2015年5月29日金曜日

BMW2シリーズ・グランツアラー 登場でこれはマジで売れそう!

  BMWから2シリーズアクティブツアラーのロングホイール版の「グランツアラー」が発売されました。「BMWが3列のミニバンを作った!」と聞いてなんかとってもBMWに親近感が。いよいよBMWも日本(的)メーカーの仲間入りですね。ちょっと突飛ですがこれからはBMWからも4ナンバー商用車が登場してきたりするのでしょうか。今月のニューモデルマガジンXで「ホンダ・グレイスは明らかに社用車を狙っている」なんて書かれてましたが、実際のところ移ろげな個人ユーザーの嗜好なんていちいち相手にせずに、使用目的がハッキリした社用車や商用バンを洗練させるほうがはるかに作る側はやりがいを感じるんじゃないですかね(デザイナー以外は)。いよいよ消耗気味なBMWも「商用車作りたい!」と思ったかどうか知りませんが、きわめて社用車と性格が似ている「3列シートのファミリーカー」を作り始めることに、BMW経営陣はそれなりの勝算を導き出していると思います。

  バブル期以来の筋金入りのBMWファンなどからは、多少は反感を買うかもしれないですが、日産、マツダ、スバル、ホンダと等身大のメーカーだとみれば、スポーツカーとファミリーカーの両方作っていることは何ら不思議ではないですし、たとえBMWであっても特に問題はないと思います。実際のところ世界のいたるところでBMWと競合しているのは、この日系中堅の4メーカーです。日産やホンダにはこれまで幾度となく特に北米市場で痛い目にあわされていますし、今となってはグローバル販売でも簡単にはひっくり返らないほどの大差をつけられています。またマツダとスバルはトヨタグループの尖兵として、なかなか厄介な存在となっていて、今後も至る所でBMWの市場を荒らしまわるでしょう(BMWもトヨタとは友好関係にありますが・・・)。

  もちろんBMWだってやられっぱなしではなく、しっかりと日本メーカーに対して反撃しています。日本市場ではも高級セダンの代名詞といっていいほどに確固たる地位を築いていますし、その影響力は日本の隅々まで広がっています。とりあえず痛快なまでに日産・ホンダ・マツダ・スバルの上級グレード車に大きな壁となって立ちはだかります。それに加えてBMWでは近寄りが難いコンパクトカー市場にも、傘下のMINIを見事に楔として打ち込むことに成功していますし、またBMW/アルピナ/MINIの3ブランドでのディーゼルエンジンの素早い展開はマツダの独走を部分的に牽制しています。そして今回はいよいよ日本メーカーの本丸といえる「ファミリーカー」部門へと進撃することになりました、果たしてどれくらい日本市場をかき回すことができるのでしょうか。

  BMWの持つ「強み」は日本市場における圧倒的な知名度です。「BMW」であるというだけで簡単に注目され(もちろん注目に値するブランドです)、BMWのクルマ作りがそのまま日本市場のトレンドに重要な影響を与えることもしばしばです。BMWがステップATを使えばカーメディアは「正義だ!」と言いますし、BMWが直4や直3のダウンサイジングターボを使えば、それこそが「正義だ!」と絶賛されます。他にも実際にマツダのディーゼルに割とあっさり火がついた要因の1つにBMWの参入と時期が重なったことが大きかったように思います。

  そんなBMWですが、今回の「2シリーズグランツアラー」が狙うのは、同じ3列6人乗りで最近になって新たにターボも追加された「ホンダ・ジェイド」ではありません。クルマの設計上は間違いなくジェイドと同じ分類になるのでしょうが、実際にBMWジャパンが日本での「仮想ライバル」として狙うのは、ジェイドのような新参の小物ではなく、おそらく「キング・オブ・ミニバン」に君臨するアルファードです。クルマの方向性こそ違いますが「目立つファミリーカー」という意味でユーザー層が被るはずです。そもそもユーザーの欲望を肯定するクルマという意味で、アルファードは非常に素晴らしいですが、そういう要素でクルマを売ってきたのが他でもなくBMWです。それにしてもアルファードとは!なかなかデカい獲物を狙ってきたわけですが、BMWの抜群のブランド力に加えて、売れ線のディーゼルを使った「318d」がアルファードよりも安い本体379万円!という強烈な値段設定ですから、エルグランド・オディッセイ・MPV・エクシーガといったいまいちパッとしない日本勢にとってみたら、とんでもない「黒船」じゃないですかね。

