2016年12月21日水曜日

アルファロメオ と ミドルBIG「3」

  今年もいよいよ「輸入車ガイドブック」が届きました。何と言っても残念なのがフォードの日本撤退で、当然ではありますがフォードとリンカーンは掲載されていません。昨年版から新たに追加になったブランドはスウェーデンのスーパーカーブランドのケーニッグセグです。全39ブランドの内で平均価格が2000万円を越えるスーパーブランドは、ケーニッグセグの他にフェラーリ、ランボルギーニ、ロールスロイス、ベントレー、アストンマーティン、マクラーレン、ルーフ、パガーニ、ラディカルの10。全体の4分の1が「とりあえず用がない」ブランドだなんて・・・。

  他にもマセラティ、BMWアルピナ、テスラを始め、キャデラック、クライスラー、ランドローバー、ポルシェなど、まだまだ日本価格であまり売る気を見せないブランド7つ(マカン、718を除く)に、かなりアバンギャルドなクルマを展開するケータハム、ロータス、モーガン、ポラリス、プロトンの5つ、さらにラインナップが崩壊の一途を辿るシボレーを加えると、もう残りは16だけ・・・ドイツ5(BMW、VW、アウディ、メルセデス、スマート)、フランス4(シトロエン、DS、プジョー、ルノー)、イギリス2(MINI、ジャガー)、イタリア3(フィアット、アバルト、アルファロメオ)、スウェーデン1(ボルボ)、アメリカ1(ジープ)。

  どれも日本向けにもかなり頑張っているブランドばかりだなー。月に1000台売れるブランドはドイツの4つとMINIとボルボの合計6つ。他にもジープ、プジョー、フィアット、ルノーは手頃な価格のモデルを拡充していて1000台突破の可能性があります。この16ブランドに関してはもっと売れていいんじゃないか?とは思うんですけど、なんだか無難なモデルが増えてきているんじゃないかと・・・。もちろんルノー・トゥインゴやシトロエンC4ピカソを「小粒」と貶すのは全くの見当違いですけどね。低リスクで衝動買いできるモデルだけじゃなくて、「よしこれで人生を愉しもう!!」と飛び込みたくなるモデルもある程度は欲しいですね・・・。

  まだ日本での販売価格も決まっていないですが、アルファロメオの新しいフラッグシップモデルとして登場する「ジュリア」には去年からずっとソワソワさせられっぱなしです。2017年は話題のクルマがたくさん発売される見込みなので、その中でアルファロメオが存在感を十分に発揮できるのかなー? いやいや!!アルファロメオこそが!!こそが!!こそが!!このブランドこそが日本中のクルマ好き(一般ユーザーも)を熱くさせるツボを持っているんじゃないか!!欧州カーオブザイヤーを引っさげて日本で大反響を巻き起こしたアルファ156&147はまだまだ日本の街をハッピーにしてくれています(ジュリエッタ&ミトもいい味出してますけど)。

  「アルファロメオがない日本の中型車市場なんてクソだ!!」とまでは言いませんけども、その存在感はBMW、マツダ、スバルの「ミドル・ビッグ3」に匹敵します。ミドルカー主体のブランドが、どれだけプライドを持ってミドルカーを仕上げるか?を評価の基準にするならば、やはりBMW、マツダ、スバルのクオリティは短時間の試乗でも十分に感じられますが、これらと同じくらいに、いやむしろその上を行く可能性すらあるブランドがアルファロメオですね。別の言い方をすれば、新型プリウスに走り負けないクオリティを保証してくれるブランドがBMW、マツダ、スバル、アルファロメオ(ジュリエッタ&ミトは怪しいが・・・)。

  そんなアルファロメオですが、ジュリアだけでなく、これに続くクロスオーバー版のステルヴィオもすでに公開されていて、早ければ2017年中に日本でも発売される可能性があります。日本市場でも大人気となっているSUVですが、各ブランドから複数のモデルが発売されるのが当たり前の状況の中で、「ホンダ・ヴェゼル」と「ポルシェ・マカン」という全く別のアプローチの2台の大ヒット車に象徴されるように、SUV自体もある種の目的というかコンセプトや哲学を明確に持って開発される時代になってきたように感じます。

  コンパクトカーよりリッチなボデーで「安っぽく見られない」ことを売りにしたヴェゼル的なSUV(メルセデスGLA、スズキ新型エスクードなど)と、SUVながらも中途半端に作られたセダンやハッチバックなどよりもよっぽど操縦安定性に優れているマカン的なSUV(エクストレイル、CX5など)は、それぞれよく売れました(GLAとエスクードは微妙)。完全に空振りに終わったのが、レクサスNX&トヨタハリアーで、どうやら設計段階ではひたすらにパッケージ優先だったようで、価格も走りも中途半端な仕上がりで出て来てしまいました。トヨタ自慢の居住性&HVを享受するならば、わざわざ400〜500万円するSUVじゃなくてもヴォクシーで良くない?ってなっちゃうよ・・・。

  600万円台で出て来たマカンの前にX1以外のBMWのSUVラインナップは全く歯が立たずで、次世代モデルが待たれるところですが、2017年に投入されるのはX2という新型モデルになりそうです(FFか?)。「走り」のクオリティで勝負するSUVは、ポルシェがBMWを研究して直4ターボのレスポンスから、自慢のブレーキ、トルク制御によるスポーツカー的な演出まで計算づくで盛り込んだマカンに対して、エクストレイルがGベクタリングコントロール機構を先に持ち込み、日産の真似が大好きなマツダも全ラインナップに「Gベクタリング・コントロール」を装備して、まるでマツダの専売特許のように宣伝していたりします。

  マカン、エクストレイル、CX5が「付加価値を持ったミドルSUV」として日本市場で人気になっています。CX5が出て来るまでは日本ナンバー1の売り上げを誇っていたスバル・フォレスターもCX5のデビューと同じ2012年にFMCをしますが、こちらは足回りの作り込みがスバルの仕事とは思えないほど酷い仕上がりだったことで、トップシェアから一気に滑り落ちました(その後MCで修正はしましたが)。新型インプレッサから採用された新型シャシーを使って、早ければ2017年中にもフォレスターもFMCが行われて巻き返すとは思いますが・・・。

  さてアルファロメオですから、ミラノ製初のSUVに相当の技術的な「裏付け」をしてくるとは思いますが、果たしてポルシェ、日産、マツダといった世界のトップエンドなテクニカル・ブランドに対してどれだけ競争力があるのか?ちょっと心配なところもあります。マツダCX3に判定負けしちゃうくらい(に平凡な走り?)のアウディQ2やメルセデスGLAを相手には優位を築けると思いますが、「走りを極限まで研ぎ澄ませた」とか大口を叩いているトヨタC-HRに足元を掬われるのか? それとも2017年にやはり日本投入が決まっているプジョーの「秘密兵器」と言われる新型3008の驚異的な進化を遂げた走りの前に敗れさるのか? ・・・いやいやたぶんマカンターボを越える超絶パフォーマンスグレード有り!のド派手な展開で度肝を抜いてくれるでしょう。


リンク




  

  

  

  

  

  

  

  

2016年12月13日火曜日

ポルシェ718ケイマン 無我の境地で乗りたい1台

  昨今のポルシェを始めとしたロードカー・ブランドは不可解なとこがしばしば起こります。まあ日本国内だけでクルマ乗って愉しんでいる輩には、ポルシェの本当の価値なんて到底に解りっこないわけですけども、日本人は相変わらずにポルシェが好きです。そしてやたらと文句もいいます。「ターボになったポルシェをどう思う?」「もうこれ以上速くなくていいよ、それよりはフラット6の音を大事にしてほしい」「そうだよねスポーツカーは官能性こそが商品価値だ!!だからターボのポルシェは否定する!!」

  日産、ホンダ、スバル、マツダにとってはもはや日本市場なんて無くなってもいいくらいの存在かもしれませんが、ポルシェのような高級ブランドにとっては日本市場はまだまだ魅力たっぷりなようです(だからわざわざ東京モーターショーにも出品!!)。しかし大事な日本のファンの気持ちを知ってか知らずか、ターボ化だったり4気筒化だったりを大胆に行う潔さ・・・これもポルシェの魅力なのかもしれません。過去にも空冷エンジンが廃止されて賛否両論が巻き起こりましたし、直後の996型は中古車市場でもやや不人気で歴代911で最も手軽に手に入るモデルとなっています。

  4気筒ターボのミッドシップになった718ケイマン。ポルシェが常に真剣に目指している「パフォーマンスの進化」においては、ニュル北で997GT3を越えるタイムを出したとかで、4気筒のポテンシャルにはちょっと驚きます。それだけの完成度のマシンがお値段はほぼ据え置きのままの619万円で買えるなんて!!。うーん。決して安くはないですけども、どーしようもなくつまんないクルマに400万円、500万円と投じるくらいならばさ・・・。

  ポルシェっていうと、日本ではだいぶ年配のそこそこカネ持っているオッサンが好むクルマになってますけど、映画「アイアムサム」に出て来る女性弁護士のようなアクティブな女性に似合うクルマだったりするなど、アメリカや欧州ではもっと幅広い年代の人々が愉しむブランドみたいです。718ケイマンの北米価格は$53000なので、それほど日本価格も法外なものではないです。619万円ならば、レクサスISを買うくらいの負担で賄えそうです。そして「ステータス」や「非日常なスポーティ」を考えれば、レクサスISなどよりもむしろお買い得といっていいかも。

  「欲しいクルマがないー」と同じことを毎週のようにつぶやきながら、ゾンビのように漂っている日本のクルマ好きは多いです。しかし実際のところはいざ輸入車のMTモデルが候補nなるとすぐに尻込みするし、5km/L程度しか走らない極悪燃費の大排気量モデルにも及び腰でなかなか踏ん切りが付きません。結局のところ自分自身が問題なく「乗れる」クルマの範疇がとてつもなく狭い結果のゾンビ化じゃないか?という気がします。718ケイマンにしても、ポルシェの年間のメンテナンス代はとてつもなく高額になりそうだし、MTを買うべきなのはよく解っているんだけど、最初の興奮が過ぎ去っていく経過に対して、ほぼ確実に購入前に想像を巡らしています。乗り始めて半年経って3ペダル車が手に負えなくなっている自分の姿が見えてしまっているんだと思います。

  手軽に買えて、決して手に余ることなく、周囲からバカにされることもなく、カッコいいクルマ・・・そんなメチャクチャな条件に合致するモデルなんて無いですよ!!そんな自分勝手なユーザーの為にメーカーが開発努力をする必要なんてさらさら無いと思います。既にスポーツカーだけでも相当な数のモデルが日本でも発売されています。マツダ・ロードスター/アバルト124スパイダー、トヨタ86/スバルBRZ、ホンダS660といったお手軽な日本勢と、ロータスエリーゼ、アルファロメオ4C、ジャガーFタイプ、シボレーコルベットなど1000万円以下のモデルだけでも相当な数があります。これにスープラ、シルビア、RX9が加わる!?

