2014年の欧州カーオブザイヤー獲得をひっさげて日本に上陸を果たした新型プジョー308ですが、そのやや保守的なデザインを見ていろいろな憶測がよぎりました。一体このブランドは何を考えているのか? 真っ当に評価するならば、「我々は安易な流行には乗らね〜ぞ!」というプジョーの熱い意志が叩きつけられているといったところでしょうか。カーメディアをにぎわす独・日の最近の新型モデルを見ていると、まるで担当デザイナーがメーカーから脅迫(何かしらの圧力)を受けているかのような印象を受けることがあります。「一目見て新型車だとわかるようにデザインしろ!」という指令は新車を売らねばならないメーカーとしては当然のことではあるのでしょうが、ユーザーの乗り換えをゆるやかに促す!といった生半可なものではなく、先代モデルを完全否定するかのような大胆なデザイン変更が目立ちます。
そんな中でこの新型308はというと、プジョーが過激に演出したパリサロンのコンセプトカーが目指す「先端モード」とは、だいぶ逆行した印象を受けます。ユーザーによっては「ちょっと物足りない」あるいは「やや退屈」と感じる人もいるでしょうし、これぐらいが「むしろ乗りやすい」「飽きがこないのではないか?」という意見もあるでしょう。一つ考えられることは、プジョー=シトロエングループ(PSA)では、急速に広がる「プレミアムブランド」市場に対応するために、シトロエンから派生した「DS」という上位ブランド(プレミアムブランド)を展開する予定となっていて、今後はグループ内では基幹ブランドとなるプジョー車のデザインを戦略的に「控えめ」にしているという可能性もあります。
ちょっと悪のりして、輸入車好きなライターが言い出しそうな「屁理屈」を想像して書いてみたいと思います。
プジョー308のデザインに見られる「質実剛健」な味わいはいい。最初はやや平凡という印象を受けたけど、一般ブランドの量産車とはこのようにあるべきである。同じ一般ブランドでも日本車に施される安っぽいギラつきにはいつも閉口させられる。たとえばこの308とライバル関係になる日本の最大手メーカーのモデルは、何とも品のないデザインだ。あの救いようがないフロントデザインのせいで、このクラスのインプレッサやアクセラがなかなか健闘しているのに対して相当に苦戦している。
といったところでしょうか。
プジョー308の日本上陸が今後どれほどの影響力を持つかわかりませんが、日本メーカーの支離滅裂気味なデザインのあり方に一石を投じてくれたらいいな・・・なんて密かに応援したい気分ではあります。ト◯タのオー◯スに限らず、アクセラやインプレッサにしても現行モデルは従来(先代)のデザインからは大きく変化していて、メッキパーツを多用した分り易い演出で、よりコンセプトカーに近い洗練された印象を受けます。しかし誰かをもてなすための高級セダンでもなく、スポーツカーのような非日常な趣味のクルマというわけでもなく、ごくごく平凡で実用的なクルマという両者の素性(属性)を考えると、変に盛り込まれたデザインはやや使いにくい部分もあるのかなという気がします。
この手の「過剰」気味なクルマは日本車に限った話ではありません。まだまだ発売前の新型車ですが、メルセデスCLAシューティングブレークという凝ったデザインのワゴンがあります。クルマの立ち位置としてはプジョー308SWの上級モデル「シエロ」と同じようなクルマ(プレミアムワゴン)になりますが、車格を考えたときにどっちのデザインがよりベターなのか?という選択の幅が、日本のユーザーに与えられているのはうれしいことです。中にはメルセデスとプジョーではぜんぜん意味が違う!という人も多いでしょうけど・・・。この2台に同じくCセグワゴンに属する「ゴルフ・ヴァリアント」「メガーヌ・エステート」「カローラ・フィールダー」「レヴォーグ」の4台を加えて比較すると、改めてプジョー308SWのなかなか味わい深い立ち位置が見えてくる気がします。
流線型をふんだんに使って「繊細」なボディラインで彩られたメルセデスCLAシューティングブレークと真っ向から違う価値観を見せつけるのが、「骨太」なバンパーラインやサイドビームが特徴的なデザインの308SWです。フランス車かイタリア車を思わせる洒脱さを一生懸命に表現しようとしているドイツブランドのメルセデスと、古き良き時代のドイツ車(メルセデス・BMW・アウディ)のバンパーの肉厚感が目立つデザインに活路を見出したプジョーが、なんとも見事なコントラストを描いているように思えるのです。冒頭にも書きましたが、欧州カーオブザイヤーにこのクルマが選ばれたという事実に、欧州の自動車文化の伝統と誇りを見るような気がします。韓国車や日本車によってデザインの潮流がかき乱され、中国市場を意識すればするほどに、欧州車の流儀を無視するかのような革新的デザインが増えている欧州自動車産業。その行く末を案じる人々が、このクルマを大賞に選ぶことで、全ての欧州メーカーに対して警鐘を鳴らしているとしたら、とてもいい話だなと思います。
さて日本車やドイツ車にも昔の良さを呼び起こしてくれるモデルが出てくるでしょうか?ランクル70のスマッシュヒットには、ユーザーの趣向を端的に示す要素があったように思います。しかしそんな復刻を仕掛けたメーカーが今度は看板モデルといっていいクラウンに「空色」と「若草色」の限定車を設定するんだとか。なんだかなあ・・・。
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↓かつてのプジョー車もたくさん紹介されていて、このシリーズでは抜群にいい内容です!
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