  もちろんミニバンブームの中で、子どもを乗降させるにも大変に便利なパワースライドドアを備えるなど、日本での使い勝手を最大限に汲んで総力をあげて開発されてきたわけですから、そんな熾烈な「戦国時代」を戦い抜いてきた日本の高級ミニバンが、初参戦のBMWにあっさりと敗れ去るのは想像できません。しかしあれだけの強さを誇ったプリウスが、弱点を突かれてまんまとVWゴルフの餌食になったことを考えると、この2シリーズグランドツアラーが意外にもかなり早期に予想以上の支持者(ユーザー)を集めるかもしれません。

  いくらBMW製だからといっても、3列シートを備えていて、さらに全高1600mmを超えるFF車ですから、ドライブフィールも日本勢と大きく変わることはないと思います。しかしBMWが使うモジュラー装備がそのまま移行されるわけですから、あのZF製8ATを備えたミニバンが登場するこということです。アルファードの上級グレードは横置きした3.5LのV6エンジンを使っていますが、クラウンやレクサスのようなアイシンAW製8速AT(ZF製よりも一般に性能が上と言われる!)を装備するなんてことはなく、CVTのままなんですよね。あのインパネに内蔵されたシフトが8ATでギコギコとMTモードを使っていたらちょっと笑えますけど・・・。けれどもトヨタが誇る最上級ミニバンなのだから、トヨタの最高級ミッションを使うくらいの演出があっても良さそうです。しかしそんなミッション付けたら、毒々しい評論家から「ミッションの前に走りを改良すべき!」なんて嫌味を言われそうですけど・・・。

  もはや引退間際のマツダMPV以外は、オデッセイもエルグランドもエクシーガもアルファードもついでに、ターボになったジェイドも搭載されているミッションは全てCVTです。もちろん渋滞する都市部を走ることが多いわけですから、商品設計としては何ら間違いではないのですけど、もう少しバリエーションがあっても良いでしょうし、どっかのメーカーがここにあえてATを投入して差別化を図るなんてこともできたと思います。そんな盲点をBMWが見事に突いてきました! しかも前述した通り、ディーゼルエンジンで経済的ですし(これはデリカD5で採用済みですけどBMWなら影響力が違う!)、価格も高級ミニバンを相手にするならば、かなり魅力的な設定になっています。このクルマはそこそこ売れる、いや異例の大ヒットでもするんじゃないですかね!今後の経過が楽しみです。


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2015年5月20日水曜日

フォード・マスタング 「いっそ車名変更もありかも!」

  かねてから「直4のFRなんてダメだ!」なんて生意気な主張を繰り返していましたが、いろいろ思う所があって新型になって直4モデルの限定車のみで先行販売が始まった「フォード・マスタング」に乗ってきました。最近の輸入車スペシャルティカーは最初に「限定モデル」によって市場の反応を探り、そのうえで日本での正規価格を決めるというやり方が多いです。もし限定車がさっさと売り切れて大人気ならば、正規の日本価格はさらなる利益と納車日数の短縮のためにさらに上昇していくでしょうし、なかなか売れずに残るようならばもしかしたら日本への本格導入は見送られるかもしれません。どっちに転んだとしても、なんだか日本のユーザーにとってはあまり面白くない結末がチラホラします。

