2015年6月10日水曜日

フィアット・パンダ4×4 「イタリアからのジムニー」

  普段から近隣の都県の道路を使わせてもらっていて、日本の道路行政は非常に素晴らしい!と絶賛したくなる立場は変わらないのですが・・・。東京西部を縦断する圏央道が順調に開通する一方で、八王子〜藤野(神奈川県)を結ぶ「陣馬街道」が未だに落石で不通のままだったり、埼玉県内の飯能市名栗地区から秩父へと抜ける尾根道も不通のままだったりで、カネが取れる道路から作る(直す)みたいな風潮が少々気になります。もちろん陣馬街道は紅葉シーズン向けの観光路線でしかなく、シーズンに合わせて八王子からのルートを部分開通させましたし、埼玉の名栗〜秩父線もまた299号を通って迂回するルートの方が平坦で安全に通行できるので、それほど重要度が低いという判断なのだと思います。

  東京都も埼玉県もクルマを所有しない世帯が多くなっていて、クルマ行政に青天井にお金を使い過ぎることに理解が得られないのは仕方のないことですし、防災などの観点からも必要性がほとんど認められない道路となると、今後は修繕されることなく放置されていく可能性もあります。落石も片付けられることなくそのままになった辺境の道を走っていると、これからは最低地上高がある程度確保されたクルマ(=SUV)が、このような道路の利用者にとっては必須になってくるのかもしれません。ますます高齢化が進み財政は厳しくなり、一日に数台通るだけの道の管理を行政が行うのは、いよいよ地方議会で次々と撥ね付けられる時代になっていくでしょう。

  高齢化が進む社会というのは日本だけの問題ではなく、フィアットの本拠地であるイタリアでも深刻なレベルに達しています。産業の空洞化に直面し、中央も地方も財政が破綻気味というのも日本にそっくりです。フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティの国といえば華やかなイメージですが、庶民の足となる一般車はフィアットが圧倒的なシェアを握っていて、その実態は日本における「トヨタ独占」に近い状況です。そして面白いことに、トヨタもフィアットも「独占体制」ながらも、グローバルメーカーとして揃って2000年代の後半に苦しい時期を迎えていて、そこからシンクロするかのように近年はともに目覚ましい「改革」の成果がユーザーレベルでも実感できます。

  自動車業界の「保守本流」といったら語弊があるかもしれないですが、トヨタとフィアットは日本とイタリアを代表する企業として、両国の経済政策の恩恵を受けやすいポジションにあったためか、ホンダのような「挑戦」的な姿勢は薄く、これまでは商品開発力においてしばしば厳しい批判にさらされてきました。しかし一連の「改革」後の両グループのクルマを一つ一つ品定めしてみると、なかなかの輝きを放つものが多いことに気がつきます。例を挙げると、トヨタなら「レクサスGS」「86」「レクサスIS/RC」「アルファード」でしょうか。どれも世界最高水準を視野に入れた「逸品」と言える出来です。伝統モデルの「クラウン」ではやはり大きな変革はできませんでしたが、商用車の「サクシード/プロボックス」などでもやたらと気合いが入った作り込みをしています。

  そしてフィアットグループはというと、傘下のクライスラー系ブランド「ダッジ」のラインナップを北米で増強し、同じく傘下のアルファロメオの「ジュリエッタ」のシャシーを使っていて、性能面で日本車にも対抗できる中型モデルを次々と投下しています(「ダート」など)。さらに北米で目覚ましい伸びを見せているのが「ジープ」ブランドで、日本にも新型の中小型モデルが「無視出来ない価格」で次々と上陸していて、SUV限定ブランドにも関わらず、プジョー、ルノー、シトロエンといったお手軽な輸入車ブランドを販売台数ベースで軽く上回っているのはお見事です。ヴェゼル、ハリアー、CX5などヒット車が連発して「過熱」気味な日本車SUVのイケイケな状況を考えると、このブランドが日本で生き残っているだけでも奇跡的ではありますが、ジープは力強くシェアを伸ばしつつあります。「SUVだから売れて当たり前!」という声もあるかもしれないですが、トヨタRAV4やスズキSX4・Sクロスなどまだまだ陽の目をみないモデルもありますから、日本で売れているSUVにはそれなりの「理由」が必要になっているのは間違いないです。

