2014年12月29日月曜日

新しい ボルボV40 は ゴルフ を超えることができるのか?

  「VW」とともに堅実な輸入車好きに愛されてきた「ボルボ」ですが、最近になってどうもあまり元気がありません。2013年にはV40のヒットによりセンセーショナルな存在だったのですが、みるみる影が薄くなっています。日本での月販1000台がせいぜいのブランドにとって、200万円台に設定された「V40T4」の大胆な低価格戦略はある程度は有効だったようですが、やはりここにきて持続性に乏しい印象です。新型エンジンも投入し再び加速したいところですが、どうも日本での戦略がチグハグな気がします。

  より日本のユーザーにCセグ車をオールマイティに使ってもらうために投入されたボルボ待望の自社開発ユニット「drive E」2Lターボを搭載したV40「T5」に大きくそそられます。しかし「T5」なので本体価格はほぼ据え置きの約420万円ですから、単純に「ゴルフGTI」や「メルセデスA250」といったハイスペックCセグの有力モデルと比べてもほとんど差がない価格設定です。ゴルフGTIの培ってきた伝統とメルセデスのブランド力を超越するくらいの実力がある新型エンジンなのですが、やはりそのユニットの魅力を一般の人に周知させられないと本格的な拡販にはつながらないでしょう。

  これまで旧フォード=マツダ陣営が作ってきた中型モデルエンジンを使ってきたボルボですが、本拠地スウェーデンは世界最先端のEV普及地域ということもあり、より環境志向の高いエコなエンジンを自社開発してきました。フォードのエンジンはスポーティでこそあれ、大してエコではない「エコブースト」(笑)ですから、いよいよそこから離れ、エコの世界的権威であるトヨタグループと新たに手を組むことにしたようです。近年のドイツ系メーカーなどが陥りがちなのが、部品メーカーへのエンジン開発の丸投げで、これによってしばしば評判を落としているのがBMWやメルセデスだったりします。エンジンそのものではなく近年ではミッションを含めたユニットトータルで性能を発揮する部分が大きくなってきた駆動系開発ですが、ZFによって「牙を抜かれて」は言い過ぎかもしれませんが、完全に味わいそのものが薄くなってしまったBMWエンジンのように実感できるレベルの「弊害」も出て来ています。

  ボルボはBMWの二の舞を避けるために、欧州のモジュラー文化な部品メーカーを避け、開発力に勝るデンソーとアイシンAWのタッグによる「オールトヨタ」による新型ユニットをブランド復活のきっかけにしたいようです。その結果何を得たのか? スポーティとエコの比較はナンセンスですが、少なくともZF8速ATを「変速速度」「ショックの少なさ」で完全に上回る基本性能に優れたアイシンAW8速ATを装備できたことは、新生ボルボにとって非常に大きな意味があるでしょう。新型ボルボのユーザーにとっても「ZFなんてクソ!やっぱり高級車はアイシンAWでしょ!」とブッコけるような、大きく満足できるポイントになりそうです。

  しかしその一方でボルボがエンジン開発の基本戦略において手本にしているのはBMWで、BMWと全く同じ要領で、デンソーといっしょに作ったこの2Lターボの「drive E」という直列4気筒エンジンをベースに、同じボア×ストロークでそのまま3気筒1.5Lにダウンサイジングしたエンジンも開発中だそうです。BMWが幅広く使っている2Lガソリンターボも「N20」から「B48」へとさらにロングストローク化された実用エンジンへと変わっていますが、フォードのショート気味のエンジンからロング化へとボルボも同じく追従しています。これはボルボ側の意図なのか、それともトヨタ陣営からの提案なのかはわかりません。ただ今後は新興国を中心にプレミアムカー用の中型車ユニットの需要が高まることが予測されていて、BMWのユニット開発で辣腕を奮っているZFの親会社にもなった独ボッシュ・グループが優勢になりつつある部品供給の流れに対し、トヨタ系列の部品メーカー連合が「待った!」を掛けたい思惑もあるようです。

  ボルボがデンソーとアイシンAWを大々的に採用したからといって、必ずしもトヨタっぽい乗り味に近づくとは限らないでしょうが、今後は日本のユーザーにどのようにボルボらしさを伝えていくか?という新たな課題が出てくると思います。従来のボルボのエンジン供給ルートは、全て旧フォードグループ時代からのつながりに頼っていました。福野礼一郎氏や森慶太氏はベースグレードに使われているフォードの1.6Lターボを絶賛されておられましたが、同様にV40ユーザーのクルマ好きにとっては、日本ではなかなか手に入らないフォードの「エコブースト」を載せているクルマという意味でV40に価値を置いている人も多いようです。

  しかしこのエンジンは、クラスの盟主であるVWゴルフTSIのものと比べても馬力を搾り過ぎで、ベースグレードにも関わらず日本のような道路環境では特に燃費が悪くなるという欠点もあります。これはBMW1シリーズの1.6Lターボにとっても同じで、ボルボもBMWもこの数年の内に3気筒化された1.5Lターボへの載せ代えが行われる見込みです。ただし両社の1.5Lターボが、スバル・インプレッサやマツダ・アクセラの2L自然吸気の燃費を上回れるかは微妙なところですし、ほぼ確実に高速道路でのエンジン音も酷くなりそうです。

  あくまで個人的な意見ですが、Cセグ車はもはや「低価格」ではなく「質」で選ぶ時代に突入していると思います。アメリカではまだまだ「スモールカー」という分類ですが、日本においてはCセグは軽自動車やミニバンに比べて、運転の楽しさや乗り心地を追求した付加価値の高いクルマとして選択されています。その結果としてVWゴルフやレクサスCT、そしてマツダアクセラが「高い評価を受けつつ販売面でも好調」という最近では極めて珍しい存在(笑)になっています。もちろんアウディA3のように「高い評価を受けつつも販売面では低調」なクルマもありますし、Aクラスや1シリーズのように「低い評価でも販売面ではそこそこ」というクルマもありますが・・・。

  さてボルボV40ですが、昨年(2013年)は非常に好調でした。ボルボが日本で月販1000台をクリアする原動力にもなりました。ベースグレードのT4がBMW120iとほぼ同等のスペックを持ちながらも、120iからマイナス80万円という価格設定が人気の要因だったようです。日本のユーザーに限った話ではないと思いますが、多くの一般ユーザーにとって、このようなマーケティング手法はかなり有効なのだと思います。その一方でいくら乗り味が良く燃費も良い素晴らしいエンジンを作っても、一般の消費者には伝わりきらない部分も多々あります。マツダの「スカイアクティブ=ガソリンエンジン」はアクセラやプレマシーに搭載された当初は市場は全くといっていいほど無反応でした。その後CX5のデビューと同時にディーゼルエンジンを発売してからマツダの客が増え、その好影響の中でほとんどがガソリンエンジン車になる新型アクセラも販売を伸ばしました。

  ボルボの「drive-E」も分類上はごくごくありふれたガソリンターボエンジンであり、よっぽど1.2LまでダウンサイジングされたVWゴルフTSIやプジョー308の方が特徴が分り易いかもしれません。ボルボもマツダに倣ってディーゼルエンジンを導入して、日本のユーザーを振り向かせるなどしない限り、400万円を軽く超える「drive-E」搭載のV40が売れることは無いかもしれません。ボルボとしてはディーゼルとガソリンターボPHVの発売も今後は予定しているようですが、その頃には「ディーゼル」や「PHV」にどれだけ新鮮さが残っているのかやや心配です。



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2014年12月9日火曜日

ドイツ車の復活はあるか?それとも・・・。

  「方便」ってヤツなんだと思いますが、少々解せないのが「2000年頃からのメルセデスの品質劣化は酷い」という意見と、「ドイツは自動車産業が国策だから世界の頂点!」という意見を器用に使い分ける人々(評論家の方々)です。そもそもKポップやクールジャパンじゃあるまいし、「国策」ってなんだか愚の骨頂じゃ?というツッコミもあるでしょう。「国策」ということはその国が儲かるように仕組まれているわけだから、利益を出せないポルシェのスポーツカー作りなんてさっさと止めさせて、ほぼ「濡れ手で粟」状態といえるSUV商売ばかりに多くのドイツの名門ブランドを駆り立てているとも言えます。

  アウトバーンの国・ドイツの自動車産業は数年前から曲がり角を迎えています。ほとんどの地域ではハイウェイの制限速度を100~120km/h程度に設定するようになり、ドイツ車の持ち味とずっと言われてきた「高速安定性」は、もはや最大市場のアメリカでは大きな商品価値を持たなくなってきました。本来ならばセダンやハッチバックが実力通りに大いに売れるはずですが、北米市場ではどちらのジャンルも完全に日本車によって追い出されてしまいました。どっかの評論家が言ってましたが、「アメリカの金持ちはユダヤ人が多いのでドイツ車を避けてレクサスを買う傾向にある」とかいう、なかなか斬新なドイツ車擁護論を聞いたことがあります。しかし「カローラよりも安いゴルフ」や、「カムリより安いパサート」が不思議なことにそれほど売れない現状を見ていると、「ドイツ車およびドイツブランドの力不足」に問題があると考えるのが妥当じゃないでしょうか。

  日本市場では「メルセデス」「BMW」「アウディ」「VW」のエンブレムが付いているだけで「お〜!すげ〜!」とか言い出すクルマ音痴な人々が多いですから、あまり言われることが少ないですが、ドイツ車は実際のところ結構とんでもないクルマが多いです。まずは「メルセデス」ですが、このブランドは近年とくに開発力の低下が叫ばれています。1990年くらいまでのメルセデスは「最善か無か」というイニシアティブに基づいた異次元のクルマ作りをしていたそうです。乗ったこと無いので何とも言えませんが、多くの人がそういうのである程度はそうだったと思います。しかし最近のラインナップのモデルを試してみると、どれもこれもどこかバランスを欠いた不可解さがくっついてくるモデルが多いです。

  言葉が悪いですが、新しく登場した多くのメルセデスのモデルが部品メーカーを締め上げてつくったかのような設計で、部品同士が喧嘩したような不整合なギクシャクを感じます。例えば日本車ならばどのメーカーのものでも、「エンジンの特性」と「ミッションの仕様」には一定の相乗効果が見られるのが普通です。トヨタ、ホンダ、スズキ辺りは熾烈な燃費競争を繰り広げているので、エンジンとミッションの組み合わせに神経をすり減らすのは当然です。日産、スバル、マツダなどは逆に乗り味を良くするためにエンジンとミッションのリズムを上手くまとめ上げ、日本メーカー車に独特の繊細さが感じられる仕上げになっています。

  多段式(8速くらい)のトルコンATを使ってしまえば、変速ショックが大幅に軽減されるので、ある程度は誤魔化せてしまうものです。メルセデスの場合FRの上級モデルはこれでなんとか開発時間の不足を補えています(BMWやレクサスも同じか・・・)。しかし逆に多段化でシフトの選択肢が増え過ぎたせいで、いまいちシャキッとしないスポーツモードになっているケースも散見されます。この点に関してはメルセデスやBMWが使う7or8ATよりも、VWの6DCT(湿式)の方が洗練されている印象すら受けます。

  そしてドイツメーカー同士で同じ排気量のエンジンを比べたときに、BMWやVW&アウディに比べてメルセデスのエンジンは「噴け上がりが鈍い」と感じやすいです。先ほどのスポーツモードもそうですが、車重があるメルセデスにとっては同等のスペックでは不利になる点と言えます。そしてミッションとエンジンの組み合わせに熟成不足があることが、メルセデスに対してしばしば見られる厳しい評価につながっている気がします。クルマの良し悪しは必ずしもエンジンやミッションのフィーリングが全てではないので安易な結論は控えますが、メルセデスの煮詰めは相当レベルに甘く、ある程度「走り」を意識した日本車・ドイツ車という強力なライバルの中においてはかなり明確に低水準なのがよく分ります。新型モデルが慌ただしく次々と登場してますから、1つのモデルに時間を割いて乗り味を調整することもなかなか難しいのだと思います。

  それでもメルセデスが、ライバルのBMWやアウディに対して優位な点もあります。最も顕著なのは、個性的な内装づくりに対する姿勢です。カーメディアは常にドイツのこの3つのプレミアムブランドに最大限の敬意を払っているので、どのブランドのクルマも判を押したように「高い質感はさすが!」としか書きませんが、実際のところはある程度の優劣は存在します。ここでリードしているのが、開発スパンの短縮化を社是としているメルセデスです。ドイツらしい質実剛健さがまだまだ随所に見られるBMWやアウディはもう古い!と言わんばかりに個性を盛り込んだ内装の作り込みが目立ちます。とある雑誌にCクラス、3シリーズ、A4のワゴンを比べる企画がありましたが、Cクラスワゴンだけラゲッジスペースの脇にネットのポケットが付いていて、その姿は使い勝手でナンバー1を獲得している某日本メーカーのクルマを彷彿とさせます。

  インパネやラゲッジルームのレイアウトを個性的かつ機能的に作るという点において、メルセデスは明らかにトヨタのクルマ作りの影響下にあるようです。センターコンソールを盛り上げる意匠は、プリウスやレクサスのHV専用モデル・HSからのトレンドと言えます。来年発売のVWの新型パサートを見て、「なんだかプリウスの内装みたい・・・」と思った人は多かったはずです(私もそう思いました)。トヨタの内装は日本の評論家やクルマ好きからはあまり高く評価されていませんが、その足取りはドイツ人の心を射抜くものになっているようです。飛行機のファーストクラスのような包まれ感はレクサス・日産そしてドイツプレミアムブランドの間で共有された「価値観」になりつつあります。

  レクサスが北米に登場してまもなく、トーマス=フリードマンが「レクサスとオリーブの木」を出版しました。その15年後の2005年にレクサスが日本上陸したときは、日本の多くの自動車好きがレクサスの「世界戦略」にかなり懐疑的だったと思いますが、それからさらに10年が経ち、先輩格のドイツブランドをも呑み込んでしまう大きなうねりになってきたように思います。その中で相対的に存在感が希薄になったドイツブランドには、盲目的な追従ではなく、新機軸を生み出す革新性を打ち出してもらいたいと思います。「国策」なんてクソみたいな大義名分は放り出して、終わったと思われたイタリア産業から大胆にも世界を見据える「マセラティ」であったり、ベンチャーながらも堂々のブランド展開を行う「テスラ」のような自信に満ちあふれた前進をしてもらいたいと思います。


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2014年11月18日火曜日

イタ・フラ車は日・独車よりも立派に世界に根付いているようです。

  イタフラってなんだよ!・・・安易に欧州文化を適当に括ったりすると、必ず知識人ぶって文句を言ってくる人っていますよね。「ラテン車」なんて使った瞬間に人間性そのものを疑われかねないデンジャラス・ワードです。たしかに「東亜細亜車」なんて括りでトヨタ・ヒュンダイ・一汽をまとめられたらやっぱり嫌ですけどね・・・。フェラーリ愛好家などは「イタフラ」にも「ラテン」にも違和感を通り越して嫌悪感すらあるそうですね。要はフィアット、PSA、ルノーだろ! ・・・はいその通りです。

  もしかしたらとんでもない勘違いかもしれませんが、これらの「イタフラ」ブランドは今では「クルマなんてオワコンだ・・・」と言わんばかりに、やたら厭世的・終末的なニュアンスを出しつつ、中国・インド・ブラジル向けにせっせと量販車を作り続けているイメージがあります。「イタフラはどう頑張ってもフェラーリにはなれない」と最初から諦めていて、身分相応のクルマを淡々と作り、売れるところで売るという地味な商売です。社会インフラを供給する工業メーカーとして本来のあるべき姿とも言えます。「イタフラ」ブランドは日本市場でも売れてるトップ15ブランドには1つも入っていないので、何だかグローバルでも停滞しているイメージがありますが、いずれも世界10大自動車グループの中核メーカーとして君臨していて、メルセデス、BMW、マツダ、スバルなどよりも重要な地位にいます。

  「イタフラ」ブランドは、アメリカ・日本・イギリス・ドイツといった「能無し・センス無し」な下衆な国民性で知られる市場ではどうやら勝負はしないみたいです。ドイツ人も日本人もフランス車を馬鹿にしていい気になってます。ドイツの自動車雑誌はフランス車を徹底的に見下していますし、沢村慎太朗という日本の評論家は、PSAに対して厳しく糾弾し、クルマを作る姿勢が根本的に間違っている!とまで扱き下ろしました。その裏にはその意見に諸手を挙げて賛同する無数のドイツ人や日本人のクルマ好きがいるからこそ、カーメディアも苛烈になるのかもしれません。ドイツ人や日本人が「イタ・フラ」を下に見るのは本当に妥当なことなのでしょうか?

  逆にイタリア人やフランス人の視点から見た時に、一体ドイツ車や日本車はどのように映るのでしょうか? ドイツ車と日本車が必死になって競い合っている「プレミアムカー」なんてイタフラ的な価値観から見ればただのゴミかもしれません。やたらと出力のあるエンジン積んで、これ見よがしにスペックを誇っていますが、いざ乗ってみるとちっとも面白くないクルマばかりです。こんなつまらないクルマでも、サウンド・ジェネレーターから流れてくる疑似エクゾーストを聴いて悶えちゃっているクズ野郎なドイツ人・日本人にとっては感激しちゃうみたいです。なんと愚かな・・・。そしてそんなアイディアを白々しく考える姑息なメーカー・・・もう完全に道を踏み外してないですか?