  さてマツダが20年以上前に設計した2.3LのMZRエンジンに、フォード自慢の「エコブースト」を組み合わせたユニットに私は興味振々だったわけですが、営業マンは少々震え声で「フォードの最新鋭のエンジンです!」と言い切っていました(笑)。それでも乗ってみると現在のマツダの「スカイアクティブエンジン」よりも間違いなく楽しいです。「エコブースト」という商標を使って「ダウンサイジングターボ」の最先端を自負するメーカーらしく、最高出力314ps / 最大トルク44.3kg・mといったスペックは、2.3L直4ターボで4.5L・V8自然吸気に匹敵するというフォードの説明を十分に裏付けています。そして何よりこの新型マスタングの最大の魅力は、欧州車相手でも負けないハイスペックな足回りに強化しつつも、価格設定もほぼ「WRX STI」「ランエボXファイナルエディション」「スカイライン350GT」といった、「馬力単価が安く」良心的価格で知られる日本の高性能車とほぼ同じコストパフォーマンスを実現している点です。

  しかもこの3台の日本車よりも格段に目立つスタイリッシュで洗練された印象を放つ新型デザインは素晴らしく、この美点をきっちりと「商品力」に入れこむならば、3台の日本車を軽く超える「超絶・コスパ」のクルマと言っても過言ではないです。単純に街中での注目度は「マスタング>>>>>スカイライン>>WRX=ランエボ」くらいで、そのまま所有欲を満たしてくれる「満足度」と捉えてもいいかもしれません。日本車の常識的サイズによって縛られた3台では、アメリカンサイズに立ち向かうのは到底に無理で、まるで「日本の読モ」と「アメリカのスーパーモデル」くらいにオーラが全然違います。そして見事なのは、これだけド派手なデザイン&サイズなのに、360度見回してみてビックリなほどに細部の造形にまで隙がないです。簡単に言うとどこから見ても「絵」になります。一方でスカイライン・エボ・WRXはどうもあまり好きでない角度がありまして・・・。

  あくまで個人的な感想ですが、マツダ・アテンザに新たに2ドア・クーペ版が追加されたなら、この新型マスタングに近いデザインになるような気がします。実際に見ると、マスタングもマツダの前田育男氏がデザインしたのでは?と思ってしまうほどです。今回たまたま試乗車は赤だったので、側面の雰囲気や光沢のあるボディカラーは、現行アテンザの代名詞にもなった「ソウルレッド」を余計に想起させてくれました。1920mmのワイドボディで全高が1380mmに抑えられているので、あとは全高が4400mmだろうが5100mmだろうがバッチリとスタイリングが決まります。日本メーカーがデザインコンセプトで作ってきた「日産エッセンス」「マツダTAKERI」「スバルWRXコンセプト」が車幅1900mmくらいで作ることでスタイリングを際立たせていますが、マスタングは市販車がすでにそのサイズになっています。ハッキリ言ってカッコ良くて当たり前。けれども某・日本の大手メーカーが手掛けたら一体どうなることやら・・・。変なグリルが付いて!?

  今回は友人のBMWに乗って出掛けたので、愛車のGHアテンザとのフィーリングの比較にはあまり自信がないのです。外観のイメージに引きずられたかもしれませんが、運転してみるとそこかしこから、予想を超えた「マツダらしさ」を感じることができた気がします。BMWに乗る友人は「直進安定性がない!」としきりに言ってましたが、たしかに大柄なボディに似合わず、"ZOOM-ZOOM"時代のマツダ的なクイックなハンドリングです。私もまったく同様のことを感じていて、その理由として後輪サスが平行感覚に富む「リジッド」から独立担荷式の「マルチリンク」に変わったことで、FR車で直進安定性を出すのが少々難しいのかもしれません。同じ「マルチ」を使うFRであるメルセデスやBMWにはやはり「秘伝の◯◯」があって、安定性に特化したドイツ車的な作りといくらか「差」が出たのかもしれません。またフォードの現在のトップであるマーク=フィールズは、アテンザ開発時のマツダの社長を務めていた人物で、トップになる前は現在のフォードラインナップの製品化の可否を下すエクゼクティブだったこともあって、この乗り味(ハンドリング)こそが、彼が考えるなベストフィールという可能性もあります。

