、まだ出て来て日が浅い「ギブリ」のようなライバル車にあっさり負けてしまうならば、レクサスの末長い繁栄は望めないでしょう。やはりどんなブランドでも、これだけの情報社会を生き残るには、絶対に他ブランドに負けない長所が必要ですし、25年前のブランド立ち上げから一貫してレクサスのクルマ作りの正統性を証明する存在はやはりLSだったわけです。

  それにしてもデビュー当初はどうも違和感があったギブリですが、マセラティが大好きな日本の国民性を反映してか、ドイツ車や日本車からの乗り換えが殺到しているようです。エクゼクティブ・サルーンとして「S」「LS」「XJ」「クワトロポルテ」「パナメーラ」よりも慎ましく、「GS」「E」「5」「7」「XF」「シーマ」「フーガ」「マジェスタ」よりも華がある、なんともジャストフィットな質感と感じているオーナーも多いと思われます。ドイツや日本のメーカーにもこれに対抗する艶やかな高級セダンを期待したいです。


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2014年10月24日金曜日

新型プジョー308・・・何か吹っ切れた感が。

  クルマ雑誌を見てるとしばしば「最大の激戦区のCセグ」と書かれていることが多いです。しかし世界最大の市場であるアメリカでは明らかにDセグの人気が先行していますし、日本を始め欧州では販売の中核を占めるコンパクトカーの主流はBセグに移りつつあります。Cセグはアメリカでも欧州でも中国でもそこそこ需要が確保されているので、グローバルで見れば最量販ジャンルになるのでしょうが、こういう「薄く広い」売れ方をしてしまう現状では、どうしても最大公約数的なクルマ(=駄作)が多くなってしまう気がしないでもないです。

  かつてはCセグ車がメインだったWRC参戦モデルも今では完全にBセグになっています。WRCを勝つのに必要な設計が織り込まれたベース車になるインプレッサやランサーは数年前までは世界各地でコアな人気を誇りました。ドイツでもアメリカでも日本の陸軍機を作っていたスバルと、海軍機を作っていた三菱は、BMWと並ぶ「戦場を駆けたエンジン」の自動車メーカーとして畏敬の念で敬われていたようです。しかし今ではインプレッサもランサーもBMW318ti(現1シリーズ)も、ブランドを牽引するような魅力はすっかり失われてしまいました。

  WRC(Bセグ)と独DTM/日スーパーGT(Dセグ)の狭間にあって、オーバースペックな設計などは特に要求されなくなったCセグの水準は、数年前からどうやら停滞している気がします。例えばトヨタがスーパーGT用のベース車として設計したレクサスRCは、クラスの頂点に立つISをさらに強固にした車体剛性を持つようですが、CセグのレクサスCTやオーリスにはそんなこだわりは一切見られません。そしてライバルの日産もそれに対応するように、自然とスカイラインをハイクオリティに仕立ててしまう一方で、Cセグのシルフィにはそのクオリティがほとんど反映されていない気がします・・・。

  またスバルを見ていても、WRCから撤退して以降は中核のCセグモデルがどんどん説得力を失っています。ブランドイメージを牽引するはずの「WRX」が新型ではグレードによって巧妙にエンジンを載せ分けていて、大雑把に言うとこだわり過ぎの「STI」に対して、ちょっと主旨がブレている「S4」の2グレード併存になりました。たとえ筋金入りのサーキット派に嘲笑されようとも、もし良いクルマだと感じれば「S4」を買ってみようと思ってディーラーまで出向きましたが、結局のところスバルは何がしたいのかさっぱりわかりませんでした。確かにすっかり覇気の無い他ブランドのCセグ車の中では、完全に頭一つ抜けた存在なのでしょうが、「操縦性(小型)&機動性」というコンセプトから期待するような「身体との一体感」は、残念ながら他ブランドのクルマに負けているように感じました。