  官能的なクルマを作るならば、とことんやらないとダメです!パガーニ・ウエイラやブガティ・ヴェイロンみたいに「クルマ道楽」を極限まで追求する超絶マシンを作ってみることも必要かもしれません。気がつけばドイツや日本は、なんだかガンダムみたいな顔したシルバー塗装のブサイクなクルマばかり作っています・・・メルセデス、レクサス、アウディ、キャデラック、VW、ホンダ、スバルは「ガンダム7兄弟ブランド」とでも名付けましょうか?どれもアホみたいに個性がないですね。中にはガンダムじゃなくて「アンパンマン」になっちゃった日産や、「ウルトラマン」になったポルシェといった笑えるのもあります・・・イタリアでもケーブルテレビでアンパンマン見れるから知ってます!デザインするヤツもとても安易だけど、これをを欲しがるユーザーがゴロゴロいるのがアメリカ・日本・イギリス・ドイツのクソなとことです。韓国メーカーがデザインをパクった!とか騒いでたりしますが、そもそもガンダムを集団でパクっただけです。ちゃんと7ブランドは富野由悠季(よしゆき)さんに権利料払ってんのか?日産の場合は柳瀬嵩さん(故人)で、ポルシェは円谷プロか・・・。

  なんてイタリア人やフランス人に影で言われているような気がするんですよね。イタリアでもフランスでもドイツ車も日本車もそれほど売れてないですし・・・。少なくともいいクルマなんて思ってないとはずです。レクサスや日産はドイツ車を目指してシャシーやらボディやらを鍛えているそうですが、肝心のドイツ車が「軽量化」「ダウンサイジング」に一目散になっていて、現行の3シリーズやCクラスなんてどこか、トヨタのプレミオに似てたりします。ドアの質感なんてそっくりですし、乗り心地もどんどんプレミオに近づいています(良くなってます)。トヨタもプレミオをベースに内装をレクサス水準にしたものを用意すれば、メルセデスやBMWを「挟み撃ち」することができるかも・・・。

  しかしイタ・フラ的価値観からしてみたら、そんなの「何でもない」です。レクサスRCがいくら剛性を上げてもランボルギーニ・ウラカンには勝てないですし、プレミオみたいな乗り心地の良いサルーンをさらに上質に仕立てても、ハイドロサスを装備したシトロエンC5のインパクトを超えられません。そしてLSやSクラスが束になってもマセラティ・クワトロポルテの魅力には適いません・・・。結局ドイツや日本なんてのは、メーカーが適当な仕事して、「玉虫色」の中途半端なクルマをつくり、それを無能な評論家が適当に狭い了見で脚色・宣伝して、気がつけば平気で「世界最良」みたいなコピーを使っていたりします。

  世界最良のはずですが、ドイツや日本の高級車はあくまで先進国市場の中でしか受容されず、最近では裾野を広げるためにクルマのことを良く知らない層に対して、スーパーマリオを起用したりして熱心にアプローチしています。それでもVW・スバル・マツダといった優秀な一般ブランドに開発競争で遅れをとっているため、その地位を脅かされつつあります。いずれこれらのプレミアムブランドの「底」が抜ける日もやってくるでしょう。ドイツ車も日本車も従来のハイスペックなクルマ作りから、方向転換を余儀なくされています。今後はメルセデスもBMWもレクサスも日産もコンパクトカーを重視した戦略なしには成り立たなくなるはずです。これらのブランドよりもいち早く小型車に将来性を見出していたメーカーがスズキ・ホンダ・オペルといった一般ブランドです。これらはイタ・フラ的なテイストを受け入れつつ一歩進んだコンパクトカー作りを行っています。

  皆さんの周りにも「スズキは絶対に嫌!」とか「ホンダはちょっと・・・」といったバブルの頃の価値観のままの人はいませんか? 恥ずかしながら、私の身内の母・妹・彼女が揃ってこれに当てはまります。しかしスズキもホンダもとても「イタフラ」的なクルマ作りをしている素晴らしいメーカーです。今では多くのクルマで直4エンジンが使われるようになりましたが、直4エンジンの技術ならば世界的に見ても、マツダ・ホンダ・スズキはその頂点に位置しています。よって4気筒のクルマを買うならばこの3ブランドから選ぶべきで、身内がNGを出してるスズキやホンダが選べないのでマツダに乗っていますが・・・。この3ブランドのクルマにはシトロエンC5のハイドロサスのような、絶対に譲れない本質的な素晴らしさが備わっています。

  世間知らず(バカ)で名高い日本のクルマ好きの中には、「コンパクトカーやミニバンばかりの日本は異常!」とネット上などで発狂している人も見られます。イタフラ的なブランドにとって、コンパクトカーやミニバンはクルマの本質に適った素晴らしく合理的な設計として、ラインナップの中核に位置づけられています。制限速度が100km/hなのに、250km/h設計のGTカーや、舗装路がしっかりと整備されてオフロード走行の必要などないのにフルタイム4WDを備えたSUVを一生懸命作っていることが滑稽ですし、ドヤ顔でそんなクルマに乗ってノロノロ運転している日本人の方が、ずっと異常に見えます。コンパクトカーやミニバンは「イタフラ」ブランドによって南の国々に今後は広く販売されていくことでしょう。「イタフラ」的視点から見た日本のカーメディアなんて、「思考停止の90年代から1mmも進歩してないクズ」にしか見えません。

  追伸:別にイタリアやフランスのクルマが本質的に優れているというつもりはありませんし、無理にオススメする気も無いです。コンパクトカーをお求めならば、スズキ・ホンダ・マツダ・VWあたりが良いのではないでしょうか・・・。

  
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2014年10月31日金曜日

マセラティ・ギブリ が レクサスLS を超える日

  いくら「世界のトヨタ」といえども、気合が空回りしてしまいライバルに負けることもしばしばあります。最近の顕著な敗北例としては・・・全くやる気が見られなかった2012年FMCのオーリスが挙げられます。このクルマはトヨタが目指してきたCセグHBを日本市場で普及させるプロジェクトの系譜を引き継ぐはずの一台ですが、そんな目標があったなんて今では誰も信じないでしょう。それでも欧州ではゴルフやフォカスを押し退けてそこそこ売れたようですし、BMWのディーゼルを新たに搭載して今後さらなる飛躍を目指しているようです。

  このオーリス以上のトヨタにとっての誤算は、自信作だったはずのレクサスISが現在のところ3シリーズを販売台数で上回れていないことかもしれません。「猫に小判」・・・は言い過ぎかもしれませんが、「3シリーズの松◯宏」と「Cクラスの河◯ま◯ぶ」といえばお分かりのように、ライバル車に乗るような人々の多くは、クルマの良し悪しなんてまるっきり分らない、単なるトヨタ(日本車)嫌いが多かったりします。この両ライターは普段から国産車/輸入車を問わず評価するポイントがどうもブレブレな気がします。それぞれ3シリーズやCクラスに何を感じたのか?も全く不明ですし、レクサスISやスカイラインへの評価はほぼ言いがかりのような愚論ばかりでした。河◯ま◯ぶに至ってはスバルWRX・S4を上質と言い切ってしまうほどの筋金入りのクルマ音痴?です。強烈なのはyoutubeのインプレで、S4に乗って「これはもうSTIは無くてもいいんじゃない?」というかなり重症な"迷言"を残しておられます。

  トヨタが考えたようにドイツ車をしっかり研究し、それを全面的に上回るクルマを適正価格で発売さえすれば、3やCからシェアが奪うことは難しくない!というのはとても自然な気がしますが、やはり日本のユーザーを買い被りすぎだったようです・・・。トヨタらしくないマーケティングの読み違えとも言えますが、やはりこれまでトヨタがやってこなかった、ドイツ車を超えるといった新しいことをすると予期せぬ障害が発生するものなのかもしれません。しかし「レクサスISの掲げる崇高なコンセプトをまともに受け止められない日本のユーザーにがっかりです」・・・なんて開発主査に敗者の弁を吐かれるのは、1人のクルマ好きとして残念極まりないです。そして発売したばかりのRCの開発陣も日本市場には全くといっていいほど期待などしてないことでしょう。そもそも4シリーズが全く売れてないですから。

  さてオリジナル・レクサスとして知られる最上級モデルの「LS」も初代の登場からちょうど四半世紀が経過し、デビュー当時はアメリカ人ジャーナリストが「夢のクルマ」と評して熱狂したコンセプトもだいぶ風化してきました。常にこのジャンルをリードする存在の「メルセデスSクラス」は別格としても、経営危機にさらされながらも北米市場に支えられた「ジャガーXJ」をはじめ、「BMW7シリーズ」「アウディA8」「日産シーマ」といった登場から20年あまり経過したラグジュアリーセダンはいずれも瀕死の状態です。

  新興勢力としてはマセラティから2004年に復活を果たした「クワトロポルテ」、そして勢いを増すVWグループからは2009年に登場した「ポルシェ・パナメーラ」が、ブランド力を生かして北米で短期間の内に市民権を得ました。これらの次世代のコンセプトを標榜した、セクシィかつエレガントな魅力を持つ新型ラグジュアリーサルーンが台頭してもなお、レクサスLSは北米でもSクラスに次ぐ地位をしっかりキープしましたし、日本ではSクラスを追いやって夜の銀座や北新地といった一流の繁華街における代名詞的存在になりました。しかし昨年にマセラティが新たに発表した「ギブリ」が出てから、北米でも日本でもレクサスLSの地位が脅かされるようになりつつあります。ギブリのベースグレードの800万円台という価格設定がウケたようで、ギブリ単独でもアメリカで月販4桁!日本でも3桁!という驚異的な成長を遂げています。

  アメリカでのLSは現在は月販で500~700台程度で推移しているので、完全にギブリに抜かれてしまいました。このままギブリ>LSの関係が続くかどうかは不明ですが、カンパニーカー全盛の時代に設計されたLSと、ニューリッチなマーケットを狙ったギブリでは、やはりクルマのアピールする部分が大きく違いますし、個人ユーザーが所有欲を満たすとするならば・・・ギブリにやや分があるかもしれません。ちなみに北米での価格はLS(V8)が$72,000〜でギブリ(V6)が$67,000〜となっていて、ほぼガチンコといっていい価格帯です。ちなみにアメリカのSクラスは全てV8かV12なので、$94,000~と破格です。やはりイタリア車の魅力には逆らえない・・・といったところでしょうか。

  レクサスは日本で発売を開始したNXを、北米でも発売する予定で、北米レクサスはいよいよ4サイズのSUV展開(NX、RX、GX、LX)で、ドイツ勢(とくにBMW)を出しぬく構えのようです。アメリカ市場のナンバー1プレミアムブランドの座をめぐってメルセデスとBMWの後ろからレクサスが猛追していて、アメリカの現在のトレンドを考えると、SUVの売れ行きがこの勝負を決する最大のファクターであることは間違いないです・・・。たとえメルセデスやBMWをブランド全体での販売台数で上回ったとしても、ブランドの原点である「LS」が、まだ出て来て日が浅い「ギブリ」のようなライバル車にあっさり負けてしまうならば、レクサスの末長い繁栄は望めないでしょう。やはりどんなブランドでも、これだけの情報社会を生き残るには、絶対に他ブランドに負けない長所が必要ですし、25年前のブランド立ち上げから一貫してレクサスのクルマ作りの正統性を証明する存在はやはりLSだったわけです。

  それにしてもデビュー当初はどうも違和感があったギブリですが、マセラティが大好きな日本の国民性を反映してか、ドイツ車や日本車からの乗り換えが殺到しているようです。エクゼクティブ・サルーンとして「S」「LS」「XJ」「クワトロポルテ」「パナメーラ」よりも慎ましく、「GS」「E」「5」「7」「XF」「シーマ」「フーガ」「マジェスタ」よりも華がある、なんともジャストフィットな質感と感じているオーナーも多いと思われます。ドイツや日本のメーカーにもこれに対抗する艶やかな高級セダンを期待したいです。


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2014年10月24日金曜日

新型プジョー308・・・何か吹っ切れた感が。

  クルマ雑誌を見てるとしばしば「最大の激戦区のCセグ」と書かれていることが多いです。しかし世界最大の市場であるアメリカでは明らかにDセグの人気が先行していますし、日本を始め欧州では販売の中核を占めるコンパクトカーの主流はBセグに移りつつあります。Cセグはアメリカでも欧州でも中国でもそこそこ需要が確保されているので、グローバルで見れば最量販ジャンルになるのでしょうが、こういう「薄く広い」売れ方をしてしまう現状では、どうしても最大公約数的なクルマ(=駄作)が多くなってしまう気がしないでもないです。

  かつてはCセグ車がメインだったWRC参戦モデルも今では完全にBセグになっています。WRCを勝つのに必要な設計が織り込まれたベース車になるインプレッサやランサーは数年前までは世界各地でコアな人気を誇りました。ドイツでもアメリカでも日本の陸軍機を作っていたスバルと、海軍機を作っていた三菱は、BMWと並ぶ「戦場を駆けたエンジン」の自動車メーカーとして畏敬の念で敬われていたようです。しかし今ではインプレッサもランサーもBMW318ti(現1シリーズ)も、ブランドを牽引するような魅力はすっかり失われてしまいました。

  WRC(Bセグ)と独DTM/日スーパーGT(Dセグ)の狭間にあって、オーバースペックな設計などは特に要求されなくなったCセグの水準は、数年前からどうやら停滞している気がします。例えばトヨタがスーパーGT用のベース車として設計したレクサスRCは、クラスの頂点に立つISをさらに強固にした車体剛性を持つようですが、CセグのレクサスCTやオーリスにはそんなこだわりは一切見られません。そしてライバルの日産もそれに対応するように、自然とスカイラインをハイクオリティに仕立ててしまう一方で、Cセグのシルフィにはそのクオリティがほとんど反映されていない気がします・・・。

  またスバルを見ていても、WRCから撤退して以降は中核のCセグモデルがどんどん説得力を失っています。ブランドイメージを牽引するはずの「WRX」が新型ではグレードによって巧妙にエンジンを載せ分けていて、大雑把に言うとこだわり過ぎの「STI」に対して、ちょっと主旨がブレている「S4」の2グレード併存になりました。たとえ筋金入りのサーキット派に嘲笑されようとも、もし良いクルマだと感じれば「S4」を買ってみようと思ってディーラーまで出向きましたが、結局のところスバルは何がしたいのかさっぱりわかりませんでした。確かにすっかり覇気の無い他ブランドのCセグ車の中では、完全に頭一つ抜けた存在なのでしょうが、「操縦性(小型)&機動性」というコンセプトから期待するような「身体との一体感」は、残念ながら他ブランドのクルマに負けているように感じました。

  今もWRCに参戦しているVWや欧州フォードが突き進むペースと比べてスバルの「エンターテイメント性能」の進化にはいささか疑問があります。明確な目標を失うと日本のクルマ作りは「弱い」と言われますが、今のスバルにはそんな危険な空気包まれている気がするのです。自らのブランドコンセプトの成長のためにもモータースポーツに復帰して得られることは多いと思います。WRCをきっかけに世界的にスポーツブランドとして知られたわけですから、やはりBセグ車を開発してラリーシーンに戻ってくるくらいの気概を見せて欲しい気がします。

  現在ではスポーティなグレードが次々と作られるのは、WRCを通じてクルマ好きに好印象を与えているBセグが圧倒的に多くなっています。特に1.2と1.6の二本立てのエンジン構成になっているPSA(プジョー・シトロエン)は、各メーカーのCセグのスポーツモデルが到達しつつある300psを達成するのが困難ということもあり、旧型308をベースにしたRC-Z以外はBセグの208をベースにスポーツグレードを展開しています。208はライバル車はVWポロ、フォード・フィエスタと合わせて欧州市場の「コンパクト御三家」を形成していて、ここに食い込もうとする韓国勢や日本勢にもかなりの意気込みを感じます。フィエスタの同プラットフォームのデミオを始め、トヨタ・ヤリスも欧州もモーターショーで「本気のトヨタ」を見せつけています。

  一方でCセグはというと、一般グレードはともかくスポーツグレードに関してはBセグよりもはるかに地味になってきた感じがします。少数の勝ち組であるルノー日産(メガーヌRS)とVW(ゴルフR)の争いにホンダ(シビックtypeR)が再び参戦を予定する形でまだまだ盛り上がってはいますが、スバルはWRXのHB化を放棄し、マツダもMSアクセラの開発に後ろ向きだったりと、グローバル8(米3強・日3強・ヒュンダイ・VW)以外の大衆ブランドでは安易な参入が難しくなってきているようです。そこにKYなメルセデスが豊富な顧客名簿を武器に「A45AMG」というアルマゲドン的なモデルを投下し、VWがアウディブランドで迎え撃つ構えを見せています。もはやFFのままではどうにも出来ない400psの水準までパフォーマンスレベルが跳ね上がってしまいました。

  こうなってしまっては、もはやクレイジーなドイツメーカーとコンプレックス丸出しの日本メーカー(日産とホンダ)以外は全面撤退しかないですね。日産はジュークに続いて、パルサーにも「VR38DETT」を積んで、小賢しいメルセデスやアウディを踏みつぶす!かもしれません。ただしエンジンだけで380万円するそうですが・・・。噂によると欧州フォードもナンバー1ブランドの意地というか、エコブーストエンジンの宣伝も兼ねてフォーカスの400psモデルを作るみたいです。こんなわけの分らない「モンスター」が乱立してしまっては、PSAやスバルやマツダが「やってられるか・・・」とへそを曲げてしまう気持ちもわからないではないです。

  しかし日産とは全く思考回路が違う「優良企業・トヨタ」はすでにCセグにおいては新しい方針で動き出しているので、今後は業界全体に影響を与えていくかもしれません。トヨタは一時期は欧州へ本格展開するために、ハッチバックの開発に執着していましたが、その成果が実らないままに高性能モデルのブレイドを廃止して、オーリスに関しても過度なハイパワー化には否定的な立場をとっています。トヨタの優秀なマーケティング部門はすでに「オワコン」となった高性能Cセグに完全に見切りをつけた模様です。Cセグを過度に高性能化して500万円を超える価格で販売したところで、ユーザーは満足できないでしょうし、存在価値を敢えて探すならば、最も優秀なモデルを作ったメーカーにとって広告塔になり得るという、作る側のエゴでしかないです。

  そんなトヨタが作る潮流に乗っかって日本にやってくるのが、BMW2シリーズグランドツアラーとプジョー新型308で、どちらもこれまでのブランドイメージを打ち破る「エコ」で「コンフォータブル」な日本車(特にトヨタ車)のような装いが特徴です。多少語弊があるかもしれませんが、初代プリウスのサイズをトヨタが決めて、その運用に必要な過不足ないパワーを可能な限り経済的に配分した「パッケージの美学」を、欧州きっての伝統のブランドといえるBMWやプジョーがトヨタをリスペクトして作ったクルマのように感じます。

  新型308はプジョーが現在製品化できる最もエコなパッケージを採用しつつも、プジョー車のプライドとして全グレードに「ドライバー・スポーツ・パッケージ」というものが付いてきます。これはVWでおなじみの「Sモード」と同じようなものみたいです。最上級グレードにはPSAの得意技であるパノラマミックウインドーが付きます。1.2Lターボですから絶対的な動力性能は大したことはないでしょうが、欧州ブランドの意地と、PSA車のアイデンティティが備わって300万円台前半ですから、なかなか貴重なクルマと言えるかもしれません。内外装のデザインもとても洗練されたものとなっていて、アクセラ登場で"ワーキャー"言っていたのが、だいぶ昔に感じられるほど進化のスピードは早くなっています。マツダと同じで倒産の危機に晒されたPSAだからこその思い切りの良さも随所に感じられます。日本COTYではデミオの前に敗北しましたが、この新型308は割と日本人の感性に寄り添うクルマに仕上がっている気がします。


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2014年10月17日金曜日

ボルボに何を見出すか?

