「ファミリーカー」というと、いかにも所帯染みてて「デザイン」や「走り」よりも、「定員」が優先されて、ラゲッジルームが広くて、子どもやお年寄りが乗り降りしやすいようにスライドドアで・・・「セレナ」とか「ステップワゴン」とかそんなイメージですかね。平日は主にお買い物や駅までの送迎に使われて、休みの日に一家揃ってどこぞの観光スポットに繰り出すための機能性と経済性を重視したクルマです。今では国内メーカーがせっせと創意工夫を凝らして100万円台で7人乗りというリーズナブルな設計のクルマへと進化してます「シエンタ」「フリード」「ソリオ」などなど。
日本車におけるファミリーカーの進化は、実に素晴らしいことですけども、一風変わった輸入車ブランドからファミリーカーを選んでみるのもいいかもしれません。見慣れない分だけなんだかとても楽しそうに見えます。輸入車に好んで乗る人は「高級車」か「スポーティなクルマ」を求めているので、このどちらかに振ったブランドばかりなんですけども、最近では本気で日本のファミリー層を取り込もうとしているブランドも見られます。300万円台からいろいろ選べる比較的廉価なブランドだけを対象にすると、「シトロエン」「ボルボ」「BMW」の3ブランドがどうやら本気で「定着」を狙っているようです。
「個性」を最優先で選ぶならば「シトロエン」と派生ブランド「DS」が一番アツいです。とにかく他のブランドとはデザインもボデータイプも被りたくない!というハチャメチャな設計だけ見ても非常に高い意識を感じます。プジョーとシトロエンの合併によって出来たPSAグループは、ほぼ同じラインナップ展開をする2つのメーカーが並立する格好になっています。日本でいうならスバルとマツダが合体したようなグループで、同じようなクルマを作っても仕方がないので、マツダが相当にブットんだデザインを仕掛ける・・・みたいな感じですね。プジョーは「走り」、シトロエンは「ファミリー」と対象をさっくりと分けているようです。残念ながらPSAの中型車の日本への正規輸入は1.6Lターボだけになっていて、走りのバリエーションは乏しいのですが、シトロエンの場合はファミリーカーとして割り切るならばそれほど気にならないかもしれません。
それに対してあくまでも自然体でブランドアイデンティティに忠実なデザイン展開をしているのがボルボとBMWです。この2ブランドのファミリーカー偏差値は意外に高いんですよね〜。まず両ブランドのボトムになるコンパクトサイズのファミリーカーは、3気筒ターボの設定があってとてもリーズナブルな価格設定です(300万円台前半〜半ば)。どちらもトヨタ(ネッツ、カローラ)よりも値引き額は大きめなので、ノアやヴォクシィ(250万円〜)と比べても経済的負担はそれほど大きくはないと思います。それでもトヨタのミニバンの方が確実に広く、維持費に関しても国産メーカーの中でも最も割安なのがトヨタグループなのでファミリーカーとしての「適性」はトヨタで間違いないでしょうが・・・ボルボもBMWもとりあえず価格を抑えようとしてくれる努力は評価してあげたいです。
この両ブランドがファミリーカーとしての本領を遺憾なく発揮するのは、もう少し上の価格帯のモデルです。「ボルボXC70」(620万円〜)と「BMW3erグランツーリスモ」(530万円〜)ですね。やっぱりファミリーカーといえば「居住性」の追求であり、それから家族を安心して包み込むような包容力のある重厚なボデーという点を強調するならば、かなり納得できるコスパだと思います(決して安くないですけど)。まず居住性に関しては、人によって感じ方が違うでしょうが、どちらも絶対的な広さを持ち合わせています。XC70はFFベースシャシーでホイールベースが2815mm、3erGTはFRベースシャシーなので前輪がさらに前方になるので、ホイールベースはさらに長く2910mmです!!(ちなみに3erセダンFRが2810mmです)。どちらも世界で人気の「ゴージャス・セレブ・ファミリーサルーン」こと「パナメーラ」「テスラ・モデルS」とほぼ同等のスペースが確保されています。
あまり適切な比較ではないかもしれないですが、メルセデスの「E」と「CLS」がFRで2875mmで、しかもセダンあるいは車高が低い4ドアクーペですから、これら定番のエクゼクティブカーよりもクロスオーバーボデーでホイールベースも長めのXC70と3erGTの方がよっぽど広々としていてゴキゲンですし、1000万円級の高級車にもひけをとらないくらいに車体もどっしりしています。500~600万円出すならばココはとても大事な点です!せっかくボルボやBMWを買うのなら「コレだぁ〜」と大きな声で勧めてあげたいのがこの両モデルです(あくまでファミリーカーとしてですが)。本当にいろいろな意味で「いい感じ」のポジションなんですよね。
さらにエクゼクティブな「ボルボ貴族」あるいは「BMW貴族」が愛用するクルマもファミリーカーとして割り切るならばとてもハッピー&ラグジュアリーで興味深いラインナップに見えてきます(ファミリーカー視点って大事ですね・・・)。ボルボは世界中で話題沸騰の新鋭フラッグシップSUV「XC90」です。欧州では発売以来衝撃的な大ヒットで爆走しているようで、高級車ブランドの勢力図を塗り替えつつあるようです。かつて同じフォード傘下にあってボルボよりもさらに上級のブランドとされていたジャガーの「Fペース」を完全に喰ってしまったようですね。
FペースもXEもそうですが、どうもジャガーの新型車は過度にドイツ勢を意識してしまっているようで、その弊害からかどれもこれもインパクト不足です。どうもいまいち突き抜けられない残念な雰囲気が・・・。そんなジャガーに輪をかけて小粒感があったこれまでのボルボですが、どこからか敏腕エクゼクティブ&デザイナーを連れてきたようで(元アウディと元ベントレーの2人の辣腕らしい)、これまでのボルボの流れからはとても想像できないくらいに、完全にいい意味で期待を裏切ってきました。アウディが2003年にA6を、アストンマーティンが2007年にヴァンテージを、ランドローバーが2012年にイヴォーグを・・・に続く衝撃作です!
XC90は日本の顧客向けに行った先行予約の特別商談会でも直4PHEV「T8」(1000万円超!)を中心に40台以上の受注が決まったのだとか。BMWの対抗モデルは最近ポルシェに押され気味の「X5」です。なかなか興味深い6気筒ディーゼルがボトムグレードで850万円です。せっかくのBMWの直6ディーゼルですから、ちっこい3erボデーのアルピナD3(1000万円)よりもX5で乗りたいです(子育てにディーゼルはオススメしませんが・・・)。
X5はXC90とちがってパワーユニットが広く選べるのが特徴です。直6ガソリン、V8ガソリン、直6ディーゼル、直4PHEVと4種類で、BMWのフラッグシップSUVだけあっていずれも存在感のあるユニットばかりです。面白いのは1000万円を越えるXC90T8に対して、1000万円を下回る930万円〜のX5「40e」とガチンコの部分ではボルボの方が高価格となっていてかなり強気です。パワーユニットの評価はともかく、内外装のセンス・質感でまさかのボルボの圧勝とは・・・。そして年内にはBMW「7er」に勝負を挑むフラッグシップセダン「S90」が発売されます。デザインはすでに公開されていますが、こちらも永島デザインの7erを完全に喰ってしまう極上の出来映えです。まさかボルボからレクサス版のセルシオとランクルを凌駕しそうなモデルがたった1年で相次いで登場するとは・・・。さらに自動運転とかしちゃうのかな? BMWも頑張れよ〜・・・。
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