2016年10月6日木曜日

日本車やドイツ車の優位はもうすでに終わりを迎えたかもしれない・・・。

  「クルマの多様化」という観点からみれば、日本メーカーの突き進みっぷりは、海外ブランドを圧倒しています。規制でガチガチで設計の自由度が制限される軽自動車においてさえも、「動力性能」はアルトワークスやアルトターボRS、「コンフォート」ならムーブ、「エクスペリエンス」ならばS660やコペンなどなど、どの分野においても1Lクラスの普通車ならば軽く上回るのでは?というくらいのレベルに達しています。

  これが普通車になるとそのスケールもけた違いに広がり、言うまでもないですが「動力性能」ならGT−RやNSXやRC-F、「コンフォート」ならLSやアルファード、「エクスペリエンス」ならロードスターと、いずれも世界にその名を轟かせる名車がずらりと並びます。ちなみにこれがドイツ代表だと「動力性能」911ターボや63AMGの各モデル、「コンフォート」だとSクラス、「エクスペリエンス」だとSL、911タルガ。ドイツというよりメルセデスとポルシェですね・・・。

  これがイタリア代表だと「動力性能」488GTB、「コンフォート」クワトロポルテ、「エクスペリエンス」カリフォルニアT。イギリス代表だと「動力性能」ヴァンキッシュ、FタイプSVR、「コンフォート」だとファントムやコンチネンタルGT、「エクスペリエンス」だとロータス、ケータハム、モーガンの各モデルなどなど、貴族的あるいはマニアックなクルマばかりですけども、やはり自動車先進国らしく、エッジの効いたモデルはしっかりと揃ってます。さてアメリカや韓国は?

  そんな風に大雑把にラインナップ全体を見て、世界でのクルマ作りの中心地がどこだか理解した気になっていると、思わぬクルマに後ろから頭をゴツンとやられます。日本やドイツが馴れ合いでそこそこのクルマを作り、イギリスやイタリアが貴族趣味のクルマで自己満足している、ある意味では非常に「ゆるーい」業界を、疾風のごとく駆け抜けていく上昇傾向にあるメーカーが2つありますね・・・。

  1つはアメリカのテスラです。徹底的にエンジンで走らないクルマばかりを作る異色のメーカー。ガソリンか?電気か?なんて読者をナメすかした議論を延々と展開してお茶を濁してばかりのカーメディアには少々うんざりしてます。そんな毒にも薬にもならない議論では全く想定出来ていないアッパーなユーザー層だけに向けて、テスラのビジネスドメイン開かれています。とりあえず初期費用などの価格設定をみる限りは、社会インフラとして機能しようという気はまったくないようです。

  あくまでテスラが目指すのはEVにおけるフェラーリ。EVにお金を惜しまない人々が一定数いれば、クラッチ制御に勝てるコンバータ制御だって作れますよ!という技術的な担保だけがこのメーカーの存在理由なんだと思います。現状でのテスラの評価なんてその1点だと思うのですけど、あーでもないこーでもないと書いているカーメディアの記事があまりに空振り過ぎて、日本では全く何も起こせていないですね。カーメディアのレベルがどうしようもなく低いことを偶発的にもアメリカ企業が暴いてしまった瞬間です。まあテスラも日本のカーメディアには何も期待していないでしょうけど。

  もう一つはボルボ。F1でもWRCでもなくツーリングカー選手権を看板に、「ポールスター」という名を冠したとても真面目なロードカーを作ってます。テスラがアメリカ政府の手厚い支援を受けているように、ボルボもスウェーデン政府と中国資本のバックアップを受けて「国際競争力」を強く意識したクルマ作りをしています。もちろん日本のマツダやスバル、あるいはドイツのVWやオペルのような自画自賛レベルの幼稚な次元ではなく、どのレベルのユーザーやマーケッター、シェアホルダーにも直感的に「躍動」が伝わるようなダイナミックな展開を見せています。

  意地悪く言うならば、マツダとかいうメーカーがユーザーには直感的にわからない「圧縮比」やら「Gコントロール」やらで優位性を語ったり、スバルがテレビCMで情緒たっぷりに衝突安全性や予防安全性における取り組みを刷り込んでますけども、ボルボはそんな間にマセラティと同等の価格のラグジュアリーなSUVとセダンを北米に堂々と投入しましたとさ!!!なんと大胆なことを!!!

  さらにマツダが熱心に語るエンジン効率においても、元々はフォード傘下で共に協力した関係でもありますし、フォードとトヨタ系列のバックアップもある現在のボルボは技術面においてもマツダと同等以上の水準にあります。マツダがコトあるごとに強調する乗り心地に関しても、ボルボの一般モデルを試してみるとビックリなことに、とてもしなやかで減衰力に富んだアシの路面への対応力は日本やドイツの一流ブランドすら出しぬいたレベルに達しています。そしてとても有名な話ですが、衝突安全のテストでは常にスバルのはるか上がボルボの定位置となっています。

  マツダやスバルが必死にアピールしているコトって確かに大事ですけど、スウェーデンの一匹狼になったボルボにとっては、もっともっと市場に対して影響力があるコトを限られたスキームで発信する必要があるんだと思います。自国の市場だけではとても生きていけない。縄張り意識が強いEU諸国も大きな成長は見込めない。ボルボの価格帯から考えてまだまだぺーぺーの新興国では話にならないので、世界が注目する中国やアメリカで生き残るしかない。だからマツダやスバルのような「きれいごと」だけでは到底済まされないシビアな現実のなかでキレキレのリアリスト集団がタクトを握っているのだと思います。

  新しくなった「S60/V60ポールスター」も直4スーパーチャージャー&ターボチャージャーで、レスポンスも最高出力も目一杯まで押し広げていて、直4最強を掲げていたAMG45のエンジンを上回るスペックに達しています。割と自由なクルマ作りで独自路線のイメージがあるボルボが、突如として勝てそうなジャンルの頂点に目星を付けて、そこに集中的に資本投下して非常に競争力の高いモデルを作る。「選択と集中」がもしかしたらトヨタよりも上手くできているのではないでしょうか? 今後のボルボに大いに期待したいです。


 

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