2015年6月28日日曜日

ゴルフヴァリアントR 「レヴォーグの成功&欧州上陸で急遽?」

  いよいよMQBの本領発揮というところでしょうか?  まるで3Dプリンターのように設計の自由度が高く、いろいろなボディタイプとパワーユニットを組み合わせることができるというのはなかなか便利なようです。といっても従来の工法でもヴァリアント(ワゴン)のボディにゴルフRのユニットを組み込むことはそれほど難しいことではなさそうなので、実際のところはMQB云々ではなくて、「レヴォーグ」や「メガーヌエステートGT220」が高い走行性能に加えて、なかなか個性的なスタイリングを誇るようになり、VWグループの看板モデルである「アウディA4アバント」の市場を土足で荒らすようになった事態への対処がホンネなのかもしれません。

  本体価格でおよそ600万円の「アウディA4クワトロ2.0TFSI」ですが、現状のライバル関係を考えると、ゴルフGTIと同等程度の211psの出力ではプレミアムワゴンとしては少々魅力が不足?ではないかという気がします。アウディの質感の高い内装を考えれば、価格は納得という声もあるでしょうけど、せっかく600万円出してプレミアムワゴンを買うならば他にも目移りしそうなモデルがたくさんあります。例えば「ボルボV60T6」は同じ600万円で安全やパワーユニットの面では非常に魅力的です。横置きながらも直6ターボを使って333psを発揮する上、ワゴンデザインが得意なボルボですから非常に満足度が高いクルマです(残念ながらT6の生産が終了した模様)。さらに「BMW320dツーリング」は売れ線グレードの本体価格が550万円とA4に比べお買い得で、Mスポ仕様でも580万円です。ワゴンという荷室に特徴があるキャラクターだからこそ、トルクが高いディーゼルユニットがいい味を出しています(ワゴンこそディーゼルだ!)。これでAWDモデルがあればいいのですけど・・・。

  ほかにもいろいろと候補はあるでしょうが、要するに「A4アバント」の競争力がここ数年で急速に弱まっていて、実際のところ相当なアウディ好きしか買わないクルマになってしまっています。ブランド全体としてもSUVも小型モデルに目立ったヒット作が無く、中国市場でこそ健闘していますが、日本やアメリカにおいてはVWグループの苦境で、ドイツの3グループでは特にメルセデスの台頭が目立ちます。そこでVWグループが考えたであろうことが、A4アバントよりも安くて、しかも性能面で上回る280ps出せるワゴンを作ってしまおう!ということで、いよいよ「ゴルフヴァリアントR」が登場しました。現行A4アバントのモデル末期にさしかかるまで発売を控えていたのは、A4アバントのシェアを喰わないための経営上の判断だったと思いますが・・・もしかすると次期A4にはアバントが無くなる?あるいは「メルセデスCLAシューティングブレイク」みたいな、色モノワゴンへと変化するかもしれません。

  さてかつての「レガシィSW」「パサートヴァリアント」の頃のような機能性重視で、もっさりしたデザインばかりだったのが嘘のように、最近に登場した「プレミアムワゴン」のデザインは美しいです。いずれも端正な顔つき(フロント)にスタイリッシュなサイドもリアを備えていて、「見た目で欲しくなるデザイン」をかなり意識した作り込みです。一方で大規模なフェイスリフトも無いままに7年が経過しているA4アバントは・・・やはり経年の劣化は隠せません(かつてはオシャレワゴンの最右翼だったのに!)。そしてE91ではちょっとオーラが足りなかったBMW3ツーリングのリアデザインも、F31になってからBMWらしからぬ「ポップ」さが備わり、現状ではA4アバントをややリードしていて、まさかのBMWがアウディにデザインで勝利するという展開になっています(あくまで主観ですが)。

  しかしワゴンを巡るライバル関係は大きく変化していて、プレミアムワゴンの代表モデルだった「A4アバント」と「BMW3ツーリング」の2台の存在が完全に霞んでしまうほど、新たに登場した「レヴォーグ」、「メガーヌエステート」、「ボルボV60」、「ゴルフヴァリアント」、そして「アテンザワゴン」といった新興勢力の5台は「プレミアム」であることを意識していて、シェア獲得に向けて洗練されたクルマ作りにとても力が入っています。何に対してプレミアムなのか?というと、それはパッケージ性を目一杯重視していることがスタイルから分るトヨタの「カローラフィールダー」、「アベンシスワゴン」などのワゴンと比べるとわかりやすいです。まずはフロントマスクやシルエットへの「エクステリアのこだわり」、そしてアウディやBMWに匹敵する「インテリアの良さ」、そしてアウディ、BMWを超えるほどの「走行性能」とまさに三拍子揃った実力車ぞろいです。

