2014年10月24日金曜日

新型プジョー308・・・何か吹っ切れた感が。

  クルマ雑誌を見てるとしばしば「最大の激戦区のCセグ」と書かれていることが多いです。しかし世界最大の市場であるアメリカでは明らかにDセグの人気が先行していますし、日本を始め欧州では販売の中核を占めるコンパクトカーの主流はBセグに移りつつあります。Cセグはアメリカでも欧州でも中国でもそこそこ需要が確保されているので、グローバルで見れば最量販ジャンルになるのでしょうが、こういう「薄く広い」売れ方をしてしまう現状では、どうしても最大公約数的なクルマ(=駄作)が多くなってしまう気がしないでもないです。

  かつてはCセグ車がメインだったWRC参戦モデルも今では完全にBセグになっています。WRCを勝つのに必要な設計が織り込まれたベース車になるインプレッサやランサーは数年前までは世界各地でコアな人気を誇りました。ドイツでもアメリカでも日本の陸軍機を作っていたスバルと、海軍機を作っていた三菱は、BMWと並ぶ「戦場を駆けたエンジン」の自動車メーカーとして畏敬の念で敬われていたようです。しかし今ではインプレッサもランサーもBMW318ti(現1シリーズ)も、ブランドを牽引するような魅力はすっかり失われてしまいました。

  WRC(Bセグ)と独DTM/日スーパーGT(Dセグ)の狭間にあって、オーバースペックな設計などは特に要求されなくなったCセグの水準は、数年前からどうやら停滞している気がします。例えばトヨタがスーパーGT用のベース車として設計したレクサスRCは、クラスの頂点に立つISをさらに強固にした車体剛性を持つようですが、CセグのレクサスCTやオーリスにはそんなこだわりは一切見られません。そしてライバルの日産もそれに対応するように、自然とスカイラインをハイクオリティに仕立ててしまう一方で、Cセグのシルフィにはそのクオリティがほとんど反映されていない気がします・・・。

  またスバルを見ていても、WRCから撤退して以降は中核のCセグモデルがどんどん説得力を失っています。ブランドイメージを牽引するはずの「WRX」が新型ではグレードによって巧妙にエンジンを載せ分けていて、大雑把に言うとこだわり過ぎの「STI」に対して、ちょっと主旨がブレている「S4」の2グレード併存になりました。たとえ筋金入りのサーキット派に嘲笑されようとも、もし良いクルマだと感じれば「S4」を買ってみようと思ってディーラーまで出向きましたが、結局のところスバルは何がしたいのかさっぱりわかりませんでした。確かにすっかり覇気の無い他ブランドのCセグ車の中では、完全に頭一つ抜けた存在なのでしょうが、「操縦性(小型)&機動性」というコンセプトから期待するような「身体との一体感」は、残念ながら他ブランドのクルマに負けているように感じました。

  今もWRCに参戦しているVWや欧州フォードが突き進むペースと比べてスバルの「エンターテイメント性能」の進化にはいささか疑問があります。明確な目標を失うと日本のクルマ作りは「弱い」と言われますが、今のスバルにはそんな危険な空気包まれている気がするのです。自らのブランドコンセプトの成長のためにもモータースポーツに復帰して得られることは多いと思います。WRCをきっかけに世界的にスポーツブランドとして知られたわけですから、やはりBセグ車を開発してラリーシーンに戻ってくるくらいの気概を見せて欲しい気がします。

  現在ではスポーティなグレードが次々と作られるのは、WRCを通じてクルマ好きに好印象を与えているBセグが圧倒的に多くなっています。特に1.2と1.6の二本立てのエンジン構成になっているPSA(プジョー・シトロエン)は、各メーカーのCセグのスポーツモデルが到達しつつある300psを達成するのが困難ということもあり、旧型308をベースにしたRC-Z以外はBセグの208をベースにスポーツグレードを展開しています。208はライバル車はVWポロ、フォード・フィエスタと合わせて欧州市場の「コンパクト御三家」を形成していて、ここに食い込もうとする韓国勢や日本勢にもかなりの意気込みを感じます。フィエスタの同プラットフォームのデミオを始め、トヨタ・ヤリスも欧州もモーターショーで「本気のトヨタ」を見せつけています。