  これだけ多彩なラインナップがある中で、パフォーマンスというスポーツカーの正義を貫いているモデルが「718ケイマン」であり、価格帯でもちょうど中間くらいに位置していることからも、現状の1000万円以下のスポーツカー市場においては唯一無二の存在といって良さそうです。4気筒ターボ300psにミッドシップ、さらに抜群の制動性能、ハンドリング。これに追従出来るモデルは・・・GTカーとしてならジャガーFタイプ、ピュアスポーツならアルファロメオ4Cくらいでしょうか。もし4Cに載っている1750TBをアバルト124スパイダーに載せた特別モデルが競技用ではなく、市販ロードカーとして発売してくれるなら、総合力でも718ケイマンにかなり近づくような気がしますが・・・。

  ちょっと前に沢村慎太朗さんが「本物のスポーツカーは911とロードスターだけ!!」という名言を著書の中に残しました。厳密に言うと「991系とNCロードスターだけ!」ということらしいです。ジャガーもロータスもアルファロメオも否定できるほどに、ポルシェとマツダのスポーツカーへの情熱は際立ったものなのだと思います。ロードスターと991系911の2台持ちは最強!?お買い物はロードスターで、お出かけは911で・・・これが正解なんだと。・・・718ケイマンが1台あればOKじゃ?もう1台はファミリー用にマツダCX5でもあれば幸せなカーライフかも。

2016年12月2日金曜日

BMW・X2 「ビーエムだって真似ることもあるさ・・・」

  MINIのプラットフォームを使うFFのBMW車がじわじわと増えてきました。「2erアクティブツアラー/グランツアラー」に始まり「X1」そして来年中にも発売される「X2」と投入時期は未定ながら開発の最終段階に入ったとされている「1er」もFF化されるみたいです。身も蓋もないつまらない事を言うと、BMWも「総合プレミアムブランド」としてファミリーカーのラインナップを充実させるためには、キャビンスペースの確保が最優先課題になりますので、横置きエンジンでフロント部を短くしたり、プロペラシャフトを廃止して床がフラットにもできるFFのメリットを真剣に考えた結果ですから、ビーエムはFRだ!とか言っている旧来のファンはとりあえず放っておきましょう。

  FFのBMWが登場するまでは、BMWブランドはおおよそ3つのプラットフォームで構成されていました(i3とi8は除く)。5〜7erを担当する「L6」、1~4erとX1~X4およびZ4担当する「L7」、X5~6は「ラダーフレーム」です。意地悪い言い方をすれば「L6」と「ラダーフレーム」がパフォーマンス志向で、「L7」がコスト軽減を徹底したモデルです。価格はどれくらい幅があるかというと、「L6」や「ラダーフレーム」にBMWらしい6気筒が搭載されれば、最も安いモデルでも日本価格では1000万円前後に設定されています。一方で「L7」に関しては4気筒エンジンでは300万円を下回る設定までされていて、6気筒を積んでも500万円程度から購入可能です。

  まだBMWがホンダに負けないくらいの気持ちのいい高回転エンジンを作っていた10年前はE90系という先代の3erが大ヒットしたりしていましたが、4気筒でしかも低回転のターボばかりのラインナップになってからというもの、この二者択一のプラットフォーム分けによるマーケティングが、日本ではどうも裏目に出たように思います。「ラダーフレーム」はそれなりに支持されるも、もしかしたら戦略の一環かもしれませんが「L6」使用車の販売はごくごく限られたものになりました。マセラティ・ギブリのヒットやレクサスの日本での拡販に圧された印象もあります。

  一方で「L7」が担当する下級モデルも、VWやFF化したメルセデスに「輸入車需要」をかなり吸い取られ、またプリウスやヴェゼルなど300万円前後の価格帯で独自にマーケットを切り開いた日本車にもいくらかヤラレてしまった印象があります。そしてもちろん傘下のMINIブランドの成長にも喰われている部分も相当にあるはずですが・・・。そんな窮状を結果的に救う形になったのが、どうやらBMW2erアクティブツアラーみたいですね。BMWファンからのブーイングをものともせず、カーメディアに350万円の価値無し!とまで書かれても、そしておそらく「プライドをかなぐり捨てて」作ったであろうFFツアラーでしたが、見事に日本でも結果を出しました!!

  Cセグが売れないといわれる日本市場で発売初年度とはいえ月に1000台以上をコンスタントに売ったのはとても立派です!!ベースグレードは100万円台後半に設定されているアクセラやインプレッサを相手にしたことを考えると大健闘だと思います(ゴルフの一時的失墜という幸運もありましたが)。コストパフォーマンスがあまり通用しなくなった新規ユーザーやリタイア世代を取り込む日本のCセグは解読不能な部分も多く、スバルの異常なまでの新型インプレッサのプロモーションや、アクセラが自動ブレーキテストでトップを獲ったという報道(マツダがコミにカネを払って報じてもらってる?)が飛び出すなど、ライバル陣営もかなり神経質になっている様子が伺えます。そんな市場を298万円のFRの1erではまったく切り崩せなかったのに、FFの2erによって見事に扉が開いたわけです。

  車高が低くてスポーティな見た目のプリウスに対して、Cセグではもっとも腰高なデザインでいかにも「ピープルムーバー」的な2erアクティブツアラー。先代までのプリウスと1erの関係と対比すれば、完全に立ち位置が入れ替わっています。2erアクティブツアラーの牧歌的なスタンスは一体どこの市場の発注なのでしょうか?日本?フランス?それとも中国か? もちろん「あのBMW」が作るからこそ効果的な部分もあるでしょうが、ホンダの流れを組んでいて操縦安定性の高さに定評があるMINIのシャシーに、トヨタ系列アイシンAWの「世界で最もコンフォート」と言われるFF用ミッションを躊躇無く採用し、車体は日産のピープルムーバーを思わせるNVH対策バッチリの堅牢な設計。80年代に世界を制した日本のFF車の「ハイライト」が詰まったクルマだと言えなくもないです。

  スバルがビルシュタインだ!!トヨタがザックスだ!!とアピールするように、日本車はドイツ車をモチーフにクルマを仕上げることをある種の「文化」にしています。その反対にドイツメーカーも直4ターボ&AWDのハイパフォーマンス車が増えるなど、日本のランエボ&WRX・STIのスタンスをスポーティの理想として掲げていたりします。そんな中でBMWの2erアクティブツアラーには、日本メーカーへ捧げるメッセージが詰まっているクルマじゃないかなーという気もします。(BMWも日本メーカーも)「我々はアメリカナイズに走り過ぎてないか?日本とドイツの栄光のロードカー文化を取り戻そうぜ!!」という呼びかけではないかと・・・。

  さて先日のパリモーターショーで公開された「BMW・X2」です。日本車へのオマージュと言うと語弊があるかもしれないですが、日本のユーザーとは心で通じ合った2erアクティブツアラーの設計を使いつつ、クロスオーバー化に際して、さらに新たな日本メーカーをリスペクトに加えたようで、日本車のオマージュを上乗せして来ました!!もうリアデザインなんて完全にドイツ車ではない!!そう断言できるくらいの作り込みっぷりです。もはやどの日本車よりも日本メーカーのエッセンスが凝縮された1台にまで昇華しましたねー。できれば価格も日本車並みにしてくれるとさらにGOODなんですけど・・・。

リンク

2016年11月23日水曜日

VWの新型ティグアン ある意味でSUVの常識を越えた!?

  まもなく日本でも発売されるであろうVWのミドルサイズのSUVである新型ティグアンが、なかなかとんでもないことをやってのけました。SUVとしては異例のユーロNCAPによる衝突安全基準でハイスコアを出しました。2016年測定車の中ではアルファロメオ・ジュリアに次いで第二位!!!メルセデスEクラスにもまさかの完勝!!!もはや「セダンは安心だから」と言ってられる時代じゃなくなっているのか? ユーロNCAP無敵の帝王といえばボルボ、マツダ、ジャガーの旧フォード勢ですけども、SUV同士の評価に限ればティグアンが最強!!あのプリウスにも負けちゃうボロクソワーゲンがクラスの頂点に立つなんて!!

  「VW(あと三菱とスズキ)に関するデータは鵜呑みにするな!」というご意見もあるでしょうけど、2014年に日本の研究機関にガソリンターボの排ガスの劣悪な処理機構を指摘され、2015年にアメリカの研究機関にディーゼル排ガステストを意図的に無効化するシステムが暴露されてますから、2016年にユーロNCAPに特殊車両を提供!!なんてことは・・・そこまで不祥事は続かないとは思いますけどねー。

  北米で今も根強い人気で販売されるピックアップトラックのシャシーに、たっぷりサイズのボデーを載せた設計から始まったSUVの歩みですが、当初は「SUVが世界を轢きつぶす」としてその操縦安定性の悪さから都市部への拡大にはいくらかの批判もありました。2トン超級のボデーに5Lオーバーの大排気量エンジンが街中を我がもの顏で走れば、当然に車種別の事故率でも上位になっていて、北米では統計を交えた批判本も出てます(日本じゃ考えられない!!!)。

  北米のSUVは「危険で燃費が悪い」です。こういうクルマは日本では目も当てられないくらいに売れないですけど、それでも不思議な存在感を発揮します。SUVに限らずスポーツカーやマッスルカーなどなど。アルコールやタバコ、飽和脂肪酸(動物性脂肪)などなど「不健康なもの」を求めるメンタリティが同じように無意識の内にガソリンを垂れ流すクルマをも好んでしまっているようです。ロータリーエンジン車が復活?だったりフェアレディZが作られ続けたり・・・。

  北米のピックアップトラックは今も専用のラダーフレームシャシーに大排気量エンジンをマウントして販売されています。もはや世界でアメリカにしか許されないであろう設計!!(日本にだって軽規格があるさ!)。北米ナンバー1の売り上げを誇る車種といえばフォードのF150というピックアップトラックで、これをベースにしたエクスペディションという大型SUVがあります。環境対応にも積極的なフォードなので最近ではV6の2.7Lエコブーストも設定されています(2.7の6発ターボのどこがエコなんだ!!!スカGか!!)。

  日本のSUVでもアメリカの伝統的なラダーフレームを継承しているのが、ランクルとパジェロ、それから小型ボデーに大きめのエンジンで武装するスズキの旧型エスクード(現在も販売継続)です(あとはジムニーシエラとジムニーもラダーです)。ジムニー以外のモデルは燃費の悪さが敬遠されて日本では少数派になってまして、日本のSUVといえばもっぱら量販車と共通のプラットフォームを使う「なんちゃってSUV」が主流です。

  1997年にトヨタが北米向けに開発した「ハリアー」が大ヒットしました。北米でベストセラーになっていたカムリのシャシーを使ったことで高い信頼性を確保し、開発コストも低減できるアイディアモデルでした。カムリ譲りの走行安定性が高い評価を得て瞬く間にラダーフレームSUVから市場を奪い始めます。これに追従したのが日産で2002年にティアナをベースとする「ムラーノ」を発売して日産自慢の3.5L自然吸気VQエンジンを搭載して人気となります。トヨタも2003年の2代目ハリアーでは3.5Lを搭載して対抗し、瞬く間に北米市場を席巻します。

  同時期に発売されたBMW・X5(2000年〜)など、SUVのヒット車が連発したこともあって、北米と日本からクロスオーバー・ブームが広がります。当時はまだまだ衝突安全基準の評価(NCAP)が黎明期で広く報じられることもなかったですが、北米市場がいち早く始めた「評価」によって売れ筋のSUVが片っ端から低い成績で、堅牢なイメージがあるBMW・X5でさえも部分によっては「POOR」評価を受けるなど、SUVの弱点が噴出しました。ちなみに「SUVが世界を轢きつぶす」という本もこれを受けて2004年に書かれました。ただし衝突安全の評価は一般ユーザーの認識にまでは浸透せず、売れ行きは今も右肩上がりです。

  北米・日本でのブームが、中国の市場拡大によってさらに加速し、中国向けにアメリカ仕様よりも小型になったコンパクトSUVが、今度は成熟・飽和市場であったはずのフランスやイギリスに飛び火します。ハリアーも2013年の三代目からはカムリではなく、北米カローラ(オーリス)のCセグをベースに設計され、日産もムラーノを撤収し新たにCセグのセントラ(シルフィ、パルサー)をベースとしたローグ(エクストレイル、キャッシュカイ)による世界同時発売を行っています。同じようなCセグベース設計でマツダもCX5を、スバルもフォレスターとエクシーガクロスオーバー7を投入しています。

  しかしこれら2012年頃から登場した日本メーカー群による「なんちゃってSUV」は、乗用車トップレベルの安全基準を得ることはできておらず、いずれもベース車に衝突安全基準で劣るというデータが出ています。縦方向に拡大したボデーは当然ながら堅牢さは弱まりますし、大径タイヤを支えるタスクが要求されるシャシーに、ストロークが長めのサスペンションコイルの組み合わせも、当然ながら衝突による衝撃入力に対する強化を施す必要のある「角度」が水平方向からより多くなりますので、軽量化との両立が難しくなります。キャビンを大きくし、冠水路面の走行を可能にする車高を確保することで、通常走行時の安全性が犠牲になっているという宿痾から逃れられません。なぜかこのような背反で二項対立的な局面になるとそれ以上の追求をあっさりと諦めるのが日本メーカーの特徴なんですよね・・・。

  SUVの弱点はシャシーやボデーの強化が難しいだけでなく、開口部が広く大型化されているリアゲートが究極の弱点だと言われています。こういうコトを書くと、どんなクルマだってダンプに突っ込まれればジ・エンドだ!!なんてNCAPの存在価値そのものを否定してくる人もいますが・・・。私はマツダというメーカーが好きなのですが、その一番の理由はハンドリングでもスタイリングでもなく、安全性能に対する妥協ない努力が感じられるからです。そんなマツダでもCX5は低い得点でした。同じように安全性で信頼できるメーカーであるボルボ、スズキ、日産、ホンダに関してもやはりSUVでは大きく点数が下がります。(ス◯ル、メル◯デス、B◯Wは車種によって差が大きいです。「安全」を完全にナメているスコアを平気で出すところが嫌いです・・・700万円もするあの新型フルサイズセダンも酷いことになってますよ)

  さて・・・冒頭の話に戻りますが、VWです。安全性のアベレージが圧倒的に高いDセグのさらに頂点を目指して設計されたアルファ・ジュリアも見事ですけども、それとあまり遜色が無いレベルのスコアを出した新型ティグアンも素晴らしい!!!昨年末から苦境にあるVWが、存続を賭けて多少はコスト度外視してでも「安全なSUVを作ろう!」と努力したようです。ドイツでは今年の春から発売されていますから、タイミング的にも「再出発」の思いが強く隠ったモデルなんだと思います。まだ日本価格は一切公表されていませんが、VW買うならコレじゃないですか?デザインも渋くていい!!グレーメタリックで!!

