2014年6月26日木曜日

新型ジープ・チェロキー は日本メーカーよりも心得てる!?

  「ジープ」ブランドと聞いただけで、とりあえず購入の選択肢には絶対に入らないと考える人も多いでしょう。それくらいに「アクの強い」ブランドからわざわざ、フィアット版の「マツダCX5」のようなクルマを日本で発売してきました。今更ですが、CX5はというと、マツダが新たに開発したアクセラやアテンザで使われるシャシーを使って作ったSUVで、抜群の高速巡航能力を武器に世界中で成功を収めつつあります。

  これだけ派手にアメリカでもCX5がヒットしていて、アメリカ誌の評価でも3万ドル以下で最高のSUVといった評価を受けているのですから、SUVの本家とも言える「ジープ」も黙っていられない!といったところでしょうが、やはり「イメージ」ってもんがあるでしょ!と思わずツッコミを入れたくなります。見た目は最近の日本車SUVの影響を受けている!どころか、その潮流のど真ん中に位置するようなデザインで、ほぼCX5かハリアーな出で立ちです。あの箱形のキャビンは一体どこへ行ったのか? ヘッドライトとグリルが主張しない「ジープ」なんて・・・。

  子供の頃にはSUVのことをジープと呼んでいたくらいに、日本のクルマ文化にも密接に関わっていて、三菱、スズキ、スバル、日産がそれぞれに手掛けるオフロード車の「イディア」的なブランドが、まさか傍流の日本や欧州で流行りの「なんちゃってSUV」のデザインを完コピしてくるとは思いも寄りませんでした。それにしても車体の隅々から香ってくる「日本車臭」が強烈で、カーグラフィックではフロントデザインは日産ジュークをパクってると書いてありました(ぱっと見ではジュークには見えませんが)。

  フィアット=クライスラーになってから開発が始まったクルマが、続々と登場してきています。個々に見てみるとなかなかの「ミクスチャー」ぶりを発揮していて、この手の多国籍な協業関係で生まれがちな「無国籍」とはちょっと違う味を感じます。この新型ジープ・チェロキーも、クラス屈指と言われるアルファロメオ・ジュリエッタの高性能シャシーを使って作られています。優秀なCセグシャシーから大ヒットSUVを作るという手法は、ホンダ(シビック→CR-V)、スバル(インプレッサ→フォレスター)、マツダ(アクセラ→CX5)、フォード(フォーカス→クーガ/エスケープ)と米国市場で躍進する一般ブランドでは常套手段になっていて、この流れに乗り遅れたことを自ら告白したVWは開発を急いでいるようです。

  シビックやフォーカスに十分に対抗できるジュリエッタのシャシーは、早くもクライスラー系の複数のブランドで採用されていて、ダッジ・ダートとクライスラー200の2台のC/Dセグセダンが発表/発売されています。どちらも日本には未導入ですが、現行のアメリカ車の中で日本市場で最もウケそうなのがこの「ダート」と「200」なんじゃないかと思います。ジュリエッタよりも一回り大きいBMW3シリーズサイズのセダンになっています。

  さて従来のジープファンからは、敬遠されてしまいそうな新型ジープ・チェロキーですが、果たしてハリアーやヴェゼルに興味津々の日本のユーザーのアンテナに引っ掛かるかどうかがポイントになりそうです。フィアット製の2.4L直4NAとクライスラー製の3.2LV6NAの2段グレードのエンジンは、アルファード/ヴェルファイアに飽きた層がそのままスライドしそうな設定ですし、価格もほぼ同じ水準になっています。トヨタの高級ミニバンの顧客を惹き付けるだけの内装装備、とくにインパネの造形はフィアットの得意とするところで、レクサスに肩を並べる水準と話題の新型ハリアーの内装にも全く負けていません。

