2017年5月27日土曜日

アウディRS5 「リアル『スカG』進化形」

  『ドイツ車で一番欲しいクルマは?』・・・家族や両親のことを考えて総合的に判断するなら、BMW420iグランクーペMスポですかね。実際にBMWジャパンとムラウチBMWで見積もりをもらい真剣に考えましたけど、もっと条件の良いクルマが後から出てきそうな雰囲気があるので『見送り』ました。それでも1年経ってまだ候補の片隅に残ってます。現在の個人的な順位はジャガーXEよりは上で、プジョー508GTよりは下(価格✖️魅力の総合的な判断です!!)。508GTの魅力は・・・コスパ、サイズ、静音、質感、アシですね。フラッグシップってのはメーカーの威信に関わるので自然といいクルマになるんですよねー。

  会社の年配の人に「クルマ好きなんだって?」と話を振られる度に、自分のクルマ選びなんて他人から見れば『合理性』と『モラル』の権化だよなー・・・なんて気付かされます。「なんでそれに乗ってるの?」と聞かれたら、高速道路をどのクルマよりも安全で快適に走れて、しかも運転が楽しくて飽きない・・・と反射的に口から。うぁーめっちゃ草食系じゃん俺。

  『GT-Rなんかには興味ないの?』・・・自分自身に余裕がないからかもしれないけど、この手の質問はちょっときついですね。は?興味ないわけないでしょ?サーキットに行く趣味がない自分が、他の多くのことを我慢して、母親の悲壮な顔面を無視しても乗る勇気がないだけです。『サーキットに行かないので・・・』と返事すると、『今の若い人は野心がないよねー』みたいなことを仰る・・・野心?

  ふざけんじゃねー!!GT-Rが高性能車の『全て』だと思っている典型的な日本のオッサン(本読まない人?)はマジでめんどくさいです!!ネットニュースで「最強GT-R」とかいうステレオタイプな記事が溢れちゃっているから、ちょっと読んでわかった気になって絡んでくるオッサン・・・困った困った『ネットりオヤジ』。

  GT-Rの本体価格もわかってなかったりするようで、『そんなカネ無いですしー』『高いって言っても500〜600万円くらいだろ?昔の若者はローン組んでたよ!!』『・・・(おいおい)』もう面倒くせーから無知なオッサンは若いヤツに絡んでくるんじゃねー。おっさん達の若い頃に改造費用抜きのノーマルで1000万円オーバーの日本車なんてなかっただろうに・・・今のGT-Rは完全に金持ちジジイ向けなんだよ!!。そんなこんなで、『スカイラインGT-R』『スープラ』『RX7』『GTO』とか聞くと、ちょっと嫌な『世代』のイメージがちらつく今日この頃です。

  高性能車の『高』という言葉に過剰に反応する時代が『バブル』だったのかなー。そしてオッサンになって今度は『プレミアム』ですか・・・。プレミアムブランドといえばドイツですけども、北米の調査機関が先日発表した『安全なクルマ・23台』の中にドイツプレミアムはメルセデスの1台のみ。これなんかおかしくないですか!? 北米の調査結果がおかしいのではなくて、ドイツ車の『現在地』って一体何!?ってことです。見た目は中国にたくさんあるメーカーが作っているモデルと変わらない(中国が真似しているみたいだけど)。載っているエンジンも三菱の直噴ターボで中国メーカーと同じだし。

  『もうドイツメーカーはオワコン』と不遜なことを思ってしまいますが、アウディの『RS』シリーズに関しては、まだまだ現在進行形で『高性能車技術』のさらなる高みをストイックに目指しているように思います。もしかしたら次世代モデルは大々的にHVが導入されるようになるかもしれないですが、それでも『AMG』や『M』ほどは『コモディティ化』へ一直線という訳でもなさそう・・・。見る人が見れば、『同じだよ』と言われてしまうのかもしれないけど、ドイツメーカーが高性能車を作って、世界中に見せつけるのは好きですね。やはりクルマ文化の根源は、これこれー!!