2016年10月24日月曜日

プジョー508GT 「日本のカーメディアを封殺する珍車登場」

  突然ですが、サスペンション形式はやっぱり大事だと思います。BMWやポルシェのファンが顔を真っ赤にして反論するのかもしれないけど、より上質なクルマの選択としては、トヨタや日産が正しかった!! 素人が何を言っても〜・・・なんですが、「上質なクルマ」という線引きを皆さんどこで感じますか? 例えばVWパサートとアウディA4はかつては同じ設計でしたけれでも、今ではサス形式やエンジンなど全くの別ものになってますし・・・。

  もっと直感的に分るのは日産スカイラインとスバルWRX・S4の違いでしょうか。大上段に「上質な大人のスポーツセダン」を掲げたスバルは完全に発売時期を見誤ったようですね。スカイラインという「本物中の本物」(北米ではクラス最高評価)に軽く大人と子どもの違いを見せつけられました。あれは素人でも十分にわかるレベルの断然な格差で、価格差もわずか100万円程度ですから、WRX・S4が全く売れないのもよくわかります。もちろんスカイラインよりも使いやすいサイズですし利点もあるわけですが・・・。違いは何か?サスとミッションですね。

  アテンザもアコードもサスペンション変更で先代モデルより明らかにハンドリングが悪くなりました。「それでもアウディやトヨタよりは・・・」とか反論されそうですけども、そこと比べてどーするの? 欧州向けアコードの廃止は痛かったなー。シビックだけで補うにはちょっと大き過ぎる穴だと思います。アテンザもアクセラがちょっと大きくなっただけのクルマになりました。うーん・・・これではジャガーやアルファロメオの新型FRスポーツセダンには及ばないんじゃ!? シビックやアクセラはゴルフGTI/Rのようなスポーティな仕上げは可能だけど「大人なクルマ」は到底に無理っす。本物を知る大人はおそらく好きにはならない!フーガやセルシオからの乗り換えなんて現実的ではないです(経済的事情以外で)。

  メルセデス、ジャガー、アルファロメオの新型モデルが、トヨタや日産の方式を採用したことによって今まで「ストラットもダブルウィッシュボーンも変わらない」とディーラーに言いくるめられていたピュアな人々(BMWファン)も眼を覚ますんじゃないかな。再起を賭けるメーカーが迷わず手をつけるところが「サス」なんですよね。良いクルマ作るならここにカネかけろ!って開発者はよく分っているんだと思います。コストはちょっと高く付きますけど、やはりフロントはダブルウィッシュボーンがいい具合なんです。ボルボはどーなんだ?とか言わないで〜(笑)。

  BMWが新たに設計している「3er&5erの共用シャシー」では一体どちらが採用されるのでしょうか?すでに本国では新型5er(G30系)が発表されていますがまだ仕様の詳細がわかりません(ライトとグリルがくっついてるよ!!)。ちなみに7erと共通だったF10の5erはダブルウィッシュボーンだったけど(F30はストラット)。一般的に限界性能を上げるにはダブルウィッシュボーン。競技用(ラリーベース車)で修理をやすくするのがストラットみたいなことが自動車辞典には書いてある。クラウンは前者、86は後者といった具合で使い分けられているようです。

  冒頭にも書きましたけど、ポルシェやBMWの信者は「サス形式なんて関係ない」と言い張る(傾向にある)。確かにウィキペディアにもそんな記述がみられますね。ダブルウィッシュボーンは気休めに過ぎないということか?なら採用しているメーカーはアホ?素人にとっては真相がカーメディアからもなかなか漏れてこないのでイライラする部分ではあります。だけども現実に考えて、2つの形式が主流になっているのだから、それぞれにメリットがあってメーカーが適切に選択していると考えるのが妥当じゃないですか?

  実際はポルシェもBMWも好き好んでストラットを使っている節があります。もちろんコスト面で有利とかいうセコい話ではまったくないです。「リア優勢」という言葉がありまして、ハイパワーユニットを積んで300km/hオーバーを視野にいれた後輪駆動のロードカーでは、意図的にフロントの接地を弱めに設定して、推進力の伝達を邪魔しないように躾るみたいです。後輪の推進を邪魔する前輪の操舵力を大きく影響しない範囲で制限して摩擦を下げる工夫らしい。BMWではE46の後期、E90、F30とその方向が続いているみたいで、それらをベースとするM3がハンドリングマシンと言われなくなったことにも関連するようです。

  これがリアエンジンのポルシェならなおさらのことで、このクルマが加速・制動時に独自のメカニズムで姿勢変化させるのも、過激なまでのリア優勢で限界走行での挙動がきわめて危険とされているからだ(それがポルシェの魅力だけど)。RR設計の宿命らしい。ポルシェを強く意識し後方に重量があるミッションを置くトランスアクスルを採用するM3ならまだしも、ノーマルでミニマムな320iがストラットを使う利点はほぼ無いといっていいのかも。このグレードを多くのクルマ好きが毛嫌いする理由の一つがこれみたいです。

  BMWだけがダメというわけではないです。スバルだって全面的にストラットが採用されています。そしてマツダやホンダもこれらと同じ土俵に堕ちた!?。VWと共通設計のアウディやFFのメルセデスだってストラット。ポルシェや300ps超のBMW直6、ラリーベースのスバルには一定の根拠があるけども、他は「ストラット大衆モデル」でもはや走りを云々言うのもバカらしいクルマに過ぎないです。ディーゼルやハイブリッドで燃費を稼ぐ方向性がよく合ってますよ。

  そして「プジョー508GT」。いよいよ日本に上陸しましたが、このクルマ「GT」だけはサス形式が違うという珍車。そんなこだわりを21世紀になっても持ち続けるプジョーというブランドに感動すらします。ベースモデルはストラット。「GT」はダブルウィッシュボーンです。わざわざユーザーの趣向に合わせて二種類用意されています。もちろんブランドの最上級モデルだからという意地もあるのでしょう(マツダ・・・)。

  これまでサス形式への言及を徹底的に避けてきた輩てきてプジョーの心意気を語っててくれよ!S水K夫、K沢M宏、S下Y久。まあダブルウィッシュボーンが良いなんてメルセデスの時も決して書かなかったから、よほどバツが悪いとは思いますが・・・。動画で素直に「メルセデス良くなりましたねー。サス変更大正解です。」と吐露したK口Mなぶ氏は逆に何も考えてないのかもしれないですが・・・あっぱれでしたね。

リンク
BMW新型5er(G30系)の動画
最新投稿まとめブログ
 

2016年10月6日木曜日

日本車やドイツ車の優位はもうすでに終わりを迎えたかもしれない・・・。

  「クルマの多様化」という観点からみれば、日本メーカーの突き進みっぷりは、海外ブランドを圧倒しています。規制でガチガチで設計の自由度が制限される軽自動車においてさえも、「動力性能」はアルトワークスやアルトターボRS、「コンフォート」ならムーブ、「エクスペリエンス」ならばS660やコペンなどなど、どの分野においても1Lクラスの普通車ならば軽く上回るのでは?というくらいのレベルに達しています。

  これが普通車になるとそのスケールもけた違いに広がり、言うまでもないですが「動力性能」ならGT−RやNSXやRC-F、「コンフォート」ならLSやアルファード、「エクスペリエンス」ならロードスターと、いずれも世界にその名を轟かせる名車がずらりと並びます。ちなみにこれがドイツ代表だと「動力性能」911ターボや63AMGの各モデル、「コンフォート」だとSクラス、「エクスペリエンス」だとSL、911タルガ。ドイツというよりメルセデスとポルシェですね・・・。

  これがイタリア代表だと「動力性能」488GTB、「コンフォート」クワトロポルテ、「エクスペリエンス」カリフォルニアT。イギリス代表だと「動力性能」ヴァンキッシュ、FタイプSVR、「コンフォート」だとファントムやコンチネンタルGT、「エクスペリエンス」だとロータス、ケータハム、モーガンの各モデルなどなど、貴族的あるいはマニアックなクルマばかりですけども、やはり自動車先進国らしく、エッジの効いたモデルはしっかりと揃ってます。さてアメリカや韓国は?

  そんな風に大雑把にラインナップ全体を見て、世界でのクルマ作りの中心地がどこだか理解した気になっていると、思わぬクルマに後ろから頭をゴツンとやられます。日本やドイツが馴れ合いでそこそこのクルマを作り、イギリスやイタリアが貴族趣味のクルマで自己満足している、ある意味では非常に「ゆるーい」業界を、疾風のごとく駆け抜けていく上昇傾向にあるメーカーが2つありますね・・・。

  1つはアメリカのテスラです。徹底的にエンジンで走らないクルマばかりを作る異色のメーカー。ガソリンか?電気か?なんて読者をナメすかした議論を延々と展開してお茶を濁してばかりのカーメディアには少々うんざりしてます。そんな毒にも薬にもならない議論では全く想定出来ていないアッパーなユーザー層だけに向けて、テスラのビジネスドメイン開かれています。とりあえず初期費用などの価格設定をみる限りは、社会インフラとして機能しようという気はまったくないようです。

  あくまでテスラが目指すのはEVにおけるフェラーリ。EVにお金を惜しまない人々が一定数いれば、クラッチ制御に勝てるコンバータ制御だって作れますよ!という技術的な担保だけがこのメーカーの存在理由なんだと思います。現状でのテスラの評価なんてその1点だと思うのですけど、あーでもないこーでもないと書いているカーメディアの記事があまりに空振り過ぎて、日本では全く何も起こせていないですね。カーメディアのレベルがどうしようもなく低いことを偶発的にもアメリカ企業が暴いてしまった瞬間です。まあテスラも日本のカーメディアには何も期待していないでしょうけど。

  もう一つはボルボ。F1でもWRCでもなくツーリングカー選手権を看板に、「ポールスター」という名を冠したとても真面目なロードカーを作ってます。テスラがアメリカ政府の手厚い支援を受けているように、ボルボもスウェーデン政府と中国資本のバックアップを受けて「国際競争力」を強く意識したクルマ作りをしています。もちろん日本のマツダやスバル、あるいはドイツのVWやオペルのような自画自賛レベルの幼稚な次元ではなく、どのレベルのユーザーやマーケッター、シェアホルダーにも直感的に「躍動」が伝わるようなダイナミックな展開を見せています。

  意地悪く言うならば、マツダとかいうメーカーがユーザーには直感的にわからない「圧縮比」やら「Gコントロール」やらで優位性を語ったり、スバルがテレビCMで情緒たっぷりに衝突安全性や予防安全性における取り組みを刷り込んでますけども、ボルボはそんな間にマセラティと同等の価格のラグジュアリーなSUVとセダンを北米に堂々と投入しましたとさ!!!なんと大胆なことを!!!