  ボルボは輸入車にとっては厳しすぎる日本市場で、日本車とドイツ車の狭間でなんとか日本でも存在感をアピールしてきましたが、最近ではかなり危機的な状況を迎えつつあるようです。昨年の始めにV40を投入して、輸入車によるCセグHBブームの一端を担うほどに注目を浴び、ゴルフやAクラスを相手にも健闘しました。ただし廉価モデル発売によって、上級モデルのシェアも相当に喰われてしまったようで、V40以外に目立ったヒット作もないまま、ドイツ車と日本車の怒濤の新型モデルラッシュの中に潰され、ブランド別ではBMWミニにあっさり抜かれてしまいました。月販1000台という日本市場のメジャーブランドの基準も割り込むようになり今後の展開がとっても不安です・・・。

  「autocar」の森慶太というライターが最新号でボルボS60を絶賛していました。ライトウエイトスポーツに対して惜しみない愛情を注ぐというイメージが定着している森さんですから、割と軽めのFFサルーン、しかも電動ステアの熟成が進んだだけというシンプルな設計というだけでツボに来たようです。ほめ言葉に困ったのか、それとも本心かはわかりませんが、やや過激にも同クラスのドイツ車よりも乗り心地が確実にいいぞ!みたいなことを仄めかしていました。話題沸騰の新型Cクラスを引き合いに出して、Cクラスは期待してるけど作り込みがまだまだこれからという段階なので、S60とCクラスによる1.6Lターボの対決も現状ではボルボS60にかなり分があるのでは?というS60にとっては価値ある専門家のお墨付きが出ました。

  80年代に登場した国産スポーツを愛して止まないライターが、ユーザー目線になって楽しいクルマをリサーチして、「これは凄くいいですよ!」とオススメしている姿はなんだかとても好感が持てますね。「ユーザー目線」でクルマを考えた時に、最近の傾向としてモデルサイクルがどんどん短くなって、発表から半年後にはどのカーメディアの話題にもならなくなってしまう「消費型」の新車発売スタイルでは、果たして価値あるクルマに出会う機会を増やすことができているのか?という疑問も湧いてきます。熟成させる猶予が与えられず、最初の段階での売上で企画の正否が決まってしまうせいか、クルマの開発も「話題作り」ばかりが過熱している印象です。某輸入車ブランドが「車内ワイファイが付きました」とかどうでもいいことを吹聴してるのを見て、クルマの本質には無関係だし、スマホ片手に運転する不届き者が頭に浮かんだ人も多いのではないでしょうか。

  とりあえず新しく出てくるクルマには何かと"つまらない機能"が付いてきて、そんな新機能を1度も試すことなく廃車になっていくクルマもたくさんあると思います。この点はプレミアムブランドほど迷走の度合いは大きいようで、例えばランフラットタイヤのような不要物(少なくとも日本では)が付いてくれば、ロードノイズが高級車の魅力を半減させ、コンパクトカーよりも乗り心地が悪いなんて散々に言われてしまう羽目になります。しかしライターが「もっとシンプルにユーザーの期待に応えるクルマをつくれないのか?」なんてオブラートに隠さずにぶち上げようものなら、メーカーが裏から手を回して業界から抹殺される恐れもあると思います。その結果として「魂を売り渡したイエスマン」ばかりが寄り集まって、震えた手でレビュー書いてる構図が浮かびます。

  こんなに問題が山積み、厳しく言えば"腐り切っている"高級車市場では、全体的にも規模は伸び悩み、その中で地味なボルボがフェードアウトしてしまうのは、やはり自然の摂理なのでしょうか。スバルとともにエマージェンシーブレーキの先駆的存在だったボルボは、常にクルマの本質に向き合って「質実剛健」(ドイツブランドが忘れつつあるアイデンティティ?)を今も表現できるクルマ作りが実践されているようにも思います。旧フォードグループのプラットフォーム(EUCDとC1)を今も使い続けるボルボですが、どちらの設計からも幾多の名車(初代アクセラ、レンジローバーイヴォーグなど)が生まれていて、最新のメカニズムにも十分キャッチアップできるだけのポテンシャルがあるとは思います。

  マツダの旧型と同じ設計と言われるとちょっと有り難みが無いかもしれませんが、マツダの最新のスカイアクティブシャシーは、ユーザーというよりもむしろメーカーにとってかなり"恣意的"な設計になっていて、先代までのマツダが誇った高性能ダンパーが組み込まれた足回りはやや影を潜めるなどネガティブな部分が噴出しています。ちなみにアクセラは初代が最もハンドリングが優れているという評価もあるくらいです(中谷明彦氏)。実直なクルマ作りで評価されているマツダやスバルにしても、絶えず経営危機と隣り合わせであった期間が長く、年産100万台規模のメーカーともなれば当然のことですが、コスト優先の設計に走る部分があちこちに見られます。その一方で「話題作り」のための宣伝費を多く計上している一面も見られたり・・・。

  やや誇張気味のニュアンスがあるレビューを真に受けるわけではないですが、ここまで森さんに言わせてしまうボルボの魅力の一つとして、旧世代の設計のポテンシャルを信じて愚直なまでに熟成させている点があると思います。新しいクルマの設計がなかなか受け入れられない・・・というのはクルマ好きが本能的に持つ感覚であって、日産やホンダは過去の栄光を惜しむファンの声が多いですね。最近ではBMWでも新型モデルが受け入れられないなんていう声が強くなってきました。森さんのレビューに全面的に同調できるユーザーにとっては、ボルボの存在価値は"残された聖域”という意味でまだまだ注目すべき点は多いように思います。


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2014年10月3日金曜日

パリモーターショーで地元プジョーが熱い!

  欧州で開催されるモーターショーはやはり出品されるクルマの質が違いますね。東京MSなどは日本の閉鎖的な市場が嫌がられているせいか、輸入車ブランドはまったくやる気なしですし、中国やアメリカのショーに出されるクルマはやたらとデカいセダンだったり、不思議なデザインのSUVだったりで量販モデル中心の即売会みたいですが、パリモーターショーは知性がキラリと光る気の利いたクルマが目立ちます。魅惑のカーライフを想像させてくれるモデルがこれでもか!とばかりに出てきます。ランボルギーニもフェラーリもワールドプレミアモデルを用意してますし、あらゆる価格帯のクルマが眩しく見えます。

  「BMW2クーペ・カブリオレ」なんて久々のBMWの快作じゃないでしょうか?最近はやたらと所帯染みたモデルが多くてブランドの重みがどんどんすり減ってしまい、おまけにBMW-USAが仕掛ける亜種モデルが日本にもどんどん輸入され、買った人はドイツの本社は関係ないシロモノだったとあとから気がついて激怒しそうなモデルが普通に販売されてます。新しく登場したX4とかいくらなんでも明らかにデザインがオカシイですよね、もちろん欧州では一切作っていないUSA企画モデルです。それに引き換えBMWらしい知性を持っている唯一といっていいクルマがM235iなんですが、やはり全てが大型化した時代にハードトップ3BOXスタイルで4500mm前後の全長で、車幅も1750mm程度に抑えられていると、やや迫力不足で650万円という価格を考えると二の足を踏んでしまいます。この「カブリオレ」はそんなネックをスペシャルティカー仕様というBMWの得意技でいい感じに解決しているように思います。

  「アウディTTスポーツバック」もここのところヒット作に恵まれず低調なアウディを救う救世主になりそうな輝きがあります。アウディの期待を一身に背負って登場したA3セダンですが前述の4500mmのハードトップ3BOXの例に漏れず、しかも1.8ターボで500万円というゲロゲロな日本価格を見せられると、やはりこのクルマで500万円(スカイラインHV越え)というハードルを超えるのは、それなりにクルマを知っているとなかなか無理だと思います。スバルWRX S4が400万円で買えるわけですから・・・。もっと所有欲を刺激してほしいわけですが、アウディもA3セダンの企画不足を痛感しているようで、仕切り直しといったニュアンスで、TTの派生モデルを5ドアHBで作ってきました。確かにTTの魅力は2ドアにある!というTT愛好家の意見もよくわかりますが、これはこれでかなり凄いことになってます。2Lターボ400psという欧州版ランエボ級のハイスペックにも関わらず、モード燃費が18km/Lを超えていて、もうどうなっちゃってんの?とただただ驚くばかりです。

  そしていよいよポルシェ以外のVWグループ(VWとランボルギーニ)からもPHVモデルが続々と登場してきました。これで日本の国沢光宏氏を始めとした「ダウンサイジング・ターボ信者」ライター様と彼らの"妄言"を"盲信"した愚かな欧州車大好きな皆様が、トヨタやホンダの深謀遠慮にやっと気がつくことになるでしょう。「VWグループのハイブリッド元年」(=トヨタ・ホンダの特許ライセンス切れ)がやってきたことを素直にお祝いしたいと思います。現行のNOx吐きまくりの1.2L&1.4L直噴ターボでは間もなく販売できなくなってしまいます。そしてユーロ6で欧州メーカーの小型ディーゼルが全滅するようなので、このまま何もしなければ小型車に関してはアクア・フィットHV・デミオディーゼルが絶対的に優位になっちゃうわけですが、欧州メーカーも必死で次世代のコアとなる新型動力源を検討中のようです。

  そもそもダウンサイジングターボは、日本メーカーのように良質な鉄鋼が使えないため、クソ重くなってしまう欧州車を誤魔化して走らせるための窮余の一策に過ぎません。前々から思っていたのですが、ハイブリッドvsターボという対比には何の意味もなくて、軽量化技術vsターボと捉える方が正しいです。そもそもカーメディアが「ターボの本質」をわざと伝えないようにしていることが最悪なのですが、それを鵜呑みにして「ターボこそ最先端」と信じて疑わない困った文系のオッサンがクルマ好きには多いんですよね。他人のブログにずかずかとやってきて「今やターボが常識です!」みたいなことを言ってくる方が結構いましたよ。なんでクルマユーザーなのに自分からクルマを学ぼうとしないのですかね。

  さてそんな話はどうでもいいのですが、久々にプジョーが良さげなモデルをいくつも"炸裂"させてきました。RCZの発売以降、深刻な経営危機に陥ったこともあっていまではすっかり東アジア資本の助けを得る格好になっているのですが、倒産をなんとか免れて心機一転というか再起を期したようで、かなり弾けたモデルが出て来ました。まるで2003年頃に経営危機のど真ん中にあった某日本メーカーを見ているようです。欧州COTYを獲得した新型308はまもなく日本でも発売になるようですが、ゴルフとアクセラが他を寄せ付けないせめぎ合いをしている日本市場ではちょっと厳しいかもしれません。しかし今回発表された新型508は「こういうセダンが欲しかった!」という端正でフォーマルかつ美意識のとても高いデザインになりました。日本にNAモデルで勝負してくるならなかなか面白いと思います。

  508がフォーマルなのに対して、スペシャルティカー路線をどこまでも突き抜けたのが、コンセプトクーペの「エグザルト」で、308のスペシャルティカーが「RCZ」ですが、これと同じくらいに"濃い"デザインが魅力です。プジョーは経営危機が訪れる前に一度「クーペ407」というモデルで、「スポーティな大衆ブランド」の枠組みを突き破って「ラグジュアリークーペ」として高い理想を掲げたのですが、志半ばで頓挫してしまいました。これは日本のユーザーにとってはなかなか悲しい事件で、今やレクサスRCとかいうイモっぽい国産2ドアが平気で600万円オーバーとか値をつけてますが、これがぜんぜん優雅じゃないし、なんだかやたらオタクっぽいスタイリングしてます。本体価格569万円だったクーペ407は今でも街でお目にかかると、時間が一瞬止まるようなもの凄いオーラ発しています。メルセデスSLなんか見てもなんとも思わないのですが・・・。この価格でここまでの存在感を発揮するモデルは奇跡ですね。マセラティグラントゥーリズモや先代6シリーズに匹敵するような凄みすらあります。映画「TAXI」シリーズが好きな人ならば、あのプジョー独特の色合を見せるあのシルバーの塗装とシステマチックにスポーティなグリルデザインを見るだけで大興奮するはずです。

  クーペ407が凄過ぎたので、現行のやや腫れぼったく膨らんだ508セダンは、どうも好きになれませんでした。やはりプジョーは膨らんじゃだめですね、ソリッドなイメージじゃないと許せないです。新型308はアクセラ風味にぷっくらしちゃってますが、新型508とエグザルトはパネル面に緊張感がみなぎるようなタイトさをひしひしと感じます。508は新たにクロスオーバーも同時に発表されたのですが、膨らむ路線をそちらに切り離すという解決は素晴らしい英断だと思います。そしてクーペ407の系譜を継ぐモデルとしてエグザルトのデザインがとてもいいです。マツダの現行デザインの元祖と言うべきコンセプトカー「SHINARI」は今見ても研ぎ澄まされたデザインが魅力ですが、エクザルトのインパクトはSHINARI以上で、このド派手なスペシャルティモデルをどうやら本気で市販するつもりのようです。

  マツダにしろプジョーにしろ経営危機に陥ったメーカーは恐ろしいことを考えるものですね。いかにも年配のオッサンが喜びそうなデザインに陥っているBMW・メルセデス・アウディのモデルはどれも退屈極まりないです。プジョーやマツダの方がよっぽど高度なデザインを駆使して、若いユーザーのイメージを上手く掻き立ててくれるソリッドでハイセンスな輝きに溢れてます。輸入車ユーザーがアテンザXDやWRX S4へとかなり流れているようですが、「国産車はちょっと・・・」という見栄っ張りな人々の前に、本気のプジョーがクリーンディーゼル載せて価格を抑えて上陸したら日本でも勝算は十分な気がします。


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2014年9月17日水曜日

VWゴルフのユーザーはもっとクルマに自信を持っていいと思う。

  秋の夜長ともなるとクルマ好きが集まる掲示板をちょくちょく見てしまいます。雑誌には載らない貴重な情報が怪しげに出る事があったり、いろいろな人のクルマ趣味における意見が見れるので、一度ハマるとなかなか止められず、気がついたら朝方なんてことも・・・。夏休みくらいからの傾向でしょうか、VWゴルフの板でちょっとした異変が起きつつあるようです。ユーザーの中から自然発生的にゴルフ7の世間の評価と現実にギャップを感じ、かなり疑心暗鬼に陥っている様子がみられます。確かにあれだけメディアに煽て上げられてしまったら、どんないいクルマだって買ったあとには「あれ?」って思うことが出てくるのも無理ないことでしょう。「一体何が神様降臨だって?え?福野(礼一郎)さん?」とか凄みたくなってしまうほどの違和感(幻滅感?)は多くの人が感じるはずです(言い切ります!)。

  私自身も発売時のあまりの賞賛っぷりにはさすがに胡散臭さを感じましたし、自分なりにはある程度の確信を持った上で、カーメディアによる「消費者に対する偽善」「自動車産業全体に対する背信」という要素が排除できない!という結論に達して否定的な論調でブログを書きました。それでも今思えば「私にとって!このクルマがツボなんです!」と言い切る人が出て来たなら、素直に共感してあげられるくらいの実力があったのも事実です。しかしそういう「前向きな」ユーザーレビューには一切と言っていいほど巡り合わないんですよね。もしゴルフ7に部外者には分らない知られざる色気があるとしたらぜひ聞いてみたいと思いますが、掲示板では全くと言っていいほどその手のコメントは出てこないです。蛇足ですがマツダ車の板がユーザーの気色悪いまでのデザインにゾッコンなコメントで溢れかえっているのとは大違いです。VWファンはクールなの?

  クルマへの確信に満ちあふれたコメントが無い(あるいは不足している)掲示板というのは、たいていはアンチによってボコボコにされてしまうもので、ゴルフ7掲示板もアクセラやインプレッサといったライバル車ユーザーによって、無神経にもVWの欠点を挙げ連ねられてました。「ゴルフ7はコストダウンが酷い」と鬼のクビを獲ったように書かれているのをみると、現行のアクセラやインプレッサだって基本的には同じだろ!って思わず突っ込みたくなります。しかしゴルフユーザー側の投稿者も掲示板に張り付いているほどのクルマ好きだとは思うのですが、マツダ車やスバル車に全く興味がないようで、そういった反論が一切出てこないんです。ゴルフをよく知ってるマツダ・スバル派とアクセラ・インプレッサを知らないVW派の論争ですから、孫子の兵法書じゃないですけど、クルマそのものの評価においてはマツダ・スバル派が一方的に言い負かす傾向にあります。それに対して「くやしかったら輸入車買ってみろ!」と”すり替え”で反撃するVW派にはさすがに唖然としてしまいます。

  見ていて思わず感じてしまう虚無感・・・VW派vsマツダ・スバル派というのは全く不幸すぎるマッチアップですね。こんなしょうもないことで不健康すぎるストレスが日本中に拡散されるなんていくらなんでも不毛すぎます。そもそも双方ともに言ってることがやたらとオカシイ・・・。クルマの性能をどこまで評価するかにも寄りますが、現行のアクセラやインプレッサでは残念ながらゴルフハイラインを完全に凌駕するレベルには達していないので、マツダ・スバル派が一方的に勝利するのもなんだか不思議な結論です。マツダ・スバル派はゴルフのスペックにはとても詳しいようですが、ハッチバックの実用車としての力量を絶対的に見誤っていると思います。BMW1シリーズやメルセデスAクラスやMC前のレクサスCTが相手ならば、乗り味などのクルマの基本性能でアクセラとインプレッサが十分に上回っていると言えますが、ゴルフ(ハイライン)相手ではいろいろな点で分が悪いです。

  VW派もこのことを自らの言葉でしっかり言い返してこそ健全なクルマファンの交流につながるでしょうし、無知蒙昧で井の中の蛙なマツダ・スバルファンを啓蒙することもできるでしょう。そもそもクルマの掲示板に近寄るならば、自分が選んだクルマに確信めいた自信を持ち、何を中傷されても痛くも痒くもないくらいの知識を備えておくべきです。1年前に良いと感じて買ったゴルフ7なのだから、周囲が乗り味が悪いと言い始めたくらいで不安に思ってはいけません。そして有名な評論家がどんな結論を下そうとも、悪いのはクルマではなくて、それを選んだあなたの無知がすべての元凶です。福野礼一郎氏にどんだけ貶されても、アルファロメオやBMWの乗り味がいいとか言ってるクルマバカにこのクルマの良さが分るわけがない!と大きく出ればいいのです。

  VW派はマツダやスバルに「追い上げられている」と感じ、マツダ・スバル派の多くは「追い抜いた」と思っているようですが、ゴルフ自体が5代目で大きく質感をアップさせた時に、フォード(マツダ)の技術責任者を引き抜いて基本設計を盗み、ホンダシビックが始めたクラス初のマルチリンクを真似して採用し、そしてトヨタカローラの当時クラス最高の内装の質感をそのまま謙虚にコピーして作ったクルマです。そもそもはVWにとって日本メーカーは偉大なる存在であって足向けできる立場じゃないのです。それなのにバイアスのかかった評論家の意見を丸呑みしてVWが世界をリードしていたと思っているのが不思議です。

  そして「VWを追い抜いた」という意見を丸呑みするマツダ・スバル派も愚かです。マツダもスバルも基本戦略はコストダウンにあります。今風の乗り味に改良して誤魔化しつつも環境性能を避けて通れない両メーカーのエンジンはどんどんつまらないものになっています。少なくともゴルフ7を「コストダウン」と嘲ることなんてできないほど、アクセラとインプレッサも「コストダウン」が酷過ぎます。そんな現実を全く見る事なくを「クルマが良くなってる」と無邪気に思い込んでいる「俄マツダファン」や「俄スバリスト」がゴルフ7掲示板で大暴れしているのは、実に痛々しい限りです。とりあえず「最近のマツダ車はいいね!」とか真顔でほざいている人は、マツダのことを何も分ってないと見做していいです。

  ゴルフ7ユーザーは、ハイラインに限らずどのグレードでももっと自信をもって良いと思います。コスパを考慮すればアクセラやインプレッサとは甲乙付け難い部分もありますが、少なくともAクラス、V40、ジュリエッタ、1シリーズを選ぶよりは賢い選択をしています。MC前のレクサスCTを凌ぐほどの静音設計は、ゴルフのキャラを決定付けていますし、その実力はもちろん防音材をケチっているアクセラやインプレッサそして輸入車の各モデルを軽く上回っています。しかも防音材をケチって軽量化に走ったはずのライバルを上回る加速と制動性能をデータ上でも発揮しています。ブレーキングにおいてスポーティなイメージのあるBMW、マツダ、スバル、アルファロメオを上回っているのは立派です。ちなみに三菱ベースのブレーキング性能を持つAクラスがCセグで最も良く止まるモデルだそうですからAクラスオーナーももっと自信を持っていいと思います。

  それでもCセグ各車のオーナー様は、安全性能やら快適性の議論などには興味がないようで、1にも2にも「ブランド力」にばかり関心が向いてしまうようです。ユーザーがこれでは、マツダもスバルも内外装だけを良さげに仕上げた「ハリボテ」のクルマ作りに走ってしまうのも無理ないかもしれません。私がCセグ車全般を好きになれない理由は、設計に宿る哲学みたいなものが感じられないからです。ちょっとオーバーですがフェラーリのようなフィーリングを醸すショートストロークNAのガソリンエンジンに、段数の多めのトルコンATを組み込んだ、由緒正しきグレードを用意することくらいどのメーカーでも朝飯前だと思うのですが、この低いたった2つの条件を満たす現行のCセグモデルは日本で正規販売されている中ではたったの1車種しかありません。