  「より良いものを、より安く」というのは、情報化が進む現代社会では大衆の行動原理として避けられないものです。ディーラーに行かなくても自動車専門誌を買わなくても、ネットで必要な情報がいくらでも無料で入ってきます。メーカーが発信する広告なのか?第三者が出している「評価」なのか?といったメディアリテラシーを駆使して判断することさえ出来れば、自宅でパソコンの前に居ながらにある程度までは候補車を搾りこむことができる時代です。そしてそこで行われる「第一次選考」では、「見た目」と「価格やスペック」といった分り易く数値化された情報がどうしても重要になってしまいます。

  先述の通り、本体価格が600万円のアウディA4クワトロ2.0TFSIは、同クラスのモデルよりも高価格で低スペックに映り、やはりアウディに好意的であっても「コスパが悪い」という印象を与えてしまいます(実際は値引きなどあるわけですが)。VWグループとしてはアウディが逃しているであろう「プレミアムワゴン」ユーザーを上手く掬い取るため「ゴルフ・ヴァリアントR」なのだと思います。本体価格が560万円で280psガソリンターボとして登場した「ゴルフヴァリアントR」ですが、確かに300psが出せる「レヴォーグ2.0GT」の最上級グレードが360万円ですから、まだまだ割高感は否めません。それでも輸入車に高いステータスを感じる層(スバルに対して否定的な高級志向な層)を、BMWやボルボから奪還するには十分な商品力とコスパを備えているといえます。

  そしてVWの欧州市場におけるライバルになっている、ルノーのメガーヌエステートのハイスペックモデルである「GT220」(330万円)に対しても出力面でも優位に立っています。しかもGT220はMT仕様しか日本に導入されておらずユーザーが限られる上、FF車であり積載量によってトラクション面での振り幅が大きくなるワゴンにとっては、やはりゴルフヴァリアントRのAWDが有利です。T6以外の「ボルボV60」もFFですし、BMW320dツーリングもFRのみの設定なので、「AWD」でフィルターをかけるならば、ゴルフヴァリアントR(560万円)、レヴォーグ2.0GT(最上級で360万円)、アウディA4クワトロ(600万円)、アテンザワゴンXD(最上級で400万円)の4台が「プレミアム・AWD・ハイスペック」を兼ね備えたモデルになります。

  かつて(2000年頃)はエンジントルクの豊富さとフルタイムAWDの実力の高さから、「鬼トルク」などと形容されて、ユーザーからそのダイナミックさを称賛されてきた「アウディA4クワトロ」ですが、この4台の中で改めて乗り比べてみると、やはりトルク40kg・mを誇る他の3台に比べて貧弱な乗り味に感じてしまいます。やはり15年も経つとクルマの進化の幅は大きく、常にクラスの頂点を守り続けるというのは非常に難しいことであるようです(もちろん「S4アバント」や「RS4アバント」といったスペシャルモデルはありますけど)。

  「レヴォーグ」がヒットし、「アテンザワゴンXD」にAWDが設定され、そして「ゴルフヴァリアントR」が登場するなど、俄にも中型車の新たな魅力を発掘するような「魅力的なジャンル」が突然に盛り上がってきたように思います(レヴォーグの功績?)。ワゴンのデザインも日進月歩に進化しましたし、コンパクトカーとはハッキリと一線を画すくらいに迫力の走行性能を備え、パッケージ面でも車中泊も十分に可能です。高級車が並ぶ六本木ヒルズの地下駐車場から夏のキャンプ、そしてAWDの利点を生かして真冬の豪雪地域まで・・・あらゆるシチュエーションで楽しめるクルマということを考えると、多少は高価でもいいかなという気もします。さらにメルセデスからも「CLA250スポルト4MATIC・シューティングブレイク」が550万円(211ps)が発売され、さらに競争が激化して盛り上がりそうです(アウディA4クワトロはFMCまで苦しい戦いになりそう)。

  この「プレミアムワゴン」市場がさらに盛り上がるためにも、ぜひ日産にもスカイラインベースの「ステージア」の復活を、そして三菱にも一念発起してギャランフォルティス後継として新型ワゴンを作り、ランエボで熟成されたユニットを使った「プレミアム・ハイスペック・ワゴン」なんてどうでしょうか。日本とドイツの技術力を持つメーカーがそれぞれに総力を挙げて、走行性能とデザインを競い、そこにジャガーやアルファロメオが参戦してくる?なんてシーンを期待したいですね。


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↓このクルマがドイツ勢を本気にさせたことは認めます!

