2015年9月19日土曜日

フォード・フォーカス いよいよ北米フェイスが10月に日本登場か?

  先日、マスタングに乗りにいって以来フォードからしばしばDMがやってくるようになりました。DMの頻度は売り上げの好不調をかなり表しているようで、販売好調が伝えられるマツダやメルセデスなどは新車発表のタイミングくらいしか来ませんが、フォード以外にもBMW、MINIあたりは相当に苦戦しているようで、目立つ位置に「50万円の購入資金プレゼント」(つまり値引き)が書いてあったりします。

  そんなフォードのDMには必ずといっていいほど、ビックリのスペシャル価格で登場するのがCセグ車のフォーカスです。1990年代に欧州で大ブレイクして、ゴルフやシビックを蹴散らした欧州フォードの生んだ屈指の名車ですが、マツダ車(アクセラ)と共通設計ということであまり熱心なプロモーションもなかったため、日本では全く知名度がない?クルマですね・・・なにそのクルマ?が普通のリアクションです。

  ベンツ、BMW、アウディ、VW、ポルシェ・・・ボルボ、ジャガー、ミニ、ランドローバー、プジョー、シトロエン、ジープくらいですかね。一般の人々に説明なくすんなり理解されるブランドは。フォードとかルノーとか堅実なクルマ作りができるメーカーが日本でもグローバル・フルラインナップを揃えてくれれば、日本メーカーももっと努力するようになって、オッサン相手の軽スポーツカーじゃない形で個性的なモデルが期待できそうですが・・・と悲壮感を込めて書きながらも、ルノーとフォードは今後は日本でもジワジワ来るのではないか?という予兆を感じています。

  フォーカスの現行日本モデルは、一応グローバルで現行の3代目の前期に当たります。欧州ではディーゼルがあるので、その気になればマツダやボルボのように日本でも展開できます。2011年発売から2年遅れの2013年に日本に導入されましたが、2L自然吸気エンジンの1グレードのみで、設計自体はボルボV40や先代アクセラと共通のプラットフォームなので、エンジンバリエーション的にもなかなか売りにくい立ち位置ではあります。

  ちょっと余談ですが、旧フォードグループは縄張りをしっかり分けているのか、共通設計かつ共通エンジンの別ブランド車が同一市場に登場しないような工夫が、グループ解体後からなんらかの契約に縛られて有効になっているようです。マツダエンジンを積むフォーカスが日本に投入されたタイミングがちょうど、先代アクセラの2L車がスカイアクティブ化した後のタイミングでした。ほぼ同時期に登場したボルボV40には、これとは全く別の1.6Lエコブースト・エンジンが搭載されるなど、アクセラ・フォーカス・V40が全て異なるエンジンを積んで共存してきました。

  単純にドライビングだけを楽しむならば、「スカイアクティブ」や「エコブースト」といった低速トルクを重視したエンジンは、「回す」という点では限界があるので、フォーカスが使いつづける「自然吸気・ショートストローク」が一番気持ちいいとは思います。しかしフィーリングに関してはスペックに反映されませんし、低速トルクの使い勝手の良さが一般に浸透してきて、NAショートストローク自体がスポーツカーしか使わないあくまで趣味のエンジンと見做されつつあります。

  売る側としてはいまいちセールスポイントが掴みづらい部分もあるかもしれません。私が営業マンなら「低速トルクなんて運転が下手な人向け!本当のドライビングを知りたいなら迷わずNAショートストロークですよ!」くらいのこと言いたいです。運転が大好きなアメリカ人にはこのエンジンがまだまだ人気なようで、2016年モデルとなった本国のフォーカスでも主力エンジンとして使われつづけています。さらにアメリカではフォーカスのスポーツモデルである「ST」が用意され、これが先代からファンを増やしていて、ゴルフGTIやWRX-STIのようにCセグGTカーとして立派に市民権を得ており、2Lターボ(252ps)が使われています。また新たに「RS」というマスタングに使われる2.3Lターボを横置きにした300ps越えのエンジンを装備したグレードも追加されたようです。

  さて2016年モデルのフォーカス(3代目後期)ですが、フォードから絶賛発売中のマスタングに似たフェイスへ大きくチェンジしていて、日本で売られている前期モデルとはまるで別のクルマです。あのマスタング顔をCセグに当てはめると、スバルのインプレッサやレヴォーグに似た印象になります。昨今の日本のCセグ市場はなんといってもデザインありきの「外面主義」ですから、現在の不調なフォーカスの弱点をしっかりとマーケティングした上での大幅デザイン変更が施されていますが、北米でも好調なスバルがベンチマークだったのかもしれません。