  この貴重なクルマは基本性能だけみれば、完全にオンリーワンな素晴らしいクルマなんですが、これ実は日本で一番売れてないCセグとか言われています。地味なデザインと300万円という強気の価格が災いしているのでしょうが、本気で選ぶならば欲しいCセグ車はこの「フォード・フォーカス」の一択です。載っているのはマツダが作り上げた傑作エンジンで、アクセラでは先代の後期から使われなくなりました。ゴルフ7のオーナー様は掲示板にやってくるうっとおしいアクセラユーザーに対して、「本物のマツダファンならばアクセラじゃなくてフォーカス買うべきだろ!」とキツい一言を浴びせて撃退してほしいなと思います。


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2014年8月21日木曜日

デカくても愛される! マセラティ・ギブリの法則

  「マセラティ・ギブリ」別格の高級感を漂わせるショーファーカーというわけではなく、むしろクラウンアスリートなどよりも断然にプライベート・サルーン的な要素が強いなんとも独特の存在です。それでいて全幅は圧巻の1900mmオーバー!!!最近では大型SUVもかなり普及しているので1900mmもそれほど珍しくなくなっていますが、SUVよりも一般にドライビングポジションが低いセダンでは、このサイズはなかなか受け入れられず、アウディA8やジャガーXJがプレミアムブランドのフラッグシップにしてはいまいち不人気なのも、理由は「1900mm」にありそうです。

  さてマセラティの次世代戦略車として日本でも本体価格800万円台で発売された「ギブリ」は好調に売上を伸ばしています。マセラティのブランド力という見方ももちろん出来ます。しかしいわゆるフェラーリ由来のV8を積んでることがウリだったこれまでのマセラティとはだいぶ意味合いが違うので、マセラティ愛好家からは敬遠されて典型的な失敗作になる可能性もありました。しかし大胆にも上級車種のクワトロポルテよりもさらにワイドにしたサイズがデザイン面では功を奏して、セダンのトータルデザインとして光るものを感じます。

  ブランド本来のステータスを引き継いでなくても、サイズがワイドになり過ぎて多少使いにくくても、デザインさえ突き抜けていれば売れる・・・。「デザインの時代」と言われたりしますが、今も昔もやはり人目を引く秀麗なデザインは評価されていて、他の機能的弱点をある程度は取り繕ってしまうものだったと思います。セダンに限らすあらゆる車種においてデザインに重点をおくならば、どうしてもクラス平均以上の車幅になる傾向が強いようです。ブランドの上級に位置するクルマならばデザインでの敗北は絶対に許されないので、無理を承知でボディサイズは年々拡大されています。しかし少々辛辣な言い方をすれば、「カッコいい」と評判になるか「デカすぎる」と酷評されるかは、紙一重の差と言えます。

  さてレヴォーグがいよいよ発売でますます気合いの入るスバルですが、レガシィからレヴォーグの分岐における過程をいろいろなライターが「とてもわかりやすく」説明しています。1780mmで大きすぎると言われるレガシィ・ツーリングワゴン・・・。マツダの先代アテンザワゴン(1795mm)は特に指摘されることは無かったですし、現行の1840mmに拡大したアテンザワゴンも日本の街並で十分に乗れるサイズです。これでもよっぽど入り組んだ場所にお住まいの人でなければ日常的に困ることはないでしょう。今やゴルフヴォリアントだって1800mmになっているのに「大きすぎる」と文句を言うライターはまず見ません。

  それなのに、なぜレガシィだけがまるでスバルの開発者がアホだと言わんばかりに、「大きすぎる」と連呼されなければならないのか? 確かに現行レガシィはアイサイト導入まで大苦戦でした。日本車が誇る大人気車種だったレガシィの新型がFMC後に販売減になれば、やはり何らかの理由を見つけて総括しなければいけないわけで、まあ体のいい表現が「大きすぎる」だったのかもしれません。デビュー直後から世界経済の雲行きが怪しくなるという不運もありましたし、赤字に転落したスバルもそれまでとは全く別の発想でアイサイトをいち早く導入するなど、大きな変化が見られました。部外者である私がいうのもなんですが、熱心なファンに支えられた「殿様商売」という売る側の問題も多分にあったと思います。

  もちろん現行レガシィ発売の2009年の段階では「大きすぎる」という感想も妥当なものだったと思います。しかしライバル車のFMCが一巡した現在ではレガシィB4もレヴォーグもクラスでは「最小」といっていいサイズになっています。そんな2014年になっても「大きすぎる」を声高に説明し続けるライターは一体どういう了見なんでしょうか。おそらくこのクラスのクルマにそれほど興味がないというのが真相なんだとは思いますが・・・。

  プロライターに納得がいかないので、ユーザーの声を見てみるとやはり「サイズ」に対する言及は多いです。プロライターの受け売りか?と勘ぐるつもりはありませんが、やはりサイズによってレガシィやアテンザの「実用性」が損なわれているという論調には疑問を感じます。スバル、マツダそれぞれのフラッグシップモデルですから、求められるものは「実用性=取り回し」などではなく、高級ブランドのモデルにひけを取らないクオリティによって一定のステータスを確立して、「気持ちよく乗れること」こそが最も重要な「実用性」なのではないかと思うのです。

  これまでDセグで一番貧相に見えたメルセデスCクラスがFMCで再び競争力を取り戻しました。いくら取り回しが良いからといっても、相対的に「ダサく」見られることはDセグでは絶対的なタブーなので、サイズを多少犠牲にしてでもデザインに走ることは正しい選択だと言えます。マツダがさりげなく展開した新型モデル群の成功は、この「実用性」の解釈の上で非常に合理的な設計だったからだと言えます。そしてマセラティ・ギブリもまた、Eセグというカテゴリーにおいて非常に「実用的」な存在といっていいと思います。クラウンと同じくらいに快適な乗り味、そしてクラウンが全幅を気にして窮屈そうなスタイルなのに対して、伸びやかでラグジュアリーな雰囲気を存分に発揮しているという意味で、クラウンよりも優れたコスパを発揮していると思います。今後はスバルにもこのギブリに続くような優れた「実用性」のクルマを期待したいと思います。


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2014年8月10日日曜日

最近の日本車は凄くいいけど、本物の輸入車にはまだまだアドバンテージがあるようだ。

  メルセデスCクラスが発売されましたが、なぜか早くも「失敗作」という声が挙がったりしてます。確かにCクラスとしてコンセプトが大きく変わっているので、期待を裏切られたと感じる人も少なからずいるのでしょう。しかしW205を素直に評価すれば「レクサス」を思わせるマーケティングの上手さを感じるので失敗作と切り捨てるのはちょっと早計な気がします。Cクラスを待っていた人の中には、かつてのトヨタ・アリストのようなスポーツセダンの再来をイメージしていた人もいたかもしれません。しかしトルクを水増ししてスペックだけ揃えた直4ターボで構成された「日本向けW205」は、どう考えてもアリストはおろかマークⅡですらなく、イメージがダブるのはかつての「カリーナ」あたりでしょうか。

  メルセデスだけでなく世界のあらゆるメーカーにとって、今後の戦略で重要なのは「アリスト」ではなく「カリーナ」なのはほぼ間違いないわけですが、Cクラスが突如としてレクサスISやスカイラインとはやや違う方向に走り出したのはちょっと意外でした。レクサスISとスカイラインの「闘い」は日本メーカー特有の激しいつば迫り合いでどちらも消耗していて、どうもあまり生産性が高いとは感じません。ましてやこのクラスが本業ではないメルセデスがムキになって首を突っ込む必要は無いという判断もあるでしょう。トヨタと日産の過熱ぶりはどうやら、最近の日本メーカーのエコカー競争の果ての手詰まり感から来ているようで、1989年が再来したかのような高性能車の開発合戦へと舵を切っています。Cクラスや3シリーズがとても「控えめな」クルマに見えてしまうくらいですから
やはりユーザー不在の過当競争と言えるかもしれません。

  日本車がこのように「アグレッシブ」になっていて、一方でドイツ車が皮肉にも日本車や韓国車に追従しておとなしくなったことで、日独のメーカーの相対的位置関係が入れ替わり、その変化の振り幅がとても大きく感じます。ただしここで厳しい事を言うならば、日独のどちらもそれほど良い方向に進んでいるとは言い難いです。IS350やスカイライン350GTは「力技」でクルマの実力を押し上げてはいますが、それぞれに「経済性(燃費)」と「車重」という致命的な欠陥を抱えています。一方でCクラスや3シリーズは「輸入車」であるという事実以外にはなかなか存在価値を見出せないクルマに成り果てました。とりあえず輸入車に乗っていないと気が済まない人の弱みに上手く付け込んだ「緩い」設計がとても意図的に感じてしまいます。まあクルマの個性を尊重するならばとても良い棲み分けと言えるかもしれないですが・・・。

  ちょっと話が変わりますが、8月10日発売のベストカーで国沢光宏氏が「日本車はなぜまだNAにこだわる?」という妄言記事を書いてました。まず大前提としてVWの1.4Lターボがエンジンとして「感動」に値するとはとうてい思えないですし、メルセデスやBMWの2Lターボをわざわざ指名買いするクルマ好きなんてとりあえずいないはずです。ポルシェやフェラーリがターボになったからといって喜ぶ人なんてまずいないのです。クルマに興味が無い連中がメルセデス、BMW、VWを何となく買っているだけなのに、「ターボがトレンド!」と決めつけたがるベストカーという雑誌そのものがイカレてますし、こんな低俗な自動車雑誌を読んでる人間にはとてもクルマの良さなんてわかるわけないですね・・・。

  この国沢氏のテキスト一つとっても内容はとてもメチャクチャで、ガソリンターボが欧州の主力(いやいやディーゼルのシェアが半数以上ですけど・・・)と言い出したり、アメリカでもターボがメインになった(いやいやゴルフなんてターボ止めてますけど・・・)と言っちゃってます。話題の新型CクラスだってディーゼルやガソリンHV、ディーゼルHVの早期日本導入が強く叫ばれているほどで、現状のガソリンターボに対する満足度は限りなく低いです。それなのにこの人は日本メーカーに対して「なんでNAエンジンばかり作るの?」とわざとらしく疑問を呈する辺りが、「悪徳ライター」か「ガチアホ・ライター」のどっちかなんだなと思ってしまう次第です。

  「カリーナ」だと思えばなんとか受け入れられますが、「アリスト」を望む人にとっては、とりあえず1000万円以下に限定すればFRベースの輸入車の最近のラインナップは本当に酷いと思います。どれも日本メーカーが作ったら「大失敗作」としてフルボッコにされること間違い無しのレベルです。それくらいに「やる気」の無いクルマばかりです。600万円台でBMWの直6ターボに乗れるという「M235i」などはどうしても気になってしまうモデルですが、どうやら細部に煮詰め方が相当に酷いようでFFのスポーツモデル「プジョーRCZ-R」との運動性能の比較でボロクソに言われていました。しかもBMWが強いと言われていたブレーキングが特に酷く、100km/hからの制動距離でRCZ-Rに10m以上の差を付けられて完敗・・・まあエンジンブレーキの特性上FR車は、トラクションに強いFFやRRにはまず勝てないと言われてはいますが、BMW=高性能が完全に過去のものだということを物語っていると思います。

  それでもBMW「アルピナ」や「M」となると、車両価格こそ1000万円を超えてきますが、ベースモデルの「やる気のなさ」がまるでウソのように、良いクルマを作ろうというスピリッツに満ちあふれています。もはやここでは国沢氏が語るような「ターボ論」なんて全く通用しない世界です。日本メーカーではなかなかここまでストイックにクルマを作る環境は与えられていないと思います。トヨタも安易にヤマハにチューニングを頼むことも少なくなりました。ちなみにRCZ-Rの1.6Lターボ(270ps)を作り上げたのはマグナ・シュタイナーというオーストリアのチューナーだそうですが、カーレースが盛んな欧州では「本物のスポーティ」とエンジニアリングが存在していて、多くのクルマ好きはそういう「仕事」に熱狂するようです。日本に入ってくるタイ・南ア・東欧で大量生産されるドイツメーカー車とは似ても似つかない「スペクタクル」なクルマに関しては輸入車の優位性がまだまだあるように思います。

  国沢氏がNAに固執して貧乏臭いと蔑んだマツダやスズキは、粗悪なエンジンに過給器を仕込んでスペックだけ揃えるみたいなカスな仕事はプライドが許さないとして、エンジン内部の改良にさらに邁進しています。直4ガソリンエンジンを比べれば、欧州メーカーのエンジンはマツダやスズキの内製エンジンの足元にも及ばない駄作でしかないです。新型BMWミニのエンジンよりもスイフトの方が断然に気持ちよく回ります。そんなカスみたいな大量生産の輸入車なんか全く魅力はないです・・・国沢さんもいい加減に「提灯」止めて! もし今後、輸入車を買うのならば・・・RCZ-Rのような欧州の一流チューナーの手が入ったものがいいですね。とりあえずポルシェ、ジャガー、アルピナ、AMGといった欧州のクルマ好きが熱狂するようなクルマを選びたいものです。


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2014年8月1日金曜日

ジャガーXEはCクラスをあっさり追い越すらしい・・・

  今までフーガに乗っていた人が定年を機に、例えば同じ日産のノートなどに乗り換えることを「ダウンサイジング」というらしいです。しかしこれまで「至れり尽くせり」だったフーガから、「移動」という基本性能にしかスポットが当てられていないノートに乗り換えるなんて現実にあるのか?なんて思ってしまいます。一度フーガのようなレベルの高いクルマに乗ってしまったら、その後様々な事情で下位のクルマに乗り換えると、ダメな点ばかりが気になってしまうものです。結局は車両価格を負担するモチベーションは「満足度」ですから、たとえノートの新車で170万円だろうともコストパフォーマンスが良いとはまったく感じられないはずです。

  高級セダンからの「ダウンサイジング」乗り換え候補としてスポーツカーを選ぶ人も中にはいるようで、トヨタ86が販売以来好調なのもこれと無関係ではないと言えそうです・・・さすがは「マーケティングの鬼」トヨタ。そんな86/BRZもデビュー当時から内装の質感アップが要望として根強かったようで、6月に行われたばかりのMCでは、かつてスバルの限定モデルBRZ-tSで使われた高級感あるカーボン調のインパネに変更されました。「前期」から「後期」への進化の幅が予想を超えていて、乗り換えも結構あり得るかもしれません・・・さすがトヨタ! このクルマを「ご隠居カー」として敬遠する人もいるようですが、あらゆる高級車にも見劣りしない「楽しい」乗り味が出せる「スポーツカー専用設計」の長所は素直に認めるべきかもしれません。

  VWゴルフやメルセデスA/CLAクラスなども高級セダンからの「ダウンサイジング」需要をそれなりに見込んでいるようですが、こちらはさすがにクルマの基本性能を下げ過ぎな感があります。もちろん輸入車はグレードに依って全然別のクルマというくらいに、仕様が違ったりするのですが、400万円程度で買える範囲のグレードに関しては、基本的にノートと大きな差はないように感じます。確かに日本車の100万円台前半で買えるクルマから乗り換えれば「ステップアップ」感はそれなりにあると思いますが、高級セダンから乗り換えて無難に満足できるクルマではなく、とりあえず騒音が煩わしいので「却下」と言いたくなるレベルです。

  私の主観も多分に含まれていて恐縮ですが、やはり輸入車においても「ダウンサイジング」でクルマ好きなご隠居から好まれるのは「BMW M235i」や「アウディTT」のような一芸に秀でた小型車のようです。たしかにM235iもTTも「プライベート感」だけで突っ走ったようなクルマなので、冷静にあれこれ考えればいろいろと不都合な点もあれこれと噴出します。しかしこれらのクルマの「不都合さ」はキャビンの質量に不釣り合いなエンジンパワーだったりと「余剰」な部分からくるので、これまで乗ってきた高級サルーンにある程度類似する魅力をその「不都合さ」から発信していたりします。

  「M235i」「TT-S」のようにハイオクで10km/Lに届かない「小型スペシャルティカー」なんて完全に時代遅れだ!と多くの人は思うでしょう。単純に考えれば現行のフェアレディZみたいなものですが、Zに対する日本のカーメディアの冷めた目線「どうせアメリカ向け・・・」は、この「M235i」や「TT-S」へはそれほど向けられていませんが、ライターの歯切れの悪さが気になるものも目立ちます。プロライターも素人もほぼ同じような「概念」を持ってこのクルマを見ています「ポルシェみたいなもの」だと。しかしBMWやアウディが仕掛けるプロモーションは本気そのもので、この2台はまだまだこれから世界の中心で輝くと信じて疑っていない様子です。一体いま世界で何が起きているのか?

  メルセデスの新型Cクラス(W205)が「エアサス」装備(C250)で話題になっていますが、どうやら「プレミアムブランド」を中心とした高性能車のトレンドは、かつて日本車の「ゴールデンイヤー」となった1989年の様相を呈してきています。「ルネサンス」ではないですが、ある種の「巻き戻り」が進みつつあるように感じます。輸入車ブランドに限らず、日本メーカーも同じ傾向を見せています。レクサスがGSとISに新型シャシーを持ち込み、スカイラインが標準グレードで350psを捻り出すハイスペックを誇り、トヨタも日産も「意外にやるじゃん・・・」とばかりにブランドイメージを一新しましたし、もはやレクサスをトヨタの「バッジエンジニアリング」という人はいなくなりました。

  1989年が日本のバブルなら、2014年は中国のバブルだ!という冷静な指摘もあるかと思います。世界中のブランドがハイスペック志向へと舵を取り再び中国を目指して名乗りを挙げ始めています。ドイツプレミアムをコピーしたキャデラックに続いて、フォード・マスタングもマルチリンク装備のグローバル"ハイパフォーマンス"モデルとなって中国でも発売されるようになります。プジョーもアルファロメオもやや遅ればせながら、中国市場に突入するハイスペックなミドルサイズセダンを開発中のようです。トヨタはBMWと組んでさらに「スープラ」を復活させる見通しで、マツダも1989年に舞い戻るかのように「RX7」の復活も目論んでいます。

  現在発売されているモデルの中では、「レクサス」「インフィニティ」「メルセデス」のクオリティは、他のプレミアムブランドよりも一段高い所に置かれています。年内に発表され、間髪を入れずに2015年の上旬には発売されるというジャガーの新型Dセグセダン「XE」もこの3ブランドに追従すると宣言しています。BMW3シリーズやアウディA4といったポピュラーなDセグモデルを飛び越えて、「IS/RC」「スカイライン(Q50)」「Cクラス(W205)」という最先端のコモディティを持つモデルと勝負できる、なかなか「バブリー」なミドルセダンになるようです。

  その基本コンセプトは、高級車用の足回り(サス設計)と軽量化ボディを使うなどW205の設計方針を踏襲しているのが解ります。「軽量化」と「足回り」を突き詰めることがこのクラスの基本性能を上げる為には必要不可欠ですし、3シリーズやA4が根本から作り直さないと勝負にならないほどに高い限界性能を「IS」「スカイライン」そして「新型Cクラス」はすでに持っています。「XE」はこの3台と同等以上の設計を持ち込んでいて、さらに「スポーツカーブランド」としての魅力に拘るジャガーは、新たにターボ化される予定の「新型C63AMG」に完全ロックオンしたV8スーパーチャージャー搭載の「XE-R」までを畳み掛けるように投入する予定です。

  「XJ」「XF」「Fタイプ」とジャガーの既存モデルはいずれもライバル車よりも「高性能かつ低価格」を打ち出しています。複数のメディアが報じるところによれば、「Sクラス」「クワトロポルテ」「アウディA6」「BMW5シリーズ」「ポルシェ911」「日産GT-R」といった超一流どころを相手に互角以上の評価をすでに勝ち得ています。資金力やプロダクト自体は大手ほどに万全ではないですが、Dセグセダンの頂点を獲るべく設計された「IS」、そしてそれを短期間でキャッチアップした「スカイライン」「Cクラス」に続く、素晴らしいDセグセダンとして「XE」が登場しておそらくこの3台よりもお値打ちの価格設定になるのではという期待もあります。まだまだ次のクルマは決められないですね。


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 ↓このシリーズにしては技術説明が詳しくて読み応えがありました!