  

  

  

  

2015年6月18日木曜日

フィアット500X 「イタリアからの・・・ハスラー?」

  「もしSUVを買うならどれにする?」・・・いや死ぬまで絶対に乗らないからいい!なんてトゲトゲしい本音をぶつけるのは、わざわざクルマの話でコミュニケーションを取ろうとしてくれた知人に対して無礼極まりないですよね。ブログとリアルではクルマに関しての意見が違う!のはちょっとどうかと思いますけど、やはり「クルマに詳しい」というのはあくまで教養であり非常に役立つコミュのツールなので・・・「正しく」使わないといけません。

  とりあえず出来るだけ誠実に、そしてあれこれとイメージを膨らませて、僅かばかりの試乗経験を考慮して話の相づちを打ちます。しかし最近では日本で展開する国内外のブランドから相当な数のSUVが発売されていますから、「CX5が良さそうだね!」なんて安易な意見では、そこらにいるオッサンと同じですから、せっかくのコミュ機会も台無しです。まあ本人が思っているほどに、相手にとってはどうでもいい事だったりするんでしょうけど、なんて言っていいかと悩むことが増えてきました。そしてそろそろ世界的に乱立するSUVを自分の頭の中で「序列・分類」して、ジャンルごとの「基準車」を選定してみよう!なんて「SUVにあまり興味がないクルマ好き」にとっては少々大それた考えが芽生えつつあります。

  しかし、まずはSUVをガンガン使い倒すくらいのオフローダーにならなければダメですね。・・・といっても普通乗用車でも未舗装路に平気で入っていく無鉄砲でデリカシーの無い人間なんで、ある意味ではSUVを理解できているという自負はあります。ややエクストリームなドライブの経験上で「最低地上高」の有り難みは理解していますし、あと10cmいや、あと5cmあれば行けると思いつつも引き返したことは何度もあります。しかしその一方で、ちょっとしたオフロードに「SUV」を持ち出したり、ちょっとしたワインディング路に「専用設計スポーツカー」で出掛けるってのは少々やり過ぎじゃない?なんて冷めた意識もありますけど・・・。

  クルマの「使用範囲」なんて個人個人で大きく違うので、それに合った走行性能のSUVにすればいいんじゃない?っていう意見は、ごもっともなんですけど、突き詰めると・・・病人運ぶなら「救急車」、瓦礫を運ぶなら「ダンプカー」なんだよ!と子ども相手にアドバイスしてるのと大して変わらないような気もします。これまではSUVも救急車やダンプカーと同じような「特殊用途」のクルマでしか無かったのですけど、いつの間にやら「ブランド・アイデンティティ」を発信する立派な存在になったようで、今ではすっかりセダン、クーペ、スポーツカーといった伝統の3BOX車と同じように、クルマ好きが「伝統」やら「思い入れ」をマニアックではなく、ファッションとして語れる時代になったのは否めません。ジャガー、マセラティ、ベントレーがSUVを作る時代ですし。

  ただし裏を返すと、これまではどの自動車メーカーにも平等にチャンスがあったSUV市場に、「伝統」「ブランド」「思い入れ」といった評価基準を強引に持ち込むことで、本来自由であった市場が硬直化して息苦しくなってしまうという弊害も考えられます。3BOX車の市場でハッキリと確立されている「ブランドの序列化」がSUVにも及ぶことで、当然に「人々の欲望」が集積されその結果として、プレミアムな価値を持つSUVが出現してクルマが単なる「道具」から「芸術品」へと昇華していく過程を「自然」とみるか「茶番」と見るかの意見は分かれるかもしれません。ちょっと偉そうなことを言いますが、クルマを作る人・乗る人・評価する人が発信するSUVへ向けての「カー・ガイの集合知」が、どれほど「高尚」なものかでその帰趨は数年の内に決まるはずです(もう決まっているのかもしれませんが)。

