2017年6月26日月曜日

ボルボS90 「なぜいま大型セダンなのか!?」

   

  ボルボの新型セダンS90は、フォードマスタングと同じデザイナーの仕事なのかな!?というくらいになかなかデジャブな風貌です。BMWっぽい、マツダっぽいと言う人もいるでしょうけども、このマッチョは4ドアサルーンのシルエットは、先代/新型5erや現行アテンザでも急速に取り入れられてきている、『アメリカンスタイル』です。フォード・フュージョンとポルシェ・パナメーラが北米でヒットして以降のスタンダードみたいです。

  このボルボS90もなんだかショルダーラインに注目させるスタイリングはマスタングを彷彿とさせますし、サイドのキャラクターラインも最新のメルセデス車のように『折り目正しく』入っています。ボルボはスバルと同じでワゴンではいくつか印象に残るモデルがありますが、セダンはいまいち勝手がわからないから、フォードグループで仲間だったマツダの動向を『インデックス』しているように見えます。そして目下のところマツダの『デザイン株』はいよいよ国内でもフィーバー気味で、マツダは『日本車デザイン』のカテゴリー(低調でマンネリ!?)から抜いて語るカーメディアもぼちぼち出てきました。

  ボルボは乗っかるのがうまい!? 自信がないジャンルならどんどん『真似』すればいいんじゃないですか。成長著しい中国メーカー(ボルボも中国メーカーだけど)は、ポルシェ・マカンやレンジローバー・イヴォーグなど、欧州メーカーがそこそこ上手く作ったデザインはどんどん真似る。中には全く真似されないものもある。いいアイディアがあってそれが『お金になる』ならどこの国だってパクる。それこそポルシェ、BMW、メルセデスが某日本メーカーのヒット作を競ってパクったことだってあるし・・・。マツダの『魂動』だって日産の『エッセンス』という2010年のコンセプトモデルからインスパイアされた!?という説が有力です。

  ワゴンが専門のボルボですけど、次世代ボルボの中核を担う新工場で生産されるモデル(セダン、SUV、ワゴン)のクオリティが異常に高いと評判です。なんといっても中国資本とスウェーデンの政府ファンドによるバックアップ体制で1兆2000億円もの投資が行われているとのこと。現状のボルボでは1兆円の累積利益出すのに50年以上はかかる計算ですけども、スウェーデンの『雇用対策』と『産業流出対策』を含んでいるからこそできるビッグプロジェクトが進んでいます。マツダの時価総額が9500億円くらいですから、1兆円あればフォード時代のボルボの基幹技術をことごとく生み出したメーカーそのものを丸々買えちゃうわけです。もちろん丸々買う必要はなく、TOBで5000億円集めれば支配できますし、残りの5000億円でカルソニックカンセイ、日産車体、KYB、エクセディなどの優良サプライヤーをごっそり買い集められます。最近PSAが買ったオペルなんてGMの金融事業と合わせて2600億円ですから、マツダや三菱自動車の1兆円ってのはなかなかの規模なんですけどね。

  これだけの投資ですから、小型車ではなくてXC90、S90、V90といった『メルセデス、BMW上等だ!!』みたいなモデルが続々とできるわけですねー。グローバルでマツダの半分以下の販売台数のボルボができるんだから、マツダも大型セダンや高級スポーツカーに着手しろ〜!!とか思っちゃいますけど、まあ無理ですね。同じくフランス政府の中途半端な支援しか得られないPSAなどもなかなか勝負に出られない。やっぱりボルボのような『ナショナルフラッグ』は有利です。同じくイタリアの1強であるフィアットも、マセラティやアルファロメオで新型モデルが続々投下されています。ドイツ勢に代わってボルボとマセラティ/アルファロメオがこれから伸びる!?

  そんなボルボやフィアットからの『トリクルダウン』によって、ボルボにディーゼルの高圧なコモンレールを作るデンソーや、フィアットに『124』を供給するマツダにお金が流れてきてますねー。ボルボが欧州の雄であるボッシュと喧嘩別れした時には、色々な憶測が広がりました。ドイツの国策企業であるボッシュは、中国への技術流出を嫌がったけども、愛知の商売好きサプライヤーは現実路線の『利益優先』だった・・・というありがちなトヨタグループに批判的なものや、トヨタ本体がディーゼルの新規開発に後ろ向きで、せっかくの技術が無駄になることを恐れたデンソーの好判断だった!!という一定の評価を下すものとか。