2014年7月24日木曜日

聖地・群馬は BMWミニ 天国だった・・・

  先日は道案内を頼まれて、他人のクルマに同乗して群馬を「視察」してきました。祝日が絡んだ連休ということで家族連れのフリードが・・・と思いきや、最近は大人連れが多いです。基本はドライバーしか楽しめない群馬ドライブに大人4名というのは、なんとも手持ち無沙汰な感じがあります。まあクルマ好きとしては観察に専念できて、高速道路を走る高級車のサスの動きまでじっくり見る事ができました。しかしトヨタ車の後部座席に乗ってると、すぐにクルマ酔いしちゃいますね・・・エアコンフィルターをちゃんと変えてないのかも。

  群馬を走ってみて感じたのが、新型アクセラがいないってことです。V37スカイラインやレヴォーグはまだまだ数が出てないのでなかなか居ないですけど、アクセラは東京ではたくさん見かけるようになりました。江ノ島方面に行くとちょくちょく見かけるんですよね。まだ「慣らし」が終わってないから山岳路は無理なのかも知れません。2代目アクセラといえば箱根や長野ビーナスラインにいくと「集結」しているイメージすらあるのですが、どうやらFMCによる大幅なデザイン変更の結果、「山のクルマ」が「海のクルマ」になってしまったようです。まあ3代目にもスピードアクセラが出ればまた山に戻ってくるでしょうが・・・。

  日本の中でのハッチバックの存在感は少しずつ変わってきていて、今ではアクセラサイズに関しては輸入車を中心に「高級車もどき」なクルマが増えていて、特にハイパワーモデルというわけでもないのにオプション込み総額で400万円なんてこともザラだそうです。アテンザやティアナに乗ってる人から見れば「スモールカーなんて何がいいの?」思うかもしれないですが、そのスモールカーが400万円もすると聞いたら「金銭感覚がオカシイ」と驚いてしまうでしょう。

  アクセラのユーザー層に変化があったかどうかわかりませんが、とりあえず群馬を走る限り2013年に流行したボルボV40・VWゴルフ・メルセデスAクラスの「三大CセグHB」は今回ほとんど見かけませんでした。休日に群馬でクルマ走らせる趣味の人にはあまり人気がないだろうなという気はしていました。たしかに群馬を走るにはどれも少々かったるいスペックです。軽さの分だけゴルフのトレンドラインが良いという意見もありますけど、やはり1200kgを下回る水準までシェイプアップしてあるBセグが「群馬走り」の本命みたいですね。

  このクラスのクルマは、国産車の他にVW、アウディ、プジョー、シトロエン、ルノー、フィアット、フォードが200万円を下回る価格をちらつかせて一生懸命売ってます。国産にもスイフトとデミオの2大スターがいて、質の良い小型エンジンと軽快なハンドリングで世界的にも高い評価を受けています。まだまだプレミアムブランドの本格参入はアウディA1くらいなものなんですが、日本車と輸入車の価格差も小さくなかなかの激戦になっています。その中で名実ともに人気ナンバー1になっているのが、BMWミニです。ほとんどのBセグ車が日本での使い勝手を考慮して5ドアHBを採用しているのに対して、欧州での「走り」のスタイルそのまま日本に持ってきた3ドアHBが、趣味のクルマとしての満足感を高めているようです。

  今現在FMCが進行していて、ボディサイズからエンジンまでことごとく刷新されているのですが、この前まで発売されていたミニも売れるべくして売れるスペックだったと思います。クラス水準からみるとハイパワーで余裕があるBMWの1.6Lターボエンジンを採用していて、しかも車重もライバルと同程度の水準にしっかり抑えつつ、3ドアの恩恵を受けてボディ剛性は頭一つ抜け出していました。確かにベースグレード以外は軽く300万円を超えてしまう車両価格は割高感がありますが、逆に全長4m以下でこのクルマ並みの機動力を発揮できるモデルは、カタログモデルでは「スイフトスポーツ」くらいしか無かったですから、スズキブランドを避けたいユーザーにとっては納得できる選択だったようです。

  長野〜群馬〜栃木を結ぶ「日本ロマンティック街道」という観光道路があるのですが、対向車線を気持ちよさそうに何台もミニが駆け抜けていきましたし、榛名山を中之条町から登る交通量が少ない絶好のヒルクライムルートがあるのですが、そこでも軽快に登っていくミニを何台か目撃しました。・・・これまで輸入ブランドとは、日本メーカーが作らなくなったV8のスペシャルティカーみたいなクルマの為にあると思ってましたが、まさか日本車が最も盤石と思っていた小型車部門で、こんな形で惨敗しているとは思いもよらなかったのでショックでした・・・それにしてもミニはいい走りをしております。

  アテンザ、アクセラ、スカイライン、レヴォーグと「鉄壁」の中型車勢に対して、小型車の陣容は貧弱です。新型デミオが話題になっていますが、なんだかこのクルマもアクセラと同じで「海」へ行ってしまいそうな雰囲気がプンプンします。つくば・日光・赤城・榛名・碓氷・箱根を「ミニ」と「Z4」のBMWコンビにやられてしまわない内に、これらを圧倒できる日本メーカーのBセグホットハッチ&小型スポーツに出て来てもらいたいものです。86&BRZは街中では見るけど、群馬にはほとんどいなかったですね。マツダも「箱根ターンパイク」のネーミングライツを取得する前に、スズキと共同でNA1.8Lの日本車らしいスポーツエンジンでも作ってもらいたいものです。


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2014年7月2日水曜日

メルセデスCクラス が今年の本命ってマジですか?

  今年の日本カーオブザイヤーも輸入車が獲ると言われているみたいですね。選考委員を務めている評論家がすでに「やります!」みたいな雰囲気を漂わせています。しかしこのクルマは本当にゴルフみたいに同クラスの日本車を押し退ける勢いで売れるのか?という素朴な疑問があります。もちろん「メルセデスCクラス」という比較的にお手頃で日本の道路事情に適したサイズでユーザーが多いのは分りますが、この新型(W205)がさらにそのシェアをさらに伸ばせるようには感じない部分もあります。

  いよいよ今月にも日本発売が開始されるそうですが、すでにメディアにリークされているゲレード別のスペック装備などを見ると、最初はレヴォーグと同じように1.6Lと2Lの直4ターボのみの構成になるようで、プレミアムブランドにしては「華」がないように感じます。しかも価格を見るとまたビックリ!でエンジン次第で価格が大きく変わる欧州ブランドの日本価格はまあ仕方ないとしても、そこそこのエンジンのグレードにさらにエアサス装備車を選べば、すぐにレクサスGSが買えちゃうくらいのお会計になってしまいます。スカイライン200GT-tと同じエンジンのグレードは噂によると「644万円」のグレードだけで、しかもエアサスは標準装備になっているのだとか・・・。

  メルセデスの下級グレード車は今後は全てが「パッケージ」商法になっていくようで、「419万円」「467万円」「524万円」「644万円」の4段階で主要装備が区切られています。ちょっと穿った見方をすると、全てが見込み生産の在庫販売になるために、安いグレードを選んで必要な装備だけを「メーカーオプション」で追加するということが原則できなくなっています。安全装備も例外ではなく、上のグレードに行くほどにセンサーが追加されより安全な運転支援が盛り込まれていきます。ちょっと前まで「日本メーカーは安全装備を全車標準にしないからけしからん!」と徳大寺さんなんかがキレまくってましたが、4段階で完全に分断されて段階的に盛り込まれているメルセデスの「安全装備」について何か一言頂きたいものです・・・。

  しかしもっと残念なことに、「安全装備」の有無に目がいく前に、現状ではこのクルマの良さが全くと言っていいほど伝わってきません。「Sクラスと同等の足回り」みたいな宣伝文句が飛び交っていますが、先代までのC/Eクラスが車格にしてはやや低レベルなサスペンション形式を採用していただけで、やっとスカイラインやレクサスISと肩を並べられるくらいまで高性能なものへと品質を上げてきたに過ぎません(もちろんアウディやBMWに対して優位にはなりましたが)。一時的ですがEクラスよりも良い足回りを使うので、乗り味が良くなってお買い得!という説明が早くも広まっていますが、とりあえずラウンチ段階の4グレードに関してはどれも首を傾げたくなります。

  先日追加されたスカイライン200GT-tは、350GTから幾つかの装備を簡略化した上で383万4千円でした。メルセデスから調達したエンジンを使うためか、350GTよりも割高感があったりします。Cクラスの当面の最上級グレードはこの200GT-tと同じエンジンを積んでいて「644万円」とさらに割高感があります。もちろん剛性重視で車重はクラス随一の重さを誇るスカイラインと違って、公表こそされていませんがCクラスはかなりの軽量化に踏み込んだと言われているので、パワー・トルク感は当然に違うでしょうし、直4ターボを搭載することを視野に入れて設計されているCクラスのシャシーの方がエンジンからのNVHへの対応力も高そうです。そして何より「644万円」にはエアサスが付いてきますので、200GT-tと同じレベルとクルマとは到底言えないですが・・・それでも高い気が。

  メルセデスとしてはコストがかかっていないモデルを先行発売で売り払ったあとで、その後の売れ行きを見てディーゼルやHVを追加してくる「後だしジャンケン」戦法のようです。まあおそらくどちらも一般ユーザーを無意味に後ずさりさせる600万円コースなのでしょう。「どうせ日本人なんてドライブを楽しまないから直4ターボで十分」と完全にユーザー像が分析されてしまっているようです。週末の買い物以外は家の前の「オブジェ」的な用途しか見出していない・・・ナメられてますね。

  すでにディーゼルとHVでそれぞれ3シリーズ、レクサスIS、スカイラインがかなりの実績を挙げている中で、Cクラスの「環境性能が高い」ユニットがどれほどの「バリュー感」を見せてくれるかわかりませんが、このクラスの燃費の常識を変えつつあるレクサスIS300hやスカイライン350GTの功績を差し置いて、「Cクラス」が素晴らしいという評論家の頭の中ってどうなってんでしょうか? Cクラスが悪いクルマとは思いませんが、ゴルフほどに日本COTY受賞に相応しいとは思えないです。ここまで急激な変化を迎えていろいろなヒット車が飛び出している中で、Cクラスが選ばれるなんて・・・日本メーカーを腐らせるのがこの賞の目的なんですか?って感じですね。選考委員の今後の言動には注意を払ってみたいとおもいます。


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2014年6月26日木曜日

新型ジープ・チェロキー は日本メーカーよりも心得てる!?

  「ジープ」ブランドと聞いただけで、とりあえず購入の選択肢には絶対に入らないと考える人も多いでしょう。それくらいに「アクの強い」ブランドからわざわざ、フィアット版の「マツダCX5」のようなクルマを日本で発売してきました。今更ですが、CX5はというと、マツダが新たに開発したアクセラやアテンザで使われるシャシーを使って作ったSUVで、抜群の高速巡航能力を武器に世界中で成功を収めつつあります。

  これだけ派手にアメリカでもCX5がヒットしていて、アメリカ誌の評価でも3万ドル以下で最高のSUVといった評価を受けているのですから、SUVの本家とも言える「ジープ」も黙っていられない!といったところでしょうが、やはり「イメージ」ってもんがあるでしょ!と思わずツッコミを入れたくなります。見た目は最近の日本車SUVの影響を受けている!どころか、その潮流のど真ん中に位置するようなデザインで、ほぼCX5かハリアーな出で立ちです。あの箱形のキャビンは一体どこへ行ったのか? ヘッドライトとグリルが主張しない「ジープ」なんて・・・。

  子供の頃にはSUVのことをジープと呼んでいたくらいに、日本のクルマ文化にも密接に関わっていて、三菱、スズキ、スバル、日産がそれぞれに手掛けるオフロード車の「イディア」的なブランドが、まさか傍流の日本や欧州で流行りの「なんちゃってSUV」のデザインを完コピしてくるとは思いも寄りませんでした。それにしても車体の隅々から香ってくる「日本車臭」が強烈で、カーグラフィックではフロントデザインは日産ジュークをパクってると書いてありました(ぱっと見ではジュークには見えませんが)。

  フィアット=クライスラーになってから開発が始まったクルマが、続々と登場してきています。個々に見てみるとなかなかの「ミクスチャー」ぶりを発揮していて、この手の多国籍な協業関係で生まれがちな「無国籍」とはちょっと違う味を感じます。この新型ジープ・チェロキーも、クラス屈指と言われるアルファロメオ・ジュリエッタの高性能シャシーを使って作られています。優秀なCセグシャシーから大ヒットSUVを作るという手法は、ホンダ(シビック→CR-V)、スバル(インプレッサ→フォレスター)、マツダ(アクセラ→CX5)、フォード(フォーカス→クーガ/エスケープ)と米国市場で躍進する一般ブランドでは常套手段になっていて、この流れに乗り遅れたことを自ら告白したVWは開発を急いでいるようです。

  シビックやフォーカスに十分に対抗できるジュリエッタのシャシーは、早くもクライスラー系の複数のブランドで採用されていて、ダッジ・ダートとクライスラー200の2台のC/Dセグセダンが発表/発売されています。どちらも日本には未導入ですが、現行のアメリカ車の中で日本市場で最もウケそうなのがこの「ダート」と「200」なんじゃないかと思います。ジュリエッタよりも一回り大きいBMW3シリーズサイズのセダンになっています。

  さて従来のジープファンからは、敬遠されてしまいそうな新型ジープ・チェロキーですが、果たしてハリアーやヴェゼルに興味津々の日本のユーザーのアンテナに引っ掛かるかどうかがポイントになりそうです。フィアット製の2.4L直4NAとクライスラー製の3.2LV6NAの2段グレードのエンジンは、アルファード/ヴェルファイアに飽きた層がそのままスライドしそうな設定ですし、価格もほぼ同じ水準になっています。トヨタの高級ミニバンの顧客を惹き付けるだけの内装装備、とくにインパネの造形はフィアットの得意とするところで、レクサスに肩を並べる水準と話題の新型ハリアーの内装にも全く負けていません。

  ジープから連想される従来の大味な乗り味も見事に改められていて、車高が高く変速ショックによって起こるピッチングに弱いとされるSUVの構造を補うべく、ZFの協力でクライスラーが開発した「9速AT」が使われています。これは・・・アイシンAWが作りたがっている「9速ミッション」をトヨタが「需要がない!」と押しとどめているうちに、他に先を越されてしまいました。たしかにトヨタ(レクサス)のNVHは世界最高水準ではありますが、それに必死で追いすがろうとするBMWは日本向けATを全て「8速」にしています。それに対してレクサスRXの「6速AT」そして新型ハリアーの「7速CVT」は、作り込みという点において遅れをとっていると言わざるを得ません。さてエンジンのスペックを考えると価格面でもハリアーと同等に抑えられているジープ・チェロキーが日本でどれだけ売れるか?なかなか見ものですね。

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2014年6月21日土曜日

直6のメルセデス と EVのBMW という従来のキャラ無視の展開・・・

  欧州車=ダウンサイジングターボという「先入観」が日本の自動車評論家の頭の中にはあるようですが、それはあくまで「アジア市場向けのモデル」での話であって、欧州ではディーゼルが約半分ですからガソリンターボの割合なんてせいぜい30%程度でしかないです。中国と日本のユーザーはやたらとターボを喜ぶので、日本のVWなどほぼ全モデルがガソリンターボですけど、アメリカのゴルフは「GTI」と「R」以外はNAですし。

  そもそも欧州ブランド自体が「ガソリンターボ」というキャラ設定を嫌っている節があるように見受けられます。VWがゴルフⅦを発売した直後くらいから、「これからはPHVの時代!」と宣言し始め、まだまだバッテリーが高くて、容量が低いですけどあと5年もすれば「価格は1/8になって容量は8倍」みたいなことを付け加えて、暗にユーザーに向けて「現行のトヨタやホンダのHVを買い急ぐ事はないですよ!」とでも言いたげなんですよね。

  いままでは散々に「HVに興味は無い(将来はない)!」といった態度をとりつづけていたのに、なかなかの豹変ぶりにビックリです。バッテリーの価格の話もごもっともですけど、この話には裏があるみたいで、要するにトヨタとホンダが特許で雁字搦めにしていた技術がフリーになるのを待つ「遠謀」というのが真相のようです。VWグループだとこれまではアウディA6とポルシェパナメーラといった高級車にしか設定されないのは、それくらい利幅が大きいクルマじゃないと権利金が嵩んでしまって利益が出せないという「苦しい」台所事情があったようです。もっとも燃費の悪い高級車の方がHVにした時の省エネ効果は抜群に高いので、理にかなっているという見方もできます。

  HV技術はあたかもトヨタやホンダが最先端で争っているというイメージがありますが、エンジンの出力とモーターの出力を合成して走らせれば良いだけで、それこそEVなんて操業間もないテスラや中国メーカーでも比較的に簡単に作れてしまうことを考えると、ネックなのは特許ということになります。それらが一斉に無効になったら、世界中のメーカーが一斉にほぼ全てのモデルにHVを設定し出すのではないかという気がします。

  しかしそんな「よーいドン」を待っていては、先進イメージが台無しになると考えるBMWはさすがというべきか、先にEVで実績を作ってしまえ!とばかりにもの凄いプロモーションをかけて「i3」を拡販してきました。日本のクルマ雑誌は「BMWのEVだけに、走りも超一級品!」みたいな調子の良いことを書いていたりと相変わらずに理解力が低すぎることを露呈してます。こういうクルマこそ、頭のよく回る評論家に徹底的に掘り下げて分析してもらいたいものですが、出て来るのは売れっ子で「新しいモノ好き」「セルフイメージ番長」の河口まなぶ氏や竹岡圭氏といった面々。

  「BMWが考えるサスティナビリティ」というのがなかなかツッコミどころが満載で、天然素材や廃材を探してきて使うのは結構ですが、そもそも1台のクルマを日本車みたいに20年でも走るように設計するのが本物の「サスティナビリティ」ってやつじゃないですか?そんなに「アピール」したいなら、すぐに摩耗してしまうブレーキパッドの素材から見直した方がいいんじゃ?なんてちょっと意地が悪い意見が浮かんでしまいます。BMWは「走り」のメーカーでいいんじゃないですか?もちろんこの「i3」に罪は無いですが、ブランド全体で考えれば、もしシフトレバーやサイドブレーキが無くなったら、BMWなんて魅力半減ですよ。まだ乗ったことないですけど、アンダーステアが日本の小型車並みに酷いという評判も・・・。もちろん「アンダー傾向」自体は安全性を担保する大事な要素ですが、「BMWらしい走り!」とは相容れない気が・・・。

  そしてBMWのライバルであるメルセデスも、「イメチェン」に勤しんでいます。去年発売されたSクラスと今年発売するCクラスでいよいよ、ドイツ流の「質実剛健」な内装をキャンセルして、まるでマセラティか?レクサスか?というような洒脱な内装へと転換しました。やや高齢者セレブ・ユーザー向けだった「ショーファーカー」としてのメルセデスSクラスでしたが、新興国の若手実業家にも愛される「セクシー・ショーファー」へと、完全に方向性を変えているのが一目瞭然です。はっきり言って「チャラい」!固めの黒レザーが基本だったのに、気がつけばふかふかの「パールホワイト」で、バックレストには女の子が使ってそうな形の枕が・・・。

  欧州車大好き!福野礼一郎氏も唖然としたようで、「気持ちいいから、まあいいか・・・」と見事に含蓄のある表現をされてましたね。サイドテーブルのグラグラ加減が完成度を根底から破壊する爆弾で、「こんなの付けるな!」といった欧州の立て付けクオリティ、日本の国鉄時代の新幹線を思い出すとか書いてあったっけ。やっぱこの人は面白い。Sクラスは「自走不能」な巨漢セレブの為のクルマに成り下がったため、次期Eクラスは一気にクオリティを上げて、全メルセデスの「オーナードライバー」が憧れる、プライベートセダンを目指すようです。これまでメルセデスが冷遇したため、BMWやアウディへと流出していったクルマ好きを再び味方につけて「メルセデス神話」を復活させるのが狙いみたいです。

  レクサスにも負けない前後マルチリンクサス(もちろんエアサスあり)に、圧巻は直列6気筒の新開発エンジン。環境性能ばかりに気を取られて、V6が直4よりも噴けが悪くて、完全に行き詰まってしまった中で、HVの洗練度でリードするレクサスに勝つためには、直6を復活させるしかない!という判断のようです。しかしいきなりここまで極端なイメチェンをされたら、従来モデルのユーザーは立場が無くなってしまいますよね・・・。メルセデスにしてみれば、現行のEクラスは「ひと声100万!」の大判ぶるまいをしているのだから文句は言わせない!といったところかもしれませんが・・・。


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2014年6月1日日曜日

BMW3シリーズ・グランツゥーリスモ がいまのところは正解?