  これからもずっと世界中の人々が「クルマを買う」という行為を繰り返すでしょうが、そんなサイクルが続く中で、一般の人々をどれだけ「クルマ文化」に巻き込んでいけるか?は非常に重要な意味があると思います。自動車産業の主体がドイツや日本といったクルマ先進国から、新興地域へとその流出は加速しているようですが、もしクルマがただの「道具」から別のものへと変わるならば、それを防ぐことも可能だと思います。そしてクルマ好きの端くれとして、クルマ文化を守るためにも、これまで愛車は絶対に「3BOX車」と決めてかかっていました。新興国で作られるセダン、クーペ、スポーツカーを買うって想像できますか?(もちろん立派なクルマもありますけど)。 そんな意識が築けるクルマが存続すれば、ドイツ車も日本車も今後長く存在すると思います。そしてもしSUVがセダン、クーペ、スポーツカーに続く「第4の存在」になりうるのであれば、SUVへの態度を改めて歓迎したいと思います。

  現在世界のスーパーカー市場で存在感を増している「マクラーレン」のチーフデザイナーはロバート=メルビルという人で、なんと1978年生まれです。VWのマーク=リヒテ(現在はアウディのデザイン責任者)も36歳でチーフデザイナーに就任しましたが、マクラーレンのようなスーパーカー・ブランドでは異例の若さです。別にデザイナーに年齢なんて関係ないわけですが、さまざまな経歴を持った「スーパー」なデザイナーが数年ごとに一流ブランドを渡り歩くことが多くなっているようで、ジャガーのイアン=カラム(1954年生まれ)といった実績十分なベテランが今も第一線にいることで、なかなか若手デザイナーにとっては風通しが悪い業界なのかな?と思います。カーデザイナーとして一気に有名になった前田育男氏は、前任者がマツダを見捨てて?去ったおかげで、大きなチャンスが巡ってきてとてもよかったと思いますが、すでに50歳でした・・・。

  マクラーレンのロバート=メルビルがなぜチャンスを得たかというと、彼がSUVという「新しいジャンル」で早々に結果を残したからと言われています。30歳そこそこの若者に「花形」であるセダン、クーペ、スポーツカーを手掛けるチャンスなどないわけで、仮に巡ってきたとしても、強力なライバルがたくさんいる「成熟市場」でそんなに簡単に大きな成果を挙げることなんてほぼ不可能です。しかし彼は武骨で実用的なデザインばかりが溢れるひと昔前のSUV市場で、見事なほどに「クールなSUV」のデザインを完成させました。そのクルマはもちろん「レンジローバー・イヴォーグ」です。

  2009年にイギリスで販売が始まったこのクルマをきっかけに、SUVというジャンルは新たなステージへと進んだ!と個人的には記録しておきたいです。そしてさらにロバート=メルビルがSUVで結果を出したブランドが、伝統のSUVブランドである「ランドローバー」だったことも結果オーライでした(ランドローバーだからこそ支持されたかも?)。いまや世界中の若手デザイナーがこぞってSUVデザインに参入して登竜門にしようとしているようで、デザインの進歩が最も早いジャンルといってもいいかもしれません。最近ではランドローバーと並ぶアメリカの老舗ブランド「ジープ」から、とっても個性的なデザインの新型「チェロキー」や、アメリカンから大きく離れてアウディやマツダみたいなモードなテイストを見せる「コンパス」や「レネゲード」などなど、かなり攻めてます!

  さてそんなジープを傘下に収めるフィアットは、レネゲードの設計に、自慢のフィアット500に準じたデザインのボディを載せたSUV「フィアット500X」を年内にも日本に導入すると発表しました。ちなみにレネゲードは、なんとイタリアで製造が行われているようで、れっきとした「イタ車」です。開発はアメリカでジープが主体で行ったようで、コンパクトSUVとはいえ本格的なAWD機構を備えているそうで、この辺に本質を愛するイタリア人の気質が現れているように思います。いちいち例は挙げないですけど、日本のクルマ好きもやはり「本質」が備わったクルマが大好きだと思うんですよ(日本やイタリアに限った話ではないかもしれないですが・・・)。

  中国やヴェトナム、ロシアのメーカーによって組み付けられた現地仕様のSUVにドイツメーカーのエンブレムが付けられて本体価格418万円くらいで売られていて、それを有り難がって買い求める日本のユーザーが溢れていた頃には、SUVなんてくらだね〜って思ってました。しかしレンジローバー・イヴォーグの登場と、ジープの復活によって、SUVに新たな秩序が生まれ、いよいよSUVを「芸術的」クルマとして語る素地が出来上がりつつあるのかな・・・と感じます。ランドローバーをかつて傘下に収めてそのノウハウを受け継いでいるBMWでもいいですし、ドイツの軍用車両を受注してきた実績を持つメルセデスでもいいです。安易な言葉ですが「本質」さえ備わっているならば、もはやSUVを差別する理由もないように思います。

