クルマ文化の中心地の北米で今も最高峰の高級車としてメルセデスSクラスが持つステータスは別格だ。ほとんどのクルマが日本より安く販売されているが、このクルマだけはほとんど価格差がない(CLとSLも)。アメリカで10万ドルで売れるステータスを持つクルマは他には見当たらない(ないことはないが)。ところが日本では「孤高」というほどではなく、アウディやBMWの方が勢いがありそうで、メルセデスはちょっと影が薄くなっている印象すらある。そんな日本でのジリ貧状態を変えるべく、従来の高級モデルだけではなく、若い世代も取込めるクルマを投入してくるようだ。
ドイツプレミアム3社が横並びに設定している主力の「3クラスのセダン体勢」は、日本市場のニーズに合わなくなってきている。日本の個人所有車でステータスになっているのが、BMW5やベンツEといったクルマで、このクラスなら世界のどこでも高級車として知られた存在だ。それに対してお手軽な(日本では十分に高いが)その下のクラスのBMW3やベンツCは上のクラスのセダンをそのまま小さくしたような、(プレミアムカーにしては)魅力の乏しいクルマだ。「六本木カローラ」とか「赤坂サニー」と揶揄された時代とはだいぶ変わってきているが、それでも500万円払って買おうとは思えなかったりする(北米ではスカイライン(3.7L)より50万円ほど安いクルマなのに、なぜ日本では逆転してるのか?)。
そこでメルセデスは新しいクルマを考えたようですが、これがなんともプライドをかなぐり捨てたような他社の追従作戦のようです。去年の9月に欧州で発売するや瞬く間に10万台近く売れたという新型Aクラスを、輸入ハッチバックが大盛況の日本に持ち込んできました。ゴルフ7がやってくる前に展開できたことと、メルセデスのネームバリューでモデル初年度から日本でも大成功を収めそうな感じがします。ただ日本のハッチバック市場は去年あたりからだいぶ冷え込んでいるという見方もあり、実際に予定通りに売れるかどうかはわからない部分もあります。
Aクラスよりも注目を集めているのが、年内に日本にも投入されると言われているCLAです。ベンツがDセグのFFセダンを作ってきたわけですが、これはフォードモンデオ(フュージョン)やホンダアコードといったFFセダンの世界的ヒットに触発されたものだと思います。しかもメルセデスの絶妙な戦略によるものでしょうが、日本で好評のマツダアテンザをデザインをそのままに日本で使いやすいサイズに縮めたクルマに仕上がっているようなので、こちらも初代モデルながらかなりの販売実績をつくりそうです。今年から来年にかけて、ここにきて一気にレベルが上がった日本のセダン同士の対決に割って入っていけるくらいのクルマにはなっていると思います。レクサスISやスカイラインよりも低価格の設定が予想されるので、日本勢もさらなるアピールが必要になってきそうですね。まさに「台風の目」になりそうな新生メルセデスに注目したいと思います。
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