2016年12月21日水曜日

アルファロメオ と ミドルBIG「3」

  今年もいよいよ「輸入車ガイドブック」が届きました。何と言っても残念なのがフォードの日本撤退で、当然ではありますがフォードとリンカーンは掲載されていません。昨年版から新たに追加になったブランドはスウェーデンのスーパーカーブランドのケーニッグセグです。全39ブランドの内で平均価格が2000万円を越えるスーパーブランドは、ケーニッグセグの他にフェラーリ、ランボルギーニ、ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティン、マクラーレン、ルーフ、パガーニ、ラディカルの10。全体の4分の1が「とりあえず用がない」ブランドだなんて・・・。

  他にもマセラティ、BMWアルピナ、テスラを始め、キャデラック、クライスラー、ランドローバー、ポルシェなど、まだまだ日本価格であまり売る気を見せないブランド7つ(マカン、718を除く)に、かなりアバンギャルドなクルマを展開するケータハム、ロータス、モーガン、ポラリス、プロトンの5つ、さらにラインナップが崩壊の一途を辿るシボレーを加えると、もう残りは16だけ・・・ドイツ5(BMW、VW、アウディ、メルセデス、スマート)、フランス4(シトロエン、DS、プジョー、ルノー)、イギリス2(MINI、ジャガー)、イタリア3(フィアット、アバルト、アルファロメオ)、スウェーデン1(ボルボ)、アメリカ1(ジープ)。

  どれも日本向けにもかなり頑張っているブランドばかりだなー。月に1000台売れるブランドはドイツの4つとMINIとボルボの合計6つ。他にもジープ、プジョー、フィアット、ルノーは手頃な価格のモデルを拡充していて1000台突破の可能性があります。この16ブランドに関してはもっと売れていいんじゃないか?とは思うんですけど、なんだか無難なモデルが増えてきているんじゃないかと・・・。もちろんルノー・トゥインゴやシトロエンC4ピカソを「小粒」と貶すのは全くの見当違いですけどね。低リスクで衝動買いできるモデルだけじゃなくて、「よしこれで人生を愉しもう!!」と飛び込みたくなるモデルもある程度は欲しいですね・・・。

  まだ日本での販売価格も決まっていないですが、アルファロメオの新しいフラッグシップモデルとして登場する「ジュリア」には去年からずっとソワソワさせられっぱなしです。2017年は話題のクルマがたくさん発売される見込みなので、その中でアルファロメオが存在感を十分に発揮できるのかなー? いやいや!!アルファロメオこそが!!こそが!!こそが!!このブランドこそが日本中のクルマ好き(一般ユーザーも)を熱くさせるツボを持っているんじゃないか!!欧州カーオブザイヤーを引っさげて日本で大反響を巻き起こしたアルファ156&147はまだまだ日本の街をハッピーにしてくれています(ジュリエッタ&ミトもいい味出してますけど)。

  「アルファロメオがない日本の中型車市場なんてクソだ!!」とまでは言いませんけども、その存在感はBMW、マツダ、スバルの「ミドル・ビッグ3」に匹敵します。ミドルカー主体のブランドが、どれだけプライドを持ってミドルカーを仕上げるか?を評価の基準にするならば、やはりBMW、マツダ、スバルのクオリティは短時間の試乗でも十分に感じられますが、これらと同じくらいに、いやむしろその上を行く可能性すらあるブランドがアルファロメオですね。別の言い方をすれば、新型プリウスに走り負けないクオリティを保証してくれるブランドがBMW、マツダ、スバル、アルファロメオ(ジュリエッタ&ミトは怪しいが・・・)。

  そんなアルファロメオですが、ジュリアだけでなく、これに続くクロスオーバー版のステルヴィオもすでに公開されていて、早ければ2017年中に日本でも発売される可能性があります。日本市場でも大人気となっているSUVですが、各ブランドから複数のモデルが発売されるのが当たり前の状況の中で、「ホンダ・ヴェゼル」と「ポルシェ・マカン」という全く別のアプローチの2台の大ヒット車に象徴されるように、SUV自体もある種の目的というかコンセプトや哲学を明確に持って開発される時代になってきたように感じます。

  コンパクトカーよりリッチなボデーで「安っぽく見られない」ことを売りにしたヴェゼル的なSUV(メルセデスGLA、スズキ新型エスクードなど)と、SUVながらも中途半端に作られたセダンやハッチバックなどよりもよっぽど操縦安定性に優れているマカン的なSUV(エクストレイル、CX5など)は、それぞれよく売れました(GLAとエスクードは微妙)。完全に空振りに終わったのが、レクサスNX&トヨタハリアーで、どうやら設計段階ではひたすらにパッケージ優先だったようで、価格も走りも中途半端な仕上がりで出て来てしまいました。トヨタ自慢の居住性&HVを享受するならば、わざわざ400〜500万円するSUVじゃなくてもヴォクシーで良くない?ってなっちゃうよ・・・。

