「ジープ」ブランドと聞いただけで、とりあえず購入の選択肢には絶対に入らないと考える人も多いでしょう。それくらいに「アクの強い」ブランドからわざわざ、フィアット版の「マツダCX5」のようなクルマを日本で発売してきました。今更ですが、CX5はというと、マツダが新たに開発したアクセラやアテンザで使われるシャシーを使って作ったSUVで、抜群の高速巡航能力を武器に世界中で成功を収めつつあります。
これだけ派手にアメリカでもCX5がヒットしていて、アメリカ誌の評価でも3万ドル以下で最高のSUVといった評価を受けているのですから、SUVの本家とも言える「ジープ」も黙っていられない!といったところでしょうが、やはり「イメージ」ってもんがあるでしょ!と思わずツッコミを入れたくなります。見た目は最近の日本車SUVの影響を受けている!どころか、その潮流のど真ん中に位置するようなデザインで、ほぼCX5かハリアーな出で立ちです。あの箱形のキャビンは一体どこへ行ったのか? ヘッドライトとグリルが主張しない「ジープ」なんて・・・。
子供の頃にはSUVのことをジープと呼んでいたくらいに、日本のクルマ文化にも密接に関わっていて、三菱、スズキ、スバル、日産がそれぞれに手掛けるオフロード車の「イディア」的なブランドが、まさか傍流の日本や欧州で流行りの「なんちゃってSUV」のデザインを完コピしてくるとは思いも寄りませんでした。それにしても車体の隅々から香ってくる「日本車臭」が強烈で、カーグラフィックではフロントデザインは日産ジュークをパクってると書いてありました(ぱっと見ではジュークには見えませんが)。
フィアット=クライスラーになってから開発が始まったクルマが、続々と登場してきています。個々に見てみるとなかなかの「ミクスチャー」ぶりを発揮していて、この手の多国籍な協業関係で生まれがちな「無国籍」とはちょっと違う味を感じます。この新型ジープ・チェロキーも、クラス屈指と言われるアルファロメオ・ジュリエッタの高性能シャシーを使って作られています。優秀なCセグシャシーから大ヒットSUVを作るという手法は、ホンダ(シビック→CR-V)、スバル(インプレッサ→フォレスター)、マツダ(アクセラ→CX5)、フォード(フォーカス→クーガ/エスケープ)と米国市場で躍進する一般ブランドでは常套手段になっていて、この流れに乗り遅れたことを自ら告白したVWは開発を急いでいるようです。
シビックやフォーカスに十分に対抗できるジュリエッタのシャシーは、早くもクライスラー系の複数のブランドで採用されていて、ダッジ・ダートとクライスラー200の2台のC/Dセグセダンが発表/発売されています。どちらも日本には未導入ですが、現行のアメリカ車の中で日本市場で最もウケそうなのがこの「ダート」と「200」なんじゃないかと思います。ジュリエッタよりも一回り大きいBMW3シリーズサイズのセダンになっています。
さて従来のジープファンからは、敬遠されてしまいそうな新型ジープ・チェロキーですが、果たしてハリアーやヴェゼルに興味津々の日本のユーザーのアンテナに引っ掛かるかどうかがポイントになりそうです。フィアット製の2.4L直4NAとクライスラー製の3.2LV6NAの2段グレードのエンジンは、アルファード/ヴェルファイアに飽きた層がそのままスライドしそうな設定ですし、価格もほぼ同じ水準になっています。トヨタの高級ミニバンの顧客を惹き付けるだけの内装装備、とくにインパネの造形はフィアットの得意とするところで、レクサスに肩を並べる水準と話題の新型ハリアーの内装にも全く負けていません。
ジープから連想される従来の大味な乗り味も見事に改められていて、車高が高く変速ショックによって起こるピッチングに弱いとされるSUVの構造を補うべく、ZFの協力でクライスラーが開発した「9速AT」が使われています。これは・・・アイシンAWが作りたがっている「9速ミッション」をトヨタが「需要がない!」と押しとどめているうちに、他に先を越されてしまいました。たしかにトヨタ(レクサス)のNVHは世界最高水準ではありますが、それに必死で追いすがろうとするBMWは日本向けATを全て「8速」にしています。それに対してレクサスRXの「6速AT」そして新型ハリアーの「7速CVT」は、作り込みという点において遅れをとっていると言わざるを得ません。さてエンジンのスペックを考えると価格面でもハリアーと同等に抑えられているジープ・チェロキーが日本でどれだけ売れるか?なかなか見ものですね。
リンク
「最新投稿まとめブログ」
↓興味のある方は「カーグラフィック2014年6月号」をご覧ください。
0 件のコメント:
コメントを投稿