2014年8月21日木曜日

デカくても愛される! マセラティ・ギブリの法則

  「マセラティ・ギブリ」別格の高級感を漂わせるショーファーカーというわけではなく、むしろクラウンアスリートなどよりも断然にプライベート・サルーン的な要素が強いなんとも独特の存在です。それでいて全幅は圧巻の1900mmオーバー!!!最近では大型SUVもかなり普及しているので1900mmもそれほど珍しくなくなっていますが、SUVよりも一般にドライビングポジションが低いセダンでは、このサイズはなかなか受け入れられず、アウディA8やジャガーXJがプレミアムブランドのフラッグシップにしてはいまいち不人気なのも、理由は「1900mm」にありそうです。

  さてマセラティの次世代戦略車として日本でも本体価格800万円台で発売された「ギブリ」は好調に売上を伸ばしています。マセラティのブランド力という見方ももちろん出来ます。しかしいわゆるフェラーリ由来のV8を積んでることがウリだったこれまでのマセラティとはだいぶ意味合いが違うので、マセラティ愛好家からは敬遠されて典型的な失敗作になる可能性もありました。しかし大胆にも上級車種のクワトロポルテよりもさらにワイドにしたサイズがデザイン面では功を奏して、セダンのトータルデザインとして光るものを感じます。

  ブランド本来のステータスを引き継いでなくても、サイズがワイドになり過ぎて多少使いにくくても、デザインさえ突き抜けていれば売れる・・・。「デザインの時代」と言われたりしますが、今も昔もやはり人目を引く秀麗なデザインは評価されていて、他の機能的弱点をある程度は取り繕ってしまうものだったと思います。セダンに限らすあらゆる車種においてデザインに重点をおくならば、どうしてもクラス平均以上の車幅になる傾向が強いようです。ブランドの上級に位置するクルマならばデザインでの敗北は絶対に許されないので、無理を承知でボディサイズは年々拡大されています。しかし少々辛辣な言い方をすれば、「カッコいい」と評判になるか「デカすぎる」と酷評されるかは、紙一重の差と言えます。

  さてレヴォーグがいよいよ発売でますます気合いの入るスバルですが、レガシィからレヴォーグの分岐における過程をいろいろなライターが「とてもわかりやすく」説明しています。1780mmで大きすぎると言われるレガシィ・ツーリングワゴン・・・。マツダの先代アテンザワゴン(1795mm)は特に指摘されることは無かったですし、現行の1840mmに拡大したアテンザワゴンも日本の街並で十分に乗れるサイズです。これでもよっぽど入り組んだ場所にお住まいの人でなければ日常的に困ることはないでしょう。今やゴルフヴォリアントだって1800mmになっているのに「大きすぎる」と文句を言うライターはまず見ません。

  それなのに、なぜレガシィだけがまるでスバルの開発者がアホだと言わんばかりに、「大きすぎる」と連呼されなければならないのか? 確かに現行レガシィはアイサイト導入まで大苦戦でした。日本車が誇る大人気車種だったレガシィの新型がFMC後に販売減になれば、やはり何らかの理由を見つけて総括しなければいけないわけで、まあ体のいい表現が「大きすぎる」だったのかもしれません。デビュー直後から世界経済の雲行きが怪しくなるという不運もありましたし、赤字に転落したスバルもそれまでとは全く別の発想でアイサイトをいち早く導入するなど、大きな変化が見られました。部外者である私がいうのもなんですが、熱心なファンに支えられた「殿様商売」という売る側の問題も多分にあったと思います。

  もちろん現行レガシィ発売の2009年の段階では「大きすぎる」という感想も妥当なものだったと思います。しかしライバル車のFMCが一巡した現在ではレガシィB4もレヴォーグもクラスでは「最小」といっていいサイズになっています。そんな2014年になっても「大きすぎる」を声高に説明し続けるライターは一体どういう了見なんでしょうか。おそらくこのクラスのクルマにそれほど興味がないというのが真相なんだとは思いますが・・・。

  プロライターに納得がいかないので、ユーザーの声を見てみるとやはり「サイズ」に対する言及は多いです。プロライターの受け売りか?と勘ぐるつもりはありませんが、やはりサイズによってレガシィやアテンザの「実用性」が損なわれているという論調には疑問を感じます。スバル、マツダそれぞれのフラッグシップモデルですから、求められるものは「実用性=取り回し」などではなく、高級ブランドのモデルにひけを取らないクオリティによって一定のステータスを確立して、「気持ちよく乗れること」こそが最も重要な「実用性」なのではないかと思うのです。

  これまでDセグで一番貧相に見えたメルセデスCクラスがFMCで再び競争力を取り戻しました。いくら取り回しが良いからといっても、相対的に「ダサく」見られることはDセグでは絶対的なタブーなので、サイズを多少犠牲にしてでもデザインに走ることは正しい選択だと言えます。マツダがさりげなく展開した新型モデル群の成功は、この「実用性」の解釈の上で非常に合理的な設計だったからだと言えます。そしてマセラティ・ギブリもまた、Eセグというカテゴリーにおいて非常に「実用的」な存在といっていいと思います。クラウンと同じくらいに快適な乗り味、そしてクラウンが全幅を気にして窮屈そうなスタイルなのに対して、伸びやかでラグジュアリーな雰囲気を存分に発揮しているという意味で、クラウンよりも優れたコスパを発揮していると思います。今後はスバルにもこのギブリに続くような優れた「実用性」のクルマを期待したいと思います。


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