2013年2月28日木曜日

アルファロメオに日本製スポーツカーを投入予定。

  フィアットの新しい戦略はとてもユニークだ。アルファロメオの新しいオープンスポーツを日本のマツダに供給させるというものだ(マツダロードスターと基本設計が同じ)。この提携は前代未聞で、海外ブランドのスポーツカーを日本で作らせて(決してタイやメキシコの工場ではない)、国産への愛着が高い日本のユーザーだけでなく、「メイドインジャパン」がよく売れるオセアニアなどの市場への展開も狙っているようです。

  日本における現地生産はまったくないわけではないが(アストンマーティンシグネット)、欧州の有名ブランドの中核モデルを日本で作るというのは珍しいことです。できれば小型スポーツだけでなく、アルファロメオ159の後継モデルまでマツダが作り始めたら、買ってみたいなと思いますね。こんどトヨタがBMW製のミドルサイズクーペを販売するそうだが、ドイツ製の日本ブランド車よりも、日本製のイタリアブランド車のほうに強い興味を持ってしまう人は結構多いのではないでしょうか。フィアットの「日本生産戦略」はぜひうまくいってほしいですね。

  フィアットはさらに今後マセラティで新型セダンを複数投入して、ドイツプレミアムや日本プレミアム(レクサス・インフィニティ・アキュラ)の6メーカーを、マセラティが持つさらなる高いステータスで押し潰す計画があるようです。グランツーリスモやクワトロポルテに近い質感とフォルムを持ち、もっと買いやすい価格設定の新型セダンを投入するようです。マセラティは北米価格でも12万ドル〜でメルセデスのSやCL以上のステータスがあるのですが、6万ドル(北米だとBMW5やベンツEよりちょっと上)くらいまで下げてくるという噂です。

  ありきたりなセダンのデザインを展開するドイツ勢と比べると、マセラティのフォルムはセダン(クワトロポルテ)もクーペ(グランツーリスモ)のどちらも官能的で、ドイツ車や日本車にはなかなか影すら踏ませない抜群のデザインです(なぜ他車がコピーできないかが不思議)。このブランドが「超高級ブランド」から「プレミアム」へ下がってきたときに、3BOXカーの概念もまた大きく変わるように思います。アテンザやクラウンでセダン人気が復活との噂がある日本でも、マセラティが少し「一般化」されるようになったら、いままでドイツセダンをベンチマークしていたクルマ(ドイツ車を超えつつあるデザイン?が再び進化を遂げそうです(新型ISはマセラティのレベルかも・・・)。

  

2013年2月27日水曜日

マスタングとアテンザは北米価格はほぼ同じ

  フォードマスタングとマツダアテンザが同じ価格だったらどっちを買うか本当に迷いそうなんですが、素晴らしいことに北米ではどちらも2万ドルから買えます。北米で2万ドルで売られるクルマなら、日本でももうちょっと安くていいのかなという気もします(マスタングV6は430万円〜)。フォード車は輸入車としての「華」はないかもしれないけど、全てのラインナップに「フォードのポリシー」が感じられます。変にユーザーに媚びたモデルがないのも魅力で、フォードが好きな人はメーカーが一台一台に魂を込めて作っているから好きという人も多い(マツダやスバルのファンみたいですね)。


  マツダの現在のラインナップも以前フォード傘下にいたときに作られたクルマで構成されている。マツダの開発者はRX-7の後継モデルを2ドアで作らせてくれなかったフォードの経営陣を恨んでるという話も聞くが、GMではなくフォード傘下であったことはマツダにとっては幸せなことだと思う。GM傘下だったスズキは小型車の専門メーカーになってしまったが、フォードは小型車に興味がなかったようで、日本メーカーだからといってマツダを小型車メーカーにしようとはしなかった。