  今もWRCに参戦しているVWや欧州フォードが突き進むペースと比べてスバルの「エンターテイメント性能」の進化にはいささか疑問があります。明確な目標を失うと日本のクルマ作りは「弱い」と言われますが、今のスバルにはそんな危険な空気包まれている気がするのです。自らのブランドコンセプトの成長のためにもモータースポーツに復帰して得られることは多いと思います。WRCをきっかけに世界的にスポーツブランドとして知られたわけですから、やはりBセグ車を開発してラリーシーンに戻ってくるくらいの気概を見せて欲しい気がします。

  現在ではスポーティなグレードが次々と作られるのは、WRCを通じてクルマ好きに好印象を与えているBセグが圧倒的に多くなっています。特に1.2と1.6の二本立てのエンジン構成になっているPSA(プジョー・シトロエン)は、各メーカーのCセグのスポーツモデルが到達しつつある300psを達成するのが困難ということもあり、旧型308をベースにしたRC-Z以外はBセグの208をベースにスポーツグレードを展開しています。208はライバル車はVWポロ、フォード・フィエスタと合わせて欧州市場の「コンパクト御三家」を形成していて、ここに食い込もうとする韓国勢や日本勢にもかなりの意気込みを感じます。フィエスタの同プラットフォームのデミオを始め、トヨタ・ヤリスも欧州もモーターショーで「本気のトヨタ」を見せつけています。

  一方でCセグはというと、一般グレードはともかくスポーツグレードに関してはBセグよりもはるかに地味になってきた感じがします。少数の勝ち組であるルノー日産(メガーヌRS)とVW(ゴルフR)の争いにホンダ(シビックtypeR)が再び参戦を予定する形でまだまだ盛り上がってはいますが、スバルはWRXのHB化を放棄し、マツダもMSアクセラの開発に後ろ向きだったりと、グローバル8(米3強・日3強・ヒュンダイ・VW)以外の大衆ブランドでは安易な参入が難しくなってきているようです。そこにKYなメルセデスが豊富な顧客名簿を武器に「A45AMG」というアルマゲドン的なモデルを投下し、VWがアウディブランドで迎え撃つ構えを見せています。もはやFFのままではどうにも出来ない400psの水準までパフォーマンスレベルが跳ね上がってしまいました。

  こうなってしまっては、もはやクレイジーなドイツメーカーとコンプレックス丸出しの日本メーカー(日産とホンダ)以外は全面撤退しかないですね。日産はジュークに続いて、パルサーにも「VR38DETT」を積んで、小賢しいメルセデスやアウディを踏みつぶす!かもしれません。ただしエンジンだけで380万円するそうですが・・・。噂によると欧州フォードもナンバー1ブランドの意地というか、エコブーストエンジンの宣伝も兼ねてフォーカスの400psモデルを作るみたいです。こんなわけの分らない「モンスター」が乱立してしまっては、PSAやスバルやマツダが「やってられるか・・・」とへそを曲げてしまう気持ちもわからないではないです。

  しかし日産とは全く思考回路が違う「優良企業・トヨタ」はすでにCセグにおいては新しい方針で動き出しているので、今後は業界全体に影響を与えていくかもしれません。トヨタは一時期は欧州へ本格展開するために、ハッチバックの開発に執着していましたが、その成果が実らないままに高性能モデルのブレイドを廃止して、オーリスに関しても過度なハイパワー化には否定的な立場をとっています。トヨタの優秀なマーケティング部門はすでに「オワコン」となった高性能Cセグに完全に見切りをつけた模様です。Cセグを過度に高性能化して500万円を超える価格で販売したところで、ユーザーは満足できないでしょうし、存在価値を敢えて探すならば、最も優秀なモデルを作ったメーカーにとって広告塔になり得るという、作る側のエゴでしかないです。