  さらにマツダが熱心に語るエンジン効率においても、元々はフォード傘下で共に協力した関係でもありますし、フォードとトヨタ系列のバックアップもある現在のボルボは技術面においてもマツダと同等以上の水準にあります。マツダがコトあるごとに強調する乗り心地に関しても、ボルボの一般モデルを試してみるとビックリなことに、とてもしなやかで減衰力に富んだアシの路面への対応力は日本やドイツの一流ブランドすら出しぬいたレベルに達しています。そしてとても有名な話ですが、衝突安全のテストでは常にスバルのはるか上がボルボの定位置となっています。

  マツダやスバルが必死にアピールしているコトって確かに大事ですけど、スウェーデンの一匹狼になったボルボにとっては、もっともっと市場に対して影響力があるコトを限られたスキームで発信する必要があるんだと思います。自国の市場だけではとても生きていけない。縄張り意識が強いEU諸国も大きな成長は見込めない。ボルボの価格帯から考えてまだまだぺーぺーの新興国では話にならないので、世界が注目する中国やアメリカで生き残るしかない。だからマツダやスバルのような「きれいごと」だけでは到底済まされないシビアな現実のなかでキレキレのリアリスト集団がタクトを握っているのだと思います。

  新しくなった「S60/V60ポールスター」も直4スーパーチャージャー&ターボチャージャーで、レスポンスも最高出力も目一杯まで押し広げていて、直4最強を掲げていたAMG45のエンジンを上回るスペックに達しています。割と自由なクルマ作りで独自路線のイメージがあるボルボが、突如として勝てそうなジャンルの頂点に目星を付けて、そこに集中的に資本投下して非常に競争力の高いモデルを作る。「選択と集中」がもしかしたらトヨタよりも上手くできているのではないでしょうか? 今後のボルボに大いに期待したいです。


 

2016年9月6日火曜日

アルファロメオとルノーは風を吹かすか!?

  自分の感覚がどれだけクルマ好きの気持ちを代表できているのか?それに関してはあまり自信はないですけども、マツダやスバルというよりもルノーやアルファロメオにワクワクしています。何がそうさせるのかというと、うーん!やっぱり1台のモデルに捧げる情熱ですかね。マツダやスバルももちろんなかなか高い水準にあるんですが、それをさらに越えてきたんじゃないの?

  ルノーは日産に、アルファロメオの母体フィアットもマツダに投資するなど、日本の自動車産業にも非常に関係が深いです。おそらく日本での知名度を確保する為だとは思いますが、どちらも細々と日本市場での展開を続けています。どちらも日本で発売するモデルは数えるほどですが、それぞれに気になるモデルが幾つもあるのがスゴい。ルノーはメガーヌエステートGT、カングー、トゥインゴ。アルファロメオは4C、ジュリア、ジュリエッタQV。ライバル多数のジュリアはともかく、他の5モデルはとても個性的な立ち位置で、220ps&MT(メガーヌエステートGT)や、1.75L直4ショートストロークターボ(ジュリエッタQV)は、どちらもハイレベルな日本の直4にも負けないくらいの「ユニット買い」モデルです。

  それぞれの最新モデルとなるトゥインゴとジュリアは、どちらも本格導入が2017年だそうでなかなか焦らしてきます。なんだか限定版の左ハンドルだけで日本からドロップアウトしてしまったフォード・マスタングみたいな売り方にいささか嫌な予感もします。それから「風向き」がどうなるかも気になるところです。せっかくトゥインゴなのに、スイフトのFMCの後に本格導入するんですか?ジュリアもこのままだとスープラとガチンコですが・・・。

  もっとも各メーカーともに「自信のあるクルマ」に関しては発売日よりもかなり早くから情報を公開する傾向にあるようですから、従来よりも早く情報公開してしまって生産工程の段取りができてないのかもしれません。

  ジュリアはいよいよ並行輸入業者によって510psの最上級モデルが「900万円」と値段がでました。超絶スペックを考えるとかなり戦略的な価格です。ただしこれによってただちにM3の日本価格が下がるとはなかなか考えにくいですし、十分に楽しいM2をもっと割安で買う事ができます。それでもM3のスペックを軽々越えてフェラーリ製エンジンが搭載されるという、なんともわかりやすい「商品力」を考えると・・・(売れるかどうかは別にして)注目度は高いはずです。

  フィアットグループの日本戦略としては、今年は輸送コストがかからない(広島から出荷)アバルト124を目一杯売って、2017年はジュリアを売るってことなんでしょうか。グループ全体で考えれば極めてまともな戦略ではありますが、いつまでも人々の中でジュリアへの情熱を持ち続けてくれるとは限らないー・・・。あのアバンギャルドなデザインが1年後はどんな印象になっているのでしょうかわからないですよー・・・。

  ジュリアに関して言えば、ベースモデル(DかGかわからんけど)は400万円を割り込む価格でのインパクトのある投入が検討されているようです。日本市場のDセグセダンは参戦するブランドこそ多いものの、突き抜けるようなモデルは・・・どこに?とうとう悪名に染まった3er、見かけ倒しの未完成Cクラス、オンボロユニットのレクサスIS(&マークX)、借り物ユニットのスカイライン、価格の割に迫力不足のジャガーXE・・・名ばかりのスポーティで高齢者向けのクルマに成り下がっていますね。そういう閉塞的な状況を今度こそは打破してくれーっていう想いがジュリアへの期待感になっています。これでベースモデルの乗り出しが500万円を軽く越えるようならズッコケちゃいますね。

  ルノーの方もトゥインゴの先行予約を開始していますが、当面は2ペダルのみの展開になっていて、新たに追加されたカングーの新グレードへのプロモーションへと移っています。たしかに今の日本市場ならば190万円のトゥインゴより、240万円のカングーの方がポテンシャル高いのもよーくわかります。シエンタ、フリード、ノア、セレナ、ステップワゴンがグレード別に混在する価格帯にそのまま突っ込んでいけるコスパと機能性(7人乗りではないですけど)は、グラグラ来るでしょうし、なんといっても日本車でもっともユーザーのボリュームがあるところですから、もしかしたら大ブレイクもあるでしょう。

  ボリュームという点ではトゥインゴも熱いです。特に5erとかEクラスとかいったフルサイズセダンのユーザーから見れば、見るからに楽しそうでぜひセカンドカーに欲しいっていう人が限定50台のMTモデルに殺到したのかなー・・・という気がします。ちょっとしたセカンドカーにマツダのCX3辺りを所有していた人は、ちょっと飽きて来たディーゼルカーをほっぽり出して(CX3は下取り高いですよ!)、トゥインゴに行きたくなるでしょうね。

  「風を吹かせて」注目を集めるブランドってのは、日本に生活する中でクルマを使って何がしたいか?をハッキリと意識させることが出来るんだと思います。アルファロメオやルノーが本物の風を吹かせるかどうかは、ちょっとわかりませんけども、どちらの陣営も既に実際に風を吹かせているポルシェやMINIをよく研究しているな〜・・・(笑)。510psのハイパフォーマンスユニットを搭載するとか、RRシャシーを使うとか、コミカル(ポップ)なデザインだとか、MTを積極的に採用するとか・・・。とりあえず楽しみに待ちたいと思います。

リンク
最新投稿まとめブログ


  

2016年8月16日火曜日

トゥインゴ と スイフトRS 究極の選択!?

  わずかに3分で売り切れたというルノー・新型トゥインゴの100台限定ラウンチモデル(MTとDCTが50台ずつ)。ちょっと前まで月に300台くらいしか売れてなかったルノー車が、3分で100台売れました!ってそれは一体どんなレアなモデルなんだ!?と思いきや東欧やアジアなど新興国市場で売っている極めてベーシックなクルマです。ちょっと余計なコト言うと、欧州では60~70万円くらいで売られているクルマに170万円〜とか値段が付いているのに、「これはお買い得だ!」って絶賛されてます。ルノーが久々に掘り当てた金鉱?ですね。170万円以上でどんどん売れるんだから、インドなどに降ろす前に日本でたくさん売り捌いた方がいいんじゃない?

  後輪駆動の小型車を熱望する声がずっとありました。スバルが86を量産するためにサンバーのラインを閉鎖した時は惜しむ声も多かったなー。日本メーカーはスポーツカーでもないRWDが売れるわけないと思ってたんでしょうね。トゥインゴ・フィーバーを受けて、「トヨタも躊躇せずにさっさとS-FRを市販化すればよかったのに・・・」とかいう声も聞こえてきそうですが、日本市場ってのはトヨタがルノーのマネして同じクルマ作っても売れ行きが全然違うってことが起こるんですよね。ブランドのイメージが結構大事みたいです。トゥインゴと同じ設計のスマート・フォーフォーは先行して販売されてますけど、「偽メルセデス」のイメージが強い日本では全く売れてないです。要はルノーがコツコツとマジメにやってきた結果のブランド力あってのトゥインゴ人気と言えそうです。

  RRの駆動方式に軽量なボディ、4ドアの使い勝手といったポイントを抑えつつ、限定グレードではMT&自然吸気エンジンという『欧州の香り』をダイレクトに感じられるクルマになってます。『ターボ&DCT』が欧州だと勝手に解釈している人からしばしばコメント貰いますけど、それってあくまで『アジア仕様』の主流に過ぎないんですよね。欧州ではA、Bセグはガソリン自然吸気、Cセグ以上はディーゼルターボが最も多いです。A、Bセグ用のエンジンにターボをポン付けしたものを中国やタイで大量に作っていて、それがCセグやクロスオーバーの日本仕様にも使われてますが、あんなものは欧州テイストではないって乗った瞬間にわかりそうなものですけどね。

  日本市場の欧州ブランド車も徐々にエンジンラインナップの刷新が図られていて、CセグやBセグの重量級にはディーゼルを配置するブランドが一気に増えました。願わくば、軽量級にはもっとガソリン自然吸気を配置してほしいところです。もちろん自然吸気&MTのスポーティなハッチバックなら、ジムカーナなどの競技用に日本メーカーからスペシャルモデルが設定されています。スイスポ、デミオMB、フィットRS、ヴィッツRS、ノートNISMO・Sなどなど。スズキ、マツダはともかくいくら競技用とはいえホンダ、トヨタ、日産の大手の価格はちょっとボッタクリ気味な気が・・・。結局はカネと暇を持て余す中高年向けなんでしょうね。とりあえずWRX・STI、86、フェアレディZのサブマーケットとして位置づけられてるようです。

  クルマ好きな若者にとっては『トゥインゴ』がどう映るのかはわかりませんが、日本メーカーが用意するホットハッチとも、ポロGTIや208GTIといった欧州のターボハッチとも違う、もうちょっと『センチメンタル』な存在として受け止めている人も多いと思います。例えが適切かどうかわかりませんが、ちょうど『頭文字D』の主人公が乗るハチロクことAE86(非ターボ165ps)みたいな立ち位置になっていて、280ps以上のFRスポーツ(RX7、S2000、シルビア)やAWDスポーツ(スカG、エボ)の使い手に「時代遅れのハチロク」と揶揄されるクルマへのシンパシーに近いものがあると思います。峠でトゥインゴ(サンクS・非ターボ70ps)がスイスポ(136ps)や208GTi(200ps)を軽くブッチ切ったらそりゃカッコいいですね・・・。

  このトゥインゴと同じような立ち位置にあるMTモデルのクルマが『スイフトRS』で、1.2Lの自然吸気91psながらも欧州仕様と同じフラット感のある足回りを備えたモデルとして地味に限定販売されています。スズキのラインナップでトゥインゴのライバルモデルになりそうなモデルには他に、軽自動車の『アルト・ワークス』がMTでありますが、こちらはターボ車(64ps)で、しかも超軽量設計(トゥインゴより200kgくらい軽い)なのでそこそこ速いです。出足が生きるコースならばスイスポともいい勝負ができるくらいの性能で、ワークスの名に恥じない立派なスポーツチューンになっちゃってます。トゥインゴGTかルノースポール版が出て来たら好敵手になりそうですけども、とりあえず『素』のトゥインゴとはクルマの方向性が違う気がします。

  さて『スイフトRS』ですがトゥインゴよりも安い148万円。しかもベースのスイフトとはエアロやランプでしっかり差別化が図られていて、リアのブレーキもスイスポと同じディスク式が採用されています。スイスポ(1.6L)ともエンジンが違うだけで大きな外観的な差がないとか。そろそろ次期モデルが噂されているスイフトなので、買えるうちに買っておきたいなーという気がしないでもないです。次期はターボ化されるというスイスポも現行モデルがとっても名残惜しいですけども、その影に隠れてあまり陽の目を見る事がなかった『スイフトRS』には興味が湧きます。買っておかなきゃ後悔するかな!?それともトゥインゴがあればもう十分か・・・ルノーはぜひMT仕様をカタログモデルにしてください!