  ドイツの高性能車といえば『ポルシェ911シリーズ』と『BMW・M5』という二大グランドツアラーがすぐに浮かびます。2ドア4シーター・クーペと4ドア・セダンこそがグランドツアラーのベースになってるし。マセラティもアストンマーティンもジャガーもレクサスも、『グランドツアラー』はこの2タイプへ集約されています。高級ブランドほど『独創性』なんてないんです。高齢者向けですから変化を好まないようで・・・どこかにホンダみたいな『ラグジュアリーブランド』はないのか!?

  ポルシェもパナメーラを作ってBMWを刺激しますし、BMWも『スープラ』で・・・いやいや『M4』で、ポルシェをチクリと。しかしドイツ伝統のグランドツアラーは『911』と『M5』だけではないっすよー。『アウディRS4アバント』・・・。日産のGT-R開発陣の頭には『ポルシェ911ターボ』ばかりがあるようですが、スカイラインGT-R時代のAWDスポーツのちょうどいいライバルは、このRS4アバントでした。2000年頃のエボとインプWRXは4発で1200kg台なのに対して、RS4アバントとR32以降のスカGは6発でやや重量系。なんでアウディはワゴンボデーにこだわるのか!? 一時期ワゴンエボってのがありましたけど、基本的には『RS4アバントって何!?」ってな感じで真似しようともしなかったですねー。

  アウディはトラクションが大事なワゴンだからこそ『高性能化』に価値があるとして『スポーツワゴン』にこだわりを見せてますけど、日本勢はターボ&AWDは『ピュアスポーツ』ならぬ『ガチ・スポーツ』ですから!!商用車みたいなボデーにする必要はない!!・・・『ガチ』だったらなんでエボとインプWRXは4ドアなんだ!? これに関してはですねー、おそらく三菱とスバルの開発者の脳裏には、あのフランス映画『TAXI」があったのでは・・・。三菱には日産ではなくプジョーと組んでエボ復活させてほしいな。
↓エボのタクシーは過疎地の話題づくりには良さそうかも。



  アウディといえば和田智さんと言う日本人デザイナーが、そのイメージの確立に大きく貢献していて、初代TTとともにアウディのフィロソフィーを決定づけた3代目`『A6』が代表作品として知られています。その和田さんが、日産出身の和田さんが!!バブルのど真ん中で『セフィーロ』と『プレセア』をデザインした和田さんが!!アウディに『日本的!?』なデザインを注入したのが『アウディA5』。和田革命が起きる前にすでにアウディRS4アバントは存在してましたが、和田氏がデザインしたA6から、そしてA5にもRSが設定されました(RS6セダンは廃止)。

  RSの現行ラインナップは、ブランドアイコンを担う『TT・RS』。エボ、WRXの進化形といえる『RS3セダン』。伝統のハイスペックワゴンの『RS4アバント』『RS6アバント』。BMW・M5に対抗した?『RS7』(AWDですけども)。そして和田デザインを継承するキープコンセプトな2代目A5、2ドアクーペ、日産出身デザイナーの『RS5』。そしてポルシェ911のアウディ版(中身はランボルギーニ)の『R8』。これだけ執念深くグランドツアラーを集めたスポーツ・ブランドは他にはないですねー。日本とドイツの名車をコピーして動態保存する『博物館的ブランド』!!ドイツ自動車産業の『深い懐』(オタク気質!?)を見たような気がします。



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2017年5月22日月曜日

ロータス・エキシージ 「合理的かつアブノーマル」

  ロータスに乗る。クルマ趣味としてはこれに勝るものはない!!みたいなことを、政治評論家の青山繁晴さんも仰ってます。トヨタの横置きエンジンを搭載した軽量マシンを、とても乗用車とは言えないレベルの『オモチャ』に仕立てるなんて、とても夢のあるメーカーだと思います。ホンダがS660のパワーアップ版を企画しているそうですが、ロータスの株主であるトヨタには、競り負けて簡単に潰れないような支援をお願いしたいです。もっともマレーシアの政府系ファンドが後ろについている国営プロトンの傘下ですから、せっかく守ってきた伝統の英国ブランドを大事にするでしょうけども。

 