  そんなトヨタが作る潮流に乗っかって日本にやってくるのが、BMW2シリーズグランドツアラーとプジョー新型308で、どちらもこれまでのブランドイメージを打ち破る「エコ」で「コンフォータブル」な日本車(特にトヨタ車)のような装いが特徴です。多少語弊があるかもしれませんが、初代プリウスのサイズをトヨタが決めて、その運用に必要な過不足ないパワーを可能な限り経済的に配分した「パッケージの美学」を、欧州きっての伝統のブランドといえるBMWやプジョーがトヨタをリスペクトして作ったクルマのように感じます。

  新型308はプジョーが現在製品化できる最もエコなパッケージを採用しつつも、プジョー車のプライドとして全グレードに「ドライバー・スポーツ・パッケージ」というものが付いてきます。これはVWでおなじみの「Sモード」と同じようなものみたいです。最上級グレードにはPSAの得意技であるパノラマミックウインドーが付きます。1.2Lターボですから絶対的な動力性能は大したことはないでしょうが、欧州ブランドの意地と、PSA車のアイデンティティが備わって300万円台前半ですから、なかなか貴重なクルマと言えるかもしれません。内外装のデザインもとても洗練されたものとなっていて、アクセラ登場で"ワーキャー"言っていたのが、だいぶ昔に感じられるほど進化のスピードは早くなっています。マツダと同じで倒産の危機に晒されたPSAだからこその思い切りの良さも随所に感じられます。日本COTYではデミオの前に敗北しましたが、この新型308は割と日本人の感性に寄り添うクルマに仕上がっている気がします。


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2014年10月17日金曜日

ボルボに何を見出すか?

  ボルボは輸入車にとっては厳しすぎる日本市場で、日本車とドイツ車の狭間でなんとか日本でも存在感をアピールしてきましたが、最近ではかなり危機的な状況を迎えつつあるようです。昨年の始めにV40を投入して、輸入車によるCセグHBブームの一端を担うほどに注目を浴び、ゴルフやAクラスを相手にも健闘しました。ただし廉価モデル発売によって、上級モデルのシェアも相当に喰われてしまったようで、V40以外に目立ったヒット作もないまま、ドイツ車と日本車の怒濤の新型モデルラッシュの中に潰され、ブランド別ではBMWミニにあっさり抜かれてしまいました。月販1000台という日本市場のメジャーブランドの基準も割り込むようになり今後の展開がとっても不安です・・・。

  「autocar」の森慶太というライターが最新号でボルボS60を絶賛していました。ライトウエイトスポーツに対して惜しみない愛情を注ぐというイメージが定着している森さんですから、割と軽めのFFサルーン、しかも電動ステアの熟成が進んだだけというシンプルな設計というだけでツボに来たようです。ほめ言葉に困ったのか、それとも本心かはわかりませんが、やや過激にも同クラスのドイツ車よりも乗り心地が確実にいいぞ!みたいなことを仄めかしていました。話題沸騰の新型Cクラスを引き合いに出して、Cクラスは期待してるけど作り込みがまだまだこれからという段階なので、S60とCクラスによる1.6Lターボの対決も現状ではボルボS60にかなり分があるのでは?というS60にとっては価値ある専門家のお墨付きが出ました。

  80年代に登場した国産スポーツを愛して止まないライターが、ユーザー目線になって楽しいクルマをリサーチして、「これは凄くいいですよ!」とオススメしている姿はなんだかとても好感が持てますね。「ユーザー目線」でクルマを考えた時に、最近の傾向としてモデルサイクルがどんどん短くなって、発表から半年後にはどのカーメディアの話題にもならなくなってしまう「消費型」の新車発売スタイルでは、果たして価値あるクルマに出会う機会を増やすことができているのか?という疑問も湧いてきます。熟成させる猶予が与えられず、最初の段階での売上で企画の正否が決まってしまうせいか、クルマの開発も「話題作り」ばかりが過熱している印象です。某輸入車ブランドが「車内ワイファイが付きました」とかどうでもいいことを吹聴してるのを見て、クルマの本質には無関係だし、スマホ片手に運転する不届き者が頭に浮かんだ人も多いのではないでしょうか。