リンク
最新投稿まとめブログ

  

  

  


2016年7月25日月曜日

アウディQ2 「ブランド再編にかかる期待大!」

  アウディといえば「フォー・シルバー・リングス」の意味するように4つのオリジナルメーカーにその系譜を持ち、100年以上の歴史とさまざまなDNAを受け継ぐドイツ自動車産業を代表する老舗ブランドです。4つのブランドによる『連合(アウト・ウニオン)』ってのがちょっとややこしいと同時に興味深いところですね。例えば今の日産のルーツには『ダットサン』と『プリンス』という2つの流れがあって、両者の関係は今も『Z』と『GT-R』が並立していて、同じラインで製造されているものの、ゴーンさんでも「統合」出来ない根深さを持ってます(シボレーはコルベットだけなのに、北米日産はなぜ2台ある?)。これがアウディの場合はそれほど顕著に見られずに、『クワトロ』という商標へと溶け込んでいます。

  そもそもアウディらしさって何なのか?日本では名前とデザインだけが先行して人気になっている節がありまして・・・アウディユーザーは好き勝手にブランドのコアを解釈しているようです。スバル以外の日本メーカーのユーザーも似たようなものですけど。主張がバラバラなのははユーザーが悪いのではなくて、作り手側が曖昧に発信しているからってのもありそうです。特にアウディに関しては4つの源流がありますから、「高級」「高品質」「スポーティ」から「エンジン屋」ってものまで全部正解といっていいみたいです。

  簡単にアウディの概略を書くと、カール・ベンツやゴットリープ・ダイムラーが活躍したドイツ自動車産業の黎明期に、アウグスト・ホルヒというエンジニアがいて、ます始めに「ホルヒ」というメーカーを作りました。その後に「ホルヒ」の経営から追い出されると今度は新たに「アウディ」を創業しました(アウディはラテン語でホルヒの意)。『WW-Ⅱ』前のドイツの高級車市場では、ホルヒがベンツやマイバッハに大差をつけて圧倒的なシェアを持っている一方で、アウディはホルヒのようなクオリティカー路線を志向するもののハイパーインフレ時代のドイツでは資金集めもまともに出来ずに伸び悩みます。

  そこに出て来たのが世界最大の二輪メーカーとなっていた「DKW」で、経営が苦しいアウディを買収し、有閑状態だったアウディの工場で「DKW」小型車の大量生産を始めたようです。その後DKWの取引銀行であったザクセン州立銀行とドレスデン銀行の画策により「ホルヒ」と二輪メーカーの「ヴァンダラー」が統合されてフォー・シルバー・リングスとなったようです。・・・つまり高級車得意なトヨタ(ホルヒ)と技術&高品質の日産(アウディ)それに二輪メーカーのホンダ(DKW)とスズキ(ヴァンダラー)が手を組んだみたいなブランドが現在のアウディということになります。

  そんなアウディですが、2000年代の圧倒的な勢いが、ここに来てやや影を潜めていて、どうやらブランドのキャラ設定に相当苦しんでいるようにも見えます。北米で躍進したレクサスIS、メルセデスCクラス、ジャガーXEの前に、対峙する意欲すら無くしてしまったかのような地味なアウディA4のFMC。プラットフォームを更新したばかりでまだまだ本調子ではない!とは言っても、条件はIS、C、XEも全く同じです。

  北米市場のプレミアムブランドでもSUVの販売比率が伸びてますが、こちらも圧倒的に優勢なのはレクサスで、ドイツ勢がもたもたしている隙をついてボルボとジャガーが進出しています。特にアウディの伸び悩みは北米でも日本でも鮮明で・・・これまでのアウディの強みって一体何だったんだ?というくらいに全ラインナップで後手を踏んでいる状況です。そんなアウディの悪い流れを断ち切ってくれそうなモデルが出てきました。日本での発売は来年になるそうですが、いかにも『クワトロ』って感じのスタイリングです。

  ジャンルとしては欧州と日本で流行しているジューク、ヴェゼルタイプのBセグベースSUVなんですけども、とても感心したのが安易な造形に走らずに、アウディのこれまでの伝統に即したスタイルをクソ真面目に踏襲しているところです。日本メーカーみたいにさ、ゴ◯ブリとかガ◯ダムとかにインスパイアされるのではなく・・・えーと顔じゃないですよ!サイドのラインがです!アウディの伝説の名車(今もあるけど)である「RS4アバント」を連想させてくれますね〜・・・。

  1990年代の日本で巻き起こった『AWDターボ革命』ってのがありました。イニシャルDに出て来る須藤京一は「AWDターボじゃなきゃクルマじゃねー!」とまで言い放ちました。そんなやる気満々の日本勢(EVO、WRX、GT-R)に対してたった1台で立ち向かったのが「RS4アバント」でしたねー。ただし280psで自主規制していた日本勢に対してRS4アバントは2.7LのV6ターボで380ps。2000年頃の数値をしてはかなり優秀!それもそのはず本物のスポーツチューナーであるF1のエンジンサプライヤーのコズワースが担当してましたから。技術頼みの日本勢の不粋さの残るエンジンに対して、欧州のレース文化で培ったエンジンの方が優秀だ!!と当時の英国メディアは結論しております。

  そんなアウディの金字塔を忘れないで、最新モデルのデザインに取り込む姿勢がいいですね(RS4アヴァントはまだ現役ですけど)!そういうデザインを取り込みたくなるほどに、開発者の情熱が詰まったモデルなんでしょうね・・・これは禁断の「デザイン買い」でいいんじゃないでしょうか!!!ちなみに中身はMQBの横置きエンジンで、A1に使う3気筒まであるようです。全長4191❌全幅1794❌全高1508mmとのことですが(誤植が多い雑誌からの抜粋なのでちょっと不安)、ちょっと腰高感があるヴェゼルが1600mmの高さなので、なんとも絶妙でいいところに収まっていますね。・・・初代アウディTT以来の何かをやってくれそうなオーラを感じるんですよ!


アウディQ2の動画

最新投稿まとめブログ



  

2016年7月19日火曜日

VWゴルフ FFスポーツに活路を見出す!?そして世界が動く・・・

  「FFスポーツモデル」の販売の盛り上げに、日本と欧州の幾つかの陣営が積極的に動いています。比較的手頃に愉しめる価格帯でスポーティなクルマはもっと売れていい!その潜在的な市場を掘り起こすために、複数の陣営が『小競り合い』を演出することで、少しでも多くの人に注目してもらおうといったマーケティングのようです。クルマにはあまり興味がないオッサンが「カッコいいかも!?」といった軽い好奇心で引き寄せられる「怪我しないスポーツカー」市場は、メーカーの予測をはるかに上回るシェアが隠れているようです。

  FFという駆動方式は、パッケージに優れるばかりでなく、軽量化もしやすい構造上のアドバンテージもあるので、アプローチによってはRWD車と同等以上に軽快なハンドリングを追求することもできます。つまりRWDで軽快なハンドリングを追求すると「マツダ・ロードスター」「ホンダS660」「ロータス・エリーゼ」といった、乗用車としてはなかなか潰しが効かないクルマになってしまいますが、FFベースならば「ルーテシアRS」「アルトワークス」「アウディS(AWD)」といった、ある程度の実用性を兼ね備えつつも『スパルタン』なモデルが可能です。

  この利便性を前面に押し出してプロモーションすればFFスポーツは絶対に人気が出るはず!!とは思うのですが、そんな思惑を軽くぶち破ったのが2012年に華々しくしくデビューした86/BRZで、同年に惜しまれつつ消えていったRX8の『喪失(ロス)』を全く感じさせない活躍をみせました。FRのドリ車として迫力のイメージ、4座による実用性の高さ、徹底的なコスト管理で実現した低価格・・・これだけ揃えられてはシビックtypeRみたいなクルマがたくさん売れる余地はなく、FFスポーツにとっては完全に逆風が吹きました。

  この86デビューによって俄に盛り上がりを見せたスポーツカー市場では、RWDのスポーツカーばかりが脚光を浴びました。86の大成功の裏では、先代よりも圧倒的にデザインが良くなった現行のポルシェ・ボクスター(718ボクスター)が、これまた歴代ポルシェの記録を塗り替えるほどの大ヒットを日本で記録していました。86の登場によってスポーツカーが注目され、スポーツカーが欲しくなったユーザーの中には一定の割合で、「もっと本格的なモデルを!」という希望もあり・・・それを600万円そこそこの適度な価格のボクスターがごっそり持っていった!!というのが真相じゃないかと。

  2015年には86の乗り換え需要を睨んだかのようにマツダロードスターとホンダS660が登場しました。86に3年乗ってみて、「やっぱり屋根開いた方がいいな!」と感じていたユーザー層が当然ながらに乗り換えに動いたでしょうね。それにしても86の中古下取り価格はトヨタの見事な戦略?によってかなり高値で安定しています。乗り出し300万円で3年3万キロなら余裕で150万円以上になるようです(乗り換えラクチン!)

  スポーツカーの王道といえるRWDのモデルが次々と登場して盛り上がっていますが、その影に隠れてひっそりと消えて行くのが決まっているのが、ホンダCRZとプジョーRCZといったFWDのスポーツモデルです。手軽に乗れるスポーティなモデルとして今後の主流になっていくか?と思いきや、この2台はあくまでアウディTT基準で設計されているので、ユーティリティ面では期待できなかった・・・。さらに日本のスポーツカー・ユーザーは非常に保守的なようで頑なにRWDを志向しますし、最終的にはトヨタの大英断(86発売)によってトドメを刺された格好になりました。一時はFFのスポーツモデルの最前線にいたマツダやホンダが気がつけば完全に「RWD路線」へと鞍替えしています。

  「FFニュル最速」と鳴り物入りで日本にやってきたルノー・メガーヌRSも、プロモーションの成果も虚しく日本では全く火が付く気配がないです。アウディが用意した超絶ホットハッチのS1も『さっぱり』です。どうやらFFベースで400万円越えたらアウトみたいですね。日本市場はなんだかんだ言っても輸入モデルに対しては難攻不落な場所で、単純に価格下げるしか突破できる道が見つからないですね(日本価格だけ高いなんて論外!)。特にFFモデルには厳しいですね。やっぱり『あの漫画』の影響が大きいのでしょうね。FF車に乗っているキャラクターはやたらと性格が悪いカス野郎として描かれてましたから・・・(ランエボも酷い扱いでした)

    さてそんな『中二病』?で末期的なスポーツカーユーザーの根性を叩き直すために、欧州メーカーの大ボス・VWが本腰を上げて、突然にスポーティ路線を採りはじめました。VWも『ちょっとした』問題発生で騒がれてしまい、日本での販売も低迷しましたが、今年に入って早くも徐々に販売台数も回復しているようで、さらにこの苦境から完全に抜け出して、新たなファンを獲得するためのプロモーション戦略の『始動』といったところみたいです。

  もちろん何のコトを言っているかというと「FFニュル最速」の称号をニュルブルックリンクがある地元ドイツ勢の手に取り戻して、ドイツ自動車産業の誇りを取り戻した件です。フランスや日本のメーカーにレコードを獲られるのは『国辱』ですから、そんなナショナリズム的な国威発揚的な意味があります。ドイツは羨ましいですね。日本にも海外メーカーが来るサーキットすらない・・・。某日本メーカーはラグナ・セカ(アメリカ・カリフォルニア州)の命名権なんて買っている場合じゃないよ〜。

  近年はニュルでの度々の『屈辱』が報じられるポルシェ(エンジンで勝てないからEVってさ〜)に代わって、ポルシェよりも速いVWまでが出てきています。ポルシェのユーザーにとってはちょっと看過できない事態ですけども、実際に0ー100km加速もニュルのタイムもノンターボのポルシェでは軽く負けちゃうレベル。もちろんVW車も加速重視の超絶モデルはゴルフR400というAWDになりますけども、欧州ではすでに発売されているFF駆動のGTIクラブスポーツの「S」という特別グレードもこれまた相当に速いのだとか。

  VW本格参戦でなかなか面白い展開になってきました。一般ユーザーからの信頼が薄れたVWは、カーメディアを使って下手にステマをするよりも、直球勝負で世界に「VWはやはりナンバー1だ!」と刻み込ませる戦略を採りはじめたようです。安易なメディアプロモーションによって販売台数を底上げするのではなくて、スポーツモデルでファンを掴むという『ピュア』な戦略によってブランド力の回復と新たなる市場開拓が狙いでしょうね。そしてなによりも『ゴルフのシャシー性能の高さ』を考えると、それを使ってスポーティなモデルによってポテンシャルの高さを見せつけるという戦略は非常に理にかなっていると思います。BMWもフォードも一目置くVWのシャシーに、圧倒的な資金力を投じて開発したスポーツエンジンを積めば、FF車を生産するブランドで追従できるところは無いはずです。


  そんなVWに絡んで知名度を上げようとするメーカー(挑戦者)は出てくるでしょうね。あまり資金力が無いブランドにとってこれは絶好のチャンスです。「86の波」に乗れなかった残念組というわけではないですが、今度こそは!!!とAMG、フォード、ルノー、プジョー(PSA)、ホンダ、マツダ、日産といった名だたるエンジン屋がすでに臨戦態勢です(日本撤退のフォードが惜しいなー)。VWが示す水準あるいはそれ以上の領域で各ブランドが火花を散らせば、86やロードスターどころか、『出足&二の足』で911やコルベットを軽くぶち抜いていく350~400psクラスのホットハッチが世界中で目撃され、ハッチバック・レヴォリューションと呼ばれる日々がやってくるのも近いのでは・・・日本では販売なしか!?(何言ってんだコイツ!?と思った人は下の動画見てみて!!FFマジで熱いです!!)