  ジープから連想される従来の大味な乗り味も見事に改められていて、車高が高く変速ショックによって起こるピッチングに弱いとされるSUVの構造を補うべく、ZFの協力でクライスラーが開発した「9速AT」が使われています。これは・・・アイシンAWが作りたがっている「9速ミッション」をトヨタが「需要がない!」と押しとどめているうちに、他に先を越されてしまいました。たしかにトヨタ(レクサス)のNVHは世界最高水準ではありますが、それに必死で追いすがろうとするBMWは日本向けATを全て「8速」にしています。それに対してレクサスRXの「6速AT」そして新型ハリアーの「7速CVT」は、作り込みという点において遅れをとっていると言わざるを得ません。さてエンジンのスペックを考えると価格面でもハリアーと同等に抑えられているジープ・チェロキーが日本でどれだけ売れるか?なかなか見ものですね。

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2014年6月21日土曜日

直6のメルセデス と EVのBMW という従来のキャラ無視の展開・・・

  欧州車=ダウンサイジングターボという「先入観」が日本の自動車評論家の頭の中にはあるようですが、それはあくまで「アジア市場向けのモデル」での話であって、欧州ではディーゼルが約半分ですからガソリンターボの割合なんてせいぜい30%程度でしかないです。中国と日本のユーザーはやたらとターボを喜ぶので、日本のVWなどほぼ全モデルがガソリンターボですけど、アメリカのゴルフは「GTI」と「R」以外はNAですし。

  そもそも欧州ブランド自体が「ガソリンターボ」というキャラ設定を嫌っている節があるように見受けられます。VWがゴルフⅦを発売した直後くらいから、「これからはPHVの時代!」と宣言し始め、まだまだバッテリーが高くて、容量が低いですけどあと5年もすれば「価格は1/8になって容量は8倍」みたいなことを付け加えて、暗にユーザーに向けて「現行のトヨタやホンダのHVを買い急ぐ事はないですよ!」とでも言いたげなんですよね。

  いままでは散々に「HVに興味は無い(将来はない)!」といった態度をとりつづけていたのに、なかなかの豹変ぶりにビックリです。バッテリーの価格の話もごもっともですけど、この話には裏があるみたいで、要するにトヨタとホンダが特許で雁字搦めにしていた技術がフリーになるのを待つ「遠謀」というのが真相のようです。VWグループだとこれまではアウディA6とポルシェパナメーラといった高級車にしか設定されないのは、それくらい利幅が大きいクルマじゃないと権利金が嵩んでしまって利益が出せないという「苦しい」台所事情があったようです。もっとも燃費の悪い高級車の方がHVにした時の省エネ効果は抜群に高いので、理にかなっているという見方もできます。

  HV技術はあたかもトヨタやホンダが最先端で争っているというイメージがありますが、エンジンの出力とモーターの出力を合成して走らせれば良いだけで、それこそEVなんて操業間もないテスラや中国メーカーでも比較的に簡単に作れてしまうことを考えると、ネックなのは特許ということになります。それらが一斉に無効になったら、世界中のメーカーが一斉にほぼ全てのモデルにHVを設定し出すのではないかという気がします。

  しかしそんな「よーいドン」を待っていては、先進イメージが台無しになると考えるBMWはさすがというべきか、先にEVで実績を作ってしまえ!とばかりにもの凄いプロモーションをかけて「i3」を拡販してきました。日本のクルマ雑誌は「BMWのEVだけに、走りも超一級品!」みたいな調子の良いことを書いていたりと相変わらずに理解力が低すぎることを露呈してます。こういうクルマこそ、頭のよく回る評論家に徹底的に掘り下げて分析してもらいたいものですが、出て来るのは売れっ子で「新しいモノ好き」「セルフイメージ番長」の河口まなぶ氏や竹岡圭氏といった面々。

  「BMWが考えるサスティナビリティ」というのがなかなかツッコミどころが満載で、天然素材や廃材を探してきて使うのは結構ですが、そもそも1台のクルマを日本車みたいに20年でも走るように設計するのが本物の「サスティナビリティ」ってやつじゃないですか?そんなに「アピール」したいなら、すぐに摩耗してしまうブレーキパッドの素材から見直した方がいいんじゃ?なんてちょっと意地が悪い意見が浮かんでしまいます。BMWは「走り」のメーカーでいいんじゃないですか?もちろんこの「i3」に罪は無いですが、ブランド全体で考えれば、もしシフトレバーやサイドブレーキが無くなったら、BMWなんて魅力半減ですよ。まだ乗ったことないですけど、アンダーステアが日本の小型車並みに酷いという評判も・・・。もちろん「アンダー傾向」自体は安全性を担保する大事な要素ですが、「BMWらしい走り!」とは相容れない気が・・・。