  とりあえず新しく出てくるクルマには何かと"つまらない機能"が付いてきて、そんな新機能を1度も試すことなく廃車になっていくクルマもたくさんあると思います。この点はプレミアムブランドほど迷走の度合いは大きいようで、例えばランフラットタイヤのような不要物(少なくとも日本では)が付いてくれば、ロードノイズが高級車の魅力を半減させ、コンパクトカーよりも乗り心地が悪いなんて散々に言われてしまう羽目になります。しかしライターが「もっとシンプルにユーザーの期待に応えるクルマをつくれないのか?」なんてオブラートに隠さずにぶち上げようものなら、メーカーが裏から手を回して業界から抹殺される恐れもあると思います。その結果として「魂を売り渡したイエスマン」ばかりが寄り集まって、震えた手でレビュー書いてる構図が浮かびます。

  こんなに問題が山積み、厳しく言えば"腐り切っている"高級車市場では、全体的にも規模は伸び悩み、その中で地味なボルボがフェードアウトしてしまうのは、やはり自然の摂理なのでしょうか。スバルとともにエマージェンシーブレーキの先駆的存在だったボルボは、常にクルマの本質に向き合って「質実剛健」(ドイツブランドが忘れつつあるアイデンティティ?)を今も表現できるクルマ作りが実践されているようにも思います。旧フォードグループのプラットフォーム(EUCDとC1)を今も使い続けるボルボですが、どちらの設計からも幾多の名車(初代アクセラ、レンジローバーイヴォーグなど)が生まれていて、最新のメカニズムにも十分キャッチアップできるだけのポテンシャルがあるとは思います。

  マツダの旧型と同じ設計と言われるとちょっと有り難みが無いかもしれませんが、マツダの最新のスカイアクティブシャシーは、ユーザーというよりもむしろメーカーにとってかなり"恣意的"な設計になっていて、先代までのマツダが誇った高性能ダンパーが組み込まれた足回りはやや影を潜めるなどネガティブな部分が噴出しています。ちなみにアクセラは初代が最もハンドリングが優れているという評価もあるくらいです(中谷明彦氏)。実直なクルマ作りで評価されているマツダやスバルにしても、絶えず経営危機と隣り合わせであった期間が長く、年産100万台規模のメーカーともなれば当然のことですが、コスト優先の設計に走る部分があちこちに見られます。その一方で「話題作り」のための宣伝費を多く計上している一面も見られたり・・・。

  やや誇張気味のニュアンスがあるレビューを真に受けるわけではないですが、ここまで森さんに言わせてしまうボルボの魅力の一つとして、旧世代の設計のポテンシャルを信じて愚直なまでに熟成させている点があると思います。新しいクルマの設計がなかなか受け入れられない・・・というのはクルマ好きが本能的に持つ感覚であって、日産やホンダは過去の栄光を惜しむファンの声が多いですね。最近ではBMWでも新型モデルが受け入れられないなんていう声が強くなってきました。森さんのレビューに全面的に同調できるユーザーにとっては、ボルボの存在価値は"残された聖域”という意味でまだまだ注目すべき点は多いように思います。


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2014年10月3日金曜日

パリモーターショーで地元プジョーが熱い!