2016年7月4日月曜日

プジョー208 と アクア 「不完全コンパクトカー」の魅力

  一昔前は、免許取って最初の1台の定番といえばカローラだったですけども、今日では・・・1台目の定番コースはバリバリのフーガ!!!(もちろん中古車ですが、私の周りにも何人かいました)。最初から新車に乗っちゃう派(&潔癖性)になると、人気なのはアクアかプジョー208辺りみたいです。なんとなくスポーティで、なんとなくよく走りそう。それでいて乗り出しで200万円くらいで済む・・・どちらも日本とフランスそれぞれの「代表」みたいな雰囲気ももってますね。初心者にとってはいろいろな意味で「無難」な1台なのかもしれません。

  この2台は町中で見かけると結構よく似てます。どっちがどっちをパクったというわけでも無さそうですけどね。ネコ顔の208とおさかな顔のアクアだから違うといえば違うのだけれども、クルマから醸す雰囲気が同じ・・・ユーザーの視点もかなり近そうです。同クラスのコンパクトカーは他にもヴィッツ、ノート、フィット、スイフト、デミオ、ポロ、ルーテシアといろいろありますけども、他のモデルと比べて「208」と「アクア」はちょっとだけ「トレンディ」です。なんなんだ!その抽象的な表現は。ちょっとだけ・・・なんだろ「かわいい」ですかね。これならデートしても許される雰囲気がある!?

  ずいぶんと手前勝手な話ですけども、「アクア」と「208」がOKで、「その他」がNGだと感じてしまう理由を考えると・・・。ちょっと誤解を招くかもしれないですが、「アクア」に関しては走りが不自由だから! 「208」もまた右ハンドルが不器用で笑っちゃうくらいだから! コンパクトカーに乗るっていろいろ考え方があるとは思いますが、実は「不完全」こそがこのクラスの醍醐味なんじゃないですかね。 

  ちなみに「その他」のモデルは、廉価なコンパクトカーのはずなのに、その弱点を無様に晒すこともなく、なぜか不思議なほどにお買い得感を出してます。フィットやノートなんて近くで見ると「コレは結構広そうだなー」と感心するほど・・・。さらに走りを良くして、デザインも良くしてなんだかかなり無理しちゃってないですか?と心配になるくらいです。いくらあれこれ頑張ってみたところで、Bセグシャシーでそれなりの小型エンジンしか付いてないわけですから、クルマの本質としては限度があるわけですが、それをユーザーに感じさせないところに、「もしかして騙されてる!?」というちょっとした不信感が・・・。

  それに対してプジョー208は「狭そう・不器用そう」ってダメな雰囲気がプンプンしている。これが「逆」に好感が持てる!!!(アホですね・・・) 特に一番安い199万円のモデルなんて実際に相当な安普請ですけども、それもコミコミで208のキャラクターを受け入れたユーザーにだけ響くクルマなんだな〜・・・としんみりします。クルマが相当に好きでないとなかなか「納得して買う」というところまでは行かないかも。なんとも贅沢な話ですけども、モノが溢れ還っている時代ですから、どんなクルマ買ってもメーカーが見繕った機能がたくさん付いてきます。せっかく運転を愉しんでいるのに警報音とか鳴るのは勘弁してくれよ!!!っていう試乗車ばかりになりましたよ!!!なんだこの風潮は・・・。

  スバルのWRX STIみたいに余計な運転支援機能が付かないクルマっていいかもな。けどこのクルマでさえも、最大300psに年々ネットリさを増しているAWDが付いてきます。「シンプルなクルマが欲しい」という21世紀的(末期的)なクルマ観に取り憑かれて過ぎているんですかね〜・・・厭世?。typeRとかGTI倶楽部スポーツとかあってもいいけど、シンプルなMTのシビックやジェッタを売ってくれ〜・・・。なんで売らないかって?ブランドのスポーツモデル商売が崩壊するからでしょうね。とにかく「シンプル」に一定の価値がある時代!!!

  ひたすらに「ピュア」「プレーン」と宣伝しているマツダ・ロードスターが250万円〜ってことを考えると、数少ない「シンプル」でセンスが良いクルマの中で、ストイックに選択肢を絞るならば、プジョー208は存在感を増します!!! ナビがオプション!!大賛成!! シートベルトじゃないんだから、なんでも標準装備にすればいいってものでもないし、Bセグじゃ長距離も高速道路も使わないわけだし。だからETCも不要!・・・って人もいる。

  ボルボXC90とかBMW7erとか5m超のボデーの隅々まで、いろいろな機能が張り巡らされている1000万円以上するクルマもあれば、200万円で「何も付いていない」クルマもあっていいんじゃないの? そういうクルマを拡充するのって本来は国内の大手メーカーが担う役割だと思うのですが、T社もH社もBセグではなかなかセコいことやってて、MT装備車は最上級グレードといっていい価格設定(まあ安いですけど)。なんかヘンだよなー・・・若者にクルマの運転の楽しさを伝えるんじゃなかったの? 東南アジア向けにはちゃんとMTの廉価モデルがあるのにさー。そういうことをカーメディアで仕事するクソジジイどもも、なぜか関知しないですよね・・・。そのくせロードスターに「小物入れが無い!」とかヒステリックに喚き散らして、WCOTY車から「鬼の首獲った」かのような残念な人がいたり・・・。

  国内のM社はAT車とMT車を同じ価格に設定してます(なぜ?)。販売の主流のATがMTより割高だと心理的に売り上げに影響するし、MTが割高だとクルマ好きからそっぽ向かれるから・・・の極めて経営上の判断でしょうね。輸入車の「MT・3大ブランド」といえばポルシェ、ルノー、アバルトですけども、いずれも当たり前ですが2ペダルより3ペダルの方がかなり安い!!!国内メーカーでこの原理を一応守っているのが「S社」ですが、このメーカーは多感な若者が乗るにはやや社会的なハードルが高過ぎる気が・・・これでデートに行けるのか!?(さらに最近はM社と同じくAT-MT同額車も増えてる!!!)

  結論としてプジョー208は日本の若者の心を掴む売り方をしている!!!ってことです。MTブランドのルノー。ルーテシアの方が好きって人もいるでしょうけど、完成度高すぎ!!!やっぱり5ナンバーで「未完成」な魅力の208に不健全な欲情をしてしまいます・・・。

  それとは全く別の理屈ですが、トヨタ・アクアも独特の立ち位置にあります。アクアは環境性能以外の部分はやっぱり相当に安普請です。けどもスタイリッシュで燃費がよくて、トヨタだから!という安心感もあって・・・これはひと昔前の「入門車」カローラの発展的な後継モデルといってもいいでしょう。評論家連中は「これに乗っても運転好きにはならないよー」とかシビアな意見を述べますが、うるせー!!!日本の交通事情だとどんなクルマでも運転好きにはならねーって!!!(夜中・早朝に愉しむ輩は別だけど)

  Bセグの安普請なんてたかがしれてます。だって同クラスで一番良く出来ているクルマだってせいぜい「???」なレベルですから。これまでプジョー208がしばしば酷評&敬遠されてきた点としては、2ペダル車のミッションに使われていたAMTがやや扱いづらかったことです。同じ問題を抱えるフィアット(アルファロメオ)もこれには苦しめられました。最初から「3ペダルMTを買う!」と決めているユーザーにとっては、フィアットもプジョーもMTが一番安く買えるので嬉しいわけですが、ドイツメーカー車のようにそこそこ売れるためには、大多数の2ペダルのユーザーを納得させなきゃどうにもなんない。そこでちょっとコスト高でも、AMTに変えてトヨタ系サプライヤーの横置きATを採用したことで一気に解消されました。

  アイシンAW化によって「プジョーの個性が消える〜・・・」という声もあるようです。ちょっと面白かったのは、BMW、ミニ、PSA、ボルボが一斉にアイシンAW化する段になって、カーメディアがアイシンAWミッションを「激褒め」するようになったんですよね。中には、トヨタ向けと海外向けは仕様が違う(工場も違う)とかで「完全に別物」と断定したがる頑固モノも(そりゃ市場が違うんだから当たり前だろ)。

  長年トラブル無しでトヨタと付き合ってきた感覚では、やはり「エンジン」「ミッション」「サス性能」に関しては、日系サプライヤーのある程度定評があるものを堂々と使うべきだと思います。ポルシェやBMWは堂々と日本製を使うから優秀なクルマが作れるんじゃーーー!!!またそれ以外の装備は可能な限り簡略化してしまえばいい(エアコンすらも使い方次第では?)。「CVT」にしろ「ステップAT」にしろ乗用車向けのミッションってもはや選ばれたサプライヤーしか作れないほど高度になってきていますが、その大事な部分には最も安心して使えるものを選んでほしいです。あとは「安普請」でもいいじゃん。ちょっと前のポルシェだってさ・・・。

  そもそもBセグに限らずにあらゆる市販車は「欠陥」ばかりです。別にリコールが多いです!って話ではないです。例えば、かなり値引きで550万円でOKですよ!って言われたので某ドイツメーカーのDセグクーペに乗りに行きましたけど、右ハンドル車の足元には、大きめな縦置き8速ATのケースが収まらずに大きく張り出して左足のスペースを圧迫してます。なんじゃこりゃ?って思いましたね。乗り出しで400万円もする別のドイツメーカーのCセグの上級モデルでもほぼ同じようなことが起こってましたけどね。「これでいっか!?」って感じに興ざめします。

  「欠陥」だらけとは知らずに高級車に乗っている人は、プジョー208みたいなクルマを見て、その安普請ぶりに「あり得ねー」とか勝手なこと言いますけど、高級ブランドのクルマだって、まあほどほどにクソだったりするわけです。それでも作り手も乗り手も「いいクルマ」だと胸を張る・・・このとっても不健康な関係が一度リセットされない限りはいよいよクルマは「ジ・エンド」かもしれないな〜。街中でプジョー208とアクアを見ると、まだまだ「ちょっとした」希望があるかな・・・と。


リンク
「最新投稿まとめブログ」




2016年6月28日火曜日

格安メルセデスに厳しい事言うのはもうやめましょう!!!

  日本で多く見かけるようになった新型のメルセデス車。それもそのはずで販売台数は輸入車ブランドでも頭一つ抜けた存在です。前々からちょっと気になるのが、割と信頼できる評論家筋からの新型メルセデスへの評価がいまいち高くないことです。いくつか実際に乗ってみたのですが、うーん・・・どうもいまいちクルマ好きの気持ちは捕まえ切れていない「煮詰め不足」はあるのかな〜。よく考えてみれば10年前も20年前もそれほどクルマ好きが率先して乗りたい!!!というブランドでもなかったわけですけども。

  高所得な世帯が多いといわれる人気の「街」では、メルセデスを新旧問わずそこら中で見かけますから、たとえば「自由が丘(東京都目黒区)」みたいなところに住むならばマストなブランドだと思います。こういう事を書くと、必ずといっていいほど「目黒なんて田舎者ばかりが有り難がる街だから!無駄にメルセデスが多いんだ!」なんてご意見を頂戴するんですけども、その辺のことは一応わかった上で書いているので悪しからずに。

  ありがたいことに、最近ではメルセデスの取得価格がかなり下げられていて、女性が乗り回す分には不足なしといったモデルも非常に充実しています。自動車メーカーの鉄則は「女性をねらえ!」ですから、メルセデスの近年の成功はまったくのセオリー通りです。あと「メルセデス」というブランド名もポイントでしょうか。女性は「マ行」と「ナ行」が好きという「ネーミング」マーケティングの基本もしっかり押さえられています。「レクサス」「アウディ」「ボルボ」よりも「メルセデス」「BMW」「アルファロメオ」なんでしょうね。

  また女性をターゲットにすることで、あまり「スペック」を意識しなくても売れる!という好循環があるようです。文句ばっかり言うアホなクルマ好きを相手にするよりも、女性を上手く取り込んだ方が圧倒的に効率がいい!!!結局アホなクルマ好きもあくまで「男」なので、女性が興味を示すブランドにフラフラと寄ってきますから。メルセデスを買う独身男の意図は「婚活」以外の何者でもない!!!・・・なんて便利なブランドだろう。

  ターゲットが「女性」&「婚活男性」ですから、ハッキリ言ってクルマの中身なんてもう「どーでもいい!!」わけです。全く不要で余剰気味の駆動系のコストをガリガリ削って、その分をデザインに回すという戦略も、エコカー全盛の日本では見事に当たっていると思います。「女性にモテる」「見栄えもいい」「燃費もいい」これだけ揃えば商品力は十分!!!

