2015年10月26日月曜日

BMW M4・GTS 「BMWの闘争心に拍手!」

  アルファロメオが新たなスポーツセダン(GTセダン)として「ジュリア・クワドリフォリオ」というモデルを他のグレードに先駆けて発表し、全世界の主要市場で年内にも販売を開始するようです。噂によると開発は相当に急ピッチで進められたようなので、クルマの完成度は「?」なのかもしれないですが、マセラティ・ギブリのシャシーを流用しているのでそれほどリスクがあるわけでも無さそうです。それにしても見事なデビュー戦略というべきか・・・フィアットグループが擁する究極のエンジン・ファクトリーから供給される510psのユニットが載るというだけで、すでに話題性は十分です。

  レギュレーションによる制約があるとはいえ、あのホンダがまるで子ども扱いされてしまっているF1のワークスエンジン部門において、常に最前線で戦ってきたフェラーリによるチューニングエンジンをDセグセダンにそのまま載せる!というフィアットの大胆な発想には感服しました。F1参戦という立場では「メルセデスAMG」のファクトリーと双璧を成すメーカー系ワークスエンジンの雄ですから、市販車に供給するクオリティのエンジンをベースにしていても、わずか3LのV6で510psという規格外の出力が十分可能なようです。AMGはV8の4L搭載の「C63・S」で510psまで出していますが、そのAMGが新たに6気筒で同車を手掛けると市販車用エンジンでどれくらいの出力が可能なのでしょうか?

  F1に参戦しているワークスエンジンはフェラーリ、メルセデスAMGに加えてルノーとホンダがありますが、現状では2強2弱がはっきりしていて、これではせっかくの新型NSXやシビックtypeRへの注目度も下降してしまうのではと心配です。もちろんF1だけがモータースポーツではなく、市販車をベースとしてCクラスや3シリーズに代表されるDセグのGTセダンをプロモーションするための「DTM(ドイツ)」と「スーパーGT(日本)」も行われています。しかし・・・知名度があんまりなんですよね。

  「このアルファにはフェラーリがチューンしたエンジンが載ってる!」と言うと、なんだかよくわからないけど「おお!すげ〜!」って思ってもらえます。けれでも「このレクサスはスーパーGTのベース車になっているんだ!」と言ったところで、「なにそれ?」って人も結構多いですから・・・。クルマ好きだけに知られているに過ぎないグランプリでは、実際のところ販売に火が付くことはまず無いと思います。とりあえずF1の知名度は絶大で、フェラーリとメルセデスAMGのファクトリーで作られるエンジンこそが至高のGTカー用エンジンであり、1000万円以上出してでも買う価値がある・・・となるわけです。

  もしフォードグループの分解がなければ、今頃はジャガーの新型セダンXEにフォード系のエンジンチューナー「コスワース」の名前が突いたグレードが出されていたかもしれません(コスワースがどれだけ知られているかわかりませんが・・・)。それでもF1で勝負してきた歴代のワークスエンジンやエンジンチューナーの「ネームバリュー」は絶大で、レクサスの高性能モデルに使われるエンジンを手掛けるヤマハなんかもそういう意味ではもっともっとアピールしていいのでは?という気がします。「チューンド・バイ・ヤマハ」なんていうグレード名はどうでしょうか。

  アルファロメオとメルセデスAMGが好き放題やっている中で、やはり黙ってなかったのがBMWですね。もちろんBMもF1のエンジン供給を担っていた一流のエンジン屋です。高性能DセグGTセダンと言えば「M3」!というくらいで、この分野の盟主だったはずなのに、いつの間にか脇役に追いやられてしまった感がありましたが、ライバルが相次いで500psを越えてきたことを受けて、M3のクーペ版であるM4に新たに「GTS」というグレードを設定(700台限定らしい・・・)してきました。従来の431psから一気に大台の500psまで!ということで、ポルシェの20ps上げのGTSとはだいぶ意味合いが違うようです。

  BMWにとって「出力競争」にはあまり付き合いたくない!というのが本音なのでしょう。しかし日産GT-Rが550psを出すようになって世界中の市場をやたらめったらと荒らし始めたあたりから、エンジンパワーとAWD車による0-100km/hタイム競争へとGTカー市場全体が取り込まれていってしまい、BMWの影がしだいに薄くなっていきました。よく日本のカーメディアはGT-RとM3をライバルなどと表現しますが、AWD専用車とRWD専用車で競合するグレードなどないですし、排気量重視の3.8Lツインターボと噴け上がり重視の3L(直6)ツインターボでは、スポーツカーとしての刺激のツボが完全に違います。

  BMWにももちろん問題はあります。官能を重視するなら自然吸気で勝負すべきところに、ツインターボを持ち込んだところですでにコンセプトが「ブレている」と判断されてしまうのが、この価格帯のクルマの厳しいところです。GT-Rや911ターボ、AMG・C63S、ジュリア・クワドリフォリオの路線を目指すならば、0-100km/hのタイムでゴルフRに負けている場合ではないです。またアストンマーティン・ヴァンテージやレクサスRC-Fといった自然吸気で官能を志向する路線を目指すのであれば、先々代の7シリーズで使っていたN62B48のような、軽く踏んだだけで5000~6000rpmまでビュンビュン上がるBMWらしい自然吸気を目指してほしかったです。

  余談ですが、BMWとアルファロメオとホンダの3つのエンジン屋によって自然吸気エンジンのピストンスピードはなんと物理的な限界値付近まで達してしまい、これ以上の発展の余地がなくなった!と沢村慎太朗さんの著作に書いてありました。よってホンダは自然吸気のVテックによるスポーツモデルの展開をやめ、アルファロメオは1.75Lの直4「1750TB」をターボ用として残して閉店休業、BMWも徹底的に自然吸気を放棄しています。アルファの1750TBはショートストロークなので、これの自然吸気がマツダが手掛けるフィアット版ロードスターに載るならぜひ買いたいと思いますが・・・。


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