  600万円台で出て来たマカンの前にX1以外のBMWのSUVラインナップは全く歯が立たずで、次世代モデルが待たれるところですが、2017年に投入されるのはX2という新型モデルになりそうです(FFか?)。「走り」のクオリティで勝負するSUVは、ポルシェがBMWを研究して直4ターボのレスポンスから、自慢のブレーキ、トルク制御によるスポーツカー的な演出まで計算づくで盛り込んだマカンに対して、エクストレイルがGベクタリングコントロール機構を先に持ち込み、日産の真似が大好きなマツダも全ラインナップに「Gベクタリング・コントロール」を装備して、まるでマツダの専売特許のように宣伝していたりします。

  マカン、エクストレイル、CX5が「付加価値を持ったミドルSUV」として日本市場で人気になっています。CX5が出て来るまでは日本ナンバー1の売り上げを誇っていたスバル・フォレスターもCX5のデビューと同じ2012年にFMCをしますが、こちらは足回りの作り込みがスバルの仕事とは思えないほど酷い仕上がりだったことで、トップシェアから一気に滑り落ちました(その後MCで修正はしましたが)。新型インプレッサから採用された新型シャシーを使って、早ければ2017年中にもフォレスターもFMCが行われて巻き返すとは思いますが・・・。

  さてアルファロメオですから、ミラノ製初のSUVに相当の技術的な「裏付け」をしてくるとは思いますが、果たしてポルシェ、日産、マツダといった世界のトップエンドなテクニカル・ブランドに対してどれだけ競争力があるのか?ちょっと心配なところもあります。マツダCX3に判定負けしちゃうくらい(に平凡な走り?)のアウディQ2やメルセデスGLAを相手には優位を築けると思いますが、「走りを極限まで研ぎ澄ませた」とか大口を叩いているトヨタC-HRに足元を掬われるのか? それとも2017年にやはり日本投入が決まっているプジョーの「秘密兵器」と言われる新型3008の驚異的な進化を遂げた走りの前に敗れさるのか? ・・・いやいやたぶんマカンターボを越える超絶パフォーマンスグレード有り!のド派手な展開で度肝を抜いてくれるでしょう。


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2016年12月13日火曜日

ポルシェ718ケイマン 無我の境地で乗りたい1台

  昨今のポルシェを始めとしたロードカー・ブランドは不可解なとこがしばしば起こります。まあ日本国内だけでクルマ乗って愉しんでいる輩には、ポルシェの本当の価値なんて到底に解りっこないわけですけども、日本人は相変わらずにポルシェが好きです。そしてやたらと文句もいいます。「ターボになったポルシェをどう思う?」「もうこれ以上速くなくていいよ、それよりはフラット6の音を大事にしてほしい」「そうだよねスポーツカーは官能性こそが商品価値だ!!だからターボのポルシェは否定する!!」

  日産、ホンダ、スバル、マツダにとってはもはや日本市場なんて無くなってもいいくらいの存在かもしれませんが、ポルシェのような高級ブランドにとっては日本市場はまだまだ魅力たっぷりなようです(だからわざわざ東京モーターショーにも出品!!)。しかし大事な日本のファンの気持ちを知ってか知らずか、ターボ化だったり4気筒化だったりを大胆に行う潔さ・・・これもポルシェの魅力なのかもしれません。過去にも空冷エンジンが廃止されて賛否両論が巻き起こりましたし、直後の996型は中古車市場でもやや不人気で歴代911で最も手軽に手に入るモデルとなっています。

  4気筒ターボのミッドシップになった718ケイマン。ポルシェが常に真剣に目指している「パフォーマンスの進化」においては、ニュル北で997GT3を越えるタイムを出したとかで、4気筒のポテンシャルにはちょっと驚きます。それだけの完成度のマシンがお値段はほぼ据え置きのままの619万円で買えるなんて!!。うーん。決して安くはないですけども、どーしようもなくつまんないクルマに400万円、500万円と投じるくらいならばさ・・・。

  ポルシェっていうと、日本ではだいぶ年配のそこそこカネ持っているオッサンが好むクルマになってますけど、映画「アイアムサム」に出て来る女性弁護士のようなアクティブな女性に似合うクルマだったりするなど、アメリカや欧州ではもっと幅広い年代の人々が愉しむブランドみたいです。718ケイマンの北米価格は$53000なので、それほど日本価格も法外なものではないです。619万円ならば、レクサスISを買うくらいの負担で賄えそうです。そして「ステータス」や「非日常なスポーティ」を考えれば、レクサスISなどよりもむしろお買い得といっていいかも。