  初めっから見当違いなことを書いちゃうかもしれないですが、ロータスは木目のインパネを復活させるべきじゃないの!? いかにもイギリスのクルマです!!という主張があって・・・このブランドのサーキット以外での価値を増してくれる要素になると思うのですが。これをホンダやマツダがやっても全く様にならないですし、現行エヴォーラのように上品にアルカンターラ巻きのイタリアンで上品な仕様は、どこにでもある高級セダンみたいでいたってフツーです(日本市場にはアルカンターラが多すぎる!?)。

  現在新車で購入できるエキシージは『350スポーツ』というグレード限定のようで、本体価格は、ハードトップ、タルガトップ共に972万円です。確かにトヨタ86やフェアレディZの代わりに気軽に選べるモデルではないっすねー。釣りが好きすぎてヨットハーバーにクルーザーを所有したくなるくらいに趣味に対して『ガチ』な人じゃないとなかなか手が出ない。86やフェアレディZでも十分に楽しいじゃん!!・・・と思っている私のような初心者にはあと10年経っても辿り着ける境地じゃないですね。そもそも東京じゃ近所にサーキットが無いし。

  ロータスには『エリーゼ』という廉価モデルが573万円〜で設定されていますから、とりあえずこれで十分満足できるんじゃ・・・という考え方もあるでしょう。『ロータス』というブランドのクルマを買うならば、「エキシージは高い、エリーゼは安い」という結論になりがちなんですけども、不思議なことに日本市場全体を見たときに、この2台の置かれている相対的な位置を考えたならば「エキシージは安い、エリーゼは高い」となります。

  冒頭にも書きましたがトヨタの1.6Lを使う138ps、あるいは1.6Lスーパーチャージャーを使う220psというスペックに、1000kg前後の車重ならば、300~400万円くらいで買えるマツダ・ロードスターやアバルト124スパイダー、あるいはミッドシップでもホンダの新型スポーツカーで楽々達成してしまうであろう数字です。ポルシェ718ケイマン(619万円)を考えても、いくらでも他で代替できる中で、それなりに価格競争を考慮した数字が573万円となっています。

  それに対してエキシージは、1100kgのボデーに350psをひねり出すトヨタ製V6スーパーチャージャーです。マークXにも同様のスペックの設定があったよ!!といっても1700kgのボデーに、スポーティさはないトヨタの縦置きトルコンAT。FRですからトラクションのかかり方も全然違うので、もはや比較する意味がないし、マークXスーパーチャージャーにエキシージを上回るスポーツカー的な魅力を見つけるのはちょっと難しいです。そりゃ乗り心地とか静音性はいいでしょうけど。

  972万円のいう設定ではありますが、その「非日常」な価値を考えると、(世間ではお買い得と言われる)日産GT-Rのようなコスパを秘めたクルマです(GT-Rはインテリアにもコストが割かれているからさらにすごいですけど!!)。国沢さんの怪情報によると、マツダがロータリーエンジンを使った新型スポーツカーの市販を決めたそうですが、これも900万円程度まで跳ね上がったセレブなクルマになりそうですね。その時にはエキシージのコスパがもっと明確になるんじゃないかと思います。

  ちょっと話題が逸れますが、マツダRX9のユニットが、当初から開発継続が明言されていたようなロータリーによるレンジエクステンダーを使ったピュアEVならば、「これじゃロータリーじゃねー!!」とか言われそうですねー。もしマツダが独自のハイブリッド研究をしていたならば、『ロータリー&電気ターボ・スタートブースター』というロータリーの細い駆動トルクをモーターで補う理想的なユニットが真っ先に思いつきそうなものですけどねー。国沢さんがいうには「マツダはピュアEVしか無理」だとか・・・。ほんとかよ。
  

 

  (573万円の)エリーゼと全く同じ『バスタブ構造』のシャシーに、全く変化しない内装。それに(450万円の)マークXスーパーチャージャーのエンジン。実際は縦置きと横置きの違いがあるから別物で、エキシージに使われるのはエスティマやアルファードといったFFミニバン用の横置きV6です。だけどこれを組み合わせて972万円ではどこのメーカーもなかなか出せないような「非日常」なクルマとして成立した!!という意味では、非常に価値ある一台だと思います。