  日本が誇る伝統のセダン・スカイラインがFMCにより車体が少し大きくなりました。日本で使いにくいというほどではないのですが、早くも「日本無視」といった批判が巻き起こるなど、人気モデルにかかるプレッシャーの大きさを改めて感じます。さらにトヨタのようなベースグレード向けの熟成された「直4HV」を持たない日産は、仕方なしに提携先のメルセデスから2Lターボの供給を受けたところ、ドイツ車(C、3、A4)では当たり前に使われていて表立って批判されることがなかったはずが、スカイラインが採用すると一斉にメディアから「日産は終わった」発言が・・・。なんだかまるで「いじめ」みたいな構造が見ていて痛々しいです。

  スポーツカー以外のFR車が2Lターボを使うことに対しては、もちろん反対なんですが、日産だって「お金を稼ぎたい!」わけですから、その気持ちは解らなくはないです。日産からしてみれば、320iセダンと同じ金額で、燃費も出力も完全に上回ったスカイラインHVを出して、さらに300万円台という「お買い得」なターボモデルも出した訳ですから、喜ばれることはあっても批判されることはないだろうと考えていたはずです。実際このクラスのクルマを考えていた人々からすれば「日産万歳!」と拍手喝采しかないほどに素晴らしいと思うのですが・・・。

  サイズに関しても新型スカイラインが最終的に下した判断は、批判どころかむしろ「理想的な水準」にあると思います。いまや「スモールカー」(Cセグ以下)のゴルフは、今では車幅1800mmに達している上にワゴンボディならば、全長を4600mmを超えるものもあります。ここまで下のクラスが大きくなると、3シリーズやCクラスのセダン/ワゴンは完全に「飲み込まれて」しまいます。なぜ200万円台の優秀な「スモールカー」があるのに、わざわざ500万円もする上に、狭く苦しい車内レイアウトのFR車(3やC)しかもを選ぶのは、なかなか「エキセントリック」な選択と言えます。乗り心地や静音性を比べても、基本的にはFFが設計上有利ですし、最近の「スモールカー」は特にレベルが高いので、モデルによってはCや3を完全に「下剋上」してしまっていると言ってもくらいです。

  そういう現実を突きつけられたときに、「BMWは好きだ」「3シリーズの手頃感もいい」といった購入に前向きなユーザーは、BMWに対して新型スカイラインのような収まりの良い新型モデルを無意識の内に要求してしまいます。まあ端的に言うと、500万円以上も払うのだから、「ちゃんとしてくれ!」ということです。まずは「最低限の所有する喜び」として、クルマの存在感(オーラ)を持つ事でしょうか。ゴルフヴァリアントよりも200万円高い、あるいはカローラフィールダーよりも300万円高いだけの「付加価値」が3シリーツ・ツーリング(ワゴン)にあるのか? というのが見えてきません。もちろんゴルフもフィールダーもかなりコスパに優れたクルマであることは間違いないですが・・・。

  BMW3シリーズ・セダン/ワゴンの最大の弱点は、まったく高級感が伴わない貧相なエクステリアです。まだ周囲も貧乏くさいスモールカーだらけだった時代には、いくらでも虚勢を張れたかもしれないですが、高級車がセダンの専売特許ではなくなり、ミニバンやSUVが代わって高級車として認知されるようになりました。ジューク、ヴェゼル、キャプチャーといった小型SUVの恰幅の良さと比べると、旧態依然なレクサスISやマークXってこんなにちっぽけだったっけ?と不思議な気分にさせられます。

  スカイラインやティアナ、アテンザ、そしてレガシィもサイズが大きくなる予定です。やはりブランドの顔となる「モデル」が、街中において「その他多数」の中で埋もれてしまうのはブランドとして大問題だ!というまともな危機意識があるからこそ、検討に検討を重ねてサイズアップしているのであって、訳の解らないジャーナリストが「日本無視」と騒ぎ立てる必要なんてまったく無いように思います。

  以前、島下泰久氏が2013年版の「間違いだらけのクルマ選び」でレクサスGSは「ベストサイズ」として最高レブベルの評価を与える一方で、発売直後の新型アテンザをGSと同じにも関わらず「大き過ぎる」と批判し、GSが「9」アテンザが「7」という評価を下していました。この不手際を当時ブログでボロクソに叩きました。そして2014年版を見るとお分かりですが、アテンザへの偏見的評価はなにもなかったかのように消え去り、GS「9」アテンザ「9」とこのシリーズでは異例とも言える「得点の書き直し」が行われました。

  この業界を代表するシリーズで1度出された評価が大きく改められたという「事件」は、中型車のサイズにおける「パラダイムの転換」があった!と解釈できます。少なくとも島下泰久氏という自動車評論界の「プリンス」の脳内では全てが変わったはずです。アテンザやアコード、スカイライン、ティアナが「大き過ぎる」のではなく、3シリーズやCクラス、ISが「小さ過ぎる」のだと・・・。そして新たな事実として、3シリーズはセダンやワゴンは小さいですけど、「グランツーリズモ」という5ドアハッチバックのモデルは「大きい」に属します。

  BMWはすでに「パラダイム転換」が起こることを読んでいたわけです。ということで、BMWを手頃な価格でラグジュアリーに乗りたいならば、「3シリーズ・グランツーリズモ」という選択が「現状では」ベストなようです。すでにBMWは第2弾を用意していて、それは「4シリーズグランクーペ」で、さらに「ワイド」&ローが強調され満足できるものになりそうです。この2台が「3シリーズ・グループ」で今後大きな意味を持っていくんじゃないかと思います。

  
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2014年5月23日金曜日

ルノー は日産のお荷物ではない!

  フランス資本が入っていることもあってか、日産車は欧州で次々と大ヒット車を生むようになりました。日本では日産の大ヒット車と言われてもあまりピンとこないので、なかなかイメージが湧かないですけども。親会社のルノーとの営業上の兼ね合いもあり、展開できる車種が限られている中でも、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアなど主要市場で次々とトヨタを超える販売台数を記録している。さすがに参入してまだ日が浅いインフィニティはほぼ無視された状態だけれども、高給ブランドの多くが本拠を構える欧州ではレクサスもほとんど売れていないので、非欧州のプレミアムブランドが受け入れられるには相当な時間がかかるでしょう。ちなみにその中でトップを伺う勢いで伸びているのはテスラです!

  欧州での日産ブランドはコンパクト・SUV・1BOXが主体で、ルノーと競合するセダン/ワゴンは一切ありません。Cセグも最近までは無かったのですが、さすがにお許しが出たようで、なんとアルメーラを改めて「パルサー」という名称で最近発売されました。1.6Lターボで190psというBMW120i(1.6Lターボ,170ps)やヒュンダイヴォロスター(1.6Lターボ, 186ps)に対抗意識メラメラの上位グレードが設定されていて、とりあえずエンジン出力はクラストップが「指定席」を自認する日産らしいです。デザインは案外でしたが・・・。

  そんな日産を従えてから息を吹き返してきたルノーも欧州でその存在感を高めつつあります。昨年からクリオ(ルーテシア)とキャプチャーが立て続けに大ヒットを記録し、日本でもブランドの販売を倍以上に押し上げる活躍をみせているのですが、この2台以外のモデルもそれぞれに個性と性能を誇り、ルノー・ジャポンは今や鉄壁の少数精鋭ブランドに変わりつつあります。ブランドの「顔」といった立場のCセグ・メガーヌは、私の住んでる東京都の片田舎でもなかなかブログが面白いルノーのディーラーがありまして、その影響もあってか家の前を駆け抜けるメガーヌを時々見かけます。

  メガーヌと言うと2Lターボ・265psでしばしば「FF最速」と言われるコーナーリング性能を併せ持つ「メガーヌ・ルノースポール」というグレードが浮かびますが、このクルマはベース車でもその洒脱なデザインが目を引く好デザインで、日独伊の高級車ぶって「自己矛盾」をきたしたCセグとは違った魅力を発揮しています。2LのNAで276万円ですから、値引き次第ではマツダ・アクセラの2Lとあまり変わらない水準ですし、ターボのメルセデスやボルボ、VWよりも断然に楽しめます。

  ルノーにはほかにも2車種がラインナップされていて、その内の1台が「カングー」というオシャレな小型2BOXが売れ続けています。現在の日本の普通車市場では、若いファミリー層の圧倒的支持を受けて、唯一販売が右肩上がりという小型2BOXの中で、フリードやポルテでは満足できない人々に好まれているようです。価格もかなりお手軽で売れ筋の日本車と大きくは変わりません。ただし車幅は5ナンバー枠からは大きくはみ出した1830mmですが・・・。

  もう1台は「コレオス」というSUVで、日本車でいうとトヨタ・ハリアーのような高級志向の中型SUVです。日産のエクストレイルよりもワンランク上の2.5LのNA(170ps)を積んで、さらに日産の「4WD技術」と「ボディ設計」を持ち込んでいて、フランス車の範疇に入らないような中身の濃いクルマになっています。まさかルノーのSUVがユーロNCAPの評価でBMW(X3)を完全に上回る結果を出しているなんて誰も想像していないと思いますが事実です。日産のキャッシュカイ(日本名デュアリス)が欧州で大ヒットしたのもユーロNCAPでの好成績が要因だったそうですが、その技術を使っているのだから当然と言えば当然の結果ですね。

  エクストレイルの高性能版で、さらに内外装を高級化したクルマとはいえ本体価格385万円はちょっと高い印象もあります。ただルノーの新デザインに適合したフェイスリフトも行われていて、SUVのデザインとしてはメルセデス・アウディ・BMWよりも優れているので、性能面も合わせるとX3やQ5を買うくらいならルノーコレオスがオススメと言えるかもしれません。エクストレイルも大幅にリニューアルされて、完全にコレオスを弟分と言えるコンセプトになり、内装もコレオスに準じた高品質なものへと変わりました。こちらは2L(NA)のAWDモデルで233万円ですから、SUV全体でみたらエクストレイルがベストバイといえるかもしれません。


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 ↓ルノー=日産のSUVはどれもレベルが高い!

2014年4月18日金曜日

ボルボ S60/XC60 T5搭載の新型エンジン

  北欧ブランドの「雄」ボルボは、新興国マネーの流入により再びグローバルでの展開を意図した意欲的な開発を行っている様子は素直に嬉しい限りです。日本のファンの間ではこの新生ボルボの今後を危ぶむ声も聞こえましたが、やはりクルマを愛する気持ちは世界共通というべきかボルボの魅力が損なわれることなく、経営自体も軌道に乗りつつあるようです。

  当初から開発資源が極めて限られているという状況から、1.6Lターボに一本化するPSAのような合理化路線が予想されていましたが、そんなナメた見方を一蹴するかのように、ここに来て新開発の2Lターボ「Drive-E」を登場させました。主力セダンのS60は日本では1.6L直4ターボの「T4」と3.0L直6ターボの「T6」が導入されていましたが、欧州では展開されている2L直4ターボの「T5」が輸入されませんでした。これにはおそらく「大人の事情」があるのでしょう。

  従来の「T5」で使われていた2L直4ターボは、ボア×ストロークが「87.5×83.1」の希少なショートストローク・・・これはまさしくマツダの「MZRエンジン」で現行ロードスターに積まれているものと同じです。つまりマツダとのライセンスの関係で日本に導入できなかったのでは無いかと想像できます。そしてXC60T5もこの「マツダエンジン」だったのですがはSUVならアテンザ(GH系2L)と被らないからOKだったのか? それにしても日本のライターはXC60T5の従来のエンジンに言及するときも決して「マツダ」とは言いません(これも大人の事情か?)。

  新開発された「T5」用エンジンはボア×ストロークが「82.0×93.1」とロングストローク化されました。最近の欧州エンジンのトレンドなのでこれは予想の範囲内。現在使われているBMWやメルセデスとほぼ同じサイズになっています。ロングストローク化の効果は一般には低回転トルクを増やす効果がありますが、ストロークが長くなることで回転数の上限が抑えられてしまうという難点もあります。そして欧州メーカーは近年では2L以下に関しては「ロング」で、3L以上に関しては「ショート」を採用するという仕分けがされています。

  BMWやメルセデスを見ると「ただ走るだけ」のモデルは「ロング」への切り替えが進み、一方で「スポーティな走り」を追求するモデルには積極的に「ショート」を使っています。この両極端の特性を使ってグレードの味わいを徹底的に差別化しています。BMWだったら1.6L/2Lはロングで、3Lはショート。メルセデスなら1.6L/2Lはロングで、3.5Lはショートといった具合です。そしてボルボの場合は・・・この新型の2Lがロング、そして3L直6も全く同じボアストロークなのでロングになります。官能的需要がまだまだ高いドイツプレミアムに対して、そういう需要が計算できないボルボの実用性一本槍の設定。これが自動車メーカーに突きつけられている現実なのだと思います。

  マツダやフォードの本拠地で商売せざるを得ない新生ボルボにとって、エンジンのライセンスの制約でフルラインナップの投入ができなかったわけですが、やっと待望の自社ブランドエンジンを手にしました。フォード「エコブースト」、マツダ「スカイアクティブ」と同様にボルボ「Drive-E」と銘打った"セルフブランディング"の新型エンジンはトヨタ系の部品メーカー「デンソー」の全面バックアップを受けて、環境性能を重視した出来映えなのだとか。

  トヨタとの接近により、今後はトヨタ陣営の尖兵として、メルセデス=日産陣営に対抗する勢力として日本や北米で勢力を伸ばすかもしれません。特に2Lターボに新技術を入れて怪気炎を挙げるメルセデスに対し、トヨタが牽制の意味を込めてボルボの新型エンジン開発を裏で支援してそうな気配も・・・。レクサス本隊にスポーティなBMWとスバル、そして環境&安全志向でジェントルなボルボを配するという布陣。新型Cクラスと新型スカイラインの2枚看板を完全包囲して勢いを封じることができるのか? ボルボの今後はまだまだいろいろな展開がありそうですね。

  
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2014年4月11日金曜日

プジョー「エグザルト」 "クーペ3兄弟"を引き継ぐ超絶コンセプトカー発表

  プジョーには「クーペ407」という悲しい星のもとに生まれたモデルがありました。このクルマに限らず2000年代の後半に登場した「ちょっと贅沢」なモデルは大体同じような運命を辿ったようですけど・・・。「セダン冬に時代」とか言われた中で自動車メーカーがアイディアを搾り出して、中には優れたデザインのものも含まれていました。その中でもトップクラスに輝いていたのが、この「クーペ407」だった!と断言できます。

  あまりクルマに興味を持てなかった30歳手前くらいの私を無理矢理クルマの世界に引っぱり込んだのがこのクルマでしたから。当時話題になっていたハイブリッドカーは2台目プリウスを筆頭にどのモデルもとても酷いリアデザインをしていました。その一方でこの「クーペ407」は完全にリアで主張するデザイン!これには頭をガツンとやられた気分でしたね「カッコイイ!」。それから夢中になって調べ、横浜の方にプジョー車を専門に扱う中古ショップがあることを知り真剣に購入を検討しました。

  やがて日本車の中にこのクルマのデザインの影響を強く受けていると思われるものを発見しました。しかもどちらも日本車を代表するスポーツセダン(クーペ)でした。やがて「プジョー・クーペ407」「日産CV36スカイラインクーペ」「マツダGHアテンザセダン」の"クーペ3兄弟"(アテンザは4ドアクーペ調なので)に購入候補を絞り込みました。ここから先の話は何度も別のブログでしているので割愛しますが、やはり今でもこの3台は私の中では別格の輝きを持っています。当時はリアデザインがお粗末なB◯W3(E90,F30)やメ◯セ◯スC(W214)がイモっぽく見えて仕方ありませんでした・・・今も同じ考えですけど(失礼しました)。

  そりゃもちろん「BMW6(E63が至高)」や「マセラティグラントゥーリズモ」のリアが良いのはよく分ってますし、もちろん憧れます。しかし"クーペ3兄弟"は300~400万円のクルマで見事にこの"至高の2台"に匹敵する、あの「時間が止まった」ような「フワぁ」としたリアデザインを実現しています。この"官能の極致"のような世界観の前では、レ◯サスなんてブサイク丸出しの「勘違いブランド」でしかなかったです。今は少しはまともになりましたけど(上から目線でごめんなさい)。

  その後の"クーペ3兄弟"ですが、「クーペ407」がPSAの経営危機で2011年頃に姿を消し、一応リアは後継の508セダンに受け継がれました。「GHアテンザ」もマツダの経営改革の中で早めにFMCとなり、残念ながらリアは新型(GJ)ではレ◯サスそっくりの不粋なものに変わりました。そして最後まで生き延びた「CV36スカクー」も今年FMCを迎えて消滅します。後継クーペのデザインはまだ公開されていませんが、日産によると相当にド派手なものになるようです。

  さてそんな「終焉の時」を迎えつつある"クーペ3兄弟"ですが、いよいよ元々の首謀者であるプジョーが、新たなコンセプトに基づいた、あらゆる意味で「ぶっとんでいる」クルマを発表しました。実は2月頃にカーメディアを騒がせた「プジョー408GT」いう4ドアクーペも発売を控えているようですが、こちらにはデザイン面で正直言ってがっかりさせられました。メルセデスの4ドアクーペ(CLS, CLA)のボディライン、つまりこの世で一番センスが無い3BOXカーのスタイルを踏襲するデザインは「酷い」の一言。ダサさ全開のあのリアは絶対にオカシイ!

  その一方で昨日4月10日に公開された新しい4ドアクーペ「エグザルト」には、508セダンから引き継いだ"クーペ3兄弟"調のリアデザインが甦っていました!やはりプジョーはクオリティカー市場を諦めていなかった!中国向けの安価なターボエンジンを配した「408GT」はメルセデスCLAを完全にベンチマークしていて、デザインもほぼコピー(この方法が中国では一番手っ取り早く売れるらしい)。一方で欧州(日本も?)向けの「エグザルト」は何とハイブリッド!そしてデザインもプジョー独自の「魂」の籠った力作!

  この「エグザルト」は、10年ほど前に「クーペ407」がライバル車を完全に置き去りにしたのと同じくらいの強烈なインパクトがあります。これは再び何かが始まる予感が・・・!いやもう何もかもが動き出しているのかも知れません。日産の予告どおりに「CV37スカイラインクーペ」がアバンギャドなデザインが発表され、マツダがサプライズで「SHINARI」そのままの「アテンザクーペ」を出すなんてことが起こるのか?