  「欲しいクルマがないー」と同じことを毎週のようにつぶやきながら、ゾンビのように漂っている日本のクルマ好きは多いです。しかし実際のところはいざ輸入車のMTモデルが候補nなるとすぐに尻込みするし、5km/L程度しか走らない極悪燃費の大排気量モデルにも及び腰でなかなか踏ん切りが付きません。結局のところ自分自身が問題なく「乗れる」クルマの範疇がとてつもなく狭い結果のゾンビ化じゃないか?という気がします。718ケイマンにしても、ポルシェの年間のメンテナンス代はとてつもなく高額になりそうだし、MTを買うべきなのはよく解っているんだけど、最初の興奮が過ぎ去っていく経過に対して、ほぼ確実に購入前に想像を巡らしています。乗り始めて半年経って3ペダル車が手に負えなくなっている自分の姿が見えてしまっているんだと思います。

  手軽に買えて、決して手に余ることなく、周囲からバカにされることもなく、カッコいいクルマ・・・そんなメチャクチャな条件に合致するモデルなんて無いですよ!!そんな自分勝手なユーザーの為にメーカーが開発努力をする必要なんてさらさら無いと思います。既にスポーツカーだけでも相当な数のモデルが日本でも発売されています。マツダ・ロードスター/アバルト124スパイダー、トヨタ86/スバルBRZ、ホンダS660といったお手軽な日本勢と、ロータスエリーゼ、アルファロメオ4C、ジャガーFタイプ、シボレーコルベットなど1000万円以下のモデルだけでも相当な数があります。これにスープラ、シルビア、RX9が加わる!?

  これだけ多彩なラインナップがある中で、パフォーマンスというスポーツカーの正義を貫いているモデルが「718ケイマン」であり、価格帯でもちょうど中間くらいに位置していることからも、現状の1000万円以下のスポーツカー市場においては唯一無二の存在といって良さそうです。4気筒ターボ300psにミッドシップ、さらに抜群の制動性能、ハンドリング。これに追従出来るモデルは・・・GTカーとしてならジャガーFタイプ、ピュアスポーツならアルファロメオ4Cくらいでしょうか。もし4Cに載っている1750TBをアバルト124スパイダーに載せた特別モデルが競技用ではなく、市販ロードカーとして発売してくれるなら、総合力でも718ケイマンにかなり近づくような気がしますが・・・。

  ちょっと前に沢村慎太朗さんが「本物のスポーツカーは911とロードスターだけ!!」という名言を著書の中に残しました。厳密に言うと「991系とNCロードスターだけ!」ということらしいです。ジャガーもロータスもアルファロメオも否定できるほどに、ポルシェとマツダのスポーツカーへの情熱は際立ったものなのだと思います。ロードスターと991系911の2台持ちは最強!?お買い物はロードスターで、お出かけは911で・・・これが正解なんだと。・・・718ケイマンが1台あればOKじゃ?もう1台はファミリー用にマツダCX5でもあれば幸せなカーライフかも。

2016年12月2日金曜日

BMW・X2 「ビーエムだって真似ることもあるさ・・・」

  MINIのプラットフォームを使うFFのBMW車がじわじわと増えてきました。「2erアクティブツアラー/グランツアラー」に始まり「X1」そして来年中にも発売される「X2」と投入時期は未定ながら開発の最終段階に入ったとされている「1er」もFF化されるみたいです。身も蓋もないつまらない事を言うと、BMWも「総合プレミアムブランド」としてファミリーカーのラインナップを充実させるためには、キャビンスペースの確保が最優先課題になりますので、横置きエンジンでフロント部を短くしたり、プロペラシャフトを廃止して床がフラットにもできるFFのメリットを真剣に考えた結果ですから、ビーエムはFRだ!とか言っている旧来のファンはとりあえず放っておきましょう。

  FFのBMWが登場するまでは、BMWブランドはおおよそ3つのプラットフォームで構成されていました(i3とi8は除く)。5〜7erを担当する「L6」、1~4erとX1~X4およびZ4担当する「L7」、X5~6は「ラダーフレーム」です。意地悪い言い方をすれば「L6」と「ラダーフレーム」がパフォーマンス志向で、「L7」がコスト軽減を徹底したモデルです。価格はどれくらい幅があるかというと、「L6」や「ラダーフレーム」にBMWらしい6気筒が搭載されれば、最も安いモデルでも日本価格では1000万円前後に設定されています。一方で「L7」に関しては4気筒エンジンでは300万円を下回る設定までされていて、6気筒を積んでも500万円程度から購入可能です。