  おそらくホンダが同スペックのミッドシップを『S3000」とかいう名称で売るならば、1500万円くらいの価格をつけそうだし、マツダが現実に取り組んでいるピュアEVスポーツでは、同程度の加速性能は出せると思いますが、どうやっても1100kgに収めるのは無理そうです(価格と性能でコルベットの対抗モデルになりそう)。トヨタの支援があるとはいえ、『生き馬の目を抜く』がごとく圧倒的な開発力で世界の市場を跳躍してきた日本メーカーをしても、なかなか付け入る隙を与えないロータスって改めて凄いブランドなんだと思います。それでも毎年赤字を垂れ流し続けているようですが・・・頑張って欲しいですね。


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2017年5月16日火曜日

ランドローバー・レンジローバースポーツ 「これをスポーツカーと思う人はいないけど、車名がややこしい」」

  なんだかもう色々とややこしくて、ディーラーの人に訊いても返ってくる説明がさらによく分からないブランドの代名詞といえばランドローバー。某有名ライターの著書によると、「日本のレンジローバー・ユーザーのほとんどが勘違いしたまま乗っている」などと嫌味を書かれています。もう触らぬ神に祟りなしなのかもしれないですが、こういうカオスなブランドこそが「輸入車」らしいとも思うのですよ。トヨタやホンダに乗っている人が「勘違いしている」なんてまず言われないですから。ものすごくややこしいですが、ランドローバーが1970年発売したレンジローバーというモデルによって世界的に知られたので、「ランドローバー・レンジローバー・〜」みたいな名前になるようです。

  そのライターさんがおっしゃるには、日本のカーメディアではしばしば「レンジ
ローバーはイギリス貴族のクルマ」と紹介されるが、実際に開発を主導したスペンサー=キング氏に取材すると、設計段階では完全に軍用車両から派生した牧歌的なクルマでしかなかったという証言が得られたらしい。よってレンジローバーのユーザーは日本のインポーターがでっち上げたイメージ戦略にハマってんだよ!!つまり俗に『電通の自作自演』っていう虚構に満足してしまっているから『勘違い』なんだそうです。確かに2017年版の世界の自動車オールアルバムのLANDROVERの紹介にも「70年代になると・・・中略・・・英国王室ほか、世界中のセレブが愛用する高級車としてのポジションを確立する」と書かれてますね。

  軍用車両といってもあくまで偵察・連絡用として第二次対戦までは広く馬や二輪車が使われていたようですが、まず最初にアメリカが重機関銃を装備できる4WD車を馬の代わりに使おうと考えたようで、1940年に入札を行なったところ「アメリカン・バンタム」という弱小メーカーがこれに応じたようです。しかし生産能力が明らかに乏しかったようで、すぐさまフォードとウィリス・オーバーランドの2社にライセンス生産を命じたとのことです。この車両を拿捕した日本軍は終戦末期にトヨタに製造を命じたことがランクルの起源だと某WEB百貨辞典に記載されていますが、実際にトヨタがランクルの前身モデルをラインオフしたのは朝鮮戦争が開戦した翌年の1951年です。

  トヨタの社史には「警察予備隊への納入目的に作った」とされていますが、実際に長らく採用されるのは旧日本軍との強いコネクションを持っていた三菱でパジェロの前身モデルが選ばれます。なぜトヨタが採用されもしなかったランクルを試作しそのまま量販へと移行したのか? アメリカ人が書いた本によると、アメリカ軍から直々にトヨタに注文が出されていて、ジープを量産していてそのノウハウを活用してランクルを発売したとあります(真偽のほどは調査中です)。



  ランドローバーの発売が1948年なので、ウィリス(ジープ)→ランドローバー→ランクルの順番に登場したことになります。ジープは軍用車両ながら、生産能力増強が進まず年間3000台足らずという北米ビッグ3に遠くを呼ばない水準で、次第に米国市場でも下火になり南米が主力市場になっていきました。ランドローバーは世界初の特殊空挺部隊として知られるイギリスSASに採用されます。トヨタ・ランクルも1958年には早くも米国へ輸出が行われました(え?これって軍用じゃね?)。ウィリス・ジープがモタついている隙にシェアを拡大したのがランドローバーとランクルだったようです。