  とにかく世の中『金』なんですねー。1兆円集めれば、あとは自動的にサプライヤーが寄ってくる。政府系ファンドがバックに付くとなると、GDP比較ではスウェーデンくらいの『二流』のトップクラスが一番強いかも。世界のリーダー連合を自認するG7諸国はあからさまに自国メーカーに資金を注入することなどできないですし、G7に匹敵する中国、ブラジル、インド、ロシアといった資源によって経済成長を迎えている途上国には『雇用の保全』などといった政策はなかなかでてこない。となるとGDPで12位、13位くらいに位置するスウェーデン、オーストラリア、韓国が理想的なのかなー。

  果たして『1兆円』を派手に使ったボルボがこれからの10年でどうなっていくのか!?BMWがトヨタとコラボするなど『ブランド価値を薄めて』自らの首を絞めている間に(断定はしませんけど)、ボルボがBMWを追い抜かすことがあるのか!?まずは日本と北米でボルボの新鋭大型モデルの活躍次第だと思われます。XC90がX5より、S90/V90が5シリーズよりも売れるようになったら面白いですね。実際に日本ではかなり際どい戦いになっているようです(BMWが低価格モデル戦略で自滅!?)。私の体感で申し訳ないですが、新型5シリーズよりも先にS90を近所で見ちゃいました!!実際に700万円で新車を買うならどっちがテンション上がるか?って話ですよ。確かにG30系も趣きがあっていいですけども、『ボルボの本気』・・・Eセグ限定ならおそらく世界ナンバー1のやる気を投資額で提示されちゃってますからねー。F10系より魅力的に見えるG30系も頑張ったけど、それよりも凄いとっても惹きが強いクルマをボルボは作ったんじゃないでしょうか!?

  マツダや三菱を買ったからといってメルセデスやBMWを駆逐できるようなモデルは作れない!!だから自前の既存工場に大規模に投資して、世界中からサプライヤーを引き寄せて自社開発しよう!!レクサスGSの次期モデルは廃止という噂も流れるほど、将来性がないEセグをボルボが立て直そう!!というわけですから、もう勢いだけならボルボが断然。Eクラスも5シリーズも開発の中心は中国へ移管されていて、まもなく日本向けは全量が中国生産になるでしょう。キャデラックも同じ。アウディも中国だけで儲けている。ボルボも中国需要が多いのでS90を現地生産していますが、巨額投資されたイエテボリにあるトルスランダ工場はこれからのEセグを牽引する地位にのし上がっていくのでは!?

  トルスランダ、グルリアスコ(イタリア/トリノ)、上三川(栃木)が、これからの世界のEセグを牽引する本国生産の『三大聖地』になる!!とでもぶち上げておきましょう。しかし生産しているEセグセダンは3箇所ともに『アメリカンスタイル』になってますねー(S90、ギブリ、フーガ)。エクステリアの特徴は冒頭にダラダラと書いた通り。そしてインテリアもいよいよ『アメリカンスタイル』=『テスラスタイル』!?

  先代5シリーズと現行アテンザのインテリアは、まだまだ旧態依然のドライバーズセダンらしいタイトなコクピットで緻密にデザインされていますが、新型5シリーズとこのS90は、開放感あふれるフロントシートに、インパネの壁面から機能インターフェースを徹底的に排除した、フォードやテスラみたいなスタイルになっています。ホンダのレジェンドやアコードにも同じ傾向が見られます。早ければ『この世代』のモデルから自動運転に移行しますよ!!いつでもできますよ!!という意思表示なのでしょうか。ステアリングとペダルが収納されれば。タッチパネルのナビ画面兼インターフェースがあるだけ。

  自動運転に関する議論とセダンの本質の議論は全く別ですけども、これからの10〜20年にわたって販売される新型車の基本設計には、あらゆる可能性を排除しない想像力が要求されています。S90はそういった外部環境にも柔軟に対応できそうな用心深い設計をしつつも、ターボ、スーパーチャージャー、モーターという強烈な三重連過給ユニットがひねりだすパワーを路面に伝えるAWDのフットワークを地元スウェーデンのサプライヤー『ハルデックス』と二人三脚で練り上げ、エアサスまで組んでいます。しかもリアサスにはスタビライザー的に機能するという樹脂製リーフスプリングを仕込む・・・これだけのことをたった1世代のモデルに集中投入するのは、今の日独米韓のメーカーにはなかなかできないことだと思います。


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