  まだBMWがホンダに負けないくらいの気持ちのいい高回転エンジンを作っていた10年前はE90系という先代の3erが大ヒットしたりしていましたが、4気筒でしかも低回転のターボばかりのラインナップになってからというもの、この二者択一のプラットフォーム分けによるマーケティングが、日本ではどうも裏目に出たように思います。「ラダーフレーム」はそれなりに支持されるも、もしかしたら戦略の一環かもしれませんが「L6」使用車の販売はごくごく限られたものになりました。マセラティ・ギブリのヒットやレクサスの日本での拡販に圧された印象もあります。

  一方で「L7」が担当する下級モデルも、VWやFF化したメルセデスに「輸入車需要」をかなり吸い取られ、またプリウスやヴェゼルなど300万円前後の価格帯で独自にマーケットを切り開いた日本車にもいくらかヤラレてしまった印象があります。そしてもちろん傘下のMINIブランドの成長にも喰われている部分も相当にあるはずですが・・・。そんな窮状を結果的に救う形になったのが、どうやらBMW2erアクティブツアラーみたいですね。BMWファンからのブーイングをものともせず、カーメディアに350万円の価値無し!とまで書かれても、そしておそらく「プライドをかなぐり捨てて」作ったであろうFFツアラーでしたが、見事に日本でも結果を出しました!!

  Cセグが売れないといわれる日本市場で発売初年度とはいえ月に1000台以上をコンスタントに売ったのはとても立派です!!ベースグレードは100万円台後半に設定されているアクセラやインプレッサを相手にしたことを考えると大健闘だと思います(ゴルフの一時的失墜という幸運もありましたが)。コストパフォーマンスがあまり通用しなくなった新規ユーザーやリタイア世代を取り込む日本のCセグは解読不能な部分も多く、スバルの異常なまでの新型インプレッサのプロモーションや、アクセラが自動ブレーキテストでトップを獲ったという報道(マツダがコミにカネを払って報じてもらってる?)が飛び出すなど、ライバル陣営もかなり神経質になっている様子が伺えます。そんな市場を298万円のFRの1erではまったく切り崩せなかったのに、FFの2erによって見事に扉が開いたわけです。

  車高が低くてスポーティな見た目のプリウスに対して、Cセグではもっとも腰高なデザインでいかにも「ピープルムーバー」的な2erアクティブツアラー。先代までのプリウスと1erの関係と対比すれば、完全に立ち位置が入れ替わっています。2erアクティブツアラーの牧歌的なスタンスは一体どこの市場の発注なのでしょうか?日本?フランス?それとも中国か? もちろん「あのBMW」が作るからこそ効果的な部分もあるでしょうが、ホンダの流れを組んでいて操縦安定性の高さに定評があるMINIのシャシーに、トヨタ系列アイシンAWの「世界で最もコンフォート」と言われるFF用ミッションを躊躇無く採用し、車体は日産のピープルムーバーを思わせるNVH対策バッチリの堅牢な設計。80年代に世界を制した日本のFF車の「ハイライト」が詰まったクルマだと言えなくもないです。

  スバルがビルシュタインだ!!トヨタがザックスだ!!とアピールするように、日本車はドイツ車をモチーフにクルマを仕上げることをある種の「文化」にしています。その反対にドイツメーカーも直4ターボ&AWDのハイパフォーマンス車が増えるなど、日本のランエボ&WRX・STIのスタンスをスポーティの理想として掲げていたりします。そんな中でBMWの2erアクティブツアラーには、日本メーカーへ捧げるメッセージが詰まっているクルマじゃないかなーという気もします。(BMWも日本メーカーも)「我々はアメリカナイズに走り過ぎてないか?日本とドイツの栄光のロードカー文化を取り戻そうぜ!!」という呼びかけではないかと・・・。

  さて先日のパリモーターショーで公開された「BMW・X2」です。日本車へのオマージュと言うと語弊があるかもしれないですが、日本のユーザーとは心で通じ合った2erアクティブツアラーの設計を使いつつ、クロスオーバー化に際して、さらに新たな日本メーカーをリスペクトに加えたようで、日本車のオマージュを上乗せして来ました!!もうリアデザインなんて完全にドイツ車ではない!!そう断言できるくらいの作り込みっぷりです。もはやどの日本車よりも日本メーカーのエッセンスが凝縮された1台にまで昇華しましたねー。できれば価格も日本車並みにしてくれるとさらにGOODなんですけど・・・。

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