2016年12月2日金曜日

BMW・X2 「ビーエムだって真似ることもあるさ・・・」

  MINIのプラットフォームを使うFFのBMW車がじわじわと増えてきました。「2erアクティブツアラー/グランツアラー」に始まり「X1」そして来年中にも発売される「X2」と投入時期は未定ながら開発の最終段階に入ったとされている「1er」もFF化されるみたいです。身も蓋もないつまらない事を言うと、BMWも「総合プレミアムブランド」としてファミリーカーのラインナップを充実させるためには、キャビンスペースの確保が最優先課題になりますので、横置きエンジンでフロント部を短くしたり、プロペラシャフトを廃止して床がフラットにもできるFFのメリットを真剣に考えた結果ですから、ビーエムはFRだ!とか言っている旧来のファンはとりあえず放っておきましょう。

  FFのBMWが登場するまでは、BMWブランドはおおよそ3つのプラットフォームで構成されていました(i3とi8は除く)。5〜7erを担当する「L6」、1~4erとX1~X4およびZ4担当する「L7」、X5~6は「ラダーフレーム」です。意地悪い言い方をすれば「L6」と「ラダーフレーム」がパフォーマンス志向で、「L7」がコスト軽減を徹底したモデルです。価格はどれくらい幅があるかというと、「L6」や「ラダーフレーム」にBMWらしい6気筒が搭載されれば、最も安いモデルでも日本価格では1000万円前後に設定されています。一方で「L7」に関しては4気筒エンジンでは300万円を下回る設定までされていて、6気筒を積んでも500万円程度から購入可能です。

  まだBMWがホンダに負けないくらいの気持ちのいい高回転エンジンを作っていた10年前はE90系という先代の3erが大ヒットしたりしていましたが、4気筒でしかも低回転のターボばかりのラインナップになってからというもの、この二者択一のプラットフォーム分けによるマーケティングが、日本ではどうも裏目に出たように思います。「ラダーフレーム」はそれなりに支持されるも、もしかしたら戦略の一環かもしれませんが「L6」使用車の販売はごくごく限られたものになりました。マセラティ・ギブリのヒットやレクサスの日本での拡販に圧された印象もあります。

  一方で「L7」が担当する下級モデルも、VWやFF化したメルセデスに「輸入車需要」をかなり吸い取られ、またプリウスやヴェゼルなど300万円前後の価格帯で独自にマーケットを切り開いた日本車にもいくらかヤラレてしまった印象があります。そしてもちろん傘下のMINIブランドの成長にも喰われている部分も相当にあるはずですが・・・。そんな窮状を結果的に救う形になったのが、どうやらBMW2erアクティブツアラーみたいですね。BMWファンからのブーイングをものともせず、カーメディアに350万円の価値無し!とまで書かれても、そしておそらく「プライドをかなぐり捨てて」作ったであろうFFツアラーでしたが、見事に日本でも結果を出しました!!

  Cセグが売れないといわれる日本市場で発売初年度とはいえ月に1000台以上をコンスタントに売ったのはとても立派です!!ベースグレードは100万円台後半に設定されているアクセラやインプレッサを相手にしたことを考えると大健闘だと思います(ゴルフの一時的失墜という幸運もありましたが)。コストパフォーマンスがあまり通用しなくなった新規ユーザーやリタイア世代を取り込む日本のCセグは解読不能な部分も多く、スバルの異常なまでの新型インプレッサのプロモーションや、アクセラが自動ブレーキテストでトップを獲ったという報道(マツダがコミにカネを払って報じてもらってる?)が飛び出すなど、ライバル陣営もかなり神経質になっている様子が伺えます。そんな市場を298万円のFRの1erではまったく切り崩せなかったのに、FFの2erによって見事に扉が開いたわけです。

  車高が低くてスポーティな見た目のプリウスに対して、Cセグではもっとも腰高なデザインでいかにも「ピープルムーバー」的な2erアクティブツアラー。先代までのプリウスと1erの関係と対比すれば、完全に立ち位置が入れ替わっています。2erアクティブツアラーの牧歌的なスタンスは一体どこの市場の発注なのでしょうか?日本?フランス?それとも中国か? もちろん「あのBMW」が作るからこそ効果的な部分もあるでしょうが、ホンダの流れを組んでいて操縦安定性の高さに定評があるMINIのシャシーに、トヨタ系列アイシンAWの「世界で最もコンフォート」と言われるFF用ミッションを躊躇無く採用し、車体は日産のピープルムーバーを思わせるNVH対策バッチリの堅牢な設計。80年代に世界を制した日本のFF車の「ハイライト」が詰まったクルマだと言えなくもないです。

  スバルがビルシュタインだ!!トヨタがザックスだ!!とアピールするように、日本車はドイツ車をモチーフにクルマを仕上げることをある種の「文化」にしています。その反対にドイツメーカーも直4ターボ&AWDのハイパフォーマンス車が増えるなど、日本のランエボ&WRX・STIのスタンスをスポーティの理想として掲げていたりします。そんな中でBMWの2erアクティブツアラーには、日本メーカーへ捧げるメッセージが詰まっているクルマじゃないかなーという気もします。(BMWも日本メーカーも)「我々はアメリカナイズに走り過ぎてないか?日本とドイツの栄光のロードカー文化を取り戻そうぜ!!」という呼びかけではないかと・・・。

  さて先日のパリモーターショーで公開された「BMW・X2」です。日本車へのオマージュと言うと語弊があるかもしれないですが、日本のユーザーとは心で通じ合った2erアクティブツアラーの設計を使いつつ、クロスオーバー化に際して、さらに新たな日本メーカーをリスペクトに加えたようで、日本車のオマージュを上乗せして来ました!!もうリアデザインなんて完全にドイツ車ではない!!そう断言できるくらいの作り込みっぷりです。もはやどの日本車よりも日本メーカーのエッセンスが凝縮された1台にまで昇華しましたねー。できれば価格も日本車並みにしてくれるとさらにGOODなんですけど・・・。

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