  さらにフィアットはアルファロメオをテコ入れし、BMW、メルセデス、アウディ、レクサスを仮想ライバルとしたブランドへと再編する方針で、現在「ジャガーXE」が登場して俄に活気づいているDセグに新たに「ジュリア」を投入するようです。もちろん「お遊び」ではなく、3シリーズやA4が持っているシェアを奪うためのグローバル戦略車ですから、XEと同等以上のインパクトを伴ったスーパーDセグセダンが堂々と登場するはずです。またスポーツカー部門でもアルファロメオから「4C」を発売して技術力とアイディアにおける水準の高さを見せつけましたが、さらにこれに加えて欧州でやや手薄とみられる小型オープンスポーツカーとして「マツダ・ロードスター」と共通設計でハイパワーエンジンを搭載した新型モデルがグローバルで登場する予定になっています。

  ブランドが違うのでそれほど気がつかないですが、日本のカーメディアの多くのページをさりげなくフィアットグループが占めています。しかしそんなフィアットのホームページを見てみると、まだまだ興味深いモデルがあります。特に気になったのが「パンダ4×4」というモデルです。日本では正式ラインナップではなく、限定車のみの展開になっているようで、現在のところどちらも本体価格が250万円程度の2種類が表示されています。全長4mに満たないBセグの中でも小型になるSUVは意外とライバルが少なくて、とても新鮮に映ります。日産ジュークがフランスで大ヒットして以来、BセグSUVが各メーカーから発売され増えていますが、その多くはBセグのベース車よりも一回り大きくしていて、3ナンバーサイズの車幅になり、小型車を意識させない上質感を出そうとする戦略が主流です。しかしこの「パンダ4×4」はもともとのパンダのサイズをしっかりと継承していて、目立ってスリムでその出で立ちは、「ジムニーシエラ・ランドベンチャー仕様」のように味のあるデザインでスタイリッシュに仕上がっています(フィアットからは「500X」という車幅があるタイプの小型SUVも間もなく日本に上陸するようです)。

  昨年登場したスズキのジムニーシエラ・ランドベンチャーも、非常に洗練されたエクステリアを持っています。内装もやや付け刃的ではありますが、パっと見ただけではジムニーとは思えないほど上質で、スバルやマツダの内装に近い感覚で、魅力たっぷりの175万円〜となっています。この「パンダ4×4」も同様にやや垢抜けないベース車「パンダ」を、メッキパーツなどで飾るというスズキと同じような戦略で、これによってオフロードモデルの存在感を残しつつ商品力アップにつなげています。確かに小型輸入車のデザインなんて・・・よく見りゃ二束三文!というケースが多いのも事実です。フィアット500シリーズとBMWミニシリーズの双璧を除けば、どれもこれもイマイチで、ここ数年のモデルで今もなお変わらず納得できるデザインのものは、「ルノー・ルーテシア」と「シトロエンDSシリーズ」くらいなものです(Cセグも含めてダメダメじゃないですか?)。

  そんな中でこの「パンダ4×4」には、日本の狭い山道で活躍しそうな「機能美」と、街中に表れてもポップに彩られた充実ライフを演出してくれるだけの「主張」が備わっています。ジムニーは楽しそうだけど、そのために2台にする余裕もないし、普段に使うにはちょっとデザインが個性的過ぎる!と二の足を踏んでいる人々にとって、なかなか良い選択肢になり得るんじゃないでしょうか? 蛇足ですが、マツダのCX3のやや膨らんだキャビンを見て、これはSUVではなくて「ピープルムーバー」だ!と率直に感じました。そしてディーゼル車を相手に価格を比較するのもナンセンスですが、パンダ4×4の方がわずかな差とはいえ総支払額は安くなるようです。CX3、ヴェゼル、ジュークのインテリアがオシャレになったモデルに乗ってみて、少しでも違和感を感じたならばフィアットかスズキに行ってみるといいかもしれません。動画にもパンダ4×4のオフロード走行がたくさん出ているので参考にしてみてください。

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