  欧州で開催されるモーターショーはやはり出品されるクルマの質が違いますね。東京MSなどは日本の閉鎖的な市場が嫌がられているせいか、輸入車ブランドはまったくやる気なしですし、中国やアメリカのショーに出されるクルマはやたらとデカいセダンだったり、不思議なデザインのSUVだったりで量販モデル中心の即売会みたいですが、パリモーターショーは知性がキラリと光る気の利いたクルマが目立ちます。魅惑のカーライフを想像させてくれるモデルがこれでもか!とばかりに出てきます。ランボルギーニもフェラーリもワールドプレミアモデルを用意してますし、あらゆる価格帯のクルマが眩しく見えます。

  「BMW2クーペ・カブリオレ」なんて久々のBMWの快作じゃないでしょうか?最近はやたらと所帯染みたモデルが多くてブランドの重みがどんどんすり減ってしまい、おまけにBMW-USAが仕掛ける亜種モデルが日本にもどんどん輸入され、買った人はドイツの本社は関係ないシロモノだったとあとから気がついて激怒しそうなモデルが普通に販売されてます。新しく登場したX4とかいくらなんでも明らかにデザインがオカシイですよね、もちろん欧州では一切作っていないUSA企画モデルです。それに引き換えBMWらしい知性を持っている唯一といっていいクルマがM235iなんですが、やはり全てが大型化した時代にハードトップ3BOXスタイルで4500mm前後の全長で、車幅も1750mm程度に抑えられていると、やや迫力不足で650万円という価格を考えると二の足を踏んでしまいます。この「カブリオレ」はそんなネックをスペシャルティカー仕様というBMWの得意技でいい感じに解決しているように思います。

  「アウディTTスポーツバック」もここのところヒット作に恵まれず低調なアウディを救う救世主になりそうな輝きがあります。アウディの期待を一身に背負って登場したA3セダンですが前述の4500mmのハードトップ3BOXの例に漏れず、しかも1.8ターボで500万円というゲロゲロな日本価格を見せられると、やはりこのクルマで500万円(スカイラインHV越え)というハードルを超えるのは、それなりにクルマを知っているとなかなか無理だと思います。スバルWRX S4が400万円で買えるわけですから・・・。もっと所有欲を刺激してほしいわけですが、アウディもA3セダンの企画不足を痛感しているようで、仕切り直しといったニュアンスで、TTの派生モデルを5ドアHBで作ってきました。確かにTTの魅力は2ドアにある!というTT愛好家の意見もよくわかりますが、これはこれでかなり凄いことになってます。2Lターボ400psという欧州版ランエボ級のハイスペックにも関わらず、モード燃費が18km/Lを超えていて、もうどうなっちゃってんの?とただただ驚くばかりです。

  そしていよいよポルシェ以外のVWグループ(VWとランボルギーニ)からもPHVモデルが続々と登場してきました。これで日本の国沢光宏氏を始めとした「ダウンサイジング・ターボ信者」ライター様と彼らの"妄言"を"盲信"した愚かな欧州車大好きな皆様が、トヨタやホンダの深謀遠慮にやっと気がつくことになるでしょう。「VWグループのハイブリッド元年」(=トヨタ・ホンダの特許ライセンス切れ)がやってきたことを素直にお祝いしたいと思います。現行のNOx吐きまくりの1.2L&1.4L直噴ターボでは間もなく販売できなくなってしまいます。そしてユーロ6で欧州メーカーの小型ディーゼルが全滅するようなので、このまま何もしなければ小型車に関してはアクア・フィットHV・デミオディーゼルが絶対的に優位になっちゃうわけですが、欧州メーカーも必死で次世代のコアとなる新型動力源を検討中のようです。

  そもそもダウンサイジングターボは、日本メーカーのように良質な鉄鋼が使えないため、クソ重くなってしまう欧州車を誤魔化して走らせるための窮余の一策に過ぎません。前々から思っていたのですが、ハイブリッドvsターボという対比には何の意味もなくて、軽量化技術vsターボと捉える方が正しいです。そもそもカーメディアが「ターボの本質」をわざと伝えないようにしていることが最悪なのですが、それを鵜呑みにして「ターボこそ最先端」と信じて疑わない困った文系のオッサンがクルマ好きには多いんですよね。他人のブログにずかずかとやってきて「今やターボが常識です!」みたいなことを言ってくる方が結構いましたよ。なんでクルマユーザーなのに自分からクルマを学ぼうとしないのですかね。