  もしマツダがフォード傘下じゃなかったら、いまでもセダンにロータリーエンジンを積んで、クルマ好きしか感動しないようなモデルを作り続けてとっくに倒産していたかもしれない。一般の人にとっては「ロータリー」なんて、「熱くて・うるさくて・燃費が悪くて・壊れやすい」といった最低のエンジンなのだから・・・。「スポーツカー以外にはロータリーは積むな」という当たり前が当たり前じゃなかったのが、フォード以前のマツダだ・・・。たしかにマツダの技術力はスゴいが、だからといって「フォード後遺症」といって「旧宗主メーカー」を厄介払いしたような気分になっているのは、間違っていると思う(そのように報じるメディアもおかしい)。

  アクセラやアテンザが発売当初から欧州で大ヒットしたのは、マツダの技術力とフォードの魂が注ぎ込まれたクルマに欧州のユーザーが好意的だったからだ。フォードはアメリカの会社だけど、戦前から(クルマの歴史の最初から)イギリスを中心とした欧州にしっかり根を張ったメーカーだった。いまでも欧州シェアはどの日本メーカーよりも上だ。

  少ないラインナップだけど、全車種に魂を込めるフォードのクルマ作りとその成功は、2000年代のコストダウンに堕ちた日本メーカーへの厳しい教訓になっていると思う。品質を無視したマーチやミラージュの逆輸入の販売が失敗しつつあり、今後の日本メーカーは品質の向上へと方針転換していくだろう。フォード傘下でそのクルマ作りを学んだマツダが今、脚光を浴びつつあるのは偶然ではないと思う。

  

2013年2月26日火曜日

ゴルフ7はデザイン変更なしの強気!

  ゴルフ7は先代からほとんど外観を変化することなく去年の暮れに欧州で発売された。4年でのFMCはゴルフとしては異例の早さであるが、世界的な経済危機の影響を受けた2008年頃に登場したクルマはどのメーカーも短いスパンで製造が打ち切られているので、ゴルフもその影響を受けたのだろう。この短命の2008年モデルからのFMCは、経営の見直しから押し進められると考えられるので、その内容(コストダウンはないか?)をよく見極めたほうがいいかもしれない。

  このクルマは日本において毀誉褒貶が激しいクルマで、さまざまな情報がまかり通っていて正しい評価がされていなかったりする。「日本価格が高すぎる」という声もあるが、米国販売価格は約$18,000(約150万円)〜だが、北米生産をほとんどしない日本勢のマツダのアクセラが約$16,000(約135万円)〜で、新型アテンザが約$20,000(約170万円)〜なので、ゴルフの日本価格250万円〜はそこまで極端に高いわけではない。

  「カローラのライバルなのに価格差が酷い」とも言われます。それはあくまで北米市場での話であって、北米のカローラは1.8L仕様で約$16,000〜で、上級モデルのマトリックス(ブレイド)は2.4L仕様でゴルフよりも高い約$20,000〜です。はっきり言うとトヨタが日米のカローラに格差を付けて売っていることが問題なのであって(日本の新型カローラはヴィッツと同じ)、ゴルフの価格自体は「グローバリゼーション」そのままに、ごくごく標準の販売価格です。

  日本のモータージャーナリストが度々言及していることは、トヨタが軽自動車に対抗するために代表車種カローラを低スペックなクルマにしてしまっていることを、一般化して「日本車はダメ」と言っているのだと思います。しかし受け取る側は日本のクオリティカーにもそれを当てはめて解釈してしまう部分があります。「軽自動車規格」が価格設定の主導権を握ってしまっていることを指摘しているジャーナリストも多いです。そういった要因がここ10年余りの日本車の不遇な時代に横たわっていたのですが、ここにきて日本のクオリティカーにも正当な評価がされるようになってきたことは良い兆候です。

  このゴルフというクルマも10年前なら日本で発売されるカローラと同じ水準のものでした。しかし日本市場とは別にグローバル市場(欧州・北米)はクオリティカーが順当に売れる健全な市場へと進んだ(やはりクルマ文化の違いか・・・)ため、このゴルフはその市場のニーズを満たすクルマとして、グローバルでの評価は高まりました。当然ながら評価軸がグルーバル市場とはズレていた今までの日本市場では「このクルマはいったい何なんだ?」ということになっていました。

  もちろん渋滞のヒドい日本ではドイツで走るようなクオリティカーは要らないという人もいます。世界一の高齢社会なので、低価格な国内専用車で十分という声も「健全」なものです。じゃあ「クオリティカーの土俵」に乗っけたときに、ゴルフと日本車はどっちが優れているのか?といわれれば・・・、北米で圧勝しているのはだんぜん日本勢です。日本でもっとクオリティカーが売れるようになれば、北米トヨタも北米ホンダも本気でゴルフへの対抗車種を日本に送り込んでくると思います(フォードフォーカスもやって来たので、そういう状況になっている気もしますね)。
  

2013年2月25日月曜日

シボレークルーズは日本へ来るのか?

