2017年5月7日日曜日

ジャガー・Fペース 「清々しいまでの聖戦」

  世の中わかんないことだらけです。先月にビックカメラが商品決済にビットコインを導入したとのこと。両親にマッサージ機などの健康器具を買う以外で家電量販店に行くこともないので、どーでもいいですけども、そもそもビットコインを利用するくらいにフィンテックな人々が、今更に実店舗で買い物することなんてあるのだろうか?どうやら中国人観光客目当てだそうですけど。

  それと同じくらいに謎なのが、ジャガーがSUVブランドとして再生しようとしていること。SUV専門ブランドであるランドローバーとジャガーはエンジンなどのコンテンツを広く共用していて、実質的に1つのメーカーとして一体化されていますけども、これまでスポーツカーとセダンに注力してきたジャガーにまでSUVが展開され始めました。アメリカにも中国にも「ジャガーにSUVを作って欲しい!!」という客がいるから・・・それってどんな客だろう!?

  「世界で一番下衆なクルマを作っているのはドイツメーカー」とずっとブログで言い続けて来たんですが、その度に複数の方々から大いなる批判を頂戴しました。いくら試乗体験や理論値からの推測等々を並べ立てても、「ドイツ車的なものが至高」と思い込んでいる人々には無力で、どんなに静粛性に疑義があろうとも、どれだけエンジンが回らなくても、どれだけミッションが不出来でも、「エンジン音がよく響いて、低速トルクが豊富で、変速スピードさえ早ければいい」という世界観の人々には・・・どうやら本当に理解できないみたいです。

  VWがNOx偽装を行ってもそれさえも正当化しようとするカーメディアがあった!!いやこの一件をまともに批判ができているメディアはほぼなかった(大人の理由で!?)!!「悪いのはアメリカと日本・・・ドイツが悪いはずがない。」この件に何らコメントできないライターは、心の奥底から本気でそう思っているんだと思います。このことがどれだけ他のメーカーに迷惑がかかっているか!?そんなことは全く御構い無しです。世界中で展開する下世話なブランディングはいいとしても、世界の自動車産業から多様性を奪ったのは、他でもない強欲な3つのドイツ系グループです。そして挙句の果てに「虚偽」かよ!! 例えばロールスロイスとベントレーの所有権を巡って醜態を晒し、さらにこれを2つに引き離してそれぞれ「解体中」なのが、BMWとVWの両陣営です。そしてランドローバーも散々にドイツ資本にボロボロにされた被害ブランドの一つです。

  日本の多くのカーメディアには絶対に出てこない論調でしょうけども、世界のユーザーは「ジャガー・ランドローバーよ!!今こそドイツに復讐しろ!!」と盛り上がっているんです。日本でも沢村慎太朗というライターが、最新の評論集「午前零時の自動車評論12」の中で『バトル・オブ・ブリテン』というドンピシャな表題を掲げていますが、これは2014年の「ジャガーXE」に関しての考察でした。もちろん『ジャガーXE VS BMW3er』がテーマです。沢村さんの結論は「圧倒的な制空権を持つドイツに対して、XEはかなり善戦するのでは!?」といったものでした(やはりオッサンライターはドイツ贔屓が身に染みている・・・)。日本ではさっぱりですけども、北米ではジャガー・ランドローバーの追い込みが凄まじいペースになっています(2017年3月は前年同月比で18%増)。

  同じ「12巻」にはポルシェ・マカンについての評論もあります。そろそろ勘のいい人は気がつきたと思いますが、このマカンを取り巻くライバル関係こそが新たな『バトル・オブ・ブリテン』の戦場になっています。事の発端は・・・BMWがランドローバーを傘下に収めた1994年に遡ります。いや厳密には、もともとランドローバーを所有していたブリティッシュ・レイランドなる商社(実態は政府系ファンド)が無能だったのが悪いです。ブッシュ政権下で急成長したハリバートンが、アメリカの有名ブランドを全て抱えこむみたいなものですね。マーガレット・サッチャーとかいう極右のお人形・宰相の時代の「政商」に、トヨタ、ホンダ、フォードに対抗する経営能力などあるはずもなく、経営不振で崩壊後にランドローバーはハイエナBMWの餌食になります。

  BMWとランドローバーの協業によって誕生したモデルがX5です。しかし素人のBMWが参画したためか、その完成度はやや中途半端で、VW&ポルシェによって制作された後発の「カイエン」の前に惨敗を喫します。X5開発後にあっさりとBMWにポイ捨てされたランドローバーは、同盟国アメリカ・フォードに拾われて支援を受けます。フォードはランドローバーの独立性を損なう選択は避けて、フォード・エクスプローラと統合されることもなく、ランドローバーは打倒カイエンを見据えた新型シャシーを2004年に開発します。現行のレンジローバー・スポーツです。これこそが『バトル・オブ・ブリテン』の第一ラウンドですね。残念ながら完全にドイツ贔屓な日本市場はもちろん、北米でも人気があったのはカイエンでしたので、このラウンドに関してはドイツ優勢です。

  第二ラウンドは沢村さんがぶち上げた「XE VS 3er」で、最初のラウンドに比べてだいぶジャガー・ランドローバーが盛り返した感があります。ランドローバーがポイ捨てされたことへの恨み?がXEの設計に執念として現れています。そしていよいよ『バトル・オブ・ブリテン』第三ラウンドですが、標的はもちろん日本でもヒットした「マカン」。特に最上級グレードの「マカン・ターボ」は約2000kgのボデーに400psのV6ツインターボ・・・いかにもアウディが関与しているのがバレバレなスペックです。いつの間にかDQNなユーザーを大勢抱えてSUVの世界で大手を振って歩くようになったポルシェに対して、ランドローバーの怒りが頂点へ達した!?

  しかしランドローバーの手持ちは、2200kg級のランドローバー・オリジナルシャシー(2種)か、フォードからもらった直4横置き専用のマツダが作ったシャシー(1700kg程度)しかないです。「マカン・ターボ」を撃墜する適当なシャシーが見当たら無い!!相手もアウディシャシーを使って来たのだから、こちらもジャガーシャシーを使おう!!アウディの400psのV6ツインターボに対して、こちらはデフォルトで340psのV6スーパーチャージャーだ!!しかしスペック的にちょっと分が悪いので「Fペース・S」というグレードに専用にスープアップされた380ps版を投入。この対応は相手を強烈に意識してますね!!これぞ『バトル・オブ・ブリテン』。出力のピークはマカンターボが400ps/6000rpmなのに対して、Fペース・Sは380ps/6500rpmとなっていて、これは見事にポルシェの寝首を奪った!?

  相変わらずドイツ贔屓の日本では、Fペースの注目度は今ひとつですが、北米ではジャガーランドローバーがプラス18%なのに対して、ポルシェがプラス4%足らずで、総販売台数もジャガーランドローバーがポルシェの3倍です!!これは原動力となった「Fペース」の完勝と言っていいのでは無いでしょうか?めでたし、めでたし。・・・全くの余談ですが新たな刺客が迫っています。VR30DETT(400ps/6400rpm)を搭載する「次期インフィニティQX50」。英独日の三つ巴の戦いが・・・そして世界の高級車はこの3ブランドへと収束していくのでは!?それくらいに魅力的な戦いですね。


最新投稿まとめブログ
SUVで人生を巡る、ロマンチック街道の旅   

0 件のコメント:

コメントを投稿