2014年10月17日金曜日

ボルボに何を見出すか?

  ボルボは輸入車にとっては厳しすぎる日本市場で、日本車とドイツ車の狭間でなんとか日本でも存在感をアピールしてきましたが、最近ではかなり危機的な状況を迎えつつあるようです。昨年の始めにV40を投入して、輸入車によるCセグHBブームの一端を担うほどに注目を浴び、ゴルフやAクラスを相手にも健闘しました。ただし廉価モデル発売によって、上級モデルのシェアも相当に喰われてしまったようで、V40以外に目立ったヒット作もないまま、ドイツ車と日本車の怒濤の新型モデルラッシュの中に潰され、ブランド別ではBMWミニにあっさり抜かれてしまいました。月販1000台という日本市場のメジャーブランドの基準も割り込むようになり今後の展開がとっても不安です・・・。

  「autocar」の森慶太というライターが最新号でボルボS60を絶賛していました。ライトウエイトスポーツに対して惜しみない愛情を注ぐというイメージが定着している森さんですから、割と軽めのFFサルーン、しかも電動ステアの熟成が進んだだけというシンプルな設計というだけでツボに来たようです。ほめ言葉に困ったのか、それとも本心かはわかりませんが、やや過激にも同クラスのドイツ車よりも乗り心地が確実にいいぞ!みたいなことを仄めかしていました。話題沸騰の新型Cクラスを引き合いに出して、Cクラスは期待してるけど作り込みがまだまだこれからという段階なので、S60とCクラスによる1.6Lターボの対決も現状ではボルボS60にかなり分があるのでは?というS60にとっては価値ある専門家のお墨付きが出ました。

  80年代に登場した国産スポーツを愛して止まないライターが、ユーザー目線になって楽しいクルマをリサーチして、「これは凄くいいですよ!」とオススメしている姿はなんだかとても好感が持てますね。「ユーザー目線」でクルマを考えた時に、最近の傾向としてモデルサイクルがどんどん短くなって、発表から半年後にはどのカーメディアの話題にもならなくなってしまう「消費型」の新車発売スタイルでは、果たして価値あるクルマに出会う機会を増やすことができているのか?という疑問も湧いてきます。熟成させる猶予が与えられず、最初の段階での売上で企画の正否が決まってしまうせいか、クルマの開発も「話題作り」ばかりが過熱している印象です。某輸入車ブランドが「車内ワイファイが付きました」とかどうでもいいことを吹聴してるのを見て、クルマの本質には無関係だし、スマホ片手に運転する不届き者が頭に浮かんだ人も多いのではないでしょうか。

  とりあえず新しく出てくるクルマには何かと"つまらない機能"が付いてきて、そんな新機能を1度も試すことなく廃車になっていくクルマもたくさんあると思います。この点はプレミアムブランドほど迷走の度合いは大きいようで、例えばランフラットタイヤのような不要物(少なくとも日本では)が付いてくれば、ロードノイズが高級車の魅力を半減させ、コンパクトカーよりも乗り心地が悪いなんて散々に言われてしまう羽目になります。しかしライターが「もっとシンプルにユーザーの期待に応えるクルマをつくれないのか?」なんてオブラートに隠さずにぶち上げようものなら、メーカーが裏から手を回して業界から抹殺される恐れもあると思います。その結果として「魂を売り渡したイエスマン」ばかりが寄り集まって、震えた手でレビュー書いてる構図が浮かびます。

  こんなに問題が山積み、厳しく言えば"腐り切っている"高級車市場では、全体的にも規模は伸び悩み、その中で地味なボルボがフェードアウトしてしまうのは、やはり自然の摂理なのでしょうか。スバルとともにエマージェンシーブレーキの先駆的存在だったボルボは、常にクルマの本質に向き合って「質実剛健」(ドイツブランドが忘れつつあるアイデンティティ?)を今も表現できるクルマ作りが実践されているようにも思います。旧フォードグループのプラットフォーム(EUCDとC1)を今も使い続けるボルボですが、どちらの設計からも幾多の名車(初代アクセラ、レンジローバーイヴォーグなど)が生まれていて、最新のメカニズムにも十分キャッチアップできるだけのポテンシャルがあるとは思います。

  マツダの旧型と同じ設計と言われるとちょっと有り難みが無いかもしれませんが、マツダの最新のスカイアクティブシャシーは、ユーザーというよりもむしろメーカーにとってかなり"恣意的"な設計になっていて、先代までのマツダが誇った高性能ダンパーが組み込まれた足回りはやや影を潜めるなどネガティブな部分が噴出しています。ちなみにアクセラは初代が最もハンドリングが優れているという評価もあるくらいです(中谷明彦氏)。実直なクルマ作りで評価されているマツダやスバルにしても、絶えず経営危機と隣り合わせであった期間が長く、年産100万台規模のメーカーともなれば当然のことですが、コスト優先の設計に走る部分があちこちに見られます。その一方で「話題作り」のための宣伝費を多く計上している一面も見られたり・・・。

  やや誇張気味のニュアンスがあるレビューを真に受けるわけではないですが、ここまで森さんに言わせてしまうボルボの魅力の一つとして、旧世代の設計のポテンシャルを信じて愚直なまでに熟成させている点があると思います。新しいクルマの設計がなかなか受け入れられない・・・というのはクルマ好きが本能的に持つ感覚であって、日産やホンダは過去の栄光を惜しむファンの声が多いですね。最近ではBMWでも新型モデルが受け入れられないなんていう声が強くなってきました。森さんのレビューに全面的に同調できるユーザーにとっては、ボルボの存在価値は"残された聖域”という意味でまだまだ注目すべき点は多いように思います。


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