  経営不振になったジープは、アメリカンモータース(AMC)に身売りします。といっても米国自動車産業にその名を轟かすあのリー・アイアコッカ(当時はフォード重役)も、この1969年のタイミングでは買収提案をあっさり却下するなど、なかなか買い手が出てこなかったようです。ちなみにリー・アイアコッカはこのあと独裁者ヘンリー・フォード2世によって解雇され、クライスラーに移ったのちにAMCから取得したジープ・ブランドを復興しますが、これはどうも二番煎じだったようで、もともとは1969年にボロボロのジープを買い取る決断をしたAMCの幹部ロイ=チャイピンこそが本物の目利きだったようです。

  あくまで想像の話ですが、おそらくロイ=チャイピンは、アメリカ的な価値観が音を立てて崩れていく、ベトナム反戦運動吹き荒れる中で、豪華なリムジンから素朴なジープへ人々の関心は移っていくであろうことを完全に見抜いていたんだと思います。乗用車が限界まで豪華になった途端に、SUVの人気が高まる。まさに2010年代に世界で起こったことに近いことが、70年代のアメリカですでに起こっていたんですね。

  後部は幌で覆われ乗員のシートは布を張っただけのキャンバスシート。横転したら即死。そんな安全もへったくれもないジープに、ハードトップを取り付けて、ホールディング性能に優れるバケットシートを取り付けたところ、すぐに大ヒットしたらしいです。1969年のAMCジープの奇跡の大成功を知ってか知らずか、1970年にランドローバーから、ジープと同様にハードトップ、バケットシート、さらに本格的なフルタイム4WDが装備されたレンジローバーがイギリスで脚光を浴びます。


  1970年代にAMCジープとレンジローバーの登場で、一気にファッショナブルな存在になったSUVですが、1970年代といえばオイルショックやアメリカでの排ガス&燃費による規制が厳しくなって自動車メーカーにとっては冬の時代だったはず。しかしAMCジープ、ランドローバー、ランクルを始めとしたSUVは成長と遂げ、1981年にはメルセデスからも軍用ベースのGクラスが登場。1990年代になると、フォード・エクスプローラやハマーH1など、3大メーカーからも盛んに発売されるようになります。これにはちょっとしたカラクリがあるようですが、本筋から逸れるので別の機会にしましょう。

  ランドローバーは1989年にランドローバー、レンジローバーに続く第3のモデル・ディスカバリーを発売。1994年にはBMW傘下に入ります。1998年にはジープが属していたクライスラーもダイムラー(メルセデス)によって支配を受けるので、英米の2大SUVブランドがドイツの両雄によって一時は所有されることになりました。どうやらこの前後ぐらい(1998年頃)が現在のSUVブームにつながる起爆点になるようです。ドイツのロードカー文化に取り込まれてすっかり消化されたランドローバー、ジープの残骸は、ドイツあるいは日本の自動車産業がリードしてきたロードカー文化の影響を強く受けて変質してしまいました。

  BMWと新型ラダーフレーム(X5、レンジローバー用)を共同開発したランドローバーですが、なぜかBMW以上にロードカー性能にこだわるようになったようで、世界的大ヒットとなったポルシェ・カイエンに敗れ去ったBMW&ランドローバー連合軍の無念を果たすべく、BMWと新たにロード性能を高めたシャシーを開発したようです。しかし完成前にランドローバーはフォードに売却され、その後2005年に打倒カイエンを掲げたニューモデル「レンジローバー・スポーツ」を発売します。・・・もうややこしい。このクルマに大きく貢献しているのはBMWなのか?フォードなのか?