  そしてBMWのライバルであるメルセデスも、「イメチェン」に勤しんでいます。去年発売されたSクラスと今年発売するCクラスでいよいよ、ドイツ流の「質実剛健」な内装をキャンセルして、まるでマセラティか?レクサスか?というような洒脱な内装へと転換しました。やや高齢者セレブ・ユーザー向けだった「ショーファーカー」としてのメルセデスSクラスでしたが、新興国の若手実業家にも愛される「セクシー・ショーファー」へと、完全に方向性を変えているのが一目瞭然です。はっきり言って「チャラい」!固めの黒レザーが基本だったのに、気がつけばふかふかの「パールホワイト」で、バックレストには女の子が使ってそうな形の枕が・・・。

  欧州車大好き!福野礼一郎氏も唖然としたようで、「気持ちいいから、まあいいか・・・」と見事に含蓄のある表現をされてましたね。サイドテーブルのグラグラ加減が完成度を根底から破壊する爆弾で、「こんなの付けるな!」といった欧州の立て付けクオリティ、日本の国鉄時代の新幹線を思い出すとか書いてあったっけ。やっぱこの人は面白い。Sクラスは「自走不能」な巨漢セレブの為のクルマに成り下がったため、次期Eクラスは一気にクオリティを上げて、全メルセデスの「オーナードライバー」が憧れる、プライベートセダンを目指すようです。これまでメルセデスが冷遇したため、BMWやアウディへと流出していったクルマ好きを再び味方につけて「メルセデス神話」を復活させるのが狙いみたいです。

  レクサスにも負けない前後マルチリンクサス(もちろんエアサスあり)に、圧巻は直列6気筒の新開発エンジン。環境性能ばかりに気を取られて、V6が直4よりも噴けが悪くて、完全に行き詰まってしまった中で、HVの洗練度でリードするレクサスに勝つためには、直6を復活させるしかない!という判断のようです。しかしいきなりここまで極端なイメチェンをされたら、従来モデルのユーザーは立場が無くなってしまいますよね・・・。メルセデスにしてみれば、現行のEクラスは「ひと声100万!」の大判ぶるまいをしているのだから文句は言わせない!といったところかもしれませんが・・・。


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2014年6月1日日曜日

BMW3シリーズ・グランツゥーリスモ がいまのところは正解?

  日本が誇る伝統のセダン・スカイラインがFMCにより車体が少し大きくなりました。日本で使いにくいというほどではないのですが、早くも「日本無視」といった批判が巻き起こるなど、人気モデルにかかるプレッシャーの大きさを改めて感じます。さらにトヨタのようなベースグレード向けの熟成された「直4HV」を持たない日産は、仕方なしに提携先のメルセデスから2Lターボの供給を受けたところ、ドイツ車(C、3、A4)では当たり前に使われていて表立って批判されることがなかったはずが、スカイラインが採用すると一斉にメディアから「日産は終わった」発言が・・・。なんだかまるで「いじめ」みたいな構造が見ていて痛々しいです。

  スポーツカー以外のFR車が2Lターボを使うことに対しては、もちろん反対なんですが、日産だって「お金を稼ぎたい!」わけですから、その気持ちは解らなくはないです。日産からしてみれば、320iセダンと同じ金額で、燃費も出力も完全に上回ったスカイラインHVを出して、さらに300万円台という「お買い得」なターボモデルも出した訳ですから、喜ばれることはあっても批判されることはないだろうと考えていたはずです。実際このクラスのクルマを考えていた人々からすれば「日産万歳!」と拍手喝采しかないほどに素晴らしいと思うのですが・・・。

