2014年3月5日水曜日

マセラティは高級車の価値を再定義できるのか?

  世界中の人がこれほどのマセラティを切望しているとは思ってみませんでした。2年ほど前にフィアット=クライスラーグループは傘下のラグジュアリーブランドに関しての見通しについて、信じられないような数字とともに世界の全てのプレミアムカー市場で大幅にシェアを上げる方針を打ち出しました。この話を聞いた時は、もはや超高級車が次々に売れるバブル期の日本のような市場は簡単には現れないだろうという思いがあり、実現の見込みは極めて低いだろうと考えていました。

  去年の夏頃、マセラティの新型セダン・ギブリが発売になりました。北米価格は$66,000〜。従来のマセラティは$100,000〜は下らない価格帯で、ラグジュアリーカーとしての評価は、北米で不動の地位を築くメルセデスを軽く上回るわけですが、今回は一気にクワトロポルテの半額近くまで価格を下げたわけですが、この捨て身の戦略は販売にすぐに効果があったようで、北米販売は現在のところ昨年比で4倍程度で推移しています。

  いくら半額と言っても直6ターボのBMW535iが$55,000ですから、ギブリはさらに1万ドル(100万円)以上も高いわけです。アメリカ価格で売ってくれるならもっと気軽にBMWにもマセラティにも乗れそうで羨ましいですね・・・。日本価格になってみると、正直言ってそこまでのクルマか?ってなってしまうのですけどね。このギブリの価格設定が世界中でウケていてシェアがどんどん拡大しているのに、なぜだか日本市場だけがその流れから取り残されているので、日本に住んでいるとあまりその事実は実感できません。私が思うに、日本の某所に点在する超高級住宅地にお住まいの人で無い限りは必要ないクルマです。

  アメリカではフーガが$45,000で売られていて、ギブリはこれと同じ車格ながら、超一流のプレミアム価格が上に乗っかっていて$66,000です。クルマ自体はフーガと同等の広さであり、内装の質感もフーガと大きな違いは無いように見えます。日産系の高級ブランドであるインフィニティの内装はもともと定評が高く、メルセデス、BMW、アウディよりも上だったりするので、ギブリが悪いというわけではないですが・・・。

  フーガ、Eクラス、5シリーズといったEセグと呼ばれるセダン群は、自己の立ち位置を見失って迷走しているクルマが実は多く、いずれも現行モデルは歴代モデルと比べて印象薄く、人々の羨望の対称にはなりにくくなっているという根源的問題「Eセグ問題」を抱えています。高級セダンとして古くからあるプラットフォームを流用していたり、他のタイプのクルマと比べてあまりに四角四面に設計されている弊害など、簡単に言ってしまえばジャンル全体として満足度が価格ほどには高くないクルマが多いわけです。

  革新性というよりもどれだけ伝統的な良さを保持するかに重きが置かれている部分も解らなくもないのですが、もはやこれらのEセグに飽き飽きしてしまった人々にとって、マセラティという選択肢はかなり魅力的なのでしょう。日本でもクラウンの牙城をマツダアテンザが突き崩しつつありますが、これに近い状況かもしれません。いや、クラウンに飽きた人が次はプリウスをレザーシートで乗ってやると思っていたところに、ひょっこりアテンザ登場というのが真相に近いか。

  同じように北米でももうメルセデスEクラスはウンザリで新型も全く興味ない人々が、次はSUVにでも乗ってやろうかと思っていたところに、マセラティ・ギブリが出てくれば、一旦はこれにしてみようという人もいるのでしょう。プレミアムEセグ市場に新規参入というよりは、衰退するこのジャンルの救世主に今のところはなっています。そういえば数年前に出たポルシェ・パナメーラも北米で瞬く間に火がつきました。必ずしもLセグセダンが盛り上がっているわけではなかったのに、このクルマだけ成功したということは、いかに既存セダンが飽きられていたかを表しているように思います。


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