  ランドローバーも来年2018年で創立70周年を迎えることになりますが、その足取りはジープやランクルなどとリンクしつつも、1940年〜の第一世代、1970年〜の第二世代、2005年〜の第三世代へとざっくり四半世紀くらいのタームでブランドの存続する意義・立ち位置を変えてきていることがわかります。「軍用の時代」が終わり、「SUV保護法の時代」にブランドの価値を定着させ、「ロードカーSUVの時代」へと突入しています。

  初期の軍用ランドローバーの血を引くモデルはすでに廃盤となっていますが、第二世代に生まれた「レンジローバー」とさらに第三世代のホープとなった「レンジローバー・スポーツ」の2台が、SUVの最先端に立っているのは素晴らしいことです。M&Aの波になんども揺られて主が変わった不安定なはずのブランドが、世界中のメーカーがうらやむモデルを持っている!!これこそ開発者の情熱がほとばしっている証左ではないでしょうか?


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↓スペン=キングに会いに行った!!収録
  

2017年5月7日日曜日

ジャガー・Fペース 「清々しいまでの聖戦」

  世の中わかんないことだらけです。先月にビックカメラが商品決済にビットコインを導入したとのこと。両親にマッサージ機などの健康器具を買う以外で家電量販店に行くこともないので、どーでもいいですけども、そもそもビットコインを利用するくらいにフィンテックな人々が、今更に実店舗で買い物することなんてあるのだろうか?どうやら中国人観光客目当てだそうですけど。

  それと同じくらいに謎なのが、ジャガーがSUVブランドとして再生しようとしていること。SUV専門ブランドであるランドローバーとジャガーはエンジンなどのコンテンツを広く共用していて、実質的に1つのメーカーとして一体化されていますけども、これまでスポーツカーとセダンに注力してきたジャガーにまでSUVが展開され始めました。アメリカにも中国にも「ジャガーにSUVを作って欲しい!!」という客がいるから・・・それってどんな客だろう!?

  「世界で一番下衆なクルマを作っているのはドイツメーカー」とずっとブログで言い続けて来たんですが、その度に複数の方々から大いなる批判を頂戴しました。いくら試乗体験や理論値からの推測等々を並べ立てても、「ドイツ車的なものが至高」と思い込んでいる人々には無力で、どんなに静粛性に疑義があろうとも、どれだけエンジンが回らなくても、どれだけミッションが不出来でも、「エンジン音がよく響いて、低速トルクが豊富で、変速スピードさえ早ければいい」という世界観の人々には・・・どうやら本当に理解できないみたいです。

  VWがNOx偽装を行ってもそれさえも正当化しようとするカーメディアがあった!!いやこの一件をまともに批判ができているメディアはほぼなかった(大人の理由で!?)!!「悪いのはアメリカと日本・・・ドイツが悪いはずがない。」この件に何らコメントできないライターは、心の奥底から本気でそう思っているんだと思います。このことがどれだけ他のメーカーに迷惑がかかっているか!?そんなことは全く御構い無しです。世界中で展開する下世話なブランディングはいいとしても、世界の自動車産業から多様性を奪ったのは、他でもない強欲な3つのドイツ系グループです。そして挙句の果てに「虚偽」かよ!! 例えばロールスロイスとベントレーの所有権を巡って醜態を晒し、さらにこれを2つに引き離してそれぞれ「解体中」なのが、BMWとVWの両陣営です。そしてランドローバーも散々にドイツ資本にボロボロにされた被害ブランドの一つです。

  日本の多くのカーメディアには絶対に出てこない論調でしょうけども、世界のユーザーは「ジャガー・ランドローバーよ!!今こそドイツに復讐しろ!!」と盛り上がっているんです。日本でも沢村慎太朗というライターが、最新の評論集「午前零時の自動車評論12」の中で『バトル・オブ・ブリテン』というドンピシャな表題を掲げていますが、これは2014年の「ジャガーXE」に関しての考察でした。もちろん『ジャガーXE VS BMW3er』がテーマです。沢村さんの結論は「圧倒的な制空権を持つドイツに対して、XEはかなり善戦するのでは!?」といったものでした(やはりオッサンライターはドイツ贔屓が身に染みている・・・)。日本ではさっぱりですけども、北米ではジャガー・ランドローバーの追い込みが凄まじいペースになっています(2017年3月は前年同月比で18%増)。