  で?何がハスラーかって? ポップなデザインで商品性を伸ばしつつも、クルマの本質を見失わない開発姿勢でしょうか? なんだか自然とオーバーラップしてきました。そして日本上陸を果たして、価格次第にもよりますけど、300万円以下で買えるようならハスラーみたいな予想外のヒットを遂げて、日本の津々浦々で「車中泊のリゾートカー」として愛される存在になりそうです。

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2015年6月10日水曜日

フィアット・パンダ4×4 「イタリアからのジムニー」

  普段から近隣の都県の道路を使わせてもらっていて、日本の道路行政は非常に素晴らしい!と絶賛したくなる立場は変わらないのですが・・・。東京西部を縦断する圏央道が順調に開通する一方で、八王子〜藤野(神奈川県)を結ぶ「陣馬街道」が未だに落石で不通のままだったり、埼玉県内の飯能市名栗地区から秩父へと抜ける尾根道も不通のままだったりで、カネが取れる道路から作る(直す)みたいな風潮が少々気になります。もちろん陣馬街道は紅葉シーズン向けの観光路線でしかなく、シーズンに合わせて八王子からのルートを部分開通させましたし、埼玉の名栗〜秩父線もまた299号を通って迂回するルートの方が平坦で安全に通行できるので、それほど重要度が低いという判断なのだと思います。

  東京都も埼玉県もクルマを所有しない世帯が多くなっていて、クルマ行政に青天井にお金を使い過ぎることに理解が得られないのは仕方のないことですし、防災などの観点からも必要性がほとんど認められない道路となると、今後は修繕されることなく放置されていく可能性もあります。落石も片付けられることなくそのままになった辺境の道を走っていると、これからは最低地上高がある程度確保されたクルマ(=SUV)が、このような道路の利用者にとっては必須になってくるのかもしれません。ますます高齢化が進み財政は厳しくなり、一日に数台通るだけの道の管理を行政が行うのは、いよいよ地方議会で次々と撥ね付けられる時代になっていくでしょう。

  高齢化が進む社会というのは日本だけの問題ではなく、フィアットの本拠地であるイタリアでも深刻なレベルに達しています。産業の空洞化に直面し、中央も地方も財政が破綻気味というのも日本にそっくりです。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティの国といえば華やかなイメージですが、庶民の足となる一般車はフィアットが圧倒的なシェアを握っていて、その実態は日本における「トヨタ独占」に近い状況です。そして面白いことに、トヨタもフィアットも「独占体制」ながらも、グローバルメーカーとして揃って2000年代の後半に苦しい時期を迎えていて、そこからシンクロするかのように近年はともに目覚ましい「改革」の成果がユーザーレベルでも実感できます。

  自動車業界の「保守本流」といったら語弊があるかもしれないですが、トヨタとフィアットは日本とイタリアを代表する企業として、両国の経済政策の恩恵を受けやすいポジションにあったためか、ホンダのような「挑戦」的な姿勢は薄く、これまでは商品開発力においてしばしば厳しい批判にさらされてきました。しかし一連の「改革」後の両グループのクルマを一つ一つ品定めしてみると、なかなかの輝きを放つものが多いことに気がつきます。例を挙げると、トヨタなら「レクサスGS」「86」「レクサスIS/RC」「アルファード」でしょうか。どれも世界最高水準を視野に入れた「逸品」と言える出来です。伝統モデルの「クラウン」ではやはり大きな変革はできませんでしたが、商用車の「サクシード/プロボックス」などでもやたらと気合いが入った作り込みをしています。

  そしてフィアットグループはというと、傘下のクライスラー系ブランド「ダッジ」のラインナップを北米で増強し、同じく傘下のアルファロメオの「ジュリエッタ」のシャシーを使っていて、性能面で日本車にも対抗できる中型モデルを次々と投下しています(「ダート」など)。さらに北米で目覚ましい伸びを見せているのが「ジープ」ブランドで、日本にも新型の中小型モデルが「無視出来ない価格」で次々と上陸していて、SUV限定ブランドにも関わらず、プジョー、ルノー、シトロエンといったお手軽な輸入車ブランドを販売台数ベースで軽く上回っているのはお見事です。ヴェゼル、ハリアー、CX5などヒット車が連発して「過熱」気味な日本車SUVのイケイケな状況を考えると、このブランドが日本で生き残っているだけでも奇跡的ではありますが、ジープは力強くシェアを伸ばしつつあります。「SUVだから売れて当たり前!」という声もあるかもしれないですが、トヨタRAV4やスズキSX4・Sクロスなどまだまだ陽の目をみないモデルもありますから、日本で売れているSUVにはそれなりの「理由」が必要になっているのは間違いないです。