   こんな戦略を採るメルセデスに対して評論家のみなさんは異口同音に「くだらねえ」異論を呈します。さすがにメルセデスを慮って「本質的」な話に突入するヤバい輩はいませんが、心中を推し量るととんでもなくエグい「毒」が出てくるはずです。代わりにちょっとその「毒」を示してみましょう!!! 例えば・・・「メルセデスを買う」ことの本来の意義はメルセデスが最古参の自動車メーカーとして培ってきた自動車技術の「塊」を手に入れること!!!であって、その肝心なところが抜け落ちたモデルはもはやメルセデスではない!!!といった話です。

  メルセデスのエンジニアリングは、VW、トヨタ、GM、ルノー、ヒュンダイなどの巨大グループが林立する中でも、経営基盤こそ小粒なものの、圧倒的な高級車シェアを利していて高級ユニットの製造に関しては非常に高い理想を掲げています。だからこそ高いカネをかけてまでメルセデスを選ぶ意義がある!!!(んだそうです)。端的に言うならば、高級車の乗り味を決めてしまう「縦置きステップAT」は、もはや世界では「ZF」と「アイシンAW」という2つのサプライヤーにほとんどのブランドが頼っているのが現状です。ただし高級車のナンバー1ブランドを自認するメルセデスは、自社専用の縦置きステップATを独自に開発しています。

  サプライヤーとメーカーの「ひとまたぎ」が存在するのは、ほぼ100%コスト意識の現れです。メーカーが究極のクルマを作りたいならば、全てをケチることなく最適化された部品を内製すればいいわけです。瑣末な部品ならまだ理解できますが、クルマの本質を決定する「ミッション」をコストの対象にするのはいかがなものか?というわけです。

  クルマの乗り味を大きく左右する決定的な部品がミッションですが、世界の高級車が挙って採用するのが多段式ステップATです。日本車を中心に燃費競争が過熱していた頃には、ATは「完全に終わった」などと言われてましたが、その後の改良により今ではそのジェントルな乗り心地を武器に見事に復権しています。とはいってもその改良によって、製造コストの面で今ではDCTやCVTを大きく上回るようになりました(もちろんピンキリですが)。世界の高級車市場で競争力がある「多段式ステップAT」は、あまりに設計が複雑になったために、「トルクコンバータ」部分などは機械組みができなくなっていて量産が難しく、まさに職人の手による「工芸品」になっています。

  この「工芸品」に手間を惜しまずに取り組んで自社製で勝負するブランドこそが真の高級車ブランドだと言えます。ジャガー、アストンマーティン、BMWといった錚々たるFR車ブランドはZF製を採用して済ましているのが現状です。またGMとフォードは合弁で独自に縦置き8ATを仕上げていますが、どうやらこれは80kg・mオーバーのトルク容量を持つ1000万円超のスポーティモデル専用みたいです(ちなみにATの元祖はGMです)。これに対してトヨタ(レクサス)はアイシンAW製を、日産(インフィニティ)はジャトコ製の多段式ATを「擦り合わせ」で高級車向けATを特注で作っています。このトヨタと日産の鍔迫り合い対して互角に戦えるポテンシャルを持つのがメルセデスなわけです。余談ですが、この三つ巴に新たなる挑戦者が現れました!・・・新興プレミアムブランドの「ジェネシス」も立ち上げと共に現代パワーテック製の縦置きATを導入してきました!!!おー!!!最高の高級車を作ろう!!!というヒュンダイの心意気は評価したいです。

  ちょっと長くなりましたが、「メルセデスを買うなら・・・」という評論家のボヤキなど、せいぜいこの程度のものですから、無視してFFメルセデスをオシャレに乗ればいいじゃん!!!ってのが私の個人的な意見です。ちなみに本来の「メルセデスらしさ」が楽しめるクルマで最も安いモデルが「C450AMG」というCクラスの上級モデルです。これからの高級モデルの標準スペックとなる「3L6気筒ターボ」を積んで、職人技の7ATが付いてきて本体価格が863万円です。「ここから上が本物のメルセデスだ!」と言われればまったくその通りなんですけども、そんな輩の価値観にわざわざ付き合わなくてもいいですね・・・。

  お手軽価格で買えるメルセデスには「横置きDCT」というミッションが使われています。大量生産されるMTミッションに外部サプライヤーが開発した自動変速機をポン付けした安物です。基本的にサプライヤーに丸投げなのはVWやホンダ(廉価モデル)と同じです。ただしその分だけ内装にコストが割り振られているわけですし、300万円そこそこというお値打ち価格で、女性が目黒区を乗り回すには十分な「外観的」スペックを備えていますから十分にお買い得だと思いますよ。どうせ周囲の住人なんてみんな田舎モノですから、クルマの良し悪しなんてわかってないミーハーばっかりですし・・・。


リンク
「最新投稿まとめブログ」

  
  

2016年6月15日水曜日

「日本車なんて恥ずかしい!!!」という人々の選択。

  常見陽平というコラムニストがいます。世の中で起こる問題を独自の視点で語るお仕事を、コメンテーターというのかコラムニストというのかその区別がよくわかりませんが、「デフレが・・・」「学歴社会が・・・」とか俗なイヤらしいことを語る稼業の人です。ちょっと面白いのが、自ら「若き老害」(単なるKY?)と称していてわざと痛いキャラを演じていらっしゃいます(キャラ設定は絶対必要ですよね)。

  その「痛いキャラ自演」の常見さんの一つの持ちネタが「俺はクルマが大好き!」ってヤツです。本物のクルマ好きにとっては、なんだか思いっきりバカにされているようで少々ムカつきます。彼の自演キャラは「コテコテの老害」ですから、そのコテコテの保守的志向で、若いけどクルマが大好きなんですぅ〜(僕ヘンでしょ!?)・・・はぁ?。さらに「イケメン中年はクルマ移動が基本!!!」だとかヌカしやがります。毎日クルマ乗っていることをアピールしてまで変態アピール・・・、ここまでくればもう筋金入りの「痛キャラ」です(さすがプロのキャラ設定)。直近のお仕事は大学の先生らしいので、ただ単に毎日クルマで通勤してるだけでは!?大学のキャンパスは結構不便な場所に作られていて、学生がバスに乗ってドカドカやってくるなんて所も多いですからね〜。

  この「自演・痛キャラ」で目障りなオッサンが、4年前にとある大手メディアに寄稿したクルマに関するコラムはなかなか衝撃的で今でも忘れられないです。内容はストレートに「日本車なんてダサい!!!とても恥ずかしくて乗れない!!!」・・・私も4年前(2012年)はまだまだブログなど書いてませんから、クルマに対する考え方は今ほどはハッキリしてなくて、当時はプジョーのクーペ407などに憧れましたね・・・。ただしこの常見氏の記事を読んで突如として体中に虫酸が走ったのを覚えています。失礼ですけども「なんだコイツ???やたらとダサいオッサンだな」と。一体どこの大学出身だよ?あーあそこか・・・確かにダサいヤツが多い大学だよ。この大学出身のリアルな知り合いは余裕で10人以上いますが、みんな不思議とダサい・・・。(大学の件は余計ですね)

  別にこんな考えのアラフォーなんていくらでもいるわけで、何も珍しくないですし、ネットの掲示板には「輸入車に乗れないヤツは負け組!!!」とかいう書き込みもあったりするわけですけどね。それにしても、著名なライターがまともなサイトの寄稿で「日本車ダサい!!!」と本気モードで書いてるとは〜(自演ですけど)!!!こんなワケわかんねーヤツと同じに括られて堪るか!!!そんなゲロゲロな嫌悪感もあった!?のか、この2012年にクルマを買う予定だった私は、急遽日本車でもいいかな〜・・・と思いはじめて片っ端から試乗に行きましたよ。

  そうしたらリストアップした日本車を試したところ、どれも予想以上にいいわけですよ!!!スカイラインクーペ、カムリHV、アテンザ(先代)もとってもいい感じなんですねー(プジョー407より良かったかも!?)。常見さんは日本車デザインを全否定してましたけども、この3台はデザインもとっても良かったですよ〜。つーかこのオッサンがあんな記事を書かなかったら、このブログも存在しなかったのかも!?

  まあそれはさておき、自称「クルマ好き」の常見さん。輸入車しか乗らない宣言をしている中で、今度のクルマはBMW218iになさったそうですよー。・・・まあ523iとか乗るよりは断然に好感が持てますけども、え?BMW2erアクティブツアラーですよね?これはデザインにこだわりがある「痛いオッサン」的にはカッコいいのですか???(クルマまで自演の道具か!?) ちょっと失礼かもしれないですが「クルマ好き」というより「輸入ブランド好き」なんじゃねーの!? なんといっても「日本車に乗るくらいならクルマなんて要らない!!!」くらいの脅迫観念を十字架として背負ってますからね・・・。有名人ですからあれだけ書いておいて、今さらに日本車ディーラーに行くわけにもいかないでしょうし・・・。

  「日本車なんて絶対乗らない!!!買いたい気分にさせてくれない!!!」とかムキになって言う人ってのは、そもそも日本車と競合するくらいの価格帯の輸入車を買う事が前提なんだと思いますよ。「AMGかベントレー」と決めている人はわざわざそんな事は言う必要ないですし・・・。常見さんにとってちょっと辛いのが、廉価の輸入ブランドがどんどん駆逐されていることですね・・・フォードの撤退は痛い。けれども逆に考えると、バブル世代がクルマを買い続ける限りは、200~300万円台の輸入ブランド車にもそこそこのニーズが保証されているとも言えます。PSAやルノーもまだまだ日本で頑張れるのかも!?

  しっかし日本メーカーもその辺はすっかりマーケティングが済んでいるようで、トヨタは「プリウス」のブランド化によって頑迷なバブル世代を上手く懐柔しつつあるようです。トヨタの戦略は・・・①ちょっと高めの金額 ②セレブ感を感じさせるコンテンポラリーなデザイン ③環境性能のアピール ですが、最近のトヨタのモデルにはこれらが見事に集約されていますね。バブル世代にモノを売り込むならまずは「値段」・・・(評論家見ていても全くモノの価値がわからない世代ですから、「値段」と「広告」だけでジャンジャン売れます。その良いお手本がVWゴルフでしたね・・・問題があったようで最近やっと値下げしましたけど。

  あとはやっぱり「限定モデル」ですかね・・・。若い世代から見れば「限定モデル」なんて商業主義にやられちゃったダサダサ感が漂うので絶対に買いたくないのですけども。不思議にバブル世代には大人気なんですよねー。バブル世代ってやっぱりバカなの!?それにしてもスバルやホンダの「限定商法」はお見事です・・・S207もtypeRももはやフェラーリやランボルギーニのような「幻」の存在になってます。

  まだまだバブル世代が元気な間に、日本で頑張っている輸入ブランドにはたくさんクルマを売って欲しいと思いますし、日本に新たに参入あるいは復帰するブランドがあってもいいんじゃないですか!?オペル、ビュイック、ダッジ(最近は小型車もやってます!)などなど300万円くらいで展開できるブランドには十分に商機があるはず!!!ほかにも「クルマ好き」な常見さんが泣いて喜びそうな日本未上陸の輸入ブランドがあるんですよ!!!冗談抜きで並行輸入で日本に持ってくれば人気になりそうなくらいなので紹介します。

①ラクスジェン・・・グローバル7シーターが評判らしい。この牧歌的でシトロエンみたいなピープルムーバーが200万円台なら日本でも売れるはず。フロントの「L」マークが輝きますね!!!BMWやメルセデスと同じ三菱製直噴ターボですよ!!!
動画リンク「ラクスジェンのピープルムーバー」

②ジェネシス・・・みなさんご存知!?世界が注目する新興プレミアムブランドですよー!!!レクサスがライバルだそうですが、LC500相手にやる気十分ですね!!!
動画リンク
「ジェネシスのラグジュアリークーペ(コンセプト)」

③ヒンドゥスタン・・・これは個人的にはガチです!!!絶対に日本でも売れるはず!!!もう一目惚れレベルにデザインが美しい!!!欲しいーーーー!!!これは反則だ・・・1991年式ソアラよりもモテるよ。
動画リンク
「ヒンドゥスタンのレトロヒューチャーなセダン」


  
リンク
最新投稿まとめブログ
 

2016年6月7日火曜日

小型車マニアが泣いて喜ぶ!!!「アルファロメオ&フィアットのすべて」発売!!!