  同じ「12巻」にはポルシェ・マカンについての評論もあります。そろそろ勘のいい人は気がつきたと思いますが、このマカンを取り巻くライバル関係こそが新たな『バトル・オブ・ブリテン』の戦場になっています。事の発端は・・・BMWがランドローバーを傘下に収めた1994年に遡ります。いや厳密には、もともとランドローバーを所有していたブリティッシュ・レイランドなる商社(実態は政府系ファンド)が無能だったのが悪いです。ブッシュ政権下で急成長したハリバートンが、アメリカの有名ブランドを全て抱えこむみたいなものですね。マーガレット・サッチャーとかいう極右のお人形・宰相の時代の「政商」に、トヨタ、ホンダ、フォードに対抗する経営能力などあるはずもなく、経営不振で崩壊後にランドローバーはハイエナBMWの餌食になります。

  BMWとランドローバーの協業によって誕生したモデルがX5です。しかし素人のBMWが参画したためか、その完成度はやや中途半端で、VW&ポルシェによって制作された後発の「カイエン」の前に惨敗を喫します。X5開発後にあっさりとBMWにポイ捨てされたランドローバーは、同盟国アメリカ・フォードに拾われて支援を受けます。フォードはランドローバーの独立性を損なう選択は避けて、フォード・エクスプローラと統合されることもなく、ランドローバーは打倒カイエンを見据えた新型シャシーを2004年に開発します。現行のレンジローバー・スポーツです。これこそが『バトル・オブ・ブリテン』の第一ラウンドですね。残念ながら完全にドイツ贔屓な日本市場はもちろん、北米でも人気があったのはカイエンでしたので、このラウンドに関してはドイツ優勢です。

  第二ラウンドは沢村さんがぶち上げた「XE VS 3er」で、最初のラウンドに比べてだいぶジャガー・ランドローバーが盛り返した感があります。ランドローバーがポイ捨てされたことへの恨み?がXEの設計に執念として現れています。そしていよいよ『バトル・オブ・ブリテン』第三ラウンドですが、標的はもちろん日本でもヒットした「マカン」。特に最上級グレードの「マカン・ターボ」は約2000kgのボデーに400psのV6ツインターボ・・・いかにもアウディが関与しているのがバレバレなスペックです。いつの間にかDQNなユーザーを大勢抱えてSUVの世界で大手を振って歩くようになったポルシェに対して、ランドローバーの怒りが頂点へ達した!?

  しかしランドローバーの手持ちは、2200kg級のランドローバー・オリジナルシャシー(2種)か、フォードからもらった直4横置き専用のマツダが作ったシャシー(1700kg程度)しかないです。「マカン・ターボ」を撃墜する適当なシャシーが見当たら無い!!相手もアウディシャシーを使って来たのだから、こちらもジャガーシャシーを使おう!!アウディの400psのV6ツインターボに対して、こちらはデフォルトで340psのV6スーパーチャージャーだ!!しかしスペック的にちょっと分が悪いので「Fペース・S」というグレードに専用にスープアップされた380ps版を投入。この対応は相手を強烈に意識してますね!!これぞ『バトル・オブ・ブリテン』。出力のピークはマカンターボが400ps/6000rpmなのに対して、Fペース・Sは380ps/6500rpmとなっていて、これは見事にポルシェの寝首を奪った!?

  相変わらずドイツ贔屓の日本では、Fペースの注目度は今ひとつですが、北米ではジャガーランドローバーがプラス18%なのに対して、ポルシェがプラス4%足らずで、総販売台数もジャガーランドローバーがポルシェの3倍です!!これは原動力となった「Fペース」の完勝と言っていいのでは無いでしょうか?めでたし、めでたし。・・・全くの余談ですが新たな刺客が迫っています。VR30DETT(400ps/6400rpm)を搭載する「次期インフィニティQX50」。英独日の三つ巴の戦いが・・・そして世界の高級車はこの3ブランドへと収束していくのでは!?それくらいに魅力的な戦いですね。


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SUVで人生を巡る、ロマンチック街道の旅