  一方でCセグはというと、一般グレードはともかくスポーツグレードに関してはBセグよりもはるかに地味になってきた感じがします。少数の勝ち組であるルノー日産(メガーヌRS)とVW(ゴルフR)の争いにホンダ(シビックtypeR)が再び参戦を予定する形でまだまだ盛り上がってはいますが、スバルはWRXのHB化を放棄し、マツダもMSアクセラの開発に後ろ向きだったりと、グローバル8(米3強・日3強・ヒュンダイ・VW)以外の大衆ブランドでは安易な参入が難しくなってきているようです。そこにKYなメルセデスが豊富な顧客名簿を武器に「A45AMG」というアルマゲドン的なモデルを投下し、VWがアウディブランドで迎え撃つ構えを見せています。もはやFFのままではどうにも出来ない400psの水準までパフォーマンスレベルが跳ね上がってしまいました。

  こうなってしまっては、もはやクレイジーなドイツメーカーとコンプレックス丸出しの日本メーカー(日産とホンダ)以外は全面撤退しかないですね。日産はジュークに続いて、パルサーにも「VR38DETT」を積んで、小賢しいメルセデスやアウディを踏みつぶす!かもしれません。ただしエンジンだけで380万円するそうですが・・・。噂によると欧州フォードもナンバー1ブランドの意地というか、エコブーストエンジンの宣伝も兼ねてフォーカスの400psモデルを作るみたいです。こんなわけの分らない「モンスター」が乱立してしまっては、PSAやスバルやマツダが「やってられるか・・・」とへそを曲げてしまう気持ちもわからないではないです。

  しかし日産とは全く思考回路が違う「優良企業・トヨタ」はすでにCセグにおいては新しい方針で動き出しているので、今後は業界全体に影響を与えていくかもしれません。トヨタは一時期は欧州へ本格展開するために、ハッチバックの開発に執着していましたが、その成果が実らないままに高性能モデルのブレイドを廃止して、オーリスに関しても過度なハイパワー化には否定的な立場をとっています。トヨタの優秀なマーケティング部門はすでに「オワコン」となった高性能Cセグに完全に見切りをつけた模様です。Cセグを過度に高性能化して500万円を超える価格で販売したところで、ユーザーは満足できないでしょうし、存在価値を敢えて探すならば、最も優秀なモデルを作ったメーカーにとって広告塔になり得るという、作る側のエゴでしかないです。

  そんなトヨタが作る潮流に乗っかって日本にやってくるのが、BMW2シリーズグランドツアラーとプジョー新型308で、どちらもこれまでのブランドイメージを打ち破る「エコ」で「コンフォータブル」な日本車(特にトヨタ車)のような装いが特徴です。多少語弊があるかもしれませんが、初代プリウスのサイズをトヨタが決めて、その運用に必要な過不足ないパワーを可能な限り経済的に配分した「パッケージの美学」を、欧州きっての伝統のブランドといえるBMWやプジョーがトヨタをリスペクトして作ったクルマのように感じます。

  新型308はプジョーが現在製品化できる最もエコなパッケージを採用しつつも、プジョー車のプライドとして全グレードに「ドライバー・スポーツ・パッケージ」というものが付いてきます。これはVWでおなじみの「Sモード」と同じようなものみたいです。最上級グレードにはPSAの得意技であるパノラマミックウインドーが付きます。1.2Lターボですから絶対的な動力性能は大したことはないでしょうが、欧州ブランドの意地と、PSA車のアイデンティティが備わって300万円台前半ですから、なかなか貴重なクルマと言えるかもしれません。内外装のデザインもとても洗練されたものとなっていて、アクセラ登場で"ワーキャー"言っていたのが、だいぶ昔に感じられるほど進化のスピードは早くなっています。マツダと同じで倒産の危機に晒されたPSAだからこその思い切りの良さも随所に感じられます。日本COTYではデミオの前に敗北しましたが、この新型308は割と日本人の感性に寄り添うクルマに仕上がっている気がします。


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