  Cセグ=デザインの風潮を築いたのは、マツダアクセラ!・・・ではなくメルセデスAクラスとVWゴルフの競り合いに端を発しています。フォーカスだけでなく、アルファロメオ・ジュリエッタやその輪郭をなぞったトヨタ・オーリスそしてプジョー308やルノーメガーヌ、BMW1シリーズといった錚々たる顔ぶれをまとめてに置いてきぼりにするくらいにAクラスとゴルフは洗練されたデザインでした(スペックはともかく)。置いて行かれたクルマはその後相次いで、フェイスリフトが行われ、308はゴルフをお手本にし、メガーヌは新生ルノーの「ヴァンデンアッカー顔」(マツダのチーフをヘッドハンティングした!)に生まれ変わり、1シリーズも大変身となりました。

  Aクラスとゴルフの洗練度に対抗できたのがアクセラ、インプレッサ、レクサスCT、ボルボV40、DS4、アウディA3といった面々で、これだけ数が揃ってもなおスペックはドングリの背比べですけど、デザインに関してはかなりハイレベルな拮抗といって良さそうです。この中で注目したいのが、日本車よりもお買い得?と思える価格を付けて登場した「ルノー・メガーヌ・ゼン」で、他の各車がプレミアム志向なのに対し、逆張り路線で勝負をかけてきました。マスタング顔のフォーカスには北米と同じくいよいよ戦略価格(250万以下!)の1.0Lエコブーストが投入されるでしょうが、2L自然吸気も残るといいな〜・・・(選ばせろ!)、さらにCT(2Lターボ)やRS(2.3Lターボ)をお手頃価格(CTが350万でRSが400万で!)で出すことで、700万円とかいう価格でぼったくっているA45AMGやシビックtypeRに冷や水を浴びせてほしいですね!

追伸・フォードジャパンからは1.5Lターボ(309万円)がすでにアナウンスされています。

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↓マツダの設計を使っているのに、スバルに憧れているクルマ!?

2015年9月4日金曜日

ボルボV40 が王道スペックでCセグのテッペンを獲るか?

  ディーゼル車の一斉発売がアナウンスされるより前のタイミングから、日本でのボルボの売上は復調の兆しを見せていました。2013年はV40のヒットもあり輸入車ブランド5位のポジション(不動のドイツ4ブランドの次!)をガッチリと維持していました。しかし昨年(2014年)は増税もあってあえなく息切れとなり、あっさりと月間1000台を割り込むと、小型車人気に乗ったミニに5位のポジションを奪われ、逆転が絶望的なほどの差をつけられました。それが今年に入ってから徐々にミニに肉薄し始め、再び月間1000台を上回るまで回復し、いよいよ満を持してのディーゼル投入で、あくまで推測ですがミニを抜き去り4位のアウディ、3位のBMWをも射程に入れるほどの急成長が今後ありそうです。

  ボルボはフォード傘下から離れて現在は中国資本によって運営されています。今や輸入車ブランドは新興国の資本が入ったところが多く、ボルボ以外にもジャガー・ランドローバーやロータス、アストンマーティンなどなど日本でも人気のブランドがこれに該当します。当初は開発力を持たないグループに買収されてしまってはさらなる成長は見込めず、遅かれ早かれトヨタグループやVWグループとの競争に敗れてブランド廃止になるだろうという悲観的な予測がされていました。しかし今ではトヨタやホンダの水準を大きく越える開発力を持つ国際サプライヤー(部品メーカー)が、メーカーを先導して車体設計をしてくれるので、新興国資本のグループでも資金さえ調達できれば十分に競争力のあるクルマが作れるようになりました。

  もちろん複数のブランドで設計を共有できるメリットも無視できないので、トヨタ、VW、フィアットクライスラー、GMといった巨大グループにはそれなりのアドバンテージがあります。しかしメルセデス、BMW、マツダ、スバルといったクオリティカー主体の中堅メーカーは、主要市場でレクサスやアウディを制するなど、「量」のメリットを覆すだけのさまざまなファクターがまだまだ十分に残っているようです。現在健闘中の4ブランドは日本とドイツの拠点で高い開発力を発揮しやすい環境にあることが成長につながっています。一方で同じクオリティーカー主体のジャガー・ランドローバーやボルボに関しては、それぞれイギリスやスウェーデンの産業の中核企業ということで、「国策」の旗印の元に政府支出による補助金が様々な形で付与されています。国内生産を条件にした特別貸し付け金や、政府系ファンドあるいは「自国産業応援」を掲げた投資ファンドからも資金が流入します。