  さらにフィアットはアルファロメオをテコ入れし、BMW、メルセデス、アウディ、レクサスを仮想ライバルとしたブランドへと再編する方針で、現在「ジャガーXE」が登場して俄に活気づいているDセグに新たに「ジュリア」を投入するようです。もちろん「お遊び」ではなく、3シリーズやA4が持っているシェアを奪うためのグローバル戦略車ですから、XEと同等以上のインパクトを伴ったスーパーDセグセダンが堂々と登場するはずです。またスポーツカー部門でもアルファロメオから「4C」を発売して技術力とアイディアにおける水準の高さを見せつけましたが、さらにこれに加えて欧州でやや手薄とみられる小型オープンスポーツカーとして「マツダ・ロードスター」と共通設計でハイパワーエンジンを搭載した新型モデルがグローバルで登場する予定になっています。

  ブランドが違うのでそれほど気がつかないですが、日本のカーメディアの多くのページをさりげなくフィアットグループが占めています。しかしそんなフィアットのホームページを見てみると、まだまだ興味深いモデルがあります。特に気になったのが「パンダ4×4」というモデルです。日本では正式ラインナップではなく、限定車のみの展開になっているようで、現在のところどちらも本体価格が250万円程度の2種類が表示されています。全長4mに満たないBセグの中でも小型になるSUVは意外とライバルが少なくて、とても新鮮に映ります。日産ジュークがフランスで大ヒットして以来、BセグSUVが各メーカーから発売され増えていますが、その多くはBセグのベース車よりも一回り大きくしていて、3ナンバーサイズの車幅になり、小型車を意識させない上質感を出そうとする戦略が主流です。しかしこの「パンダ4×4」はもともとのパンダのサイズをしっかりと継承していて、目立ってスリムでその出で立ちは、「ジムニーシエラ・ランドベンチャー仕様」のように味のあるデザインでスタイリッシュに仕上がっています(フィアットからは「500X」という車幅があるタイプの小型SUVも間もなく日本に上陸するようです)。

  昨年登場したスズキのジムニーシエラ・ランドベンチャーも、非常に洗練されたエクステリアを持っています。内装もやや付け刃的ではありますが、パっと見ただけではジムニーとは思えないほど上質で、スバルやマツダの内装に近い感覚で、魅力たっぷりの175万円〜となっています。この「パンダ4×4」も同様にやや垢抜けないベース車「パンダ」を、メッキパーツなどで飾るというスズキと同じような戦略で、これによってオフロードモデルの存在感を残しつつ商品力アップにつなげています。確かに小型輸入車のデザインなんて・・・よく見りゃ二束三文!というケースが多いのも事実です。フィアット500シリーズとBMWミニシリーズの双璧を除けば、どれもこれもイマイチで、ここ数年のモデルで今もなお変わらず納得できるデザインのものは、「ルノー・ルーテシア」と「シトロエンDSシリーズ」くらいなものです(Cセグも含めてダメダメじゃないですか?)。

  そんな中でこの「パンダ4×4」には、日本の狭い山道で活躍しそうな「機能美」と、街中に表れてもポップに彩られた充実ライフを演出してくれるだけの「主張」が備わっています。ジムニーは楽しそうだけど、そのために2台にする余裕もないし、普段に使うにはちょっとデザインが個性的過ぎる!と二の足を踏んでいる人々にとって、なかなか良い選択肢になり得るんじゃないでしょうか? 蛇足ですが、マツダのCX3のやや膨らんだキャビンを見て、これはSUVではなくて「ピープルムーバー」だ!と率直に感じました。そしてディーゼル車を相手に価格を比較するのもナンセンスですが、パンダ4×4の方がわずかな差とはいえ総支払額は安くなるようです。CX3、ヴェゼル、ジュークのインテリアがオシャレになったモデルに乗ってみて、少しでも違和感を感じたならばフィアットかスズキに行ってみるといいかもしれません。動画にもパンダ4×4のオフロード走行がたくさん出ているので参考にしてみてください。

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