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「プジョー・エグザルトの動画」

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2014年3月26日水曜日

2014年もメルセデス旋風が日本を吹き荒れる?

  2014年はどうやら消費税増税の影響で新車販売が前年比で15%も減る見通しだそうです。ガソリンは消費税増税分にちゃっかりと「温暖化対策税」まで上乗せで値上げになって、高速道路も割引が大幅に減り、新たにクルマを持ちたいという気分にもなりにくいです。現状では日本の約90%は「火力発電」なのだから「温暖化対策」を謳うなら電気を使う「行為」にも平等に課税するべきだと思うのですが・・・。

  それはさておき、今や税が安いからクルマが売れるという時代でもなく、多くの個人ユーザーは満足できるクルマが出てくれさえすれば、喜んで買うという人もまだまだ多いと思います。15%と聞くと大きな数字に感じますが、大きくマイナスになるのはおそらく商用車需要であって、もしかしたら打撃を受ける国内ブランドを尻目に、輸入車ブランドはさらに伸びるかもしれません。

  昨年(2013年)に大きく躍進したのが名門メルセデスです。「マツダやスバルは知らなくてもベンツなら知っている」それがバブル期以降の日本なわけですが、そんなメルセデスも数年前からフェードアウト気味でした。それを大きく変えたのが新型Aクラスで、これがびっくりするぐらいに安い!メルセデスということを考えると、ミラ・イース(74万円)やアルト(80万円)くらいのインパクトがあります。しかも新型Aクラスはファーストカーとして所有してもまったく可笑しくないレベルです。

  しかしどうやらメルセデスは新型のAクラスやCLAクラスの塩梅を見に来た一見さんに、CクラスやEクラスを「超絶値引き」で売りまくったらしいです。その結果として2013年の大幅躍進につながった模様です。Aクラスにあれこれオプションをごっそり付ければあっと言う間に400万円オーバー。それでもレクサスCTよりもお買い得!さらに「Aクラスに400万円か・・・」と躊躇する客には、「実は・・・」と特別オファーが!

  さて今年のメルセデスの戦略は・・・。点検に訪れる去年買ったばかりのユーザーに、これ見よがしに新型Cクラスを見せる!どうやら乗り心地も抜群の様子だし・・・、内装はわざわざ先行して見せるほどの気合が入っているので、何も言わずに次々に買い換えが発生しそうな予感が。ここですかさず悪魔のささやき!「Aクラスは2年後だと相当に下取りが苦しくなります・・・」みたいな。そんなこと言われなくても、同じプレミアムHBのBMW116iがまだまだ新車保証が付いて3万キロ未満なのに100万円を切る価格で中古車屋にならんでいるくらいですから・・・。まともな人ならAクラスが同じ運命を辿ることも想定済み。

  そんなこんなでCクラスの底辺グレード「C180」を買わせる。しかしこれがA180と同じエンジンで122psの中型車には向かない低出力バージョン。それでも「ターボですから低速トルクがなんたらで・・・」みたいな説明をのらりくらりして売りつけるのだろう。そしてお金を持っていそうなお客には、さらに翌年のW213Eクラスを「直6」ですよ!ってまた違うテンションで売りつけるんだろうな・・・。まさに「手を換え品を換え」の見事な戦略! それでも少なくとも価格や性能にメリハリを付けて売る事に関しては評価できます。400万円で新車のEクラスってそんなに悪い話じゃないですし・・・。レクサスや日産もメルセデスぐらい選べるブランドになればもっと面白いと思いますね。



「新型Cクラス(W205)試乗動画」へのリンク


  ↓専門誌は一般誌と違って無責任に「持ち上げたり」しないところがいいですね。




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2014年3月19日水曜日

フィアットグループがトヨタとVWを超える日

  日本でクルマについての情報を収集していると、VWが世界で評価されているとか、トヨタが1000万台製造したとか、そういうどうでも良いことは良く耳に入ってきますが、なんでいつも褒め称えられるのはV社とT社ばかりなんだろうとちょっと疑問に思ったりします。VWやトヨタ活躍してくれるのは結構なんですが、この2社が他のメーカーを圧倒するほどクルマに魅力があるようには見えないわけです。レクサス、アウディ、ポルシェまで全部否定するつもりはないですけど、「良いクルマが欲しいならプレミアムブランドで買え」みたいなスタンスはどうも好きになれない。レクサス、アウディの600~700万円のクルマを見ると考え込んでしまいます。

  こんな重苦しい状況のおかげで自動車は売れにくくなって道路は空いていてラッキーなのかもしれませんが、もっとクルマを選ぶ楽しさがあってもいいかも?なんて贅沢な悩みがありますね。ちょっと失礼な言い分ですが、今の様子だとVWやトヨタにはこれ以上何も期待できないです・・・。どっか国内外でこの状況を変えてくれる自動車グループは無いのか?そんな切ない願いを叶えてくれるのではないかというブランドが「フィアットグループ」かな・・・。

  フィアットはおそらく日本で一番多くの傘下のブランドを展開している自動車巨大グループです。本体の「フィアット」を筆頭に「フェラーリ」「マセラティ」「アルファロメオ」「アバルト」「ランチア」そして米国の「クライスラー」「ジープ」があります。日本では輸入車と言えばドイツ車になってしまうわけですけど、フィアットはドイツ車に占拠された日本市場を開放すべく、なかなか戦略的なモデルをここ数年で複数投入しています。

  有名なところでは「マセラティ・ギブリ」でしょうか。最高級のラグジュアリーを提供するメーカーが1000万円を下回る高級セダンを投入してメルセデスCLSなどの顧客に揺さぶりをかけています。それでもこれは一部の人々を対称としたものでしかないですが・・・。日本で一般的な高級車の代表格になっているEセグドイツプレミアム(メルセデスE、BMW5、アウディA6)へ強烈な切り込みを掛けるために投入した「クライスラー300」は専門家から好評なV6の3.6Lエンジンを積む大型セダンながらベースモデルのクラウン(2.5L)よりも安いです。

  さらにアルファロメオから発売が発表されているのが、超軽量のスポーツカー「アルファ4C」。これはアルファロメオがスポーツカーに注ぐ情熱を体現したようなクルマで、軽量化のために2000万円以上のスーパースポーツにしかコスト的に用いられないCFRPでシャシーとボディを形成しています。これで800万円前後で発売されると言われています。もちろん素材が圧倒的に有利なので同様のコンセプトを掲げるロータスやポルシェボクスター/ケイマンに対しても圧倒的に優勢というより異次元の加速とハンドリングを実現しているのだとか・・・。

  やっていることは、マツダが400万円以下でRX-7をする感覚に近いものがあります。マツダは日産、スバル、VW等に負けないボデイを作る為に、主力モデルのアテンザやアクセラに通常のコスト感覚では使えないよな技術を投入していますが、外国メーカーでここまで極端なことをするのは皆無と思っていましたが、フィアットグループは「欧州のマツダ」と言ってもいいかもしれません。そしてそのマツダとフィアットが手を組んで2年後にはロードスターと設計を共通化して日本のマツダ工場で生産された「アルファ・スパイダー」が投入されます。高級車もスポーツカーもなんでもござれのフィアットグループが日本から輝き出す日も近いのでは?と思うのです。まだ他にも動きがあるのですが・・・。

  

  


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2014年3月12日水曜日

ルノー・ルーテシアに苦言のCGの言い分

  消費税増税の影響でクルマの需要が前倒しされなかなかの上昇ムードの日本市場ですが、増税後も売れ続けるクルマはどれなのでしょうね。国産車も輸入車も絶好調でバックオーダーを消化できずに伸び悩むなんて悲しいモデルもありそうです。こういう時こそ、クルマを見る眼力を養う絶好の機会かもしれません。自信を持って薦められるクルマはどれかというわけですが・・・。

  輸入車も国産車も評判が良いモデルが目白押しですが、その中で絶対的に頭1つ抜け出す存在となるとあまり見当たりません。輸入車の中ではルノーがブランドとして急成長を遂げている印象があります。昨年の後半に登場したルノー・ルーテシアは2013年のワールド・カーデザイン・オブ・ザ・イヤーで小型車ながら最終選考の一歩手前まで残りました。いままでどこか垢抜けないルノーデザインが突如として、輸入車でもトップクラスのキャッチーなスタイルに変わったのはインパクトがありました。

  ルノーは欧州でもクリオ(ルーテシアの欧州名)が各国でスマッシュヒットし、フランス車にとっては鬼門と言われるドイツ市場でも好評価で現在トヨタ、ヒュンダイよりも販売台数で上回っています。本国フランスではライバルのPSAを遥かに超える伸びを示して爆発していますが、これはクリオのあとから登場したクロスオーバー版のキャプチャーの大成功が原動力になっています。尚、このキャプチャーはすでに日本でも発売が開始されていて、ホンダ・ヴェゼルのライバルとして台数こそ比較にならないですが、ルノーの従来のシェアからすればかなりの人気となっています。

  ルノーの強みは、何といっても「ジャパン・パワー」が後ろに付いていることです。ルーテシアもキャプチャーも日産製の1.2Lターボを搭載していて、燃費こそそれほど伸びないものの、ライバルのVW1.2Lターボを明らかに上回る出力を発揮します。そしてルノーのデザインを一新させたのが、日本最強のデザインメーカー・マツダからやってきたデザイン統括部長の手腕です。確かにマツダらしいクッキリとしたラインを多用していて、端正な顔立ちになっています。

  日産の技術とマツダのデザインがコラボした夢のブランドですから、その気になれば、「アテンザのデザインで中身がスカイライン」みたいな夢のようなクルマを作ってくれるかもという期待ができます。Cセグのメガーヌ(HB)、メガーヌGT(ワゴン)、フルエンス(セダン)が新しいデザインに身を包み、アクセラみたいなデザインで登場するのも遠くないでしょう。さらにルノーが導入を検討しているのがDセグのラグナ(セダン、ワゴン、クーペ)で、現行モデルはまだ古いデザインですが、もしルノーがFMCに踏み切ればルノー版アテンザの可能性大です。ただし大衆ブランドのDセグは欧州では苦戦が目立つようで、どこまでやる気かはわかりませんが・・・。

  そんな絶好調のルノーに今月号のカーグラフィックがチクリを弱点を指摘していました。日産製のエンジンは良いものの、ミッションがどうやら未熟なようで、フォード・フィエスタの方が数段上じゃないかといった主旨でした。さらにルノーの1.2Lターボは4気筒(日産リーフは3気筒)なので、次世代の3気筒ターボがBMW(1.5L)を皮切りに登場しつつあるなかでもはや古いユニットと位置づけられていました。絶好調のルノーですが、いろいろと問題点はつつけば出てくるようです(他の評論は軒並み好評なんですが・・・)。





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2014年3月5日水曜日

マセラティは高級車の価値を再定義できるのか?

  世界中の人がこれほどのマセラティを切望しているとは思ってみませんでした。2年ほど前にフィアット=クライスラーグループは傘下のラグジュアリーブランドに関しての見通しについて、信じられないような数字とともに世界の全てのプレミアムカー市場で大幅にシェアを上げる方針を打ち出しました。この話を聞いた時は、もはや超高級車が次々に売れるバブル期の日本のような市場は簡単には現れないだろうという思いがあり、実現の見込みは極めて低いだろうと考えていました。

  去年の夏頃、マセラティの新型セダン・ギブリが発売になりました。北米価格は$66,000〜。従来のマセラティは$100,000〜は下らない価格帯で、ラグジュアリーカーとしての評価は、北米で不動の地位を築くメルセデスを軽く上回るわけですが、今回は一気にクワトロポルテの半額近くまで価格を下げたわけですが、この捨て身の戦略は販売にすぐに効果があったようで、北米販売は現在のところ昨年比で4倍程度で推移しています。

  いくら半額と言っても直6ターボのBMW535iが$55,000ですから、ギブリはさらに1万ドル(100万円)以上も高いわけです。アメリカ価格で売ってくれるならもっと気軽にBMWにもマセラティにも乗れそうで羨ましいですね・・・。日本価格になってみると、正直言ってそこまでのクルマか?ってなってしまうのですけどね。このギブリの価格設定が世界中でウケていてシェアがどんどん拡大しているのに、なぜだか日本市場だけがその流れから取り残されているので、日本に住んでいるとあまりその事実は実感できません。私が思うに、日本の某所に点在する超高級住宅地にお住まいの人で無い限りは必要ないクルマです。

  アメリカではフーガが$45,000で売られていて、ギブリはこれと同じ車格ながら、超一流のプレミアム価格が上に乗っかっていて$66,000です。クルマ自体はフーガと同等の広さであり、内装の質感もフーガと大きな違いは無いように見えます。日産系の高級ブランドであるインフィニティの内装はもともと定評が高く、メルセデス、BMW、アウディよりも上だったりするので、ギブリが悪いというわけではないですが・・・。

  フーガ、Eクラス、5シリーズといったEセグと呼ばれるセダン群は、自己の立ち位置を見失って迷走しているクルマが実は多く、いずれも現行モデルは歴代モデルと比べて印象薄く、人々の羨望の対称にはなりにくくなっているという根源的問題「Eセグ問題」を抱えています。高級セダンとして古くからあるプラットフォームを流用していたり、他のタイプのクルマと比べてあまりに四角四面に設計されている弊害など、簡単に言ってしまえばジャンル全体として満足度が価格ほどには高くないクルマが多いわけです。

  革新性というよりもどれだけ伝統的な良さを保持するかに重きが置かれている部分も解らなくもないのですが、もはやこれらのEセグに飽き飽きしてしまった人々にとって、マセラティという選択肢はかなり魅力的なのでしょう。日本でもクラウンの牙城をマツダアテンザが突き崩しつつありますが、これに近い状況かもしれません。いや、クラウンに飽きた人が次はプリウスをレザーシートで乗ってやると思っていたところに、ひょっこりアテンザ登場というのが真相に近いか。

  同じように北米でももうメルセデスEクラスはウンザリで新型も全く興味ない人々が、次はSUVにでも乗ってやろうかと思っていたところに、マセラティ・ギブリが出てくれば、一旦はこれにしてみようという人もいるのでしょう。プレミアムEセグ市場に新規参入というよりは、衰退するこのジャンルの救世主に今のところはなっています。そういえば数年前に出たポルシェ・パナメーラも北米で瞬く間に火がつきました。必ずしもLセグセダンが盛り上がっているわけではなかったのに、このクルマだけ成功したということは、いかに既存セダンが飽きられていたかを表しているように思います。


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2014年2月27日木曜日

BMW2クーペ 「限りなくポルシェに近いBMWが再上陸」

  おそらくライバルのメルセデスに日本市場でかなりの差をつけられて、焦りまくっているBMWジャパンが矢のような催促をしたであろう、BMW M235が早くも日本で発売になりました。ちょっと自惚れ全開で申し訳ありませんが、4シリーズが発売されたときに生意気にも「さっさと諦めて2シリーズクーペを持ってこい!」みたいな事を書いたのですが、おそらくBMWジャパンの方々も同じこと考えていたんだと思います。

  去年の9月か10月頃に南アフリカのBMW生産工場(ロスリン)でラインオフという海外ニュースがあり、本国ドイツでの価格発表など無かった?まま、いきなり日本で発売。BMWが日本市場のためにわざわざスケジュールを変えてまで頑張ってくれたのかなという気がします。先日M3/M4の価格が発表されましたが、M235(6MT)はM4の半額程度の584万円! 先代の135クーペからの値上げも20万円程度に抑えられていて、先代よりも大幅な軽量化&パワーアップですからこれは素晴らしいんじゃないですか?(追伸:最新刊AUTOCARによると重量増だそうです。がっかり。)

  昨年に発売されたライバル車のA45AMGは予想以上に人気のようですね。さすがはAMGブランドの威光。東京や横浜周辺で大繁殖というほどではないですけど、青いラインが入った限定車カラーのクルマは休日なら1日で何台も見かけます。このクルマの他にドイツ勢のライバルは「アウディTT-RS」「ポルシェケイマン」といったところなんですけど、比較するとM235がいろいろと魅力的な気がします。

  MT設定が「ケイマン」「M235」の2台。やはりこの手のクルマの醍醐味は箱根などの急峻な峠を軽量ハイパワーで軽快に駆け上がることなので、操作感にもこだわりたいところですが、パドルよりも体のダイナミックな動きが好きな人はやはりMT操作。ちなみに「A45AMG」はAクラスの最悪なコラムシフトではなく、ちゃんとシフトレバーになってます。

  AWDの「TT-RS」「A45AMG」とRWDの「ケイマン」「M235」と分かれるのですが、あれれ・・・実は峠で大切なトラクションでおそらく最も不利なのが「M235」かも。そこは腕でカバー? ハンドリングに関してはRWD勢が絶対的に優位。信号のない峠道ではAWDが優位な発進加速はあまり必要ないので、日本向け峠マシンという特性に重きを置いて開発されているのは「ケイマン」「M235」の2台でしょうか。AWD勢は高速道路で優位です。ランエボのように瞬く間に車線変更をして先行車をパスする能力は非常に高いですね。

  価格はというと、やはり世界的にAWDは高いという常識がそのまま適用されていて、単純に本体価格で比較するなら「ケイマン」と「M235」がいくらかお買い得です。この2台をさらに比較するとNAの「ケイマン」とターボの「M235」。普段から「ターボは日本に要らない」と主張している立場としては「ケイマン」推しですが、これはあくまでスポーツカーなので「M235」もいい気がします。

  重い車体に不釣り合いな小さなエンジンを無理矢理ターボで動かすような欧州車は日本の道路ではかなり非効率なんです。技術系雑誌などでは常識ですし、欧州でも最近では道路事情が日本化してきてダウンサイジングターボじゃなくてEVやHVを使うべきだという議論が英国カーメディアでもされているので、それをブログで書くと「なんて無知で情弱なブログ」だと罵声を浴びます。どんだけディーラーに丸めこまれてんだコイツら・・・。こういう人々は欧州ターボ車でどこぞのデパートの立体駐車場の壁でもブチ抜いてダイブするまで分からないと思います(その前に死ぬかもしれないですが)。

  「M235」が直6ターボ、「TT-RS」が直5ターボ、「A45AMG」が直4ターボ、「ケイマン」が水平6NAとエンジンタイプが見事に分かれていますね。最も低価格の「M235」がこの4台では一番素性の良いエンジンを載せています。なによりも直6エンジンは振動が少なくなる理想的な設計が最大の長所です。軽量化が図られているスポーツカーならばその影響はさらに大きくなります。この中では一番振動がヒドいであろう「A45AMG」のロングストロークの直4エンジンもバランサーシャフトという部品を組み込むことで、機械的に振動を打ち消しているので、まあそこまで気になることはありません。「ケイマン」の水平6エンジンとはV6エンジンを理想的に振動が発生しない角度にしたもので、さらにV6並みにコンパクトでクルマの設計において有利になります。

  この4台はセカンドカーとしての位置づけなのであまり普段使い(チョイ乗り)や通勤にはオススメしませんが、実用性では唯一の4ドア車「A45AMG」が圧倒的に有利。残り3台はどれも同じようなものですが、2シーターの「ケイマン」が一番融通が利かないタイプでしょうか。ただ個人的な意見としては、3人以上のドライブがなんとか可能なのは「A45AMG」だけで、このクルマも後ろに人を載せて走っていると周囲から見ると狭苦しそうで、クルマの優雅さ?が台無しです。4台ともあくまで2人乗りです。



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   ↓M235でこれ聞きながら峠走りたいっす!
  