  そして資金さえ用意すれば、ドイツの国策で急成長を遂げた最大手のサプライヤー・ボッシュグループが様々な自動車技術を提供してくれます。最先端の運転支援システムやディーゼルエンジン、そしてハイブリッド・EVや燃料電池車に至るまでボッシュ傘下には様々なサプライヤーが揃っています。それらの多くは経営不振に陥ったGM、フォード、クライスラーや三菱、日産、スズキなどの系列サプライヤーを買収したもので、ボッシュグループの実態は日独米の連合体といえます。ボッシュの成長に危機感を持ったトヨタ系列(デンソー、アイシン、トヨタ紡織など)もグループの垣根を越えて様々なブランドに供給するようになりました。

  新生ボルボが新たに手を組んだのはこのトヨタ系列で、デンソー設計のエンジン(ガソリン・ディーゼル共に)とアイシンAWの8ATのユニットで、ほぼレクサスと同水準のものが搭載されています。このトヨタ系列が関与した新型ユニットは「T3」「T5」「D4」といったグレードとして展開されています。これらが全て用意されたのがボルボの屋台骨となっているベースモデルのV40で、新たに設定された「T3」は1.5L直4ながら150psを発揮するショートストロークエンジン(制振性やレスポンスに優れる)が採用されます。欧州ブランドでのトレンドとなっている直3化に踏み切らなかった理由は、おそらく燃費よりも上質な乗り味を追求するからで、これはトヨタ系列らしい姿勢だと思います。

  「T3」はおそらく同程度の排気量ユニットとしては、圧倒的なパフォーマンスを持っていると思われます。惜しむべきはV40が開発から10年近くが経過している旧フォードのC1プラットフォームを使い続けていることで、これはマツダが開発を担当した先代アクセラで使われていたものと同じです。現行アクセラはCX5やアテンザと共通の新型プラットになりシャシー性能を向上させた・・・というのが一般的な評価なので、V40は現行アクセラと比べてどうなのか?(やや不利か?) そして現行アクセラとCセグ頂上決戦を繰り広げる「ゴルフ/アウディA3」と比較してどれだけ個性が発揮できるのでしょうか? 

  ほぼ同等の出力を誇る「アクセラ20S・Lパケ」(256万円)、「ゴルフハイライン」(322万円)、「V40T3」(324万円)の3台は改めて試してみたいところです。Cセグはひと昔前は完全に小型車枠でしたが、WRCベース車のポジションは下のBセグへと移り、走りとユーティリティを兼ね備えたサイズに拡大され、この3台のように上位グレードはマルチリンクで高いドライバビリティを視野に入れています。しかしまだまだ本格的な「走り」の評価は獲得できていない状況です。全くの余談ですがこのクラスでは「BMW118i」と「メルセデスA180」がともに298万円という戦略価格で、ボルボ・VW・マツダに対して完全に白旗を挙げていて「逆転現象」が起きています。

  ボルボV40のグレード設定は「T3」以外もかなり挑戦的と言えます。個人的に最も興味があるのは新型の「T5」で、果たしてゴルフGTIに対してどれだけ肉薄できているのか?が「クオリティカー・ブランド」としてのボルボの評価が決まる最大のポイントだと思います。ターゲットであるゴルフGTIは、取り回しの良いサイズのボディ&重量に、自然吸気でも十分に動ける余裕の2Lユニットが載り、ターボとの相性も悪くないミッション(6速DCT)のおかげで、エンジンのいろいろな回転域を楽しめます。さらにVWにしてはかなりシャープなハンドリングで、マツダ車のような運転に没頭できる心地よい操作感に感動すら覚えます。果たしてV40T5はこの強敵と比べてどうなのか?まあガッカリしない程度ならばまずは大健闘といえるでしょうけど・・・。

  そして今後のV40の販売の中心になるであろうディーゼル搭載の「D4」は、はやくもその圧倒的な加速・燃費性能がカーメディアでアピールされています。やや大きめのエンジンを積むアクセラXDとの比較では、シャシー設計の差?から静音性でマツダに遅れをとったものの、加速と燃費は多段化されたミッションの効果が大きいようで、アクセラXDを上回っています。アクセラXDはLパケフル装備(ナビ、サンルーフ標準!)で307万円のスペシャルパッケージプライスなので、V40D4(349万円)はやや苦しいですが、ボルボのディーゼルを買うなら、長距離での居住性を考慮して、アクセラとCX5の中間くらいに位置する「V40クロスオーバーD4」(364万円)が使い勝手が良さそうです。

  もはや日本ではS60やV60クラスのクルマがたくさん売れることは考えにくいので、ボルボの命運はV40の各グレードと、ボルボらしいイメージを牽引するV70とXC60/70の展開にかかっていると思います。まだ試乗ができていないですが、予想をはるかに上回る商品力で、とりあえずディーラーに行ってみようかなという気にさせる「捨てグレード無し!」のいいラインナップになっているので、マツダやスバルのように愛されるブランドになれそうな予感です。

 
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