  危機的な経営状況(事実上の破綻)から米政府の支援を受けて再建された「新生GMグループ」が債務返済を終え、米政府の管理下から離れ再び「世界征服」へと邁進するようだ。トヨタを初めとした日本メーカーにとって、米BIG3の「躓き」は「天佑」だった、もしこれがなかったら、経営体質の古さを指摘されていた日本メーカーはBIG3に大きな差を付けられ、VWやヒュンダイに追い抜かされ、トヨタが代わりに深刻な経営危機に陥っていた(ホンダは潰れたかも)かもしれない。

  BIG3の代表格のGMがついに復活した。日本のメディアはこのメーカーの実力を過小評価していて、日本ではあまりいいイメージがないが(スズキと揉めてます)、日本以外の全ての主要市場でトヨタを販売台数で上回っている唯一のメーカーだ。技術力もとても高く、シボレーコルベットはドイツのニュルブリックリンクで日産GT-Rとトップの座を争うレベルにある。レクサスの4000万円もするスーパーカーのLFAよりも速いタイムを出している(しかもこのクルマGT-R並みに安い)。

  GMの主力車種がCセグセダン/ハッチバックの「クルーズ」だ。このクルマは北米だけでなく、韓国・中国・タイ・豪州・インド・ロシアで生産される「成長市場向け」のグローバル戦略車で、「日本以外の」ほとんどの市場に投入されていて、欧州でも販売されている。このクルマはスズキが作っていた初代とは全く別のクルマで、2009年頃から順次販売された新しいクルマで北米日産が発売しているセントラ(シルフィ)に対抗するモデルだ。シルフィが日本で発売された時、なんか良さそうな雰囲気を感じた人も多かったと思います。アメリカではこのクオリティがスタンダード車で、日産にはこれより小型のクルマが1車種(ヴァーサ[ラティオ])があるだけだ。シルフィは日本のディーラーでは高級車扱いだ・・・。いかに日本のクルマ文化が未成熟なのかを痛感させられる。

  シボレークルーズも同様のスタンダード車だが、日本の基準から見ると豪華に見えてしまうだろう。北米の日本車はこのクルーズより売れていたりするが、それは日本メーカーが「ダブルスタンダード」(日本仕様と海外仕様を差別化)で誤摩化して来た部分も多い。日本市場がコストダウン競争を繰り広げたため、北米向けのクルマとの差が大きく広がってきた。その結果として、近年カムリHVやティアナを日本へ導入したとき、その充実度に日本のユーザーは度肝を抜かれた・・・。VWゴルフが良く見えてしまうのも当然といえば当然だ。「クルーズ」が200万円(北米価格150万〜)で日本で発売されたらどうなるのか?北米では2Lのクリーンディーゼルが$24885〜(約210万円〜)だ。これが日本に上陸したらマツダの新型アクセラのディーゼル(250万?)より安いかもしれない。

  日本での報道はトヨタやホンダへの配慮があってかやや偏向しているような気がする。日本と北米には歴然としたクルマ文化の「格差」があり(日本のクルマは一時期とてもヒドかった)、GMが本気を出せば、トヨタの本拠の日本を一気に飲み込むくらいのポテンシャルを持っている。VWグループとBMWグループが月7000台、メルセデスが月6000台で、スバルやマツダ(どちらも月1万台)を抜かそうとしている。まだまだ日本にはクオリティカーが不足している。GMの復活によって日本市場の「再生」(いいクルマが増える)につながればいいのだけど・・・。