  「日本とドイツは似ている」とか、「日本とイギリスは似ている」とか、ふと旧型モデルが満載のムックを読んでいるといろいろなことに気がつきます。旧型モデルを知る前までは、ドイツ車に対する畏怖を感じていたりしますが、ポルシェ356などを見ると、まるでホンダやスバルの最初の4輪車モデルみたいです。ホンダもスバルも初号機をそのまま進化させた結果のシビックtypeRだったりWRX・STIだったりすればポルシェと肩を並べるスーパーブランドになったのかな? いやいやtypeRもSTIも限定車が速攻で売り切れる大人気ブランドに違いないです。

  ポルシェ、アウディ、BMW、メルセデスといったドイツブランドと、スバル、ホンダ、日産、三菱といった日本ブランドの対峙を時系列に眺めていると、クルマとは要するに「塊を表現」する1つの方法なんだな〜・・・とか、勝手に1人で納得してたりします。そして現代においても「塊の表現」はやはり名デザインの称号を手っ取り早く得るための近道ではあります。しかし真の傑作デザインとなると、必ずしも「塊」ではないケースも多いです。特に歴代のトヨタやマツダの名デザインとなると、「塊じゃない」方向性がちょいちょい見られます。

  「テメーが言う塊とは何ぞや!」とかキレられそうですが、1967年にほぼ同じタイミングで登場した日本が誇るスーパーGTカーである「トヨタ2000GT」と「マツダ・コスモスポーツ」の2台をよーく見ると、トヨタとマツダのデザインの原点は通説で言われているようなドイツ車との対峙ではないことがわかります。この2台は設計当初から「スペシャルティ」の完成形であることを宿命とされていて、それぞれに独特の曲線でボデーが包まれていますが、私が思うにどちらも受けている影響を考えると、どうやらマセラティの別々のロードカー(GTカー)に行き着きます。

  トヨタ2000GTが影響を受けたであろうモデルは、1953年に登場した「A6・GCS/53」というマセラティデザインの原点ともいえるモデルです。現行のクワトロポルテの団子っ鼻のようなルックスはこの60年前のモデルから受け継がれているのがよくわかります。そしてマツダ・コスモスポーツがおそらくスタイリングの「参考」にしたと思われるのが、「ミストラル」という1963年に登場した華奢なGTカーです。こちらは思わず笑っちゃうくらいのモロパクリ状態ですね〜・・・。決してポルシェ901のパクリではないと思います。

マセラティA6・GCSの動画

マセラティ・ミストラルの動画

  その後バブル期に突入して、1991年に再び「3代目ソアラ(Z30系)」と「3代目RX7(FD3S系)」が、それぞれ先代までのデザインをかなぐり捨てるかのような斬新なデビューを飾ります。どちらも発売から今年で25年経過しますが、まだまだ街中で十分に「カッコいい」方で目立つピカピカのデザインです。そしてどちらも「なよなよ」した流線型モードをまとっていますけど・・・これが不思議と劣化しないです。NSXやGTOみたいなゴリゴリのスーパースポーツならわかりますけども、よくよく考えるとチャラいだけなのに、なんでトヨタとマツダはそんな芸当ができるのか?これはやはりマセラティを再びパクっているのでしょうか?

  1980年代後半からマセラティの経営は大きく傾いていて、新型車も満足に出せない状況の中でした。1975年から実質的な経営権を握ったイタリアメーカーの「デ・トマソ」の介入によって、トヨタやマツダを魅了したかつてのピニンファリーナによるスタイリングは影を潜めて角張ったライトケースを備えたメルセデスのようなセダンが作られていました。もちろん栄光のメルセデスに勝てるはずもなく・・・1993年からはフィアットの管理下におかれるようになりました。よってマセラティがトヨタやマツダに影響を与える時代ではなく・・・不遜ながらもトヨタやマツダが世界中のGTブランドにデザインを指南する側の立場にあったようです(ジャガーXKやアストンDB7など「なよなよ系」がこの後に大ヒット!!!)。

  さて現行の「レクサス」や「マツダ魂動」は、25年前の「偉業」を引き継ぐだけの仕事ができているでしょうか? 「マセラティ」「アストンマーティン」「ジャガー」といった幾多のGTカー・ブランドを軽く踏み越えて行くはずでしたが、バブル崩壊など方針転換を余儀なくされた挙げ句に、これらの古豪ブランドによって「クルマの評価」という意味では、再び置き去りにされている屈辱的な状況です・・・。もちろん両社は捲土重来を賭けて!!!来年に再び「トヨタ」と「マツダ」の競演があるという噂があります。「レクサスLC」と「新型ロータリースポーツ」がまたまた同じ年に出て来るようです。

  さて「マセラティ」を生んだイタリア自動車産業の歴史を俯瞰するのにちょうどいいムックが発売されました。歴代のアルファロメオやフィアットには奇抜なデザインのクルマが多いですね。パラパラとめくるうちに、無意識に同時代の日本車がシンクロしたりするわけですが、その中で連想するのが、「トヨタ・セラ」「ユーノス100」「トヨタ・カローラⅡ」「マツダ・ファミリアカブリオレ」「ホンダ・シティ」「スズキ・セルボ」などなど。100万円そこそこの廉価車なのにやたらと「個性」を主張したモデルばかりです。

  そういえば最近の小型車もなんだか個性的ですね。いちいち例は挙げませんけど、トヨタ(ダイハツ)、スズキ、ホンダの最新のスタイリングに街で出くわすと、ちょっと目がテンになります!!!なんじゃこりゃ!?そんななんの脈絡もなさそうな「今だけ」デザイン・・・と思いきや、この「アルファロメオ&フィアットのすべて」を見るとデザイナーの教養が見えてきて愉しいです・・・。あ!もちろん今回も沢村さんのコラムもありますよ!!!

リンク
最新投稿まとめブログ

  

2016年5月31日火曜日

ミニ、プジョー、ボルボが日本で好調なメカ的な事情。

  シトロエンDS3がフェイスリフト!とか言われても、まだまだレアな存在で新鮮さ十分だった現行デザイン、しかも評判がとてもいいわけですから、なんか「もったいない」気がしないでもないです。それでも良い面もあって、現行モデルのユーザーがそのままスライドの代替えをすれば、なかなか見栄えがするDS3が中古車市場で流通するようになって愉しいカーライフをゲットできる人も増えそうです。5年落ちのDS3が100万円くらいで買えるようになれば・・・そう願っている人は結構いるはず。

  日本のコンパクトカーでも100万円以下となるとよっぽど年式が古いクルマだったりします。とりあえず7年以下ならば中古車なかなか高値でとどまっています。日本車の場合は新車乗りだし価格より50万円くらい安ければいくらでも買い手がつくみたいで、プロのバイヤーがおいしいところはことごとく法人需要に回してしまうようです。個人よりも法人相手の方が面倒くさくないでしょうし・・・。

  しかしさすがに輸入車を商用車にすることは少なく、あったとしてもルノー・カングーのようなやや特殊な車両くらいです。これらの事情を鑑みても、いろいろ条件を詰めて比べてみると、案外に中古車ならば輸入ブランドの小型車の方が買いやすかったりします。ただし部品交換が絡んでくると少々やっかいではありますが・・・。ただし2012年以降のモデルであれば、比較的にトラブルの少ないミッションが付いていたり、電装品の品質も良くなっているともっぱらの評判です。

  この頃(2012年)から衝突安全性の定義が大きく変わったりアメリカでは消費者支援のレポート雑誌が人気になるなど、自動車産業を取り巻く環境が一変しました。2011年の大震災で大きなダメージを受けてホンダ以外のすべての日本メーカーが赤字に転落しました。さらにとどめを刺すかのように、トヨタやホンダに燃費やリコールの騒動が巻き起こりましたが、品質をレポートするアメリカの雑誌が、ことごとく日本メーカー車を高く格付けしたために2014年には各社ともに震災以前の水準までV字回復しました。衝突安全でメルセデス、アウディに圧勝したスズキが北米からフェードアウトしたのは残念ですが・・・。

  負け知らずの日本をお手本に、世界のブランドでクルマ作りの姿勢が変わってきたのも多くのメーカーが赤字に転落したリーマンショックの頃でした。品質不良に悩まされてきたアルファロメオが、三菱のライセンスエンジンを採用するなど、日系サプライヤーが欧州ブランドでも活躍するようになりました。特に近年の欧州車の水準アップに大きく貢献しているサプライヤーが「アイシンAW」でしょうか。おなじみのトヨタ系列ミッション・サプライヤーですが、アイシンAWATを採用した欧州車はどれも非常に扱いやすくなりました。

  その代表格が「BMWミニ」「シトロエン」「DS」「プジョー」「ボルボ」といった面々です。BMWFFモデルなどにも採用されています。BMWの本流であるFRシャシー車ではZF製ミッションが使われていますが、これは動きだしとキックダウンの時にそれぞれエラー的な挙動が出ることが多く、このミッションの特性をよく理解していないで乱暴に操作するとすぐに走りがシャクれます。それがBMWユーザーには魅力なのかもしれないですが、例えば信号GPでミニとBMWが対峙するならば、「出足の挙動」の優劣に加えて「FFのアドバンテージ」「シフト回数の少なさ」でミニの方が確実に有利なはずです。

  速さはともかく、アイシンAW製ミッションの普及によって、ミニとPSAとボルボは非常に日本市場と親和性が高いブランドへと成長しつつあります。この傾向は販売台数にも大きく現れていて、去年までミニとボルボは1000台そこそこの水準だったのが、ミニはアウディ(2000~3000台前後)を完全に射程に収め、ボルボもこれに続いています。アウディの小型車はVWと同じボルグワーナーのライセンスDCTを使っていて、ギクシャク感ではアイシンAW勢よりもかなり不利な状況なので恐らく今年中にミニとボルボに逆転されると思います。

  メディア露出はジャガーなどに比べてだいぶ少ないのに、ジャガーの3倍も売れているのがプジョーでいよいよ「1000台ブランド」の仲間入りを果たしました。デザインなどの要素でプジョーを上回ると見られていたルノーやフィアットは割安にも関わらず成長が停滞気味です。どちらもガリガリの低価格戦略なので、日本車が使うCVTはコストに合わず(日本の軽自動車はエンジンよりCVTの方がコスト高!!!)、フィアットはイタリアのサプライヤー・マニエッティ=マレリが作ったAMTを使いますが、これがいすゞのライセンス切れの設計をそのままパクった?として知られる骨董品です。

  ルノーが新たに採用している6速EDC(DCTのルノーの呼称)は、フェラーリやGT-Rでも採用されているゲトラグ製です。ルノー小平(地元です!!!)の店員ブログによれば、ATのように滑らかなシフトチェンジが魅力とされてますが、これを採用していたフォードが日本撤退を決めるなど、あまり良い結果が出てないです。今のところはボルグ&ゲトラグのDCT勢は日本で不調です。・・・VW、アウディ、アルファロメオ・・・。


  日本で売るんだったらアイシンAWかジャトコ使え!!!なんて高言するつもりはないですけどもね・・・。いち早く順応したミニ、プジョー、ボルボ、シトロエンが手頃な価格で拡販すれば、結果的に中古車市場の主役になれるのかな!?という気がしないでもないです。


リンク