2014年2月18日火曜日

ルノー・キャプチャー 「ルノー版ジュークを日本で売る日産の魂胆」

  日産というメーカーは難解だ。世界で一番無責任でやる気がないメーカーと批判する声が聞こえてきたかと思うと、世界最高の技術を惜しみなく投入し日産でしか作れないようなとんでもないクルマを作ってくる。日本車で一番安易なクルマをタイで作らせながら、一番複雑なクルマを栃木でゆったり組み立てている。フォードやホンダが全てのラインナップに魂を込めてブランドを十分に味合わせるように組み立てているのに、日産は徹底的にユーザー本位で、安くて気軽なクルマも作るし、GT-Rみたいなクルマも作る。ホンダと日産のどちらが優れているかを判断するのは単なるエゴでしかないのかもしれない。

  日産は叩かれることを恐れない。現行マーチは日本の登録車の水準を大きく下回っているかもしれないし、新型スカイラインは確実にオーバースペックなのかもしれない。まるである種を批判を誘発することが趣味であるかのように、問題作ばかりを連発する。このルノー・キャプチャーの元ネタと言えるジュークもその奇抜過ぎるデザインを見ると、日産は一体どこまでが本気なんだ?と首を傾げるほどのぶっとび具合だ。それでもなぜか売れる。気持ちいいくらいに売れる。

  世界のジャーナリストも日産のクルマにはやや呆れ返ったようなコメントをストレートにぶつけるのを良く目にする。日産キューブ「日本でカルト的人気を誇る2BOX。なぜ人気があるかはまったくもって不明。(ドイツメディア)」。キューブには激しくツッコむくせに、ジュークには「キュート」という謎の形容をするドイツメディアの方がオカシイという声もあるけど。日本では「でっかいゴキブリ」と言われるジュークはよく見ると、ドイツ車のカ◯エンに似て無くもない。

  日産の冷静な評価は、欧州では最も成功しているSUVメーカーであり、日本では最も成功しているミニバンメーカーだ。セレナもエルグラも最終的にはトヨタ・ホンダを退けたと言っていい。日産は確かに変態メーカーだけど、それと同時に器用さを持ち合わせている。欧州でもキャッシュカイ(デュアリス)という中型SUVを大ヒットさせ、新たにジュークを投入するとこちらも大ヒット。このSUVラインナップはドイツでもフランスでもイギリスでも大人気となっている。

  ルノー日産グループはジュークのヒットが醒めやらぬ中で、新たにルノー・キャプチャーを投入すると、今度はデザインの良さも相まってジューク以上に売れているのだとか。ジュークは一般にノートのクロスオーバーモデルと位置づけられ、キャプチャーはノートの姉妹車にあたるルノー・ルーテシアのクロスオーバーモデルだ。ジュークは日本と欧州で共通の1.5NAと1.6Tの上下2ユニットで構成されているが、キャプチャーはルーテシアに使われる日産製1.2Tをそのまま流用している。

  よってジュークとキャプチャーの差別化はエンジンスペックからして異なるので、十分に配慮されてはいるのでしょうが、やはり輸入車なので割高な価格設定で、1.2Tのキャプチャーが価格で1.6T(190ps)のジュークを上回る。クルマの基本設計は同じで、デザインとエンジンが異なるのですが、やや物議を醸しそうな価格設定を平然とやってくるルノー日産の図太いマーケティングには、「クルマ離れ世代」に向けての新たな戦略といった要素が含まれているのだろうか。このキャプチャーの日本発売はいろいろと考えさせられることが多いと感じる。
  

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2014年2月13日木曜日

フォード・マスタング 500万円台のV8マシン

  V8エンジン搭載のモデルが本体価格570万円。潔癖性で新車しかうけつけない私にとってはフォード・マスタングは月に1回くらいは乗ってみようかなという気持ちにさせられます。詳細が乗っているアメ車専門ムックを本棚から取り出して見てみる。価格やスタイリングには大満足なので最初はルンルンなのですが、読み進めていくと「ちょっと待てよ・・・」となる。

  まず最初のネガティブなポイントは「内装」。まあ格安車なんだから文句言うなという意見もあるでしょうが、もうちょっとなんとかして欲しい。もしショップに持っていってリフォームしたらどれくらいの見積もりが来るのかな。いつもヘアカットしてもらってる美容師さんと雑談してたら、木目だろうがピアノブラックだろうがパネルはいくらでも自力で処理できると言っていましたが・・・。材料費5万円で良しとしましょうか。

  次に「スペック表」に見える後輪サス「3LR」。なんじゃこりゃ?ひたすら調べる。「3リンク・リジッドアスクル」というらしい。リジッドアスクル自体はキャデラックなどアメ車の大型車では割と当たり前に使われているみたいだ。しかしライバル車のシボレー・カマーロはレクサスや日産でおなじみのマルチリンク。まあでもこれだけ大柄なクルマならサスのストローク量も十分にあるだろうし、日本車とは意味合いが違うのだろうと、納得しかかっていたところで・・・。どうやら次期マスタングは「独立懸架式」(おそらくマルチリンク)になるらしい・・・? え、それなら次期モデルを待った方がいいのかな。しかしモデル末期の在庫車は魅力ですが。

  現行と次期モデルと比べて最も悩むのがデザインでしょうか。現行デザインの方がキャラが立っていて、前期モデルよりややおとなしくなったと言われる後期モデルでも貫禄十分。しかも孤高のブットんだデザインというわけではなく、フォードの他のクルマよりも日本人の感性に合った優美さがあります。その一方で新型は・・・。確かに目新しさがあるのですが、あまりにも小綺麗になり過ぎてないですか? 一目見てマ◯ダア◯ンザみたいです。どうもモンスターマシンの片鱗みたいな要素が見えてこないです。

  新型は2.3L直4ターボが新たに設定されるようで、直4でも似合うようなこじんまりしたデザインへ変更されたということか。フォードで2.3Lターボと聞くと、これはMSアクセラか?と思いましたが、ボア×ストロークが全く違ったのでどうやら別のエンジンのようです。とりあえずFRに直4ターボ載せる3BOX車は完全否定の立場なので、このグレードには全く関心はないですね。マスタングと言えばV8だと思うので、やはりV8に相応しいデザインで良かったのではないかという気がします。

  日本市場のラインナップでは格安ということになっている、フォードマスタングV8GTですが、一番買う気分を沈めてくれるのが、このクルマの北米での価格です。日本円で約300万円ほどしかしません。つまりアメリカで売られているBMWの最底辺グレードの3シリーズとほぼ同じです。3シリーズの日本価格は430万円程度ですから、インポーターがだいぶボッタクっているようです。しかも正規輸入でも左ハンドルしかないので、もう並行輸入業者に頼んだほうがいいのではという気がします。日本価格を約2倍に見積もっているくらいなので、アメ車のモデル末期の値引きは相当良いのではと期待できますが・・・。さて動くべきか?

  
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2014年1月31日金曜日

シトロエンDS3 「いよいよ感染力拡大中!」

  日本人が好むクルマのサイズはどんどん小さくなっているようだ。地域によって多少は違いがあるのかもしれないが、私が住んでいる地域(東京都西部)では軽自動車の割合はとても4割とは思えないくらいに少ないが、プライベート利用の普通車はやたらと5ナンバーが目立つ。どうやら軽自動車に乗るには勇気が要ると考えている人が多いようで、見栄で普通車を選んでいる様子が伺える。なんとも貧相な価値観なんだろうと住人としてちょっと虚しい気分にさせられる。

  あくまでご近所の話だが、国産車ユーザーはHV率が高くアクアやフィットが主流。しかし最近では輸入車の小型車が急速に増えてきている。特にポロやビートルといったVW車が目立つ。日本製のHV車と東南アジア製のターボ車。世界的に見れば断然に日本製HVの方が高級品なのだが、モノの価値が解らない東京西部の愚民の中には、ドヤ顔しながらASEANターボ車で国産HVに対して高圧的な煽り運転するクズ(意外と中年女性が多い)もよく目にする。これを見る限りでは「ゆとり」と言って若者をバカにする風潮がある中で、日本人としてのプライドの欠片すらも持ち合わせていないバブル世代の方が圧倒的にイタい・・・。

  アクアの後ろから「遅!」とばかりに煽り倒すDCT装備のASEANターボを見かける。「いやオマエも十分に出だしが遅い」とツッコミたくなる。信号の無い直線道路でぶっ飛ばす分にはVW車はよく出来ているが、右折左折や発進でのモタモタはどうにかならないのか?信号の多い日本ではとりあえずNAエンジン&トルコンATに乗っておけよ・・・。さらにVW車に言いたいのはポロとゴルフとトゥーランは地味過ぎる。今の日本の元気のなさに拍車をかけるのはやめてくれ。町の風景が余計に不活性になるからもっと派手なパーツでも付けてから走ってくれ・・・。もちろんもっと目障りな連中もいるけど。 

  日本の自動車行政が燃費とかCO2排出とかに優遇措置をするのに反論する気はないけど、これだけ日本の町が急速に魅力を失って不活性になっているのだから、町の景色に少しでも貢献するデザインのクルマを何らかの形で評価してもいいんじゃないかという気がする。オシャレで若者が欲しいと思うクルマなら国産・輸入問わず経済の活性化に貢献するのではないか? 若者がドライブし始めれば地方都市も潤う。むざむざと海外旅行ばかりに行かせていては日本はすっかり負け組だ・・・。

  そういう意味で活躍が期待できるクルマがシトロエンDS3。最近では近所のスーパーで良く見かけるようになった。シトロエンというブランドのクルマ作りを他の全てのメーカーが取り入れろというつもりは毛頭ないけど、かれこれ4年前に投入されたこのDS3が徐々に影響力を増している。ホンダもトヨタもこのクルマのコンセプトを密かに取り入れている。いや「密かに」どころか・・・CR-ZやレクサスCTのマイナーチェンジを見れば誰にだってその影響力の大きさはわかる。

  史上初めて1000万台の大台を突破したトヨタは偉大なメーカーだが、かつてハッチバックや5ナンバーセダンの高級車化という「目標」は達成できないままに投げ出してしまった。トヨタが出来ないのだからどこがやっても無理だろうという想いはあった。BMWやメルセデスがハッチバックを作ってもやはり茶番にしかならなかった。だれもが小型車に限界を感じていたけども、シトロエンは史上初めて「小型車のプレミア化」に成功したと言ってもいいかもしれない。DS3は思わず近づいて見てしまうほどに良いデザインだ。


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2014年1月21日火曜日

ゴルフ・ヴァリアントとレヴォーグ・・・どっちでも良い?

  なぜレクサスはワゴンを作らないのか? それはレクサスが欧州市場を軽視しているから。一般メディア(産経や東洋経済など)ではしばしば「レクサスはドイツメーカーへのコンプレックスの塊」として紹介されたりするせいか、ドイツメーカーのパクリと揶揄する声が多いのですが、ワゴンを作らないというこだわりには何らかの意味があるのでしょう。レクサスだけでなく、ホンダや日産も同様で日本メーカーにとってはもはやワゴンなんて作るだけムダと考えている節がある。

  日本メーカーで唯一欧州市場を大事にしているマツダは、未だにワゴンを作り続けていて、アテンザも日本市場でもそれなりに存在感を出しているので、日本車のワゴンが少なくなったという実感はまだない。しかし現実には日本のほとんどのメーカーはすでにワゴン開発を放棄していて、今後は絶滅していく見通しだ。街中でもレガシィとアテンザそして旧型アコードくらいしかDセグワゴンは見かけなくなって久しい。

  そんな情勢の中、ワゴン専用の新規車種であるレヴォーグをスバルが発売するのは、他の日本メーカーとは違う路線を模索するスバルのスタンスが良く現れていると言える。軽自動車生産を整理して、中型車だけで勝負すると腹をくくったせいか、以来出てくるモデルがBRZ、フォレスター、XVと全てヒットして目下のところ絶好調。そして次は意欲作のレヴォーグというわけだが・・・。しかしスポーツカーやSUVのヒットとは勝手が違うようで、ちょっと逆風が吹いているようだ。

  初売りから、予約を受付!と大々的にアピールするも試乗車も無い状況。それでも10日間で2400台のオーダーがあったそうだが、なんとも微妙な数字です。試乗車がくれば今後増えるのだろうけど・・・。ちょっとプロモーションにお金掛け過ぎて、本体価格にお買い得感が感じられない印象が気になる。レガシィの後継なのかインプのワゴンなのかよく分からない立ち位置も決断を鈍らせているのだろうか。

  夏頃には、一回り立派になった新型レガシィB4が日本でも結局は発売されるんじゃないかという見方もある。すでにデザインの概要が発表されているが、現行のB4が高級化に手間取った失敗を繰り返さないように念入りに作り込まれているようで、2014年の大きな話題になることは確実だ。あくまで日本発売は未定だが、「これが新しいスバルだ!」というバイブレーションは、レヴォーグやWRXではなく新型レガシィから感じる。そしてそれが実現した後のレヴォーグやWRXはおそらく「過去のスバル」として色褪せてしまうのでは?

  そんな複雑な事情を抱えるレヴォーグに敢然と立ち向かうかのように発売されたのが、VWのゴルフヴァリアント(ゴルフのワゴン版)だ。VWがドイツメーカーの中で現在のところ頭一つ以上抜け出しつつあるのは、高剛性の鉄鋼やスポット溶接を多用してボディの堅牢性を優先したクルマ作りが一定の評価を得ているからだ。ボディに直接投資してクルマの基本能力を担保してから高出力ユニットのパワーを余す事無く使うという発想は、日産やスバルの高性能モデルに通じる概念だ。

  この手法を使って作られる新たなVWの戦略車ラインナップの中で、最も効果的に実力を発揮するのがこのワゴン版のヴァリアントではないかという気がする。極論するとBセグとCセグの丁度中間に位置するゴルフのホイールベースならば、それほど剛性が旋回性能に影響はしない。ゆえに昔から軽いボディを信条とする日本車は小型車分野では圧倒的に強かった。その一方で中型以上のクルマはグローバルでなかなか評価されなかった。

  その中で日産スカイラインとスバルレガシィは、日本メーカーの意地とばかりに高剛性ボディの開発へと邁進したが、それに反比例するように燃費が悪化したのでニーズは極めて限定的であり、おまけに日産とスバルの業績悪化・・・、そしてスカイラインとレガシィの貢献利益を考えると「モデル廃止」か「再検討」が妥当な水準だった。しかし自動車メーカーとしての「基礎工学」という意味では価値があったとは思うが・・・。

  ドイツではスーパースポーツセダンに分類される旧スカイラインGT-Rやレガシィターボは当然ながらドイツメーカーにとっての恰好の研究対象になった。今ではVW、マツダ、スバル、日産の4メーカーが量産車レベルにも関わらず、次世代の中型車の覇権をめぐって堅牢ボディの開発合戦を繰り広げている。この4つの中では最小のボディ構造を持つゴルフがヴァリアントへと拡大しても同等の性能を発揮できるのか? そしてレヴォーグと張り合うことができるのか? もし高いレベルを維持しているなら、日本車にとってはゴルフ以上に新たなる脅威となりそうだ。



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2014年1月9日木曜日

up!、V40、Aクラス。いくらなんでも低レベルすぎだろ・・・

  1000万円クラスのクルマを作っているメーカーがその自慢のフラッグシップを日本に送り込むことに関しては、総じて異論はない。ポルシェ、マセラティ、ジャガーは日本人のニーズを強く満たしてくれるし、メルセデス、BMW、アウディもハイパフォーマンスモデルに限れば、ほとんどの日本メーカーがカタログモデルとして用意できないレベルなので、日本で売ることの意義を強く感じる。

  その国の自動車産業が不得手なところを補完するのが輸入車の本来の役割であるはずが、怪しいブランドイメージに包み込みながら、とんでもないクルマを無理矢理に売ろうとすることがお人好しな日本市場では起きていたりする。日本車は世界中の国々へ輸出または生産され、地域によっては80%近いシェアを獲得しているが、これは小型車の安全性と信頼性に置いて日本車が特別な地位にあることの証明だ。

  欧州市場でもかつては日本の小型車に人気があったが、バブル期以降は日本メーカーと同水準以上の生産技術を獲得したフォードやVWの生産車に関税の影響で価格面で遅れを取っていることもあり、日本車のシェアは下がっている。さらに近年ではEUといち早くFTAを結んだ韓国車が日本のシェアを奪っていると言われている。実際にドイツ国内の価格を見ると日本の小型車が1万ユーロを切ることは無いが、ヒュンダイ系のキアやVW系のシュコダ、独立系のダキアなどから7000ユーロ程度の低価格車が発売されている。

  特にシュコダは旧型のゴルフやアウディA3、A4のノックダウン生産で大きくシェアを上げているようだ。日本で例えるならトヨタ系の関東自動車がアルテッツァやアリストを低価格で販売しているようなものだ。こういう商習慣が日本にもあっていい気がするが・・・。ちょっと話がズレたが、日本車は欧州でかつては技術力で称賛されたが、大きな差が無くなり価格面で不利となると、一転して不人気になってきた。スポーツメーカーと勘違いされているスバルやマツダは日本生産車が根強い人気を得ているが、トヨタ・日産・ホンダに至っては現地生産工場がある国でしか人気がないというシビアな現実に直面している。

  しかし一転して日本市場では、輸入車に対してあまり厳しい眼が向けられることは少ない。もちろんプロモーション不足で認知されずにフェードアウトするクルマもあるが、最近では販売戦略を綿密に練り上げた上でカーメディアを巧みに抱き込み、発売前から大々的にプロモーションを行うため、かなりの確率で良い結果が出るようになっているようだ。実際は広告費に圧迫されてほとんど利益は出ないのかもしれないが、VWup!やボルボV40、メルセデスAクラスなど、日本車には絶対にあり得ないくらいに低レベルなクルマがそこそこ売れてしまっている。

  メルセデスAクラスは発売後の半年で欧州で9万台を売り上げたそうだが、メルセデスが欧州で売れないわけにはいかないので、必死のプロモーションだったとか。メルセデスがプライドを捨てて大衆車のコンセプトをパクる・・・。まるで欧州の破綻への序章のような象徴的な出来事といったところか。ジャガーとベントレーがスバルのようなSUVを必死でコピーし、BMWがホンダのようなミニバンを作るなんて、数年前までは確実に笑い話の次元だったのに・・・。しかもスバルやホンダよりも安い価格で発売?と言われている。欧州ではスバルとホンダは高過ぎではあるけど・・・。

  up!はVWがインドや東南アジアの20億人市場に送り込んだ「秘密兵器」で、そのままじゃ日本に出せないから廉価な安全装備を適当に盛り込んだクルマ。実車を見るとそこかしこにクルマのルーツを語る不思議なパーツが・・・。これとフィットが同価格って完全にイカれてるとしか言いようがない。

  V40は一見お手頃価格に思えるが、このクルマは一体何が売りなんだろうと果てしなく首を傾げたくなるレベル。日本市場で完全に埋もれていて自他ともに認める失敗作の三菱ギャランフォルティスというクルマがあるが、これが日本の2強であるアクセラとインプレッサに完敗した理由を考えると、あらゆる設計理念において完全に遅れをとっていることが挙げられる。2008年発売の1.8LのギャランFが2009年発売の2Lのアクセラに完膚なきまでに叩きのめされ、日本だけでなく欧州やオセアニア、北米からも叩き出された理由を考えれば、いまさらのように新型車としてV40を出してくる状況はジョーク以外の何者でもない・・・。鉄の棺桶を動かすための劣悪燃費の直4ターボ。300万円だすならAWDのギャランFのラリーアートにしておいたほうが何倍も楽しめる。

  

   ↓島下さんのお情け採点でもAクラス「6」V40「7」。Aは輸入車Cセグワースト。ちなみにゴルフ「10」アクセラ「9」インプ「8」。もっと隔絶した差があるように思うが・・・。