  さてそんな話はどうでもいいのですが、久々にプジョーが良さげなモデルをいくつも"炸裂"させてきました。RCZの発売以降、深刻な経営危機に陥ったこともあっていまではすっかり東アジア資本の助けを得る格好になっているのですが、倒産をなんとか免れて心機一転というか再起を期したようで、かなり弾けたモデルが出て来ました。まるで2003年頃に経営危機のど真ん中にあった某日本メーカーを見ているようです。欧州COTYを獲得した新型308はまもなく日本でも発売になるようですが、ゴルフとアクセラが他を寄せ付けないせめぎ合いをしている日本市場ではちょっと厳しいかもしれません。しかし今回発表された新型508は「こういうセダンが欲しかった!」という端正でフォーマルかつ美意識のとても高いデザインになりました。日本にNAモデルで勝負してくるならなかなか面白いと思います。

  508がフォーマルなのに対して、スペシャルティカー路線をどこまでも突き抜けたのが、コンセプトクーペの「エグザルト」で、308のスペシャルティカーが「RCZ」ですが、これと同じくらいに"濃い"デザインが魅力です。プジョーは経営危機が訪れる前に一度「クーペ407」というモデルで、「スポーティな大衆ブランド」の枠組みを突き破って「ラグジュアリークーペ」として高い理想を掲げたのですが、志半ばで頓挫してしまいました。これは日本のユーザーにとってはなかなか悲しい事件で、今やレクサスRCとかいうイモっぽい国産2ドアが平気で600万円オーバーとか値をつけてますが、これがぜんぜん優雅じゃないし、なんだかやたらオタクっぽいスタイリングしてます。本体価格569万円だったクーペ407は今でも街でお目にかかると、時間が一瞬止まるようなもの凄いオーラ発しています。メルセデスSLなんか見てもなんとも思わないのですが・・・。この価格でここまでの存在感を発揮するモデルは奇跡ですね。マセラティグラントゥーリズモや先代6シリーズに匹敵するような凄みすらあります。映画「TAXI」シリーズが好きな人ならば、あのプジョー独特の色合を見せるあのシルバーの塗装とシステマチックにスポーティなグリルデザインを見るだけで大興奮するはずです。

  クーペ407が凄過ぎたので、現行のやや腫れぼったく膨らんだ508セダンは、どうも好きになれませんでした。やはりプジョーは膨らんじゃだめですね、ソリッドなイメージじゃないと許せないです。新型308はアクセラ風味にぷっくらしちゃってますが、新型508とエグザルトはパネル面に緊張感がみなぎるようなタイトさをひしひしと感じます。508は新たにクロスオーバーも同時に発表されたのですが、膨らむ路線をそちらに切り離すという解決は素晴らしい英断だと思います。そしてクーペ407の系譜を継ぐモデルとしてエグザルトのデザインがとてもいいです。マツダの現行デザインの元祖と言うべきコンセプトカー「SHINARI」は今見ても研ぎ澄まされたデザインが魅力ですが、エクザルトのインパクトはSHINARI以上で、このド派手なスペシャルティモデルをどうやら本気で市販するつもりのようです。

  マツダにしろプジョーにしろ経営危機に陥ったメーカーは恐ろしいことを考えるものですね。いかにも年配のオッサンが喜びそうなデザインに陥っているBMW・メルセデス・アウディのモデルはどれも退屈極まりないです。プジョーやマツダの方がよっぽど高度なデザインを駆使して、若いユーザーのイメージを上手く掻き立ててくれるソリッドでハイセンスな輝きに溢れてます。輸入車ユーザーがアテンザXDやWRX S4へとかなり流れているようですが、「国産車はちょっと・・・」という見栄っ張りな人々の前に、本気のプジョーがクリーンディーゼル載せて価格を抑えて上陸したら日本でも勝算は十分な気がします。


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