  サイズに関しても新型スカイラインが最終的に下した判断は、批判どころかむしろ「理想的な水準」にあると思います。いまや「スモールカー」(Cセグ以下)のゴルフは、今では車幅1800mmに達している上にワゴンボディならば、全長を4600mmを超えるものもあります。ここまで下のクラスが大きくなると、3シリーズやCクラスのセダン/ワゴンは完全に「飲み込まれて」しまいます。なぜ200万円台の優秀な「スモールカー」があるのに、わざわざ500万円もする上に、狭く苦しい車内レイアウトのFR車(3やC)しかもを選ぶのは、なかなか「エキセントリック」な選択と言えます。乗り心地や静音性を比べても、基本的にはFFが設計上有利ですし、最近の「スモールカー」は特にレベルが高いので、モデルによってはCや3を完全に「下剋上」してしまっていると言ってもくらいです。

  そういう現実を突きつけられたときに、「BMWは好きだ」「3シリーズの手頃感もいい」といった購入に前向きなユーザーは、BMWに対して新型スカイラインのような収まりの良い新型モデルを無意識の内に要求してしまいます。まあ端的に言うと、500万円以上も払うのだから、「ちゃんとしてくれ!」ということです。まずは「最低限の所有する喜び」として、クルマの存在感(オーラ)を持つ事でしょうか。ゴルフヴァリアントよりも200万円高い、あるいはカローラフィールダーよりも300万円高いだけの「付加価値」が3シリーツ・ツーリング(ワゴン)にあるのか? というのが見えてきません。もちろんゴルフもフィールダーもかなりコスパに優れたクルマであることは間違いないですが・・・。

  BMW3シリーズ・セダン/ワゴンの最大の弱点は、まったく高級感が伴わない貧相なエクステリアです。まだ周囲も貧乏くさいスモールカーだらけだった時代には、いくらでも虚勢を張れたかもしれないですが、高級車がセダンの専売特許ではなくなり、ミニバンやSUVが代わって高級車として認知されるようになりました。ジューク、ヴェゼル、キャプチャーといった小型SUVの恰幅の良さと比べると、旧態依然なレクサスISやマークXってこんなにちっぽけだったっけ?と不思議な気分にさせられます。

  スカイラインやティアナ、アテンザ、そしてレガシィもサイズが大きくなる予定です。やはりブランドの顔となる「モデル」が、街中において「その他多数」の中で埋もれてしまうのはブランドとして大問題だ!というまともな危機意識があるからこそ、検討に検討を重ねてサイズアップしているのであって、訳の解らないジャーナリストが「日本無視」と騒ぎ立てる必要なんてまったく無いように思います。

  以前、島下泰久氏が2013年版の「間違いだらけのクルマ選び」でレクサスGSは「ベストサイズ」として最高レブベルの評価を与える一方で、発売直後の新型アテンザをGSと同じにも関わらず「大き過ぎる」と批判し、GSが「9」アテンザが「7」という評価を下していました。この不手際を当時ブログでボロクソに叩きました。そして2014年版を見るとお分かりですが、アテンザへの偏見的評価はなにもなかったかのように消え去り、GS「9」アテンザ「9」とこのシリーズでは異例とも言える「得点の書き直し」が行われました。

  この業界を代表するシリーズで1度出された評価が大きく改められたという「事件」は、中型車のサイズにおける「パラダイムの転換」があった!と解釈できます。少なくとも島下泰久氏という自動車評論界の「プリンス」の脳内では全てが変わったはずです。アテンザやアコード、スカイライン、ティアナが「大き過ぎる」のではなく、3シリーズやCクラス、ISが「小さ過ぎる」のだと・・・。そして新たな事実として、3シリーズはセダンやワゴンは小さいですけど、「グランツーリズモ」という5ドアハッチバックのモデルは「大きい」に属します。

  BMWはすでに「パラダイム転換」が起こることを読んでいたわけです。ということで、BMWを手頃な価格でラグジュアリーに乗りたいならば、「3シリーズ・グランツーリズモ」という選択が「現状では」ベストなようです。すでにBMWは第2弾を用意していて、それは「4シリーズグランクーペ」で、さらに「ワイド」&ローが強調され満足できるものになりそうです。この2台が「3シリーズ・グループ」で今後大きな意味を持っていくんじゃないかと思います。

  
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