  「アメリカ車」というステレオタイプなイメージ(偏見?)をいつまでも持ち続けることは、現状においてクルマを語る上で非常に危険ではあります。しかし今回50周年を迎えた「マスタング」はその中でも徹底したコンサバ系であり、米国・カナダ・日本・豪州の4カ国に広がるファンはいつまでもその「幻影」を追い続けている部分も大きいように思います。グアムやハワイでレンタカーを借りるなら、マスタングのコンバーティブルが定番だったりするくらいで、「V8エンジンを積んで力強く、そしてゆったりと優雅に走る」イメージがまだまだ強いはずです。かなり古いモデルには直4搭載があったようですが、今回の欧州への拡大を意図した直4ターボの再搭載には、それなりの賛否両論があると思います。もちろん日本のフォード・インポーターもどれくらいの反響があるのか戦々恐々の様子です。

  このマスタングには「総合評価」なんて観点は意味を成さないかもしれません。率直に評価できる点としては「スタイリング」「価格(コスパ)」「走りが楽しい」の3つです。しかもこの3点がずば抜けて高いスコアを記録しています。もちろん細かいことを言えば、「楽しい」のはサイズからはなかなか想像できない位にダイエットした車重も大きく貢献していますし、中型車用エンジンで世界を制したマツダ・MZRエンジンがその軽快な走りを支えています。他にも先代から大きく進化していると思われるのが、インパネの高級感や、レクサスに付くようなシート・エアコン(冷暖房あります!)がこの先行限定車には標準装備されています。「マスタングにシート・エアコン」なんて完全にイメージを崩壊させる要素だと思うのですが、これが付いていて怒る人はいないでしょう。

  逆に悪い点は?というと、「良い点以外の全て」です。やたらとサイズに文句を付ける人が多い日本ユーザーが、一目で諦めてしまう幅広設計がネックになります。コンビニに停車しましたが、2ドアクーペのドアを颯爽と開こうものなら、ドアエッジが豪快に隣りにヒットする姿が想像できますので、恐る恐る開けることを余儀なくされます。ちょっとデリカシーの無い人を助手席に乗せてしまったら、乗り降りの際に神経がピリピリします。そして最近のアメリカ車はというと、ドアモールを挟むほどの余裕もないほど、ドアのチリもよく合っていますし、何よりパネルの継ぎ目がほとんど目立たないデザインです。むしろレクサスRCの方がドアモールがハマってそうなドア回りの緩さを感じてしまうのは私だけでしょうか?

  さて先ほど長所で挙げた「走りの楽しさ」は人によっては欠点にもなります。先ほども直進安定性に問題があると書きましたが、正直言って60km/h走行時のNVHが、マツダアテンザの90km/h走行時くらいです。そもそもFFとFRという違いでアテンザの方が優位ではあります。さらにピラーレスのクルマだとこんなものなのかな? エンジンからの振動は全く問題ない水準ですが、19インチに大型キャリパーをぶら下げる足元がどうもざわつきの主原因かと思います。デザイン重視と思われる19インチ採用はどこのメーカーでもそこそこ批判が出る部分ではあるので、このマスタングがどうというわけではありませんが、ちょっと邪推すると、マスタングであるがゆえにマツダのような欧州車的な(BMW・アウディ的な)洗練をあえて避けて、スポーツカーの領域に片足を突っ込んだ状態での市販化になったのかもしれません。ちなみに走行モードは「S」「S♯」のほかに「トラック」というサーキット用のスピンしやすい設定もあります。この「トラック」を盛り込んだゆえのNVH対策の不徹底なのかもしれません。

  さらに言わせてもらうと、この新型マスタングもまた日産GT-Rが直面した「サーキット」か「高級GTカー」かという二択を迫られているように思います。日産GT-RとスバルWRXは、極めて日本人的な発想から「サーキット」と「高級GTカー」分けて2種類のクルマを販売する方向に舵をとりましたが、マスタングにも「NISMO / STI」「ピュアエディション / S4」の作り分けが必要だと思われます。もちろんそんなことは名門フォードは百も承知でしょうから、予定されている右ハンドルの発売と同時に、「トラック」モードを外した、ジェントルで洗練された乗り味の「マスタング」と、ハイスペックなユニットと強烈な出力を誇る「シェルビー」にラインナップを分けて展開することも十分に予想されます。フォードの営業マンから電話があったらその辺の要望をフィードバックとして強調しておこうと思います(あまり関係ないのは百も承知ですが・・・)。


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