2014年4月18日金曜日

ボルボ S60/XC60 T5搭載の新型エンジン

  北欧ブランドの「雄」ボルボは、新興国マネーの流入により再びグローバルでの展開を意図した意欲的な開発を行っている様子は素直に嬉しい限りです。日本のファンの間ではこの新生ボルボの今後を危ぶむ声も聞こえましたが、やはりクルマを愛する気持ちは世界共通というべきかボルボの魅力が損なわれることなく、経営自体も軌道に乗りつつあるようです。

  当初から開発資源が極めて限られているという状況から、1.6Lターボに一本化するPSAのような合理化路線が予想されていましたが、そんなナメた見方を一蹴するかのように、ここに来て新開発の2Lターボ「Drive-E」を登場させました。主力セダンのS60は日本では1.6L直4ターボの「T4」と3.0L直6ターボの「T6」が導入されていましたが、欧州では展開されている2L直4ターボの「T5」が輸入されませんでした。これにはおそらく「大人の事情」があるのでしょう。

  従来の「T5」で使われていた2L直4ターボは、ボア×ストロークが「87.5×83.1」の希少なショートストローク・・・これはまさしくマツダの「MZRエンジン」で現行ロードスターに積まれているものと同じです。つまりマツダとのライセンスの関係で日本に導入できなかったのでは無いかと想像できます。そしてXC60T5もこの「マツダエンジン」だったのですがはSUVならアテンザ(GH系2L)と被らないからOKだったのか? それにしても日本のライターはXC60T5の従来のエンジンに言及するときも決して「マツダ」とは言いません(これも大人の事情か?)。

  新開発された「T5」用エンジンはボア×ストロークが「82.0×93.1」とロングストローク化されました。最近の欧州エンジンのトレンドなのでこれは予想の範囲内。現在使われているBMWやメルセデスとほぼ同じサイズになっています。ロングストローク化の効果は一般には低回転トルクを増やす効果がありますが、ストロークが長くなることで回転数の上限が抑えられてしまうという難点もあります。そして欧州メーカーは近年では2L以下に関しては「ロング」で、3L以上に関しては「ショート」を採用するという仕分けがされています。

  BMWやメルセデスを見ると「ただ走るだけ」のモデルは「ロング」への切り替えが進み、一方で「スポーティな走り」を追求するモデルには積極的に「ショート」を使っています。この両極端の特性を使ってグレードの味わいを徹底的に差別化しています。BMWだったら1.6L/2Lはロングで、3Lはショート。メルセデスなら1.6L/2Lはロングで、3.5Lはショートといった具合です。そしてボルボの場合は・・・この新型の2Lがロング、そして3L直6も全く同じボアストロークなのでロングになります。官能的需要がまだまだ高いドイツプレミアムに対して、そういう需要が計算できないボルボの実用性一本槍の設定。これが自動車メーカーに突きつけられている現実なのだと思います。

  マツダやフォードの本拠地で商売せざるを得ない新生ボルボにとって、エンジンのライセンスの制約でフルラインナップの投入ができなかったわけですが、やっと待望の自社ブランドエンジンを手にしました。フォード「エコブースト」、マツダ「スカイアクティブ」と同様にボルボ「Drive-E」と銘打った"セルフブランディング"の新型エンジンはトヨタ系の部品メーカー「デンソー」の全面バックアップを受けて、環境性能を重視した出来映えなのだとか。

  トヨタとの接近により、今後はトヨタ陣営の尖兵として、メルセデス=日産陣営に対抗する勢力として日本や北米で勢力を伸ばすかもしれません。特に2Lターボに新技術を入れて怪気炎を挙げるメルセデスに対し、トヨタが牽制の意味を込めてボルボの新型エンジン開発を裏で支援してそうな気配も・・・。レクサス本隊にスポーティなBMWとスバル、そして環境&安全志向でジェントルなボルボを配するという布陣。新型Cクラスと新型スカイラインの2枚看板を完全包囲して勢いを封じることができるのか? ボルボの今後はまだまだいろいろな展開がありそうですね。

  
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